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第108 回九州医師会総会・医学会及び関連行事

副会長 玉城 信光

去る11 月14 日(金)〜 16 日(日)の3 日間にわたり、熊本市において九 州医師会連合会総会・医学会関連諸行事が開催されたので、その概要を報告 する。

T.九州医師会連合会第96 回臨時委員総会

  • 日 時:平成20 年11 月14 日(金) 午後5 時〜
  • 場 所:ホテル日航熊本(5 階天草)

標記臨時委員総会は、14 日(金)の午後5 時から開催された。司会の熊本県医師会地後井 泰弘副会長より開会が宣された後、北野邦俊九 州医師会連合会長(熊本県医師会長)より、 「現在の医療環境は永年に亘って国が取り続け て来た低医療費政策によって、まさに医療崩壊 の危機に直面している。国は、年金、医療、介 護の制度をつぎはぎする様な手直しで社会保障 費を機械的に抑制しており、その結果、医師不 足・偏在、看護職不足、産科医療、小児医療、 救急医療の崩壊が生じ、国民の不安を煽るばか りである。国民が抱いている不安を払拭するた めに社会保障費の抑制路線を転換し、医療や介 護を手厚くする財源を確保せねばならない。私 共は、日本医師会を強力に支えながら医療崩壊 を阻止するため政府に対して、社会保障費の機 械的抑制の撤回を求めると同時に国民が安心で きる医療提供体制の再構築と国民皆保険制度の 堅持を強く訴えて行きたいと考えている」と挨 拶が述べられた。

その後、唐澤人日本医師会長、西島英利参議 院議員の来賓祝辞があり、報告、議事が行われた。

来賓祝辞

1)唐澤人日本医師会長

唐澤人日本医師会長より、概ね以下のこと が述べられた。

小泉政権下における市場経済原理主義は国民 の間に様々な格差を生じさせ、政府は構造改革 が生んだ影の部分の解消のため必死になって対 応しているという現状である。また、昨年の夏 に表面化した米国のサブプライムローンの影響 により、本年9 月には金融危機として全世界的 に拡大し、金融市場の混乱、経済の低迷を増大 させているのはご承知のとおりである。

このような状況の中、国民の格差や不安は一 段と顕著になり、近年の財政優先の政策がより 一層国民の生活や生計に大きな疲弊をもたらし ていることは明らかである。今こそ安心と安全 のための政策を実行することが喫緊の大命題で あると考えている。日本医師会としては、社会 保障費年2,200 億円の機械的削減の撤回から社 会保障費増額への政策転換とともに高齢者の 方々に温かく、そして長生きして良かったと思 える医療制度の再構築が最も重点的に対応しな ければならない課題であるととらえている。

九州医師会連合会は、これまでの九州の実情 を踏まえ医療に関わる種々問題について非常に 熱心に討議して来られた。その長い歴史ととも に確かな実績と着実な成果を上げておられるこ とは高く評価されるものである。これからの日 本医師会が推進する医療政策に対し、深いご理 解と絶大なるご支援を改めてお願い申し上げる。

2)西島英利参議院議員

西島英利参議院議員より、概ね以下のことが 述べられた。

ご存知のように、国会は混乱、混迷を続けて いるところである。9 月1 日に福田総理が突然 辞意を表明し、10 月に麻生総理が誕生した。 そういう中で医療関係の中央情勢の話をお話さ せていただきたい。

○社会保障費について

7 月29 日に行われた閣議で、社会保障費か ら毎年2,200 億円を抑制するという基本方針は 変わらないが、年金、医療等に関しては年末の 予算編成過程においてきちんと予算を担保する という形になった。また、麻生総理は平成22 年度の予算からは2,200 億円は凍結をするとい うところまで明言している。しかし、社会保障 費は増えていく一方で、2025 年には社会保障 費全体が140 兆円、また医療費そのものは65 兆円になると言われている。この財源をどうす るかということで、10 月30 日に経済対策の追 加が行われた時に、麻生総理が3 年を一つの目 途にして、経済状況が良くなっていれば、消費 税を引き上げさせていただきたいと表明してい る。ご存知のようにいろいろな無駄を無くさな ければならないが、とにかく社会保障費の伸び というのは無駄を幾ら集めても1 兆円にならな い。ところが、社会保障費の伸びは数十兆円の 規模であるので、どうしても恒久的な財源が必 要である。過去に自民党が消費税の問題を言っ た途端にその時の選挙は全部負けているが、政 権与党として国民にしっかりと理解をしていた だくための活動をしなければいけないというこ とで、麻生総理は消費税の問題に踏み込んでき たということを是非ご理解いただきたい。

