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骨と関節の日2008
骨粗鬆症〜運動器不安定症の要因として〜

安里英樹

沖縄県整形外科医会 安里 英樹
(与那原中央病院)

「運動器の10年・骨と関節の日」

運動器とは骨や筋、神経などの総称です。日 本整形外科学会は単なる寿命ではなく、健康で 過ごせる健康寿命を重視し「運動器を健康に保 つ」ことの重要性を啓蒙するために平成6 年2 月に10 月8 日を「骨と関節(ホネとカンセツ) の日」と定めました。「運動器を健康に保つ」 ことは循環系や代謝系の健康を保つために重要 な役割を果たすため、世界保健機構(WHO) は2000 年からの10 年を『運動器の10 年』世 界運動を提唱し、日本整形外科学会も「運動器 の10 年・骨と関節の日」と改めました。

「平均寿命と健康寿命」

日本の平均寿命は2006 年の調査では、女性 は85.81 歳と22 年連続世界一であり、男性の平 均寿命も79.00 歳と世界第2 位です。WHO は 「日常生活に介護を必要としない、心身ともに自 立的な状態で生存できる期間」、つまり病気やケ ガなどで介護状態となった期間を平均寿命から 差し引いた寿命である健康寿命を提唱しました。 わが国は最晩年に寝たきりになる期間が国民平 均6 年以上に及んでいるのが現状です。その原 因として運動器障害が要介護では20 %(要介護 になる原因の10.9 %が骨折や転倒、8.9 %が関 節症)、要支援では28 %を占めています。よっ て運動器障害の予防が健康寿命の延伸に大きな 役割を占めます。運動器障害はQOL を低下さ せるのみならず、生命予後にも大きな影響を及 ぼし、極めて大きな負担を社会に与えます。さ らに、2007 年では65 歳以上の高齢者は全人口 の21.1 %に達し、来る2025 年度(平成37 年度)には30 %近くになると推計されており高齢 者に対してのADL の維持と健康寿命の延伸が 重要な課題になっています(図1)。

図1

「健康日本21」

厚生労働省は高齢化社会の到来に対応し、要 介護者を減らそうと、日常生活を自立して元気 に過ごせる期間、すなわち健康寿命をのばし、平 均寿命との乖離を縮めることを目的に国民健康 づくり運動「健康日本21」を提唱して寝たきり 予防を進めています。健康寿命を左右する3 つの 「年齢」として1.血管年齢、2.骨年齢、3.腸年齢 を掲げています。骨年齢については、寝たきりの 二大原因が脳卒中と骨折であることを指摘し、 寝たきりを防ぐには、血管年齢とともに骨年齢 も若く保つことが重要であるとしています。

ロコモティブシンドローム

「骨粗鬆症」は、骨量の減少と骨質の劣化よ り骨強度が悪化して骨折のリスクが増加しやすい ことが特徴的であり、「運動器不安定症」は、高齢化により、バランス能力及び移動歩行能力の低 下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状 態と定義されています(表1)。「ロコモティブシ ンドローム(locomotive syndrome)」は、運動 器の障害により介護リスクが高まった状態をいい ます。骨折しやすい骨粗鬆症、転倒し やすい状態の運動器不安定症などもロ コモティブシンドロームに含まれ健康 寿命に悪影響を及ぼします。超高齢化 社会となりつつある現在、骨粗鬆症、 運動器不安定症を含むロコモティブシ ンドロームを予防し健康寿命をのばす ことは重要な課題です。よって「運動 器不安定症」の要因となる「骨粗鬆 症」に対しての知識を啓蒙することは 非常に大切なことであると考えます。

表1

「骨粗鬆症〜運動器不安定症の要因と して〜」

今回のテーマは日本整形外科学会 により「骨粗鬆症〜運動器不安定症 の要因として〜」と決定されました。 沖縄県整形外科医会では今回のテー マについて諸先生に専門的な立場か ら、10 月5 日(日)の沖縄タイムス 社および琉球新報社の新聞紙上にお いて座談会で討論していただき、同日 午後2 時より那覇市の沖縄県男女共同 参画センター「てぃるる」において市民公開講座を予定しています。また、講演後に は医療相談や骨密度測定を無料で行うことも企 画しています。医療関係者各位の皆様には、「運 動器の10 年・骨と関節の日」の啓蒙活動に対 してご協力をお願い申し上げます。