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第108 回九州医師会総会・医学会及び関連行事

V.第108 回九州医師会総会・医学会

  • 日 時:平成20 年11 月15 日(土) 午後1 時30 分〜
  • 場 所:ホテル日航熊本(5 階天草)

第108 回九州医師会総会

村上熊本県医師会副会長より開会の辞が述べ られ、続いて国歌斉唱が行われた。その後、昨 年11 月から本年10 月までにご逝去された255 名の会員に対し、黙祷が捧げられた。

九州医師会連合会会長挨拶 (北野熊本県医師会会長)

この九州医師会連合会は、九州各県医師会の 輪番により毎年、総会・医学会を開催し、医学 の研鑽を行うとともに医療・保健・福祉の向上 に努めてきた。

この医学会も明治25 年(1892)に第1 回を 熊本で開催して以来、多くの九州各県の先輩諸 先生方のご尽力により連綿と受け継がれ、今回 で108 回を迎えることになった。

特に当地熊本は、わが国の近代医療にとって も縁の深い地である。明治の夜明けと共に緒方 正規先生、浜田玄達先生や日本医師会の初代会 長であります北里柴三郎先生更には7 代会長谷 口三郎先生、10 代会長の小畑惟清先生など多 くの大先達を輩出しておりまして、このような 歴史の息づく熊本で、開催されることは大変意 義深いことである。

現在の医療を取り巻く環境は、非常に厳しく、 長年にわたって国が取り続けた低医療費政策に より、引き起こされた医師・看護職不足或は偏 在、また産科医療や小児医療、救急医療の崩壊 が生じている。国民が抱いている不安を払拭す るために社会保障費の抑制路線を転換し医療や 介護を手厚くする財源を確保せねばなにない。 国民が安心して生活できるような医療環境の構 築に向けた賢明な政策を切望するものである。

私ども九州医師会連合会は、学術専門団体と しての誇りをもち、医師会のあるべき姿を確認 しながら一致団結して日本医師会を強力に支援 し、国民が等しく安心して、健康で幸せな社会 生活が送れるような社会保障制度の確立に向け て努力していかねばならない。

なお、熊本城築城400 年を記念して「本丸御 殿や飯田丸」などが復元されました。折角の機会 なので、時間の許す限りご覧頂ければと存じる。

最後に九州医師会連合会の益々の発展とご来 会の皆様のご健勝を祈念して挨拶とする。

来賓祝辞

唐澤人日本医師会長

第108 回九州医師会連合会総会・医学会が 蒲島熊本県知事、幸山熊本市長を始め、多数の ご来賓ご臨席のもと、このように盛大に開催さ れるにあたりここにご挨拶申し上げる。

さて、改めて申し上げるまでもなく、国民皆 保険制度、フリーアクセス、現物給付の3 つこ そが我が国の医療制度のすぐれた特徴である。 この制度の崩壊は絶対に逃がなくてはなりませ ん。しかしながら、この優れた制度の下で国民 の大きな信頼が寄せられている医療は政府の財 政優先の医療費の削減政策により、今や崩壊の 危機に瀕しているところである。超高齢社会が 到来し、医療を必要とする人々が増加する一 方、医療費の自然増さえ押さえられてきた影響 として、国民に充分な医療を提供できない地域 さえでてきている。このような状況に対し、国 民の生命と健康を預かる医師としての立場か ら、深い憂慮を覚えているところである。

日本医師会は国民の視線に立った医療制度の 実現とその確立を図るために、国民が安心して 生活できるような医療制度が堅持されるよう、 また、その財源的な手当を含めた政策を今後も 強力に主張していきたい。

九州各県の先生方におかれましても、深いご 理解と格段のご協力を賜っていることに対して 感謝申し上げ、今後ともより一層のご支援ご協 力申し上げる次第である。

さて、九州医師会医学会はこれまで、毎年開 催され、地域の実情を踏まえた医療に関わる 種々な問題について熱心に検討を重ねてこられ た。その長い歴史と確かな実績と着実な成果を あげておられることは、高く評価されるもので ある。今回の九州医師会連合会総会並びに医学 会が一層実り多いものとなることに期待申し上 げると共に、明日の各種記念行事を通して会員 の皆様の一層の親睦を深められるよう併せて祈 念申し上げる。

