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結核予防週間(9/24 〜 9/30)に因んで

大城盛夫

結核予防会沖縄県支部長 大城 盛夫

1.はじめに

結核予防週間は毎年9 月に、厚生労働省の音 頭とりで日本医師会・結核予防会・各都道府県 および全国結核予防婦人団体連絡協議会等の共 催で、全国一斉に行われています。結核予防法 が平成19 年に廃止され、新しく感染症法の中 に組み込まれたことから、結核が一般国民に忘 れられぬために積極的なキャンペーンが行われ ています。

2.最近の結核の特徴

ご承知の通り結核は世界3 大感染症の1 つで あり、WHO(世界保健機構)は結核対策を最 も重要視しています。

最近の我が国の結核の特徴は、次の通りです。

  • 1)患者の高齢化が進み、糖尿病・腎不全・悪 性腫瘍などの合併症・基礎疾患をもった患 者が増えていること。
  • 2)患者発見の遅れ、診断の遅れ(Patient’s Delay、Doctor’s Delay)があること。
  • 3)大都市や特定地域での結核羅患率が高い こと。

以上の3 点は、結核予防全国大会(平成20 年3 月26 日新潟市開催)において大会宣言決 議文の一部です。

3.沖縄県の最近の特徴

沖縄県結核サーベイランス資料(表1)で示 されているように、新登録患者数・羅患率は 年々減少していますが、70 歳以上の高齢者数 が過半数を占めております。喀痰塗抹陽性患者 数が増えており、70 歳以上の高齢者の陽性率 が増える傾向にあります。

表1

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4.結核医療の歴史

かっては大気・安静・栄養の3 原則のもと、 静かな湖畔や海岸の結核サナトリウムで、絶対 安静時間を守り長期療養が常識でした。それに 精神療法を加え自己免疫力による自然治癒を目 的としていました。その後、積極的な治療とし て肺虚脱療法から肺外科療法へと発達し、抗結 核薬剤の開発と共に肺切除術が盛んに行われ、死ぬ病気から社会復帰可能となりました。沖縄 から本土療養に集団で渡航した患者は1970 年 までに600 名以上いました。化学療法が発達 し、現在では次に述べるような短期療法の時代 になっています。

5.結核化学療法の原則

現在の抗結核薬剤の主なものは下記5 つです。

  • 1)イソニコチン酸ヒドラジド(INH)内服用
  • 2)リファンピシン(RFP)内服用
  • 3)エタンブトール(EB)内服用
  • 4)ピラジナマイド(PZA)内服用
  • 5)ストレプトマイシン(SM)注射用

初めの2 ヶ月間の初期強化療法が重要で、4 者併用療法が原則です。INH ・RFP ・EB 又 はSM ・PZA の4 剤を確実に服薬し注射する ことによって結核菌を殺菌します。PZA は2 ヶ月間で中止します。それは副作用として肝障 害や関節痛が出ることを防ぐためで服薬中は肝 機能と尿酸の検査が必要です。治療中断は耐性 菌を出現させることから、WHO は完全服薬の 確実な実施を指導し、次に述べるDOTS 戦略 が世界的に常識となっています。

6.DOTS 戦略

直接監視下服薬短期化療制度と日本語で訳さ れますが、短縮してドッツと呼ばれています。 Directly Observed Treatment,Short-course の頭文字をとってDOTS といいます。これは 世界的に超多剤耐性結核菌の出現が報告されて いるため、各国が取り組んでいる方法で、 DOTS 戦略に次の5 要素があります。

  • 1)喀痰塗抹陽性者を最重点とする。
  • 2)患者が薬を飲み込むのを確認する。
  • 3)患者の治療成績を確認する。
  • 4)適切な化学療法を必要期間投与する。
  • 5)政府はDOTS 戦略を支持し、実施に責 任をもつ。

以上の5 要素を基礎において、現場の実情に あったDOTS を日本国内で実施されています。 全国DOTS 推進連絡会では、横浜市の生活困 窮者の結核のDOTS や国立医療施設の院内 DOTS の取り組みの報告があります。

沖縄県では保健所と国立沖縄病院と地域婦人 会の3 者が連携し、特に独り生活者の高齢結核 患者に対するDOTS が行われています。外国 人寄留者結核の治療もDOTS が大切です。

結核予防会の複十字シール運動は、沖縄県が 他府県に較べて最も大きな募金額を集めて、特 に婦人活動は高く評価されています。医師会員 の皆様にも紙面をかりて宜しくご協力のほどを お願い申し上げます。