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平成20 年度女性医師の勤務環境整備に関する
病院長等との懇談会

玉城信光

副会長 玉城 信光

去る9 月10 日(水)県立浦添看護学校中会 議室に於いて標記懇談会を開催した。

懇談会では、公的・民間病院を含めた施設の 責任者や事務長、女性医師等が参加し、女性医 師の就労環境に関する各施設での取り組みにつ いて、意見交換が行われた。

参加者は院長が16 名、女性医師5 名、事務 方10 名、女性医師部会9 名の計40 名であっ た。その概要について次のとおり報告する。

冒頭、沖縄県女性医師部会依光たみ枝部会長 より次のとおり挨拶があった。

依光たみ枝部会長

「女性の社会進出の 増加に伴い、2000 年の 国家試験合格者の女性 医師の割合が初めて 30 %を超え、数年後に は50 %台に達するので はないかとも言われている。医師不足の大きな 要因の一つに出産・育児などにより、一時的に 女性医師が休職・離職せざるを得ない現状が挙 げられている。

女性医師のみならず男性医師を含めた医療従 事者がいきいきと仕事を行うには女性医師の支 援が必須だと考える。

そのことから本県でも昨年女性医師部会を立 ち上げた。先ず初めに、女性医師とりわけ離職 者の実態把握を兼ね、10 月に第1 回フォーラム を開催した。参加した方々からメールアドレス を伺い、情報交換・伝達を目的としたメーリン グリストを立ち上げ、求職情報等の提供活動等 を行ってきた。その成果はまだまだであるが、 第一歩を踏み出した状況である。

女性医師の立場から、最も要望の多いのが育 児支援や病児保育の設置である。今回、各施設 長へは育児支援を含めたアンケート調査を行い、多くの施設から回答を得た。ご協力に感謝 したい。

本日は公的・民間病院を含めた施設の責任者 にご参加頂いた。女性医師の支援等具体的な諸 問題について、活発な意見交換が行われること を期待する。

挨拶のあと、私から資料に基づき「女性医師部 会アンケート調査結果」について報告を行った。

本調査は、本年7 月29 日から8 月12 日の期 間、県内94 病院(公的病院を含む)を対象に アンケート調査を実施、44 施設から回答を得 た。回答率は46.8 %である。

アンケートの調査項目は、院内保育所の設置 状況や設置したことによる効果、また、病児保 育や夜間保育の設置状況、実施している就労支 援策等について現状を伺った。

懇談事項

「女性医師の就労環境に関する各施設の取り 組みについて」

女性医師の就労環境等支援策については、子 育てをしながらでも働ける勤務環境整備や環境 改善などについて、各施設の取り組みについて 報告があり、活発な意見交換が行われた。

主な意見は次のとおり

● 職員のニーズに応じた柔軟な働き方が取れる 体制を取っている。

● 週2 回のみ保育施設を延長し、同日に夜勤と なるようシフトを集中させている。

● 3 歳位になると特徴ある保育所へ入園させる 傾向があるため、基本的には2 歳位まで預か っている。

● 21 世紀職業財団より開設5 年間は運営補助 (700 万円)が出る。

● 院内保育所を設置したことで、現在では育児 休暇を半年で切り上げる職員もいる。

● 小児科医や看護師のバックアップ体制がある。

● 年間1 千万円の赤字が出ても保育所の設置を 検討している理由は、専門技術を持った女性 医師が来てくれることで病院にメリットがあ ると考えている。

● 病児保育に関しては、積極的に取り組んでい ない。また、計画も持っていない。病気の時 位はお母さんが側について欲しいと考えてい て、出来る限り休ませるようにしている。

● 病児保育を設置した主な目的は地域住民の子 育て支援であったが、予想以上に従業員の利 用が多い。

● 院内保育所の設置計画はあるものの利用者が いるか心配であったが、地域支援など外に開 かれた形にすれば、やる意味合いは強いと感 じた。

● 保育施設は預ける人と施設側とのマッチング に影響されやすい。

● 女医に対しては色々家庭の事情があるため、 男性医師と同じ待遇と言う訳にはいかないが フレキシブルに雇用形態を変えて採用してい く方が良い。

● 一つの科に女医医師を集め、女医同士でグル ープ形成し、ワークシェアリングのような形で、都合をつけながら進めて貰うと良い。保 育所というよりも、その様な雇用を増やし、 採用のあり方を多様化していく方が良い。

