理事 玉井 修
第17 回沖縄県医師会県民公開講座が平成20 年6 月21 日午後1 時半よりロワジールホテル天 妃の間にて開催されました。今回も約450 名の 参加者があり、比較的若い年齢層の参加者が多 かったという印象でした。今回は少し切り口を 変え、「心停止と救命蘇生」と題して自動体外 式除細動器(AED)を含めた救命蘇生を取り上 げました。副題に掲げた「〜あなたの大切な人 を助けるのはあなた〜」というキャッチフレー ズが示す通り、今回の県民公開講座は一般の人 が救急車到着の前に行う救命蘇生について広く 啓発していくことを目的としていました。AED 使用による救命蘇生の記事をよく見かける様に なり、AED への関心はかなり高くなっているよ うです。しかし、実際にAED の扱い方につい ての理解はあまり広がっていないのが現状です。 今回は琉球大学医学部救急医学分野の久木田一 朗教授に座長をお願いいたしました。久木田教 授には心肺蘇生とAED の概容について講演を していただき、その後はパネラーの皆さんに御 登壇いただきました。琉球大学医学部循環器系 総合内科学講師の神山朝政先生には心停止と突 然死を引き起こす様々な疾患に関して解説いた だきました。那覇市消防本部の徳元律夫さんに は実際の救命方法と救急車の適性使用に対する 県民の協力が重要であるとのご発言がありまし た。また、今回は実際にAED を使用して救命 蘇生を行った実体験を琉球大学法文学部准教授の石崎博志先生にお話しいただき、臨場感のあ る実体験を語っていただきました。
パネルディスカッションではAED 使用によ ってかえって悪化させたりという心配は無いだ ろうか?ネックレスをしている人にはAED を 使用しても大丈夫か?プールや海岸で体が濡れ ていたらどうするのか?軽症の方は救急車の使 用を自粛していただきたいと言っても、素人の 自分では重症度の判断など出来ない!など会場 からは率直で、実際的な質問が多く寄せられ、 非常に盛り上がりました。
午後3 時半までパネルディスカッションを行 い、会場隣には心肺蘇生とAED の体験コーナ ーを設置し、15 体の人形とAED のデモ機を用 いての講習会が開催されました。結構広い会場 と、インストラクターも大勢確保していたので すが、実体験コーナーには約150 名の方が詰め かけ、会場のクーラーが効かなくなり急遽扇風 機を持ち込むなど対応に追われ、何とも嬉しい 悲鳴でありました。約1 時間の講習を汗をかき ながら真剣な表情で受講されている多くの方を 見ると、この様な救命蘇生とAED についての 講習会をもっと多くの場所で開催するべきと思 いました。AED 普及が進み、小学校や中学校 には当たり前のように設置される日が早く来て 欲しいものです。今回のような実体験コーナー を組み込んだ県民公開講座の開催は非常に有意 義であったと思います。心肺蘇生とAED の講 習は予定通り1 時間でしたが、もっと会場が大 きく、時間の余裕があればもっと多くの方が参 加できたかも知れません。救急・災害フォーラ ムや救急フェアに向け、更に多くの方が体験で きる機会を増やして行くことが今後の課題にな ると思われます。
琉球大学医学部救急医学分野教授
久木田 一朗
昭和56年 熊本大学医学部卒業
平成5年 熊本大学助手(救急・集中治療)
平成7年 熊本大学講師(救急・集中治療)
平成13年 琉球大学医学部助教授(麻酔科学)
平成14年 琉球大学医学部教授(救急医学)
1.“救命の連鎖”と一次救命処置
病院外、あなたの近くで人が突然倒れたらあ なたはどう対処しますか。突然のことでだれで も冷静ではいられないでしょう。日本では、突 然の心停止(心臓突然死)が年間約5 万人ある と言われています。一刻を争う緊急事態である 予想外の心停止が病院の外で医療従事者が傍ら にいないときに起き、多くの命が失われている ことになります。“救命の連鎖”は、突然の心 停止に対し、救命のために必要な処置が次々と 中断なく速やかに行われるための手順を示した ものです。
