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開業後に私が勉強したこと

宮里昌

みやざと内科クリニック 宮里 昌

まず、本題に入る前に私の略歴を簡単に述べ させていただきます。

私は、H4 年に琉球大学を卒業後、県立中部 病院での研修を皮切りに、主に県立病院を転々 とし、最後に、南部医療センター・こども医療 センターにて公務員医師を終了し、H19 年4 月 に、私の生まれ育った浦添市宮城に「みやざと 内科クリニック」を開設いたしました。

県立病院勤務時より、腎・リウマチ科に属 し、したがって、腎臓病・人工透析、関節リウ マチ・膠原病(最近では、結合組織病のほうが better な言い方と言われていますが・・・)を 専門としております。

で、開業1 年余り経ちましたが、このような 経歴の私が、開業後、必要に迫られて勉強した ことを書いてみたいと思います。

開業をしている(特に内科系の)先生方に は、あたりまえな内容かもしれませんが、開業 を考えておられる勤務医の先生方にとっては、 今から少しでも勉強しておいたほうがいいと思 われる内容ですので参考になれば幸いです。

1)かぜの診断精度・治療能力を上げる

 勤務医時代は、外来にかぜの患者が来て も、PL 顆粒などを処方して「はい、終わ り」だったのですが、それではいけないと 考えました。

 なんてったって、初診の患者の中では、 一番数が多いですし、(これは、皆さん納得 していただけると思いますが・・・)理不 尽なことに、これで、医師の評判が左右さ れるのですから、より真剣に取り組まなく ては・・・と考えました。

 当たり前のことですが、まずは風邪症候 群と他の疾患との区別をきちんとつけるこ とに気をつけました。これは、今までも当 然行っていたのですが、開業後に特に気を 配るようになったのは、「かぜ」と診断し た後に、どのように対処するかです。

 対処法の一つとして、漢方を勉強してみ ました。漢方をちょっとかじっただけの私 ですが、一口に「かぜ」といっても、漢方 医学からみると色々な側面があるのだなあ と、とても感心しました。

 正直、薬が効いたのか、自然経過なの か、よくわからない部分もあるのですが、 「先生、あの薬(漢方薬)はとっても効い た」と言ってもらえることもありました。 きちんと漢方医療をされている先生方から すれば、私のレベルはお話にならないレベ ルとは思いますが、「かぜ」に対して、医 者ができることはまだあるのだと、かぜの 診療にも興味が持てたことは、大きな収穫 でした。

2)患者指導・行動変容の方法を勉強+ 自らダ イエット

 開業後、今まで以上に、生活習慣病の患 者さんを診て行くことになるのは、予想し ておりました。生活習慣病の患者さんを診 るのに、患者指導は欠かせませんが、私一 人では心もとないので、糖尿病療養指導士 の方も来ていただきました。

 皆さんが患者に行う指導で最も多いの は、おそらく「やせなさい」だと思うので すが、これだけを言うのは、野球のバッターに「ヒットを打ちなさい」というような もので、河合隼雄先生も、「100 %正しい 忠告は、まず役に立たない(「こころの処 方箋」より)」とおっしゃっています。

 我々医療者は、どうしても頭ごなしに患 者指導を行いがちです。

 「わかっちゃいるけどやめられない」患 者さんの行動をどう変えていくのかが、医 師を含めた医療者全員にとって、大きな課 題だと思います。

 私は、行動変容に関する専門書を読んだ り、コーチングの本、また一般に売られて いる、いわゆる「ダイエット本」も10 冊 以上は読んだと思います。

 ダイエット法そのものよりも、成功した 人の考え方には、参考になるものが多く、 特に、ベストセラーにもなった「いつまで もデブと思うなよ(岡田 斗司夫著)」は、 色々教えられることも多く、これを参考に 講演も行いました。

 また、私も、患者さんに言う前に、「自 分も痩せないと」と一発奮起し、77kg → 67kg へ減量しました。その経験は、患者 指導にたいへん役立っています。

 4月から、特定健診が始まっています。 今後、患者さんへの保健指導・行動変容に ついてのスキルが、より求められていく時 代になっていくと思います。

3)認知症に関しての勉強

 開業前は認知症を診ることは、あまりな く、私の知識も10 年以上前の研修医レベル で止まったままでしたが、開業後は、認知 症に関する知識が予想以上に必要で、患者 の家族や、老健施設の方たちから、「夜間の徘徊で困っている」「不穏を何とかしてく れ」とか相談されます。

 認知症に関しては、ほとんど勉強したこ とが無かったため、現在も、付け焼きばで勉 強しながら、試行錯誤を繰り返しています。 これは、もうちょっと勉強しとけば良かっ たなあとつくづく感じています。

4)診療所経営関係に関する勉強をちょっと

 診療所経営に関する本や雑誌というの は、結構あります。私も何冊か読んでみま した。

 当初は、知らないことも多く、興味深く はありましたが、このへんは、特別に勉強 してもしなくても、私のような診療所レベ ルでは、やるべきこと、出来ることはあま り変わらないという気がしました。

以上、開業後に必要に迫られ、勉強した、あ るいは現在も勉強中のことについて書いてみま した。開業1 年目は患者も少なく、時間も有り 余っていましたので、暇つぶしもかねて、勉強 してきました(経営的には問題ですが、まあこ んなもんだと受け入れていました)。

新たな知識が増えた一方で、勤務医時代に身 につけた知識の多くが失われているのも感じて います。例えば電解質に関する知識や、輸液管 理については、腎臓内科医として、結構勉強し たつもりですが、開業医になってからは、ほと んど必要とする機会がありません。

この辺の寂しさというのは、開業医の先生方は 多かれ少なかれ、経験していることでしょう。

医学は日進月歩です。私の場合、場当たり的 な勉強になりがちですが、それでも「一生勉 強」と心に誓っているところです。