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平成20 年度第3 回沖縄県医師会・
沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る9 月17 日(水)、県庁8 階第2 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議題

1.死亡時画像病理診断(Ai)について (県医師会)

<提案要旨>

Ai を先駆的に行っている千葉大学法医学教 室の岩瀬博太郎氏によるとAi によって検案の 約20 %が診断名が変わるという。Ai によって 死因をきちんと究明することは

  • 1.事件、事故の再発防止
  • 2.適切な保険金支払い
  • 3.乳幼児虐待の防止

等の効果が考えられる。

一部の検案にAi を組み込むことは、多少の 時間と2 〜 3 万/一件の費用ですむと考えられ る。検案の件数が年間700 件前後の沖縄であれ ば症例を絞ることによって年間1 千万円程度の 予算でできることである。

沖縄では地元の方だけでなく、観光客の溺死 が少なからずある。何故溺死したのか、原因を 究明し、溺死を予防する為の対策を立てること は観光立県を目指す県にとっても大切なことで ある。

<福祉保健部の回答>

死亡時画像病理診断(Ai)の活用について は、日本医師会の検討委員会が平成20 年3 月 に取りまとめた中間報告において課題(Ai セ ンターの設立、厚生労働省「医療安全調査委員 会(仮称)」との関連、事例の不足、財源)の 提起がなされている。また、新聞報道による と、厚生労働省の研究班が医療事故死が疑われ る患者を対象に今秋から試験的に実施するとの 事である。県としては、厚生労働省における調 査研究の動向を注視していきたい。

<主な意見等>

○県としては、Ai に関して情報不足である (福祉保健部)。

○医師会も先日、地域医療委員会の中で話題に なり動き始めたところである。こうした予算がおりる可能性はあるのか(県医師会)。

○訴訟問題等が絡むので予算確保は簡単にいか ないかと思う。今後、慎重に構える必要があ る(福祉保健部)。

○部の話し合いの中では、20 %診断が変わる のであれば実施できる方向が良いとの考えで ある。経営側のリスク管理(手術ミスでない 証明等)や保険金の支払いの問題などでメリ ットがあるのではないか。今後、九州ブロッ クの会議等での提案など検討させていただき たい(福祉保健部)。

2.社会医療法人について(県医師会)

<提案要旨>

沖縄県福祉保健部は、今後、社会医療法人を 積極的に育成して行かれるかどうか、その方針 について、ご教示願いたい。

<福祉保健部回答>

平成19 年4 月1 日をもって施行された改正医 療法において、社会医療法人制度が創設された。

この制度の創設の趣旨は、へき地医療や小児 救急医療など地域で特に必要な医療の提供を担 う医療法人を新たに社会医療法人として位置づ け、これらの医療に社会医療法人を積極的に参 加させることにより、良質かつ適切な医療を効 率的に提供する体制の確保を図るものである。

この制度の創設により、社会医療法人には、 収益事業の実施、附帯業務の拡大、税制優遇な ど、所要の措置が講じられることとなっている。

一方で、法令で定める認定要件は厳格であ り、毎年、都道府県が実施する社会医療法人の 事業、運営等に係る審査において、要件を満た さないことが認められると、社会医療法人の認 定は取消されることになる。

また、社会医療法人は、事業報告書等、監事 の監査報告書、定款等を事務所に備え置き、請 求があった場合には、原則として、これを閲覧 に供しなければならず、一層の透明性の確保が 求められている。

これらを医療法人が総合的に勘案し、社会医 療法人認定申請の可否を判断することになる が、この申請があった場合、県としては、関係 法令に基づき適切に審査・指導・助言を行なっ て行きたいと考えている。

現在のところ、特に申請はないが照会等はあ った。県としては、3 医療法人が手挙げするの ではないかと思われる。その際は、県としても 適切に対応をして、育成したいと考えている。

3.県救急医療協議会の早期開催について (県医師会)

