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沖縄県の産業医活動の現況報告
〜沖縄県産業医研修連絡協議会より産業医の活動状況調査を中心に〜

金城忠雄

理事 金城 忠雄

平成20 年8 月7 日、沖縄県産業医研修連絡 協議会が開催された。協議会において産業医活 動のアンケート調査を報告したのでその概要を 報告する。沖縄県産業医研修連絡協議会委員 の構成員は下記のとおりである。

沖縄県の産業医活動については、平成18 年 に安里哲好県医師会常任理事が「産業医は足り ているか」との報告があり参考にしていただき たい。(沖縄県医師会報Vol.42 No.6.2006)

表1
沖縄県の日本医師会認定産業医数

平成2 年産業医制度開始以来、沖縄県では平 成20 年3 月までに産業医数は527 名になるが、 5 年毎の継続更新をしない方もおり有資格者 は、現在309 名である。(年平均30 名前後の新 規申請者がある)。

日本医師会認定産業医制度研修会は、沖縄県 医師会7 回のほかに沖縄産業保健推進センター と産業医学振興財団主催の研修会が12 回計画 されている。八重山、宮古地区でも研修会があ り、2 年間には産業医資格修得の新規は50 単 位、更新に20 単位の修得が可能である。

平成19 年の産業医研修連絡協議会における沖 縄労働局の報告による、50 人以上規模の産業 医選任率は下記のとおりである。選任率は年々 向上しているが、更に努力の必要があるとの報 告があった。

事業所規模別産業医選任率(平成19 年11 月末)

産業医の報酬・選任方法

各地区医師会には「契約書」「報酬基準表」 等準備してある。

事業所との産業医契約は、条件や報酬等調整が必要と思うので個人的に結ぶのでなく、医師 会の立会いで規約に基づいて契約することをお 勧めする。(契約と報酬については、九州各県 の医師会の基準を参考にしている。)

平成20 年現在における産業医の活動状況 アンケート調査

産業医の資格修得者にアンケート調査を行 い、その結果を平成20 年度第1 回沖縄県産業 医研修連絡協議会にその概要を報告した。

1.目的:

産業医資格修得後の活動状況を把握すること により、今後の産業医活動の活性化に資するこ とと沖縄労働局との連携のもと産業医の選任率 を高めるなど模索していく必要があるとして調 査を実施した。

2.調査期間:

平成19 年11 月20 日〜 12 月6 日

3.調査対象:

平成19 年11 月20 日現在で、産業医有効期 限内の309 名を対象に調査表を配布並びに回収 した。

アンケート実施対象者数 309 名

回答者数 173 名(回答率 55.9 %)

4.回答のあった173 名のアンケートの結果:

<設問1.勤務形態>

  • A.開業医 88 名(51 %)
  • B.勤務医 85 名(49 %)

<設問2.産業医活動をしているか>

  • A.している113 名(65 %)
  • B.していない  60 名(35 %)
  • 産業医活動している方(113 名)への設問: 嘱託事業所の数

<設問3.嘱託事業所を何ヵ所持っているか>

産業医の兼任嘱託 事業場の数

1 名で平均2 〜 3 ヵ所兼任している。 最高1 人で14 ヵ所 も持っている方もあった。

<設問4.事業場は50 名以上か、それ未満か>

  • A.従業員50 名以上 96 名(84 %)
  • B.50 名未満    4 名(4 %)
  • C.50 名以上以下どちらも含む 13 名(12 %)

<設問5.産業医をして困ってことはどん なものがあるか 46 名のまとめ>

1.メンタルヘルスに関することについて

  • ・専門外なので対応に戸惑いがある。
  • ・精神疾患(うつ病)のある従業員の取り 扱い方がむつかしい。
  • ・うつ病で休職した後、主治医の意見書に 従って職場復帰したが、1 ヶ月で退職し てしまった。
    職場復帰のめどについて、主治医との連 携いかにすべきか困っている。
  • ・うつ病なのか、特殊性格なのか、サボタ ージュなのか判断困難など産業医の悩み が多々ある。

