沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 10月号

九州ブロック学校保健・学校医大会関連行事

U.九州各県医師会学校保健担当理事者会
(日本医師会学校保健担当理事との懇談会)

各県医師会より事前に提出された協議題は、 1)学校における産業保健活動マニュアル等の検 討について2)麻しんの予防接種率向上について 3)学校医の確保について4)日本脳炎予防接種に ついての4 題であった。また、日本医師会岩砂 副会長には、各協議題に対するコメントと、 「中央情勢報告」があった。

以下、協議等の概要。

1)学校における産業保健活動マニュアル等 の検討について(鹿児島県)

<提案要旨>

日本医師会産業保健委員会答申(平成20 年 3 月)の「学校における産業医の活用」の項目 において、「学校においては、労働安全衛生規 則第13 条第2 項の規定により産業医の届出が 免除されている。このことから、学校という特 徴ある職場環境において就業する労働者の健康 管理を担当しているにもかかわらず、産業医と しての知識や技能を有さない場合があることが 懸念される。特に、産業医活動は社会制度やニーズの変化とともに高度化しているが、学校医 はそれらを学習する機会がないことがあり、教 職員の職場における労働衛生やメンタルヘルス 対策の進め方について理解させることが必要で ある。」と記されている。

日本医師会で学校における産業保健活動マニ ュアル等の検討をしていただけないか、日本医 師会の見解をお伺いしたい。

<日本医師会コメント>

日医では、日本医師会認定制度を設けてお り、既に2 万人が認定を受けて産業医として活 躍している。学校における産業保健活動も重要 であり、学校医の先生方にも是非この制度を利 用していただくようお願いしたい。

日医のコメントに対して、鹿児島県より、 「学校は、一般企業とは違う対応が必要になっ てくるので、是非ご検討いただきたい。」旨再 度依頼があり、岩砂副会長から「持ち帰って検討する。」との回答があった。

2)麻しんの予防接種率向上について(福岡県)

< 提案理由>

麻しん撲滅のために95 %以上の予防接種率 の確保が目標とされているが、国立感染症セン ターより公表された平成19 年度の麻しん2 期 の接種率では、全国平均で87.9 %であった。 なかでも九州各県は熊本県の89.4 %(20 位) を最高として軒並み下位に位置している。

接種率の向上は最優先の課題であり、麻しん の流行により行政や保護者の意識も高まってい る今こそ絶好の機会であると考えるが、そのた めの医師会・学校医・かかりつけ医の関与につ いて具体的な方策を協議したい。

<各県回答>

●沖縄県からは、『はしか“0”プロジェクト』 を立ち上げ、沖縄県小児科医会や県健康増進 課、県医師会を巻き込んで、麻疹サーベイラン スの構築・麻疹ワクチン接種の広域化・はしか “0”プロジェクト週間の設定・一斉予防接種・ 自治体の1 歳麻疹ワクチン接種率をマップ化等 の様々な活動により、麻疹流行前は60 %であ った接種率が年々向上し、2007 年度の第2 期麻 疹ワクチン接種率は平均で87 %(前年度より も11.1 %の上昇)となっていることを説明し た。

●大分県・長崎県・宮崎県・熊本県は、県医師 会・県・市・学校関係者・感染症専門医等に より「県麻しん対策会議」又は「麻しん・風し ん対策会議」を設置して対策を協議を行ってい る。また、各県とも就学時検診での予防接種歴 確認、夏休み中に接種して接種報告書を提出す るようになど、接種勧奨・指導に取り組んでい る。また、鹿児島県からは未接種者把握システ ムの確立を働きかけ、就学時健診、幼稚園・保 育所等への入園・入所の際にも行政主導でチェ ック・啓発できる仕組みが必要。8 月4 日をは しかの日として、これを含む一週間を予防接種 週間としてはどうかとの提案があった。

3)沖縄県では、学校医の確保に難渋してい るが、九州各県の状況について、ご教示 いただきたい。(沖縄県)

< 提案要旨>

沖縄県では、沖縄県教育委員会および市町村 教育委員会の依頼を受けて、各郡市区医師会 で、管内の小学校・中学校・高等学校・養護学 校の学校医を配置している。しかし、学校医へ の就任を辞退したいと申し出る会員も増えてお り、各郡市区とも学校医の確保に難渋している 状況にある。また、都市部の会員からは、身近 に医療機関があり受診機会に恵まれている地域 では、学校医健診(内科健診)を行う価値があ るのか疑問であるとの意見も出ている。