成人に対する救命の連鎖は4 つの輪から成り 立ちます(図1)。1 つ目から“迅速な通報”、 “迅速な心肺蘇生”、“迅速な除細動”と続き、4 つ目は薬や器具を使用する病院等で行われる蘇 生処置(二次救命処置)を表します。平成16 年7 月から一般市民もAED を用いた除細動を 行うことが可能となり、救命のための3 つ目の 輪までが一般市民が行える一次救命処置となり ました。
2.市民による除細動の必要性
では、AED を用いる除細動とはどういうも のでしょうか。いわゆる心停止にはいくつかの 異なる状態があります。その中の一つに心室細 動という状態があります。心室細動とは心臓全 体がでたらめに細かくふるえる状態で、脈も触 れなくなります。ボールなどが胸に強く当たっ た時の心臓震とうもこの状態です。この状態を 治すには、細動を取り除くこと、つまり除細動 が必要で、それには電気ショックを与えること が唯一有効な手段となります。AED は、だれ でも使えて電気ショックが実施できるように作 られています。
除細動は、1 分遅れる度に生存退院率が7 〜 10 %低下します(図2)。AED の使用が早けれ ば早いほど生存の可能性を高めることになりま す。AED を早期に使用するために、傍らの人 に「あなた、119 番通報して、AED を持って きて」と頼むか、自分しかいなければ自分で通 報する必要があります。平成19 年9 月末現在、 県内に754 台のAED が設置されています(県 庁調べ)
今回の公開講座ではなぜ、どんな場合に心臓 が突然止まることがあるのか、実際の人命救助 の体験談、救急車の活用等を聞いて頂きます。 心臓突然死をできるだけ防ぐため、予防の知識 やAED の設置、一般市民が行える一次救命処 置の普及に市民、行政、地域社会が一丸となっ て取り組み、市民1 人ひとりが“命どう宝”を 実践できる県になりましょう。
琉球大学医学部循環系総合内科学講師
神山 朝政
平成2年3月 琉球大学医学部医学科卒
平成10年5月 学位取得
現職 琉球大学医学部循環系
総合内科学講師
突然の心停止に対する救急蘇生法や自動体外 式除細動器(AED)の使い方に関しては、救 急部の久木田教授がお話されると思います。そ こで今回、私は、突然の心停止や突然死の原因 としてどういう病気がかくれているか、治療や 予防はできるのかに関して話したいと思いま す。私たちの教室の渡嘉敷が以前(1992 年1 月1 日から1994 年12 月31 日までの2 年間) に糸満市を中心とした南部地区で、沖縄県の突 然死の頻度やその原因となる病気に関して調査 しました。原因不明も約半数ありましたが、原 因がわかる範囲では、心臓に関する病気(心筋 梗塞など)が18.3 %、脳卒中が18.3 %と同数 でした。
そこで、心臓に関する病気と脳卒中に関する 病気を中心にその原因と治療法、これらの病気が原因の突然死の可能なかぎりの予防法(ただ し、突然死が予防できないことも多いことを知 っていてください。)に関して話たいと思います。
まず、心臓に関する病気ですが、狭心症や心 筋梗塞などの虚血性心疾患と致死性(生命の危 険を伴う)不整脈があります。虚血性心疾患 は、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣 病や肥満、喫煙が原因の場合が多いので、これ らの病気の治療や生活習慣の改善(食事療法、 適度な運動、禁煙など)である程度予防できる と考えています。不整脈に関しても学校や職場 での検診、人間ドックを受診することで心電図 異常が見つかる場合もあります。狭心症や不整 脈を診断する上で難しいのは、胸痛や動悸のな い時の心電図のみでは、異常がわからないこと です。