<提案要旨>

沖縄県の二次医療圏で68 万人の最大人口を 抱える南部医療圏で現在、救急医療に携わる病 院は14 病院で、それぞれの病院が限られた医 療資源を創意工夫して救急患者への対応をして いる。しかし、関与する医師への強い過重負担 となっており、この様な医療現場への過重負担 を緩和し、改善するためには圏域内における救 急医療に携わる病院の輪番制を編成し、ネット ワーク化による連携の構築が最も効率的である と思料される。

県救急医療協議会を早急に開催し、循環器、 脳外科、小児科の3 部門における救急の輪番制 とネットワーク化の実現化に向けてご検討願い たい。

<福祉保健部回答>

本県が実施した医療機能調査の結果による と、南部医療圏の平成18 年11 月の1 ヶ月間に おける救急告示病院の小児救急外来患者数は、 12,860 人で、そのうち時間外の患者数は3,312 人(25.8 %)となっている。また、時間外での 外来患者のうち、入院した患者は1 5 2 人 (4.6 %)に過ぎず、比較的軽症な患者が時間外 の救急外来を受診している現状が見られ、小児 科医等の過重労働の一因となっている。

このため、夜間救急を適切に受診するための 保護者への啓発活動を推進するとともに、輪番 制による救急告示病院の連携強化や開業医によ る救急診療の応援体制等について取り組んでい きたいと考えている。10 月中旬に南部地区救 急医療協議会が開催され、小児救急を中心に協 議が行われる予定となっており、その報告を踏 まえて県救急医療協議会の開催を検討したい。

なお、循環器や脳外科に関しては、各保健所 が地区医師会と連携して圏域連携会議等を開催 し、4 疾病(がん、糖尿病、脳卒中、急性心筋 梗塞)に係る医療連携体制の構築に取り組んで いくこととしており、各圏域における取組状況 を踏まえたいと考えている。

<主な意見等>

○何回も会議がなされているが、県が音頭をと って本気で改革しようとする姿勢があるのか どうかと会員から意見があるので提案されて いる(県医師会)。

○救急の受入状況を見ると、那覇市立病院と南 部医療センターが2 割ずつであり、輪番をや っても各病院は苦しい。また、那覇市立病院 は、那覇市医師会が応援しているとのことで あり、地区医師会にもお願いして1 次救急が できないかと考えている。南部地区医師会の 先生から協力していいと言っていると聞いて いるが、病院事業局がどう改善していくか (福祉保健部)。

○那覇市立病院の応援医師の対応を確認したと ころ、那覇市医師会の小児科医6 名が参加し ている。通常病院が使用している電子カルテ ではなく、紙のカルテを使っていただき、そ れをスキャンすることで対応しているとのこ とである。応援していただける方向で検討し ていきたい(福祉保健部)。

○医師が増えると患者も増えるので患者を減ら すことを考えていただきたい。県立南部医療 センターが救急患者の掘り起こしになってい る。軽症者は来院しないようにというメッセ ージを院長からできないか提案したが出来な かった。どこからどう進めるか(県医師会)

○コンビニ診療、夜間受診を止めていただくこ と、軽症者は受診しないように呼びかけるこ とを、地域単位にやっていかないといけな い。夜間割増料金を設定するのは効果的だと 思われるが、それは最終的な手段である(福 祉保健部)。

○以前より小児科医は大変連携がいいと聞いて いる。小児科医自体を増やさないといけない (福祉保健部)。

○ 10 月に、病院と地域の医師との交流会を持 つことになっている(福祉保健部)。

○南部医療センターは11 人の応募があったが、 3 人だけ採用したと聞いている。もう少し広 げられないか。(県医師会)

○枠の決定が遅かったので採用できなかった (福祉保健部)。

○決定が遅かったので、今後は早めに募集枠を 決めて採用できるようにしたい(福祉保健部)。

4.沖縄県保健医療計画の4 疾病に係る各医 療機能を担う医療機関名の更新について (福祉保健部)

<提案要旨>

沖縄県保健医療計画に掲載している4 疾病の 各医療機能を担う医療機関名の更新について は、選定基準に係る基礎情報を医療法・薬事法 に基づき病院・診療所が入力した「うちなぁ医 療ネット」の医療機能情報から反映させること としている。

