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九州ブロック学校保健・学校医大会関連行事

V.第52回九州ブロック学校保健・学校医大会
並びに平成20年度九州学校検診協議会

1)平成20 年度九州学校検診協議会

心臓・腎臓・小児生活習慣病の3 部門よりそ れぞれ講演があった。

1)心臓部門「先天性心疾患の治療成績と学校心臓検診」

熊本県医師会心臓検診専門委員会委員・熊本市立熊本市民病院小児循環器科部長
 中村紳二

2)腎臓部門「学校検尿異常の病理組織像と小児IgA 腎症」

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態病理学教授
 田口 尚

3)小児生活習慣病部門「小児における生活習慣病とその予防」

熊本県医師会学校検診委員会委員・熊本大学医学部付属病院小児科助教
 中村公俊

2)第52 回九州ブロック学校保健・学校医大 会分科会

1)眼科部門テーマ「子どものコンタクトレ ンズ」

講演1.「学校におけるコンタクトレンズ実態 調査結果とその問題点」

日本眼科医会常任理事 宇津見義一

講演2.「子どものコンタクトレンズ適応と実際例」

日本眼科医会常任理事 植田喜一

2)耳鼻咽喉科部門

講演1.「新生児聴覚スクリーニングと人工内 耳が難聴児の療育および学校教育に 与えた影響」

熊本大学医学部附属病院耳鼻咽喉科
 頭頸部外科講師 鮫島靖浩

講演2.「小・中学校における聴覚障害児の教 育支援について」

熊本市立健軍小学校難聴通級指導教室教諭
 岩嵜玲子

3)九州医師会連合会学校医会評議員会

1)報告

 平成19 年度九州医師会連合会学校医会 事業・歳入歳出決算、平成20 年度九州医 師会連合会学校医会事業経過について各々 報告があり、特に異議なく承認された。

2)議事

 平成20 年度九州医師会連合会学校医会 事業計画、平成20 年度九州医師会連合会 学校医会負担金並びに歳入歳出予算につい て、第53 回・第54 回九州ブロック学校保 健・学校医大会開催担当県について各々説 明があり、特に異議なく承認された。

 また、第53 回(平成21 年度)は佐賀県 と決定し、第54 回(平成22 年度)は鹿児 島県と内定した。

4)九州医師会連合会学校医会総会

開催県医師会長の北野邦俊熊本県医師会長 より、「ご多忙のなか、九州各県より多くの学 校医の先生方が参加されたことに感謝するとと もに、今後も学校保健の諸問題の解決に向けて 取り組んでいただきたい」との開会の挨拶があ った。

また、西島英利参議院議員・熊本県知事・熊 本市長より来賓挨拶があった。最後に、次回開 催県医師会の佐賀県医師会沖田信光会長より、 「次回第53 回大会は、平成21 年8 月9 日(日) にホテルニューオータニ佐賀にて行うので、多 くの方の参加をお待ちしていますとの歓迎の挨 拶があった。

5)講演

1)講演1.「最近の心の問題―児童精神科現場 での気づき」

(財)熊本県学校保健会 学校・地域保健連
 携推進事業連絡協議会副委員長 弟子丸元紀

2)講演2.「学校の緊急支援活動から学んだこと」

長崎純心大学人文学部人間心理学科 教授
 児島達美

○コメント:日本医師会副会長  岩砂和雄

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成20 年8 月9 日、10 日の両日、熊本県で「第52 回九州ブロック学校保健・学校医大会及び 平成20 年度九州学校検診協議会」が行われた。

「健やかな子どもたちの成長を願って」というサブタイトルで熱心な討議が行われた。

初日の学校保健担当理事者会において、沖縄県が提案してあった「学校医の確保に難渋してい るが、九州各県の状況についてご教授いただきたい」という事項に対して、佐賀県と鹿児島県も 同様であり、鹿児島では郡部で苦慮している旨の回答があった。福岡県は一部地域で苦慮。大分 県は問題となる事例はないと報告があった。

具体的な対策案は示されなかったが、討論の中で、鹿児島県の池田副会長(元琉大小児科助教 授)から、以下のような貴重なご意見をいただいた。

「聴診器一本で診察する意識だと、そうした問題がおきても不思議ではないし、現在の医療環 境下では、学校検診を否定的に考える人もでてくるであろう。学校医は検診だけではなく、感染 症流行時の相談や学校内の事件事故発生時の対応など、子ども達の学校生活全般に関わる必要が ある。そこの意識を高めないと問題は解決しないだろう。若い医師ほど学校医を辞退する傾向に あるが、今後の研修医のカリキュラムにも学校医を組み込んでいく必要があるのではないか。ま た、報酬の適正化を求めることは当然であるが、学校医や産業医こそ医師のボランティア精神が問われる分野だという自覚をもってあたるべきである。小児科医が学校医を断るなど言語道断で ある。」

沖縄県の現状を踏まえ委員会の総意として提案したが、各県理事の熱い思いを聞く度に、叱ら れているような恥ずかしさで冷や汗をかいた。

翌日は、午前中に教育講演3 題と分科会2 題の講演があった。教育講演3 題(心臓部門、腎臓 部門、生活習慣病部門)を拝聴したが、今回は腎臓部門で興味深い報告があった。長崎大学大学 院病理学の田口尚教授は学校尿検診から最終的に腎生検された症例をまとめて報告されていた。 小児の腎生検症例の58 %は学校検診で見つかっていること、一症例として膜性肥厚性腎炎の治療 前後の病理像を示されたが、形態的にも改善をみており、症候性となる前に診断治療につながっ ており、学校検診が非常に意義深いことを痛感した。

午後は、心理関係の講演が2 題発表された。長崎純心大学の児島達美教授は、「学校の緊急支援 活動から学んだこと」として、事件事故のおきた学校現場での心理士の取り組みを報告された。

スクールカウンセラーの経験を持った心理士たちが中心となり、CRT(こころの緊急支援チー ム)を立ち上げ、事件事故のおきた学校に対して、1)72 時間以内に学校内で実施するプログラム で、2)CRT は教育行政および学校関係者が主体的に児童・生徒のこころのケアができるように具 体的なノウハウを提供し、3)児童・生徒のこころのストレス度をスクリーニングするとともに、そ の程度が著しいと判断される児童・生徒には危機介入的面接をする、というものである。現在、 全国で5 県ほどが組織的に実施されている。

学校医はどう関わるべきかという質問に対して、残念ながら関わっていない現状が示されたが、 その役割は大きいと逆提案された。

時代背景を考えると、学校医の役割は今後さらに重要になると痛感した大会であった。