また、軽い動悸は、だれでも自覚するもので 生命の危険を伴う不整脈(致死性の不整脈)と は、めまいや立ちくらみ、意識を失うなどの症 状を伴う不整脈のことを言います。この点に関 しては、実際の講演のなかでくわしく解説した いと思います。次に脳卒中に関してお話します。 脳卒中の中では、実際の頻度としては脳梗塞が 多いのですが、突然の心停止となると脳出血、 くも膜下出血や脳塞栓症の割合が多いです。脳 出血や脳塞栓は高血圧の治療や心房細動という 不整脈に対して、心臓の中に血栓(血液の塊 り)ができるのを予防する薬を内服することで 予防できます。他に突然の心停止や突然死の原 因として大動脈瘤破裂や肺塞栓症という病気が ありますが、その治療法に関しても講演の中で 解説します。最後にまとめますと、1)突然の心 停止の原因としては、脳、心血管病が原因であ ることが多いです。2)心停止の危険が予測不能 な場合も多いのですが、脳卒中や心筋梗塞が原 因である場合には、生活習慣の改善で予防でき ることもあります。3)住民検診や人間ドックを 受診することで見つかる病気もあります。
那覇市消防本部救急課救急指導係長主幹
徳元 律夫
昭和56年 那覇市消防本部採用
昭和60年 救急隊拝命
平成7年 救急救命士取得
平成18年 気管挿管薬剤投与認定
平成19年 救急課主幹兼救急指導係長
1.那覇市消防本部における救急出場の現状
那覇市では、西・小禄・国場・首里・中央の 5 署所に高度な救急資器材を載せた高規格救急 自動車を配置し、救急隊5 隊、専任救急隊45 人(救急救命士30 人)で市民の救急要請に対 応しています。
平成19 年中の救急出場件数は14,512 件、搬 送人員13,164 人で前年と比較すると出場件数 865 件(6.3 %)、搬送人員が624 人(4.9 %) の増加となっており、市民の約24 人に1 人が医 療機関に搬送されたことになります。
一日平均の救急出場件数は約40 件で、約36 分に一回の割合で出場し、36 人の傷病者を医 療機関に搬送したことになり、また通報から現 場到着までの所要時間は、平均で約8.1 分とな っております。
事故種別出場件数は、急病9,298件(64.0%) 次に一般負傷1,903 件(13.1 %)、その他[転 院搬送等]1,274 件(8.7 %)交通事故1,272 件(8.7 %)、自損行為327 件(2.2 %)の順と なっております。
傷病程度別搬送人員は、死亡185人(1.4%)、 重症609 人(4.6 %)、中等症4,823 人(36.6 %)、 軽症7,508 人(57.0 %)、その他39 人(0.3 %) となっております。
救急出場件数は、毎年増加傾向にあり5 年前と比較すると3,000 件以上増加しているのが現 状です。
また、救急需要の増加に合わせて救急隊の増 隊を望めない現状の中で需給のギャップが拡大 しつつあり、この結果、救急用要請時に直近の 救急隊が既に出場しているため、より遠方の救 急隊が出場することなどにより、現場到着時間 が徐々に遅延し救命率に影響がでることが危惧 されます。
2.救急要請の増加に対する対応
(1)頻回救急利用者への個別指導(家庭訪問)
(2)一般市民への応急手当講習の更なる充実と 応急手当普及員の育成
(3)PA 連携の充実強化
(4)軽症者への代替処置の提供
(5)転院搬送業務への病院救急車の活用
(1)頻回救急利用者への個別指導
救急要請者の中には、頻回利用者も多く、こ のことが救急隊の迅速な対応に支障をきたし、 救命率に影響がでるのではと懸念されます。
これまで39 人の市民に対して家庭訪問をし て本市の救急出場の状況を説明し、適正な救急 車の利用を呼びかけています。全国的にも初め ての試みであり、総務省消防庁から注目されて いるところです。
(2)一般市民への応急手当講習の更なる充実と 応急手当普及員の育成
応急手当の普及員は事業所 (会社、学校等)の従業員(職員 等)の応急手当の指導に従事す るもので普及員を育成すること によって事業所、学校等の普 及・救命率の向上に資すること から講習会を実施しています。