引き続き、蒲島熊本県知事、幸山熊本市長よ りそれぞれ来賓祝辞が述べられた。

宣言・決議

慣例により議長に北野九州医師会連合会長が 選任され、北野議長進行のもと、宣言・決議 (案)について協議が行われ、異議なく原案ど おり承認された。なお、宣言・決議の送付先に ついては担当県に一任された。

次回開催担当県医師会長挨拶

次回担当県である福岡県医師会の横倉会長よ り、平成21 年10 月30 日(金)31 日(土)11 月1 日(日)福岡市のホテル日航をメイン会場 として開催するので多くの会員のご参加を賜り たい旨の挨拶があった。

宣  言

現在の医療環境は、永年にわたって国が取り続け てきた低医療費政策によって、まさに崩壊の危機に 直面している。

それにも拘らず、国は基礎的財政収支(プライマ リー・バランス)の赤字解消を図るためと称し、「骨 太の方針2008」において、なお、社会保障費の自 然増を毎年2,200 億円削減するという方針に頑なに 推し進めようとしている。

この影響は、医療界に大きな波紋となって拡がり、 新臨床研修制度の導入による若手医師の大都市・大 病院への志向と相俟って、地域における医師不足・ 偏在という深刻な状況を生み出した。

また、医療に対する国民の過大な要求や医療機関 へのコンビニ的受診動向は、医師、殊に勤務医の疲 弊を招き、その結果として医師不足や偏在が益々助 長されてきた。

この様な深刻な状況下においても、われわれ医療 従事者は、国民に対して公平で且つ安心で安全な医 療を提供する重責を負っている。

国は、このような事態を招いた元凶が、永年にわ たり取り続けてきた低医療費政策にあることを率直 に認め、直ちに社会保障費の機械的削減の撤廃を決 意し、これに加えて十分な医療費の確保を目指し、 新たな財源を求めるべきである。

われわれ九州医師会連合会はその総意として、国 民が平等に、安心して安全な医療を受ける権利を享 受できるよう、国民と共に世界に冠たる国民皆保険 制度を堅持していくことを、ここに宣言する。

平成20 年11 月15 日

第108 回九州医師会連合会総会

決  議

われわれ九州医師会連合会は、財政至上主義 により崩壊の危機に直面している国民皆保険制 度を堅持するために、国に対して次の事項を要 望する。

  • 一、国民皆保険制度の堅持
  • 一、社会保障費2,200 億円削減の撤廃
  • 一、新たな医療費財源の確保
  • 一、不合理な診療報酬の是正
  • 一、後期高齢者医療制度の見直し
  • 一、医業税制の確立と控除対象外消費税(所謂・損税)の解消
  • 一、医師不足の根本的解消と医師偏在の早期是正
  • 一、新医師臨床研修制度の見直し
  • 一、女性医師の就業環境の整備
  • 一、准看護師養成制度の堅持と助成の拡充並びに三層構造の堅持
  • 一、株式会社の医療参入・混合診療の解禁・総枠管理制や免責制等の導入阻止

以上、決議する。

平成20 年11 月15 日

第108 回九州医師会連合会総会

第108 回九州医師会医学会

特別講演T

「がんと人間と社会」
国立がんセンター名誉総長・日本対がん協会
会長 垣添忠生先生
(座長 熊本県医師副会長  村上幹彦)

がんは人間だけの病気ではなく、動物、魚、 鳥、犬、猫もかかる。生物全般を対象としてが んが何故生じるのか、系統発生と個体発生の関 係を考えることは、私達の思考を広げる上で大 きな意味を持つ。ここでは人間の病気としての がんについてお話しする。

1)がんとはどういう病気か?

がんは遺伝子異常が多段階に積み重なった結 果、発生する細胞の病気である。遺伝子異常の 引き起こす原因としては、たばこや食生活、生 活習慣が重要であり、発生と進展に長い時間経 過を要する病気である。

2)がんの予防

一次予防と呼ばれるのは「がんにならない」 事を指す。禁煙対策はもっとも重要であり、生 活習慣に関しては、野菜や果物を多く摂り、塩 分を避け定期的に運動することが大切である。