● 女性医師に限って言えば、育児休暇について も各々の考え方があるため、ヒヤリングを行 いニーズを踏まえた上で、個々で対応すべき ものだと思う。

● 先月から「女性医師を応援する医師会」にな ろうと、色々案を出し合い検討を行ってい る。例えば、担当医がオンコールされれば保 育士も一緒にオンコールする体制や看護学校 を所有していることからベビーシッターを支 援する等、どうすれば医療をもっと出来るか という発想で検討を進めている。

● 旦那が専業主婦で協力していることから、週 1 回一時保育という方法で預かっている。

● 現場復帰の際、麻酔科で研修すると良い。患 者の管理から別の科との幅広い接触を通じ、 今の医療がどうなっているのか。当事者では なく、やや離れた形で眺める意味でも非常に 良いポジションにいると思う。

● 麻酔科でのトレーニング同様、検診センター でも色々な検査データを判断する機会があ る。事後指導など良いトレーニングになる。

● 女性医師の問題を挙げるルートを作って欲し い。出来れば役職などを付けて頂ければと考 えている。

● 今現在、10 時から5 時迄、週二日救急外来で働いて貰っているが非常に助かっている。 朝8 時のミーティングに出ることが結構負担 になっている様なので、10 時からとしてい る。また、夕方5 時には必ず帰すというシス テムを取っている。

● 今年から3 年間琉大が毎年1 億円の予算を計 上して、専門の研修システムを構築する。項 目の中には、女性医師の就業支援が入ってい る。そのシステムも是非利用して欲しい。

● 一人々ニーズが違うため、ベビーシッターの 利用も良いかと思う。

● 女医に限らず勤務体制はある程度希望に応じ て適宜組み合わせている。当直する人・しない 人等で給与に差をつけ割り切って貰っている。

最後に私から、本日は各病院での色々な取り 組みが伺えて大変良かった。病院としてスタッ フの働き易い環境を構築して行くことが本当の 仕事だと思う。また、半年を経過した頃、当懇 談会を企画したい。今回あがった意見を踏ま え、自分の施設と対比させて次回に繋げて頂け ればと思う。本日は悪天候の中たくさんの方々 に集まって頂き感謝申し上げる。

また、来る10 月4 日(土)ホテルロイヤル オリオンにて18 時より「第2 回女性医師フォ ーラム」を行うので、是非ご参加いただきたい と述べ懇談会を終了した。

印象記

依光たみ枝

沖縄県医師会女性医師部会会長
依光 たみ枝

交通事故で道路が渋滞してるとの事で、開催時間になっても予定参加数の半分も集まらず、 主催者側としては果たして何人集まるかと不安であった。

ちょうど1 年前に発足した沖縄県医師会女性医師部会の年間計画とのひとつに、施設長を 含む管理者の女性医師支援の具体的取り組みを把握する必要があるとの意見が出て、第1 回 目の施設長との懇談会が実現した。

参加者は院長16 名、事務関係者10 名、女性医師5 名!、女性医師部会委員9 名の40 名で あった。残念だったのは女性医師委員以外の女性医師がたったの5 名だったことである。人 間誰しもその立場にならないと、仕事に追われ自分自身の問題として真剣に考える事は困難 である。とはわかっていても、女性医師部会としてもせっかく時間をやりくりして参加して 頂いた施設長などの方々に、すまない気持ちであった。今回の反省を生かして、2 回目は女 性医師の参加をいかにして増やす事ができるかが、大きな課題である。

アンケートの結果を中心に話しが進んだが、民間施設の方が院内保育、フレックスタイム などの女性医師支援が積極的に取り入れられている事、女性医師が圧倒的に多いはずの大学 病院、県立病院などは予算、条例、雇用形態などのしばりで具体策が見えてこない事がわか った。

今、国はいろんな方面で女性医師支援に本腰を上げた。今回は時間の都合上、「短時間正職 員制度」について話す事はできなかったが、次回の課題として取りあげたいと思う。

第2 回施設長懇談会には、多くの女性医師の参加がある事を祈って、部会長としての感想 としたい。