2.職場環境に関することについて 

  • ・巡視での指摘事項に対して全く改善が得 られない。
  • ・禁酒・禁煙等生活指導しても聞き入れて くれない。
  • ・健診結果、要治療でも二次健診や受診指 導しても治療を受けない人がいる。
  • ・施設長や担当者が熱心でない。
  • ・人間ドックが増え職員健診が減少したた め職員の健康指導に苦慮している。
  • ・過重労働対策に対して事業者側に良策が ない。規則が先行しており、現場では景 気も悪く人も簡単に増やせなく、面接し て産業医への負担が大きすぎる。
  • ・健康相談や面接場所が、個室でなくホー ルなのでプライバシーが保てない。
  • ・事業所に保健管理の体制がない。

3.産業医の業務等に関することについて

  • ・新しい事業場で、健康管理室を立ち上げ ているが、必要な事務手続きや書類等の 準備で分からないことが多い。相談先が 少なくて困っている。
  • ・私自身の業務が忙しくなり、産業医業務 に費やす時間が取れなくなった。
  • ・会社の業務改善、職員の心身の健康保持 増進に役立つほどの産業医業務を行えて いない気がする。長時間勤務者の面談、 健診事後指導、巡視、安全委員会への参 加等で手一杯。
  • ・産業医活動で不明な点だらけで自信のな いまま手探りでやっている状況である。
  • ・専任スタッフがいない。
  • ・勤務しているために、定期訪問(巡視) の時間が取りにくい。
  • ・相談件数が多く、時間内に終われない。
  • ・法的な規則に関する知識に乏しいので、 質問に答えるのに苦労する。

4.契約条件等に関することについて

  • ・産業医報酬が人数割りである事を理由に 急に会社を分割し、事実上の報酬カット が行われている。
  • ・新契約のひやかしの多さにはあきれる。
    こちらが都合をつけたところで、年度変 わりに急にキャンセルが何ヵ所もあった。
  • ・報酬の規定、活動内容などの情報が欲 しい。
  • ・地方自治体で1 年ごとの更新に毎年履歴 書を求められるのは困っている。
  • ・多数の事業場の産業医を抱えているの で負担である。
  • ・職場訪問しても相談事がない、衛生委員 会の労使交渉の場になりかねない。

<設問6.情報や強化したいこと等の要望 事項>

  • ・メンタルヘルスやうつ病の具体的な対処 法などレクチャーをして欲しい。
  • ・精神面の場合、かかりつけ医と産業医 との連携を密にしたい。
  • ・産業医の交流や情報交換、親睦会がほ しい。
  • ・仕事内容に沿った具体的なマニュアルが 欲しい。
  • ・学校医と産業医併任で委嘱され、教職員 の健康管理のノウハウが欲しい。
  • ・保健室を整備し、保健師を常駐させたい。
  • ・嘱託産業医の健診後と事業所全体との主 治医的関係の方向性が望ましい。
  • ・事業所と産業医の契約や報酬設定の方法

契約条件等に関する情報・強化について

  • ・現在の県医師会の報酬契約は全国的に見 て妥当なものでしょうか。
  • ・産業医活動たとえば一事業所にかける時 間等の状態も知りたい。
  • ・沖縄産業保健推進センターからの資料の 送料が遠方なので自己負担が高価になる。
  • ・産業医同士の交流や症例検討会など懇親 会を持って欲しい。
  • ・教育面でのまとまったスタンダード教育 スライドが欲しい。
  • ・沖縄産業保健推進センター、労働基準 監督署などの資料の入手方法を具体的 に知りたい。
  • ・産業医についての月刊誌等情報誌があれ ば教えて欲しい。
  • ・産業医研修会講師には、具体的な症例報 告をして欲しい。
  • ・産業医の求人をどこに相談できるか医師 会内の部署が知りたい。