また、感染症とがんの関係は原因と結果の関係 であり、原因が除去出来れば、関連がんも消滅 する。

3)がんの検診要性、チーム医療の重要性、がん 専門認定看護師の重要性があげられる。

4)がん診療とその均てん

がん診断は画像診断、マーカー診断、病理診 断と大別される。

問題は最先端の診断、治療は日進月歩である のに日本中どこでがんになるかによって、受け られるがん治療の地域間格差、医療機関間格差 が大きすぎることである。

5)人が生きるということ

誰しも理不尽ながん死亡を避けたいし、死な ないでよい生命が知識の不足、あるいは社会体 制の不備で失われるのは口惜しい。進行がんで も闘って生還する人、早期がんでも精神的に参 ってしまう人、様々な反応を起こす。がんので きた状況において自分がどう対処して生きてい くか。人間の強さ、弱さの全て包摂して医療は あるのだと思う。希望を持って生きることの意 味を考えたい。

6)がん対策基本法とがん対策推進基本計画

平成18 年6 月がん対策基本法が制定され、 平成19 年4 月から施行されている。

がん対策推進基本計画→今後10 年間にがん 死亡2 0 % 削減と、がん患者さん、家族の QOL の向上を二大目標として盛り込まれた策 定である。

特別講演U

「ゴルフが教えてくれたもの」
坂田ジュニアゴルフ塾主宰
プロゴルファー・作家 坂田信弘氏
(座長 熊本県医師会副会長 地後井泰弘)

○演者はプロへの道のりで学んだ多くの人たち に助けられた、人の優しさ・厳しさを生かしな がら、ゴルフ塾での塾生との関わりについて講 演された。ゴルフが好きと言うことの大切さ、 それが弱いと不満が出るし、自己評価してはい けない。同じことを何回もやることによって根 気がついてくる。結果だけを見ると悲観主義に なる。

○去年、今年と我が塾では33 名受験して27 名 がプロテストに合格した。

→人の持っている基本的な能力を伸ばすだけ のことである。

○入塾のとき必ず肩をみる。背骨の肩が直角の 方が良い。右肩が傾いていると腰を痛め、負担 がくる。こどもの歩き始めの前のハイハイが大 事で左右のバランスを作る。タイガーウッズは 3 歳までハイハイしていた。

○皆、我が子にどういう適正能力があるか色ん な稽古事をさせようとする。

→大事なことは1)根気 2)忍耐力 3)闘争心

4)負けん気であり、稽古事は1 つに絞ること。

○ 300 人の中で一番できの悪かった、本田弥麗 の12 年間の苦しかった塾生時代からプロにな るまでのゴルフとの関わりについて話した。

○弱い人間、プレッシャーのある人間は耳のと おりが悪く、よく聞こえない。

○生きることは喜びと悲しみの各駅停車であ る。苦しいと思ったら忍耐力が続かない。同じ 事でも悲しいと思った方が、苦しい事の3 倍も 4 倍も耐えることができる。だから悲しいと思 って生きて行けと教えている。

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

九州医師会連合会第96 回臨時委員総会、九州医師会連合会委員・九州各県医師会役員合同協 議会、九州医師会総会・医学会が平成20 年11 月14 日(金)から16 日(日)にかけて熊本県で 開催された。

熊本県医師会長のご挨拶ののち、来賓祝辞を日医唐澤会長と西島参議院議員が述べられた。中 央情勢では社会保障費の削減は限界にきていること、今後種々予算の確保がなされるであろう。 レセプトオンライン化に関しても3 師会が厚労省に申し入れをしたので今後活動がしやすくなっ たと報告があった。

臨時委員総会では九医連の事業報告がなされ、歳入歳出の報告もあり満場一致で承認された。 現在までの歳入は70,642 千円である。

次に第108 回九州医師連合会の宣言案と決議案が採択された。報告で述べられている決議が実 現される様に日医も九州医師会連合も頑張らなければいけないようである。

会議の後、懇親会がもたれた。オープニングは坂本すみ子さんのステージである。しばらくど こにいたのかと思ったら、熊本で幼稚園の園長をしているとのことである。女房の旅行用に買っ てあげたサイバーショットで写真を撮ったが実によく映るものである。最近のデジカメは安くな り、性能もあがっている。ポケットサイズのカメラは非常に便利である。明日は熊本城の周りで 那覇市医師会のチャリティー写真展の作品を撮る決意をして熊本の楽しい夜を過ごした。