○医師不足問題について

長期的に医学部の入学定員を増やすというこ とで、平成20 年は7,800 人の入学生であるが、 平成21 年は8,500 人の入学定員となる。これは 文部科学省が予算化したので確定の数字である。 しかし、これで直ぐに医師不足が解消されるとい うわけではなく、そういう意味で、臨床研修制度 の見直し、特に定員の見直しが行われている。そ の数字は年末までに恐らく確定すると思う。ま た、舛添大臣は、私的な見解ではあるが、医師 の定員を1.5 倍にすると言っている。しかし、本 当に1.5 倍必要かどうか何の検証も無くこの数字 が出ており、今後しっかりとした議論をしていか なければならない問題であると思っている。

○産科医療問題について

産科医療については、救急医療を含めた懇談 会が行われており、最初は、ある意味で組織外 しという形で、懇談会の中に日本医師会の委員 が入っていなかったが、地域医療をしっかりと 支えるには医師会の協力が必要ということを厚 労省が理解を示し、懇談会に木下常任理事が入 ることになった。今後はしっかりと日本医師会 の考え方が反映されるようになると思う。

産科医療補償制度が来年の1 月1 日からスタ ートするが、昨日の参議院の厚生労働委員会 で、特に民主党から、なぜ民間の保険会社を使 うのかということを中心に反対的な質問が行わ れた。公的な制度となると数年掛かってしま う。この制度は急いでやらなければならないも のであるので民間の保険を使ったわけである。

○医師法21 条関連について

民主党が、医師法21 条を削除し、死亡診断 書を詳細に書くことによって死因を究明すると いう考え方を提案している。

ご存知のように、医師は刑法で重い守秘義務 を課せられているが、もし殺人や虐待の患者が 運び込まれた場合に一番最初に知る立場にある のが医師である。その様なことを発見された場 合に速やかに警察に届けるようにと規定したの が医師法21 条の本来の目的である。それがい つの間にか診療中の事故に関しても適用すると いう方向性が出できて、混乱が起きているとこ ろである。医師法21 条については回避できる ような方向で考えているが、実は医師法21 条 が大きな問題ではなく、業務上過失致死が一番 大きな問題である。出来るだけ業務上過失致死 という形で医師が逮捕されないように医療安全 調査委員会設置法という形で来年の通常国会に 提案をしたいと考えている。是非先生方のご理 解とご指導をお願いしたい。

○後期高齢者医療制度について

民主党が後期高齢者医療制度の廃止法案を出 しており、国会で議論をされる予定である。そ もそも後期高齢者医療制度は、国民皆保険制度 が崩壊の状況にあるというところから、ずっと 議論されてきた。国民健康保険制度そのものが 崩壊の状況にあり、一般会計からかなりの額の 繰り入れが行われている。税金を重点的に投入 しなければ国民皆保険制度は将来的に維持でき ないというところから、日本医師会が、75 歳 以上に税金を重点的に投入しようという優遇策 で提案しており、後期高齢者を切り捨てるとい う策ではないが、年金問題により不信が大きく なり、制度そのものがとんでもない方向へ行こ うとしている。2025 年には75 歳以上の方々の 医療費が30 兆円になるということが目の前で ある。そういう状況の中で、税金を重点的に投 入するという後期高齢者医療制度をなんとか維 持していなかければ、国民皆保険制度は維持出 来ないということは明確である。

○レセプトオンライン義務化について

民主党の国会議員が質問し、それに対する答 弁書が閣議決定された。平成22 年までに義務 化するという内容が書かれているが、是非理解 していただきたいのは、野党がこういう形での 質問書を出すと、従来政府が言ってきたことを 必ず答弁書に書いており、従来言ってきたこと を書いただけの話である。先日三師会が、厚生 労働大臣や与党の主だった方々へ義務化に対す る反対の声明を出していただいた。これから 我々が動ける立場になった。先日も与党の幹部 と話して、この問題は大きいので、これからし っかり対応していこうということになっている。

座長選出

慣例により、九州医師会連合会北野邦俊会長 が選出された。

報 告

1)299 回常任委員会について

座長の北野会長より、当臨時委員総会に先立 って開催された第299 回常任委員会について報 告があった。

2)九州医師会連合会事業現況について

地後井委員(熊本県)より資料に基づき、平成20 年4 月1 日から平成20 年10 月31 日まで に開催された九州医師会連合会事業(常任委員 会、委員総会、各種協議会等)及び関連行事に ついて報告が行われた。

3)九州医師会連合会歳入歳出現計について

地後井委員(熊本県)より資料に基づき、平 成20 年10 月31 日における九州医師会連合会 歳入歳出の現計について報告があった。

なお、歳入・歳出合計並びに差し引き残高に ついては下記のとおり。

4)第108 回九州医師会医学会及び関連行事 について

地後井委員(熊本県)より資料に基づき、11 月14 日(金)の前日諸会議、15 日(土)の合 同協議会、総会・医学会、16 日(日)の分科 会、記念行事について報告があった。

議 事

第1 号議案 第108 回九州医師会連合会総会 の宣言・決議(案)に関する件

座長の北野会長より提案理由の説明が行われ た後、地後井委員(熊本県)より宣言・決議 (案)の朗読があり審議の結果、原案のとおり 承認され、翌15 日(土)の総会に上程するこ とが決定された。