各病院・診療所においては、医療法に基づく 法定項目(病院56 項目、診療所49 項目)と保 健医療計画のための追加調査項目を所定の期間 内(11 月1 日〜 30 日)に入力していただく予 定としているので、地区医師会及び各病院・診 療所への周知方について協力をお願いする。

<主な意見等>

○本件について、医師会内の地域医療委員会で 説明いただけるか。また、「圏域連携会議」 とはどういう構成か(県医師会)。

○本件の説明については問題ない。また、「圏 域連携会議」の構成は、管轄の福祉保健所と 地区医師会が中心となって行う会議である (福祉保健部)。

○これからの医療は連携がメインになってくる と考えられる。その中で、糖尿病に関しては 診療所間の連携、脳卒中に関しては病院間の 連携が必要になってくると思う。また、地域 連携室を通しての連携が必要になってくると 思われる(福祉保健部)。

○圏域連携会議は具体的に動いていないので早 急に活動展開をしていただきたい(県医師会)。

5.「福祉保健部・沖縄県医師会連絡会議開 催要領」の改正について(福祉保健部)

<提案要旨>

当連絡会議はこれまで、福祉保健部、県医師 会および病院事業局も構成員として加わってい た。平成18 年4 月に地方公営企業法の全部適 用による組織改編に伴い、病院事業局が福祉保 健部から抜けるという形になり、その時点で開 催要領を整理をするべきであったが、病院事業 局からの申し入れもあり、従前どおりの構成員 とし病院事業局も開催要領に明記することとし たのでご了承いただきたい。(異議なく了承)

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

「死亡時画像病理診断(Ai,Autopsy imaging)について」は、地域医療委員会で1 回(議題)、 本会理事会で1 回(報告)に載ったのみで、充分に煮つめられていなかった(いざ実施する際の システムの問題、画像診断時の責任所在の問題、県全体で一度にするのかそれともモデル地区で 行い広めるか、県民への協力依頼等)が、費用を要する件にて、早々に提案した。Ai については、 厚労省や日医も端緒についたばかりで、福祉保健部は、今後、検討していく課題と把握している も、他方、訴訟問題等が内在する可能性を含んでいるので予算確保は簡単には行かないとのこと。

「社会医療法人に関して」は、申請する医療法人があったら、適切に対応して、育成していき たいと述べていた。

「県救急医療協議会の早期開催について」は、小児科、循環器科、脳外科の救急医療について の提案がなされた。少なくとも小児救急については、小児医療の砦でもあるこども医療センター を始めとする三次小児救急医療機関、二次小児救急医療機関、診療所の先生方の協力を多く得て、 年内に何度も関連の会議を行い、南部医療圏方式(県民への啓発、広報も含め)を構築したいも のだ。循環器科・脳外科領域は、4 疾病の保健医療計画が始まったばかりなので、もう少し時間 を要しても良いのではと個人的には思う。沖縄県における救急医療は患者救急搬送も含め充実し ており(患者は搬送された医療機関で98 %近くが収容されている)、救急医療にたずさわる方々 の日々のご苦労に、心より感謝の意を表したい。

「沖縄県保健医療計画の4 疾病に係る各医療機能を担う医療機関名の更新について」は、今後、 毎年、4 疾病の各医療機能を担う医療機関名の更新を行う際の協力依頼であった。関連の医療機 関は自己責任の下に、更新をしていただきたい。

「福祉保健部・沖縄県医師会連絡会議開催要領」の改正については、福祉保健部と病院事業局 も含め「沖縄県・沖縄県医師会連絡会議」となった。組織図上、福祉保健部と病院事業局はどの ような関係であったのか、実質的にはどのような連携がなされているのか、今一度、再認識をし ようと考えている。

この度は、各地区医師会を含め7 議題が本会理事会に提案され、その内の3 議題が連絡会議の 議題として提案された。残り4 議題については本会より回答したので報告する。