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那覇市立病院の地方独立行政法人化について

與儀實津夫

地方行政独立法人那覇市立病院理事長兼病院長
與儀 實津夫

今年平成20 年4 月1 日、那覇市立病院は開 設28 年を経て地方独立行政法人へ移行をしま した。今回、當銘正彦広報担当理事よりその経 緯と今後の展望について書くようにとの依頼が ありましたのでいささかの所見を述べたいと思 います。

まず改革を考えたきっかけは、平成18 年4 月の診療報酬改定時に出された7 対1 看護基本 料創設の衝撃でした。近年医療費の抑制を目的 として次々に打ち出される診療報酬改訂に対し て、これまでも病院経営の中で危機感を抱いて いました。

市立病院は14 年前、累積した大幅な赤字の ために病院の存亡を問われた時期がありまし た。その後職員の意識改革と経営改善の努力を 重ねた結果、ここ十年来黒字経営を堅持出来る ようになりました。今では、年間約5 万人余の 救急患者受け入れ、小児科専門医常駐による 24 時間・365 日救急対応などにも取り組むと 共に、がん診療拠点病院の指定を受け市民から 信頼される病院になったと自負しております。

しかし、厚労省は平成18 年4 月、3.16 %の 診療報酬削減、次いで7 対1 入院基本料の創設 を発表しました。その結果当院の平成18 年度 収支は、約5,000 万円の赤字に陥りました。厚 労省の指針通り看護師の配置を10 対1 から7 対1 にすれば診療報酬の加算が得られ赤字解消 の一助になると考えられましたが、定数条例に 縛られる本院はそれがかないません。さらに総 務省は国と地方公務員の定数を削減するという 方針を出し、那覇市も4.6 %の削減目標を掲げ 病院も聖域ではないといわれました。このまま では7 対1 どころか、10 対1 看護体制も維持出 来なくなるという副院長兼看護部長の悲痛な訴 えに対して、直ぐなる打開策が見つかりませ ん。病床閉鎖を余儀なくされたと、県立病院の 苦しい状況もマスコミから聞こえてきました。 総務省と厚労省の相矛盾する政策のはざまで身 動きが取れない状況になり、病院幹部は病院崩 壊への強い危機感を抱くにいたりました。一 方、ここ数年優秀な医師が毎年一人二人と民間 病院へ高額の給与条件で引き抜かれており、そ れに対して自治体病院故に医師の評価、対応の 手段がなく苦慮を続けているのも現状でした。

毎週開かれる管理会議のなかで解決策への模 索が続きましたが、平成15 年に地方公営企業 法の全部適用病院になった事も何の解決策を示 さず、最善と思われる打開策は「非公務員型の 地方独立行政法人化」しかないという結論にい たりました。

院内幹部の意志は固まりましたが、何といっ ても市立病院の開設者である市長の了解を得る ことが先ず第一歩です。院長、3 名の副院長、 事務局長、次長等9 名の管理会議のメンバー全 員で市長・三役への説明機会の調整をお願いし ました。11 月に入ってそれが叶い、3 回にわた って「市立病院の地方独立行政法人化」の必然 性、制度、将来性等について説明の場をもうけ て戴きました。終始丁寧に耳を傾けられていた 翁長市長は最後に、「分かりました。やりまし ょう」と最終判断を下されました。しかし続け て「これは大変な事業です。ここに出席した病 院の皆さんは、全員最後まで逃げずにやり遂げ ることができますか」と不退転の決意を求めら れました。もちろん、今更後へ引けません。一 同感謝して辞し、それこそ不退転の「那覇市立病院独法化」への準備にかかりました。

市議会議長・副議長、与党議員の説得活動を 開始し紆余曲折はありましたが、おおよその了 解を取り付けて平成19 年1 月17 日、市長と共 に「那覇市立病院の地方独立行政法人化」の方 針表明の場に臨むことが出来ました。それから は、病院職員への説明会、定款・必要な条例改 正に対する市議会での数々の質疑応答、組合団 交をこなす嵐のような1 年が続きました。

そして平成20 年4 月1 日、ついに「地方独 立行政法人那覇市立病院」の設立登記をすませ 新たなる那覇市立病院のスタートの日を迎える ことが出来ました。

それから約3 ヶ月が経過した今、その善し悪 しを語るにはまだ早いかと思われますが、現実 は厳しく7 対1 看護体制の看護師確保にまだ一 歩というところです。しかし時間を要するでし ょうが、光が見えているのを実感しています。 又独法化後も当院での後期研修継続を表明する 研修医も数名おり、欠員の生じた診療科医師の 全国的募集に応えた数名の優秀な専門医が加わ ることも決まりました。

新体制での私の責任はずしりと重くなること は覚悟していましたが、以前の強い閉塞状況か らの解放感があり、希望への道が広がったとの 思いもあります。これからも那覇市立病院が、 市民から信頼され選ばれる病院として存続して 行けるように努力を続けるつもりです。諸兄の ご鞭撻とご指導を切に期待いたします。



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