九州各県の学校医の確保の状況についてご教 示いただきたい。

<各県回答>

沖縄県からの提案に対して、佐賀県・鹿児島 県・長崎県・熊本県・福岡県(一部地域)か ら、確保に苦慮しているとの回答であった。

大分県は、特段問題となっている事例もない が、年度途中で医療機関の廃止等で辞退が出た ときの後任の選出に苦慮しており、今後は、高 齢会員・病気の医師の後任については、都市部 以外の医師会では不安要素が多いとの回答であ った。

内科健診の必要性については、福岡県から は、子どもたちの心身の状態について、かかり つけ医とのダブルチェックによる健康管理が出 来、また、養護教諭との数少ないコンタクトの 機会でもあり、学校と児童との交流も生まれる ため、今後も継続して実施する必要があるとの 回答であった。熊本県も必要不可欠なので継続 して実施すべきとの回答であった。宮崎県から は、学校医のあり方と内科健診のあり方につい て今後検討していかなければならないとの回答 であった。

4)日本脳炎予防接種について(大分県)

<提案要旨>

平成20 年7 月25 日に開催された厚生労働省 の「予防接種に関する検討会」において、「夏 季の暑さと長さで感染リスクが高まり、接種必 要」との専門家の意見が出され、「特にウィル スを媒介するブタの抗体保有率が高い西日本地 域においては、ワクチンを1 回も受けていない 小児の基礎免疫の観点から、接種を受けた方が よい」との結論に達したと報道されている。

今後この報道により、接種希望者が増えるこ とが予想され、ひいては、ワクチン不足が懸念 される。また、検討会では、ワクチンが不足し た場合も考慮し、接種の優先順位や接種をうけ られないまま予防接種期間が過ぎた子どもへの 対応など、今後検討を進めるとされているが、 いずれにしても安定供給が第一である。

日本医師会は、ワクチンが不足しないよう厚 生労働省に対し、安定供給の対応を強く要請し て頂きたい。

<日本医師会コメント>

安定供給・新ワクチンの開発・製造について は、日本医師会から再三厚労省に申し入れをし ているが、新ワクチンに副作用があるとのこと で遅れている。

ご要望については、引き続き厚労省に申し入 れる。

◇中央情勢について

日本医師会岩砂和雄副会長より、中央情勢報 告があった。

学校保健に関する中央情勢について、学校保健 法の改正・子どもの健康を守る地域専門連携事 業・アレルギー疾患への対応の3 つの柱がある。

メンタルヘルス・アレルギー疾患児童の増加、 児童生徒が被害者となる事件・事故等災害の増 加、学校における食育の観点から学校給食、子 どもの心身の健康の保持増進が喫緊の課題とな っている。このような状況から、文部科学省で は、子どもの心身の健康を守り安全を確保する ための方策を検討していた。今回の学校保健 法・学校給食法の改正を行うことになった。

1)学校保健法から学校保健安全法に改められる。

学校安全に関する学校の設置者の責務・学 校安全計画の策定・学校環境の安全の確保・ 地域の関係機関(医療機関)との連携を図る ことなどが明記されている。学校保健・学校 安全に関して財政上の措置を行う。

2)子どもの健康を守る地域専門家相互連携事業

今年度より、内科等だけでなく、精神科・ 産婦人科・整形外科等を学校に派遣して、専 門医による相談事業をおこなうことになって いる。都道府県教育委員会が実施する。地域 の医師会の役割が大きいので、都道府県医師 会ならびに地域医師会の学校保健担当理事が 地域の実情を踏まえ、課題を洗い出し教育委 員会と調整して進めていくことが重要となっ てくる。

3)学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイ ドライン

学校やクラスにアレルギー疾患の子どもた ちが増えている。平成19 年に文部科学省は、 「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」 発表した。中央教育審議会答申「子どもの健 康を守り、安全・安心を確保するために学校 全体としての取り組みを進めるための方策に ついて」においても、アレルギー疾患の子ど もへの対応が重要であるとのことが出され た。さらに、日本学校保健会より「学校のア レルギー疾患に対する取り組みガイドライ ン」が出されている。

岩砂日医副会長の中央情勢報告に対して、鹿 児島県より、「学校のアレルギー疾患に対する 取り組みガイドラインが10 冊だけ送ってきた が、全学校医に配布が必要であると考えてい る。学校医全員に配布できないか、日本医師会 でご検討いただきたい」と要望があり、岩砂日 医副会長から「要望として承る」との回答があ った。