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研修医のみなさん、頑張れ!!

崎原みち代

琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センター
崎原 みち代

私に今回与えられたテーマは『研修医にどの ような研修をしてほしいか』というものでした。

自分が研修医だった頃は、今の研修制度とは 違い、大多数の人は大学を卒業すると専門を決 めて、すぐに医局に入局していました。医局に は先輩医師がいて、色々指導してもらいました が、自分の力のなさに落ち込んだこともよくあ りました。とにかく自分の目の前にいる患者さ んを一生懸命診ていた毎日でした。自分の研修 医時代を振り返って、今頑張っている研修医の 先生方にアドバイスするとすればなにか考えて みました。

研修医の先生より少し先輩の私が、今の研修 医の先生方に強く望むのは主体的な研修をして ほしいということです。

このことは、今、指導医になった私が、一番 痛感することでもあるのです。研修医の時代 は、社会人として、一番柔軟で、いろいろなこ とを吸収できる時期です。

いろんなことに興味をもち、自ら積極的に経 験することは、将来において自分の大きな財産 になります。どんな些細なことでも経験するこ とは大切で、そこから学んだことは、将来、ど の診療科に進んだとしても役に立つと思いま す。人は、自分の目の前に問題が出てきた時に 真剣に取り組むことが多く、教科書には書いて いないことを実際の診療の中で学んで欲しいの です。

私も研修医時代はそうでしたが、研修医の先 生方は、手技の獲得に目を奪われてしまいがち です。でも、手技はある一定期間研修すれば、 十分に習得できるものです。

この時期に学んで欲しいことは、診療の基 本、つまり患者に対する医療者としての姿勢や 診療に対する心構えを獲得することです。研修 医時代に診療の基本を獲得できるかで今後の医 者としての方向性が決まると思うのです。具体 的にいうと、自分が主治医である自覚をもっ て、患者の話を十分に聞き、診察をし、鑑別疾 患をあげながらアセスメントとプランを立てて 治療していく。この考え方をきちんとマスター することが大切です。最初から完璧にやれる医 者はいません。鑑別疾患を数多くあげることは 難しいことですが、この作業を繰り返すこと で、少しずつ経験を積みながら、きちんとした 診療を行うことが出来るようになると思うので す。そのためには、まず、積極的にベットサイ ドにいき、患者さんの声に耳を傾け、診察する 能力を鍛える必要があります。私がかつて研修 医だった頃、指導医から言われたことは、「研 修医はとにかく患者さんのベットサイドに行 け!」ということでした。患者さんと接する中 で、患者さんからいろんなことを学ぶことがで きるのです。研修医の先生方には、病気を見る 医者ではなくて、患者さんを診る医者になって ほしいと思います。

そのためには、コミュニケーション能力を鍛 えることも大切です。医者は『人』が相手の仕 事で、コミュニケーションがスムーズにとれな い場合、医療がうまくできないことがありま す。また、患者さんを診る時、一人で診るわけ ではなく、患者さんの回りにはさまざまなコメ ディカルの人達が働いていて、その協力があっ てこそいい医療が提供できるのです。そのため、チーム医療の一員であるという自覚をもっ て、ほかの医療スタッフを尊重し、そのスタッ フと協力していくことが大切です。

それと同時に、患者さんに対して最良の治療 法を提供する上で、疾患の診断や治療法につい て、文献検索を行なうことは日常診療で必須の ものです。研修医の時代から自分で論文などを 検索する習慣をつけておくことはいいことだと 思います。

研修医の先生方なりに一生懸命患者の診療に あたっていれば、患者さんはもちろん指導医や 他のスタッフも協力してくれます。まずは、研 修医の先生方が主体的に取り組んでみてくださ い。その中で、わからない事や困ったことがあ れば、積極的に指導医やコメディカルに相談し たりして周りのスタッフを巻き込んでください。 先生方の情熱でいろんな垣根を越えることでよ り充実した研修ができると信じています。研修 医の先生方、頑張ってください。