沖縄県立中部病院呼吸器内科
喜舎場 朝雄
皆様、こんにちは。県立中部病院で勤務して おります喜舎場です。研修病院で勤務している 立場として研修医の先生方に望む事について自 由に述べてみます。
新しい臨床研修システムがはじまり研修シス テムの標準化または独自性の埋没なども叫ばれ ているかと存じます。医師には臨床・教育・研 究という三本柱があると思います。その中で市 中の臨床教育病院に求められる役割として臨床 と教育の充実があると思います。そこで初期研 修に携わる若き研修医の皆さんには短期的およ び長期的な自らの目標を持って望んでほしいと 考えます。
まず、臨床の面で中部病院では24 時間365 日オープンの救命救急センターにてその人のや る気になれば1 年目の先生で年間1,000 人の患 者を診る事が可能です。最初は小生も右も左も わからずに同期生、レジデントの先生、看護師 さん、薬剤師さんなど多くの方々からアドバイ ス・支援を受けながら何とか人並みに診察また 判断出来るようになりました。最初のうちは先 輩や講義などからの耳学問や体で覚えていく事 も重要だと思います。とにかく患者さんを多く 診察し、また効率よく問診して問題を抽出しバ イタルサインや理学所見の異常を的確に捉えア セスメントをたて重症度を判断するプロセスを きちんと学んでほしいと思います。救急室の段 階では私は決して最終診断をつける事が目標で なく帰宅・経過観察・入院・ICU 入室といっ た見極めをきちんと出来る事が重要だと考えて おります。また、当院の多くの指導医がいつも 口酸っぱく言っているように1 年目の先生が注 意深く観察すべき症例や重症例を長時間もちす ぎない事だと思います。そして救急の場におい ても冷静さを失わず同僚を大事にし、また、患 者の家族への言葉遣いにも配慮が必要です。 我々医師のちょっとした言葉が家族をなごま せ、それがないと逆に不安に陥れてしまいます。 重要事項や大事な検査の説明は忙しい中、大変 ですがきちんとする事を習慣づけましょう。
次に一般病棟での仕事ですが1 年目の先生に は問診とプレゼンテーションがきちんと出来る ようになる事は医師として非常に基本的ですが とても大切です。医師は生涯にわたりプレゼン テーションをする機会があり若い頃に身に付い た事が一生をある程度決定づけると思います。 そして平均2 週間という短期間で多くのセクシ ョンをまわり慣れるのが大変ですが各科の基礎 的な事項をきちんと学び、自分が十分に学べて ないと思ったらその点を重点的に上級医に質問 したりする積極性が必要だと思います。
2 年目のレジデントになると当院では各科で 患者の担当医となり所謂病棟での主役になりま た、所属チームのリーダー的な役割も担う事に なります。そこでは担当する喜びと同時に付随 する責任感、診断へのアプローチ、患者の全体 像を捉えての管理、本人および家族への病状説 明など多くの重要事項をこなしていく必要が求 められます。ここでは身につけた知識とともに 患者の背景、年齢等に応じた治療の応用などの 柔軟性も必要です。患者の病態は教科書通りの 手順を踏んでも必ずしもうまくいくとは限りま せん。ですから患者のメインのプロブレムをき ちんと把握しておく事は言うまでもありません。この時期に重要な事として私は医師として のプロ意識、患者を担当する責任感、患者や家 族と向き合う姿勢、コメデイカルの方々との良 好なコミュニケーション、タイムマネジメント などを挙げたいと思います。
その次に後期専攻医に関してですが内科に関 して申し上げると現在のプログラムの2 年間で 内科医としての基礎を仕上げるのは困難だと思 います。入り口がやっと見え始める時期だと考 えております。2 年間で培った医師としての基礎 をふまえて臨床の真の面白みがわかってくるの が3 年目以降ではないかと感じております。あ る程度の重症患者のケアーも出来、日常に疑問 に思った事を自ら調べてみて解決していく臨床 の醍醐味も味わえてくるようになると思います。 また、院内での経験もふまえて対外的な学会発 表などにも積極的にのぞみ多くの先生方の意見 や批評も受ける事も自らの成長には欠かせない ものです。また、後期専攻医の件と関連した事 で沖縄県ではコースにより離島診療所や離島の 公的病院で自らの臨床的な総合力を遺憾なく発 揮できる機会が出てきます。これは若い先生方 にとってはなかなか得られないチャンスだと思 います。自分1 人の力で判断管理をし良い帰結 にもっていけた暁には大きな自信が得られるも のと思います。私自身は自治医科大学の卒業で 卒後3 年目で離島診療所に2 度赴任する機会が ありました。未熟ものでしたが臨床の現場で学 んだ自信と診療の合間の勉学を併せて自分なり のプライマリ医療のベターなものは提供出来た かなと思います。また、離島で学んだ大きな財 産として地域社会での連携、患者や家族との関 わり、社会の縮図、保健師さん、役場の方々を 含めた医療チームでの自らの役割などについて 腰を据えて考え、習得する機会になった事です。
そして今、私が感じている事は離島で頑張っ た先生方の将来を如何にサポートするかについ てです。自分で出来る事を当院や多くの共感す る仲間とともに提供していきたいと思います。
最後にこれからあるいは現在、研修に勤しん でいるあるいは離島診療所や離島の公立病院で 若き先生方には1 日1 日の経験が自らの将来の 糧となりまた、先生方を暖かく見守る先輩が必 ずいる事を忘れずに精進していってほしいと思 います。