(3)PA 連携の充実強化
救急出場件数が増加するなか で救急車の現場到着時間が遅れ (平均8.1 分)救命率の低下が懸念されていま す。そういう事態を解消するため本消防では PA 連携を実施し救急隊が現場到着まで時間が かかる事案には一時的にポンプ隊が出動して救 命処置を施し救急隊に引き継いで病院に搬送す る。PA 連携とはP はポンパー(ポンプ隊)、A はアンビュランス(救急隊)の略です。
(4)軽症者への代替処置の提供
歩ける、緊急性がないなど軽症と思われる事 案はタクシー、マイカー等の利用の指導また、 本消防本部が認定した民間患者搬送事業所の紹 介などを行っています。
(5)転院搬送業務への病院救急車の活用
救急搬送業務なかで、転院搬送が1,274 件で 全体の8,7 %占めています。
各医療機関、老人福祉施設等に個別訪問して 救急車の適正利用についてご理解とご協力を求 め、また、自前の救急車、送迎車、患者搬送事 業所の活用をお願いしました。
以上のように、本市における救急需要対策を 紹介しましたが、少子高齢化、核家族化、市民 意識の変化等で、益々救急需要が増えることが 予測されます。救急需要が増えることで「救え るべき命」の対応におくれる可能性がありま す。市民の適切な救急車利用のご協力とご理解 をお願いしたいと思います。
琉球大学法文学部准教授
石崎 博志
1970年 石川県金沢市生まれ
1997年 東京都立大学博士課程 中退
1997年 琉球大学法文学部助手 中国語学担当
琉球大学講師、准教授を経て
2007年 琉球大学法文学部准教授(呼称変更)
現在に至る
1)救助の経緯
人命救助と聞けば、とても特別なことをやっ たように思われるかもしれませんが、私が担っ たのはそのほんの一部です。私は今回の救助に 関わった方々を代表して、ここで救助が必要に なった経緯、救助の模様などについてご説明し たいと思います。
昨年の10 月27 日(土曜日)、琉球大学法文 学部新棟において第57 回日本中国語学会全国 大会が開催されました。学会では世界的に著名 な言語学者である台湾の戴浩一教授をお招き し、講演会を開催しました。戴先生は講演後、 そのまま壇上で座っておられましたが、突然、 崩れ落ちるように倒れられました。以下はその 後の状況です。
14:55頃 講演直後に椅子に座っていた戴先生が倒れ、司会者が気づく。
松浦雅子さん(琉大院生)が救急車を呼ぶ。
合志路子さん(関西大院生・元看護師)が心臓マッサージを行う
張盛開さん(東京外国語大学院生・元看護師)が人工呼吸を行う
石崎が法文学部総合研究棟に設置してあったA E D を持参。ボタンを押す。
その後、戴先生が意識を取り戻す。
15:16頃 救急車が到着。酸素マスクをして、 琉球大学病院に搬送される。
救急車が到着するまで20 分近くかかりまし た。手を握っていた方の話によると、心臓マッ サージの最中も、体が冷たくなっていくのが分 かったそうです。琉大病院の伊敷哲也先生によ ると、こうした救命の連鎖がなければ、戴先生 は帰らぬ人となっていたとのことです。その 後、戴先生は琉球大学病院でカテーテル手術を し、血管が詰まっている箇所を補修し、一週間 後に元気に帰国なさいました。
2)多くの幸運
このたびの救助劇を振り返りますと、多くの 幸運があったのだと感じます。第一に、倒れら れた場所が200 人以上もの観衆の前で、観衆の 中に元・看護師の方がいらっしゃったこと。合 志路子さんと張盛開さんのお二人です。彼女た ちが心臓マッサージや人工呼吸などを迅速にや って下さいました。
また、学会の半年前にはなかったAED が、 学会の時には琉大に設置されていたことも大き なことでした。AED は法文事務の近くに設置 されていたこともあり、毎日のようにAED を 目にしていたことや、AED の講習を偶然受け ていたことも幸いしました。(ちなみに法文学 部のAED は、医師であり琉大の法科大学院の 学生だった宮沢さんという方が寄附して下さっ たものです。記して感謝申し上げます。)