15 日朝、熊本城を目指して歩いた。熊本城に人影は少なく、写真のスポットを探し歩いている と、カラスのたくさんいる場所に出てしまった。鳥という映画を想像しながらそっと歩いていっ た。熊本のカラスはおとなしくてほっとした。熊本城をいろいろな角度から写真を撮っていると、 時間の過ぎるのを忘れてしまった。会場までタクシーで急いで駆けつけた。

九州地区からの質問に対して唐澤会長から「国民が求める最善の医療をめざして」との講演が あった。唐澤会長も九州に来れるほど元気になり皆も大変喜んでいた。たくさんのことを話され たが、今年の5 月頃から国会議員も社会保障費の削減は良くないことを理解する様になった。中 医協は開業医と勤務医の対立をあおる様な構図を造っているのではないか。地域社会においては 医師がリーダーシップをとって活動する必要がある。日本には1,500 兆という国富があるのに国 民はなぜ安心できないのか。

これからは高齢者にやさしい地域づくりをして、家庭や自宅でできる仕事などを増やす必要が あるのではないか。個別の仕事等地域の生活の活性化ができるような政策が必要になるのではな いか。

医師は地域医療を通じて地域のリーダーになる必要があるとの趣旨であった様に思えた。

健康と生命を守り、状況を分析しグランドデザインの策定をし、これらを実現する医師会にな るとのことである。

唐澤会長の話を聞きながら県医師会として「県立病院のあり方検討委員会」の議論を文教厚生 委員会、私たちが支持している県議、公務員医師会、マスコミ、県民と議論を重ねる必要があると感じた。

医師会がリーダーシップをとっていくのである。

医学会では日本内科学会九州地方会に156 題の発表があった。九州小児科学会は5 題の講演と 一般演題12 題の発表があった。産婦人科学会は講演2 題、東洋医学会は一般演題45 題と講演2 題、シンポジウムが1 つ開催された。

これらの開催は将来沖縄開催の時のプライマリケア学会の同時開催の参考になると思われる。

翌、日曜日は午後1 時から熊本県医師会館で有床診療所九州ブロックの会があった。裏通りに 建つ医師会館を探すのに大変苦労をした。目印がないのである。近所の人もよくわからず、タク シーもわからないようであった。沖縄県医師会館はわかりやすい場所で良かったと思う。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

唐澤人日医会長の元気なお顔を九州熊本の地で拝見し、その講演を拝聴し、100 %復活され たという感と同時に安堵した。西島英利参議院議員は、平成21 年度の医学部の入学定員を10 % 増加させるのはほとんど決定的で、卒後臨床研修制度の見直しと、舛添厚労大臣は医師の数を1.5 倍にすると言っていると話され、医師法21 条関連については、出来るだけ業務上過失致死という 形で医師が逮捕されないように医療安全調査委員会設置法という形で来年の通常国会に提案した いと述べていた。

医療は学問的要素が強く、専門や興味を越えた領域になると、講演を聴いていても、なかなか 感動の連続と言う訳にも行かないようだ。そして、その講演をもっと聴いていたいと感ずる時も、 専門家同士において、その焦点の定まった内容が中心となり、その真実を追究して行きたいとい う探究心が底流にあると思われる。一方、今回の九州医師会医学会特別講演の中で、坂田信弘氏 の「ゴルフが教えてくれたもの」というタイトルの講演は心を強く引かれる内容であったと同時 に2 時間近く聞いていても感動の連続であった。自己の生い立ちや、京都大学を中退して、それ なりの年齢になってからプロゴルファーを志した背景。比較的歳の行った練習生時の練磨、プロ ゴルファーになってからの古い時代の先輩後輩の関係と人間模様、そしてツアープロとしての無 念さ。その後、坂田ジュニアゴルフ塾を主宰し、子供たちを育てていった。塾に入る時の条件は 背筋がピィーと伸びていて、両肩が平衡していること、そしていい車に乗って(親が金持ちでな い)入塾に臨んでないことであった。厳しい指導と、絶対に見捨てない忍耐強さと、常に優しい 心配りをしていることを講演の中で感じた。33 名中27 名がプロに合格し、300 名の内一番不器 用な生徒が12 年間を要し、プロになったが、本人の強い意志もさることながら、進路選択も含め 粘り強く支えたようだ。坂田氏は本も何冊か書いているようで、探し求めて読んでみたいものだ。

久しぶりに、内科学会九州地方会に出席したが、本県からも多くの演題が発表されており、頼 もしくと同時に喜ばしく思った。