<設問7.先輩産業医から新人産業医へのア ドバイス>

  • ・病院勤務しながら産業医活動は予想以上 に大変ですが、諸々の健康問題を抱えた 事業所と悩みの多い労働者の疾病等予防 医療の視点からやりがいのある職種です。
  • ・事業所と従業員の立場を十分配慮して常に中立的に判断するよう心かけている。
  • ・定型的な作業管理は少なく、生活習慣病 とメンタルヘルスがほとんどです。
  • ・産業医研修会にできるだけ出席すること を勧めます。
  • ・多くの労働者と面談していると色々と問 題点が見えてくる。
  • ・月1 回1 時間程度の職場巡視はけっこう 楽しいものです。
  • ・禁煙対策では、女性職員を味方につけ ること。
  • ・産業医は、労働者が仕事を通して自己実 現することを支援することが役割です。 事業主に対しては適正な労働管理を、労 働者に対しては正しい医学知識を提供す る両側面のバランスが大切です。
  • ・治療医学だけでなく、予防医学や公衆 衛生のスキルを身につけておいたほうが 良い。
  • ・何事も一朝一夕には改善できない。粘り 強く、少しずつ取り組むことです。

<設問8.産業医活動していない60 名へ>

  • A.産業医活動希望する・・・25 名
  • B.希望しない・・・・・・・35 名

産業医希望するが活動していない方の意見。

  • ・現在は時間がないのでできないが、余裕 がでたら産業医活動をしたい。
  • ・事業所は、メンタル不調者が多すぎて対 処困難でやめた。
  • ・産業医活動をする窓口が分からない。 ホームページ等で募集情報を公表して欲 しい。
  • ・精神科医です。なにか仕事があれば相談 にのりたい。
  • ・現在育児休業中で出来ない。将来は産業 医活動をしたい。
  • ・学校産業医をしていたが、学校側が産業 医としての重要性を認識していない。
  • ・公務員医師なので兼業禁止のため、労働 安全衛生へ役立ちたいが出来ない。
  • ・地区医師会に希望を申し出たが、まだ返 答がない。

産業医活動希望しない方の意見

  • ・多忙で産業医をする余裕がない。(ほと んどこの意見である)
  • ・産業医活動の認識が足りない。
  • ・年をとりすぎた。体調不良でやめた。
    (産業医活動の希望の有無の方へ質問で は重複した回答が多かった)。

以上、アンケート実施対象者309 名中回答者 173 名(55.9 %)のアンケート調査を要約して 報告した。

産業医の職務は、安衛法に規定されていると おり、労働者の健康を保持、事業場の職場環境 管理等の役割がある。今回のアンケート調査を 通して思うことは、各々の医師は真剣に産業医 活動をしていることが理解できた。また、産業 医活動に真剣であればあるほどその対応に悩み も持ち、お互いの問題点の相談できる交流の場 を必要としている。

産業医の業務、報酬や契約条件など困ったこ とがあれば、地区医師会や地域産業保健センタ ーに連絡すれば適切なアドバイスが受けられる と思う。

沖縄産業保健推進センターでは、情報誌「さ んぽおきなわ」を発行し産業保健に携わる方に 送付されている。参考図書やビデオ等が備えら れ貸し出しもしているので活用して欲しい。

さらに、メンタルヘルスに関しては沖縄県医 師会産業医研修会の講義をされている山本和儀 講師は、沖縄産業メンタルヘルス研究会代表世 話人をしておられる。

幸い、琉球大学にこの4 月に赴任された衛生 学・公衆衛生学の青木一雄教授は、産業保健の 専門家であり、平成21 年6 月頃日本産業衛生 学会九州地方部会を開催予定しているとのこと である。

追加報告として沖縄産業保健推進センターの 松野豊副所長から「小規模事業場産業保健活動 支援促進助成金」について下記の伝達があった。

平成20 年4 月から、小規模事業場産業保健 活動支援促進助成金制度(産業医共同選任事 業)が改正され、単独の事業場でも申請が可能 になった。助成額は労働者数にかかわらず、活 動1 回あたり定額21,500 円で、1 回あたりの活 動時間は2 時間30 分ぐらい。事業場には申請の 方法など指導中なので是非活用していただきた いとのことであった。産業保健推進センターが 産業医の共同選任をお手伝いする制度である。

沖縄県の産業医選任率が78.4 %程度なので この機会に、事業所と産業保健推進センターや 各地区医師会との連絡を密にして産業医選任率 を高めて欲しいものである。



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