個人的に幸運だったことがもう一つありま す。入院後に中国語の通訳を私がさせて頂いた のですが、倒れられた戴先生が琉大病院の先生 の治療方針に大きな信頼を寄せてくれたことで す。言葉も通じない初めての土地で、危険を伴 う治療を受ける。外国人の患者にとっては大き な不安があったことでしょう。そうした状況に 置かれれば、治療への不信でパニックになる人 もいるかもしれません。しかし、戴先生は医師の治療方針に熱心に耳を傾け、多くの質問を投 げかけながら積極的に治療に取り組まれまし た。通訳をする身としては、本当に助かりまし た。戴先生のお父様がかつて日本の大学で医学 を修められたことも関係するかもしれません が、何より日本の医療の水準の高さがこうした 安心感をもたらしたのだと思われます。
3)AED の講習を受けて良かったこと
私はAED の講習を学会の前に受けておりま したが、実は上記の事態に備えて受講していた 訳ではありませんでした。実を言えば、たまた ま暇があったというだけです。特に医療に関し て問題意識をもっていた訳ではありませんでし た。そうした点で今、この冊子を手にしている 方のほうがより高い意識をお持ちのことと思わ れます。実際、AED を使うことになるまで、 私は自分がAED を使う事態に置かれるなどと は、予想だにしませんでした。それもある意味 で当然かもしれません。「AED を使う事態」と いうのは、他人にとって極めて危険な時ですか ら、あまり想像したくない部類の事柄です。ま た、ジェームス・ボンドが映画『007 カジノ・ ロワイヤル』でやったように、自分が自分に対 してAED を使うことも実際にはないので、ど うしても意識が低くなりがちです。しかし、こ んな私でも受講はとてもよい結果をもたらして くれました。
講習でためになったことが二つあります。一 つは、AED は簡単だということ。拍子抜けす るぐらいの単純さでした。もう一つは、AED を使用することに迷いがなくなったことです。 その迷いを取り去ってくれたのは、講習をして 下さった宮沢先生がしてくれた「善きサマリア 人の話」です。
4)善きサマリア人の話
あるユダヤ人が強盗に襲われけがをして倒れ ていた。
通りかかった祭司や人々は見てみぬふりをし て通り過ぎた。
ところが、あるサマリア人だけは、彼の傷に 油とワインを注いで包帯をし、介抱した。
もちろん油とワインによる治療は逆効果とさ えいえるものです。しかし、ここで重要なのは 苦しんでいる人を見て、見ぬふりをするのでは なく、手助けをすることです。実際、AED を 使うことで、大きなかけがえのない命が救われ ました。みなさんは、非常に意識の高い方々で す。この講座に足を運ぶことが、それを証明し ています。みなさんはすでにAED を使い、人 を救う十分な資格が備わっていると言えるでし ょう。
○玉井理事 皆さんお疲れさまでした。
久木田先生本日のご感想をお聞かせ下さい。
○久木田座長 突然の心停止に対する多方面 からの講演がありまして、特に最後の石崎先生 の実体験のお話は皆さん非常に熱心に聴かれて いたのではないかと思います。また、私も感銘を 受けました。質問も非常に多くて、特にAED は 機械だという感覚があって、使い方がどうなの かという細かい点を気にしている方も多いよう に思いました。やはり説明するよりも実際に触 って体験してもらうことが重要だと感じました。
○玉井理事 そういう意味でも、今回は実体 験コーナーを設置したことは良い試みだったと 思います。
神山先生はいかがでしたでしょうか。
○神山先生 私は循環器を専門にしてて、学 会からもAED や救急について普及させるよう に言われているんですが、実際に具体的に県民に対する講習会等はあまり考えたことがなかっ たのですが、今回こういったチャンスがあって こんなにも沢山集まっていただいて、意外と県 民の皆さんはこのことに関心があるんだという ことを感じました。
