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10 月10 日「目の愛護デー」に寄せて

安里良盛

安里眼科 安里 良盛

今年も『守ろう、瞳の健康』を標語として

1、視覚障害の予防、及び視力の保持
2、感染性眼疾患の予防、早期治療
3、生活習慣病による眼疾患の早期発見、早期治療

4)、角膜移植に関する正しい知識の普及

この4 つを重点項目に運動が始まりました。 「もし、あなたが今日突然に盲目になった時に、 どう感じるか想像してみてください。あなた自 身が、真昼間に、真夜中のように手探りをし、 そしてつまづいているところを思い浮かべてく ださい。あなたの仕事、あなたの収入がなくな ってしまうことを思い浮かべてみてください。」 1925 年に、国際ライオンズクラブでスピーチ したヘレンケラー女史の言葉です。

人間は見るという行為で情報を得ている生き 物です。単に目が見えないだけでなく精神的に 萎えていくということを言っているのです。見 えなくなることへの不安は計り知れないものが あります。

「0.01、指数弁、手動弁、光覚弁(+)、光覚 弁(−)

この5 段階の視力は、健常者には大きな差と は思われないかもしれないが、生活の質では障 害者にとって大きな差があることを肝に銘じて 診療にあたれ!」

これは、私の恩師の言葉です。最後まであき らめずに光覚弁(−)の状態に至らないように 努力せよと受け止めています。

白内障や近視、乱視等の、手術で視力が劇的 に改善する疾患に比べ、現在も放置すると失明 に至る緑内障や糖尿病性網膜症。この2 つで中 途失明の1 位、2 位を占め、両疾患によって年 間6,000 人余の失明者がおり、失明予防の為、 早期発見、早期治療、が叫ばれる由縁です。

上記の予防可能の疾患に対し円錐角膜、角 膜ジストロフィー、水泡性角膜症等、角膜移植 ができれば失明予防が出来る疾患があります。 県内にも40 〜 50 人の移植待機患者がおり、早 期の手術を希望しているにもかかわらずドナー の絶対的不足により、手術が受けられずにおり ます。

角膜は心停止後に提供していただくもので、 角膜は提供者の意思表示だけでなく、御家族の 承諾が必要です。逆に本人の意思を確認してい なくても、ご家族が承諾すれば提供する事が出 来ます。死亡してから12 時間以内に摘出する 事が良いとされています。待機者が多いという ことは角膜提供者である、いわゆるドナーが不 足しているからです。ドナーカードがあり、そ れに記入して交通事故などに遇って、脳死状態 になった時には角膜を提供してもいいと了承し ている人はいます。しかし問題はそこから先。 日本では、沖縄は特にそうですが、一応本人は 納得していても、家族の意思も重要視され、こ の時点でほとんどの家族が反対します。遺体を 傷つけ、目がなくなるとグソーに行っても見え なくなると信じており、それを思うとつらすぎ る・・・と。しかしそれは啓発活動とか角膜移 植を現実に推進するコーディネーターが足りな い事が大きな因子と思われます。また角膜移植 に協力していただいている病院で、システムが 確立されている所ではスムーズに行くようにな りつつあります。(たとえば浦添総合病院、豊 見城中央病院)。現実に去年は沖縄でも7 人の 献眼者がおり例年の2 倍も光を取り戻した患者 さんが増加しております。移植コーディネータ ーを介したシステムで、病院側のスタッフのド ナーの家族や、患者側の家族へのわかりやすい 説明等でうまくいっています。

角膜移植は、適切な時期に視力回復をはかる には、できるだけ待ち時間を短縮する必要があります。今後の角膜移植の増加にはコーディネ ーターの存在が欠かせません。県内には移植コ ーディネーター(宮島隆浩氏)が1 人のみで、 角膜移植のコーディネーターを兼ねていただい ております。登録者の数のわりに献眼者が少な い現状を見ると、登録、献眼、摘出、移植につ なげるコーディネーターやサポーターの活動が 今後益々重要になってくると思われます。

県内では献眼発生時の摘出体制は、琉大、比 嘉眼科病院のDr に御協力をいただいており、 又、移植は比嘉眼科病院、ハートライフ病院の 2 施設で行われます。この2 施設で今尚移植を 待っておられる患者数は多く、長期間待たなく てはならないのが現状です。

冒頭のヘレンケラーの言葉のように、視力障 害によって暗黒の世界の中で想像もつかない不 自由と戦って賢明に生きようとしている同胞が いる事を忘れてはならないと思います。視力を 失った人達の不幸を一人でも多く救う為に、医 療人として手を差し伸べる事は我々の使命であ ります。

紙面をおかりして県アイバンク協会、ライオ ンズクラブの方々のこれまでの角膜移植への御尽力、ご奉仕に対し深く感謝申し上げます。そ して、関係各機関、各病医院、各科医師、コメ ディカルスタッフの方々の角膜移植への更なる 御理解と御支援を宜しくお願い致します。