○玉井理事 経験できる機会があまり無いで すから、そういう意味でも、今後はこういった 機会を増やすべきですね。
徳元さんはいかがでしたでしょうか。
○徳元氏 あんなに多くの方が参加されてい るのを見て、本当に皆さん関心があるんだなと いうことを感じております。実は体験コーナー を含めた講習は実際はもっと長くなるんです が、どこでも1 時間ぐらいで講習をやってもら いたいとの要望が多いんです。本日の実体験コ ーナーを見て、やはり1 時間という短い時間で 講習を行っていく必要があるということを感じ ております。
○玉井理事 やはり、濃密にやることも大事 ですが、どれだけの数の市民・県民が講習を受 けたかということも大事ですよね。
石崎先生いかがでしたでしょうか。
○石崎先生 僕がAED 講習を受けたときに は、全くこういうことになるとは思っていなか ったので、不思議なものを感じております。色 んな経験をなさってきた方もいらっしゃるでし ょうが、少しでもお役に立てればと思います。
○玉井理事 僕はやはり先生のご発言は重要 だったと思います。我々がいくら簡単だよって 言っても、そう思ってくれないですよね。
○久木田座長 おっしゃるとおりで、自分た ちと同じ立場の人に救命が出来たんだというイ ンパクトは大きかったと思います。
○玉井理事 石崎先生も正直な気持ちをおっ しゃってました。もし死んじゃったら誰が責任を 取るの?、訴訟になったらどうするの?という 気持ちは今日の質問に出てましたね。その辺は やはりどこかに引っかかるものがあるんですね。
ですが、何も手を出さずにいると確実に死に 繋がるということをご理解頂きたいですし、そ の辺は機械が判断してくれることを伝えられた と思いますね。
ただ、今日のフロアからの質問の中で、 AED の設置が遅々として進んでいない現状、 特に小学校の設置は全く進んでいない現状と、 AED を置いてあるにもかかわらず、その公表 を拒む事業所があるとのお話がありましたが、 その理由は何なのでしょうか。
○徳元氏 恐らく、責任を気にしているのだ と思います。
○玉井理事 その点で腰が引けてるんでしょ うか。
○久木田座長 たしか石垣島は街のAED 設 置マップを作成してたかと思います。地域から そういう安全体制をとっている運動が起きると いいですね。
○玉井理事 恐らくフロアでは、AED が良 いのは分かるけど、じゃあ何処にあるのかと思 っている方もいらっしゃったでしょうね。
○屋宜タイムス編集局次長
石崎先生の体験談が ある意味一番良かった のかなと思います。ご く一般の方が実際に AED を使用できたとい うことで、今日の参加 者も自分でも出来るん じゃないかと感じたと思います。しかし、一方 で約30 万円というは高すぎると思いますし、 どうやって普及させるのかという話になると PTA 連合等と医師会がタイアップして普及さ せることも考えて良いのではないかと思いま す。小学校で1 台づつあれば良いですね。
○玉井理事 学校は災害の際の避難所にもな りますので、AED が設置されているというの は良いですね。
また、小学生、中学生はまだ胸郭(きょうか く)の発達が未熟ですので、部活で強いボール 等の打撃を受けることもありますし、不整脈を 持っている子もいます。そういう子ども達が体 育や運動をしていますので、そういう場所には AED を置くべきだと思います。
○石崎先生 行政が補助をしてくれると良い ですね。生ゴミ機には補助してますよね。
○玉井理事 高校に置いているのは補助が出 てますよね。ただ、数が少ないから置けたという 面もありますね。ところが小・中学校となると 数が多いですからね。そうなるとお金が絡んでく るんですね。本当はやるべきなんですけどね。
○徳元氏 成人式の日に新成人から寄付して もらうことも提案したんですが、乗り気じゃな かったですね。
○玉井理事 僕も小学校の卒業記念に植樹を するよりもAED を送るよう話をしているんで すが、まだダメですね。この辺はもう少し時間 がかかると思います。
○平良沖縄タイムス社社会部長
実は沖縄タイムスも 最近AED を設置しまし た。ですが実際の操作 方法は見たことが無く て、先ほど拝見して簡 単だと感じました。や はり、AED の普及が大 切だと思いますので、新聞社も取材を含めて取 り組んでいかないと行けないと感じています。 皆さんの関心も非常に高いですね。
○玉井理事 価格は20 万後半から30 万円ぐ らいしますね。それが約5 年間持つそうです。 その後はバッテリーを交換すればまた使えると のことですので、使い捨てというわけでもない です。本日も関心の高い方が参加されており、 AED の使用法についてもワンランク上の質問 が出てきてると感じました。これを機にシリー ズ化してもよいのではないでしょうか。
特に再来年はインターハイが開催されますの で、それに向けてAED 普及を啓発しやすい環 境になるでしょうし、今回の県民公開講座を機 に、9 月9 日の「救急の日」にそれぞれ各地で 受講する方が増えていくと良いですね。
○久木田座長 ねずみ算式に増えていけばい いですね。各県も受講者の数は何万単位という 目標を掲げていますね。
○平良沖縄タイムス社社会部長 県内では現 在どのぐらいの受講者数なんでしょうか。
○久木田座長 那覇市で3 千人ぐらいだそう です。そうすると県全体では1 万人もいかない でしょうね。
○徳元氏 大体人口の20 %クリヤを目標にし ていますので、約2 〜 3 万人ぐらいでしょうか。
○玉井理事 是非これからも、このAED を 周知徹底し啓発していきたいと思っております。
また機会がありましたらよろしくお願いいた します。
本日はありがとうございました。
当日お越しいただいた方々の中から、数名の方にインタビューをさせていただきましたので、その 中から下記のとおり4 名の方のご意見・ご感想を掲載致します。
本会の広報活動にご協力いただきまして、誠に有難うございました。
インタビュー1):
本日の講演会に参加されての感想をお聞かせ下さい。
また、今後の日常生活でどのような事に気をつけようと思いますか。
インタビュー2):
医師会への要望をお聞かせ下さい。
(24 歳・女性・公務員)
1)“心停止”という言葉だけ聞くと、現実の私の日常生活には起こり得ないのでは?と思うほど遠い感じ がしましたが、“メタボリックシンドローム”や“生活習慣病”など身近な事が危険因子として挙げら れていたので、起こりうる問題だと感じました。また、人命救助の体験談を聞き、日常生活の中で医療 行為はできなくても、意識を確認する、119 番通報をすること等、私にも出来ることがあると再確認で きました。
2)このような会へ関心がある講演会参加者に対しては、次回の講演会の案内メールを送ってもいいのでは ないでしょうか。
(34 歳・女性・主婦)
1)以前からAED の体験講習を受けたいと思っていたので、夫婦で受けました。学んだことを家に持ち帰 って家族と話し合いたいと思います。友人や周囲の人へ、このような講座への参加を呼び掛けたいと思 います。
2)子育て真っ最中なので、乳児の救命の講座もあるといいと思います。
(24 歳・男性・会社員)
1)医療などの専門ではないので、所々難しい内容もありましたが、AED の使用方法だけでも学べたこと は収穫でした。日頃、何気ない生活の中でも突然死の危険に出くわす可能性があるということを認識 し、今回の講演会が無駄にならぬよう努めていきたいと思いました。
(21 歳・男性・ホテル業)
1)大変勉強になりました。特にどのように心停止が起こるのか、その原因について知らなかった部分が多 かったので、今回の講座を受けて良かったです。
心肺蘇生の講習風景
自動体外除細動器(AED)の講習風景