今帰仁診療所 石川 清和
沖縄は古くから中国と交易があり多大な影響 を受けてきた。例えば食文化は中国流の豚肉中 心の文化である。現在も留学生や労働力として 研修生を受け入れ交流が盛んである。一方で中 国共産党の情報操作、日本政府の弱腰の外交で 私たちは本当の中国の姿が見えていない。日本 の鎖国時代から沖縄は中国との交易の窓口とな っていた。第2 次世界大戦でも沖縄は日本では 唯一の地上戦の被災地でもあり、反日の声が強 い中国でも沖縄への思いは別格の存在のよう だ。これからの日中の交易のより近い門戸とな るためにも中国の実像を知ることは大切だと思 う。また、北京オリンピック観戦に行かれる方 は、その前に、是非この2 冊の本を読むことを お勧めします。
1)「中国の危険な食品」
周 勍【著】・廖 建龍【訳】草思社出版
中国の醤油は日本の醤油と似て非なるも の!!! 中国では大豆を発酵させて醤油を作 る文化はとっくの昔に絶えてしまった。髪の毛 を1kg10 〜 15 元で回収し、化学薬品でアミノ 酸を抽出し、他の化学物質と混ぜ合わせて醤油 なるものを作るらしい。中国の妻を持つ友人の 話では、中国の醤油は2 〜 3 月で沈殿する、と の事。(20 年前中国を旅行したときの食事に出 てきた醤油が化学物質で作られていたなん て・・・ ショック!)
新しい医食同源:発熱、咳、黄色い痰がある と、公園の屋台の魚屋に行き魚屋さんに相談す る。と、「前回は症状が軽かったから淡水魚で テラマイシンが入っているのを食べさせたけ ど、今回は重症だからこの多宝魚(イシビラ メ)を食べるといい。ニトロフラン類、シプロ フロキサチン、エリスロマイシン等の抗生剤が 入っているからよく効くよ!」
養殖業者は「土地の人間はここで養殖した魚 は食わないよ」と皆異口同音に言うとの事。
廃油の再利用:中国13 億人の胃袋を賄うの は並大抵のことではない!例えば料理に使う 油、絶対に不足するのではと思うのは自分だけ だろうか?料理に使う油も再利用される。ホテ ルなどの大量に消費する施設の排水溝を流れて くる油を回収し分離調整して再利用される。街 中の屋台などはこのような油を使うこともあ る。屋台の揚げ物を食べるときに古い油の味が したらご用心!!!
2001 年のFAO(国連食料農業機関)の統計 では中国の豚肉生産は4,240 万トンで世界の豚 肉生産の46.1 %を占めている。豚肉は赤身肉 が高くで売れるが赤身肉タイプの豚を育てるに はコストがかかりすぎ赤字になるという。しか し、塩酸クレンブテロール(肉赤身化剤)を普 通の豚に出荷の10 〜 20 日前に投与するだけで 赤身肉タイプの豚に速変する。肉赤身化剤は作 用の強いベータアドレナリン類似レセプター作用物質で気管支喘息に使われていた。人間がこ れを含む豚肉を食べるとめまい、吐き気、手足 の震え、動悸、心臓停止に陥り死亡することも ある。1999 年から肉赤身化剤による中毒が頻 発している。スポーツ選手が食べドーピング違 反になったり(オリンピックに選手を送り出す 各国が選手の食材を持ち込むことにしたのは当 然のことと考えられる)、警察・解放軍の食堂 でも中毒が発生し任務ができなかったこともあ る。著者が2005 年肉赤身化剤の調査機関を取 材したときに、まともな陰性サンプルを手に入 れるのが非常に困難で、農村地域まで出かけ放 し飼いの豚を捕まえないと手に入らないといわ れたこともある。
その他にも四川泡菜に工業塩を使用し虫の発 生を予防するためにDDT を使用したり、貴州 では2,642 店の飲食店中215 店が酸湯魚にリピ ート客を増やすためケシを入れたり、工業塩や 亜硝酸ナトリウムを混ぜた密売塩が出回ってい るため、国の機関衛生部が塩は正規のルートで 買うことと4 回目の警告を出したりしている。
その他にも食品をめぐる問題は多々あり、吃 驚すると同時に考え込んでしまう。
2)「中国に人民元はない」
田代秀敏著 文春新書出版
中国は中国であり日本ではない!中国と日本 の違いを知らずに日本の常識・通念が中国でも通 用すると考え行動すると摩擦が生じ、危険な状態 に陥り、物事がうまく運ばない可能性がある。
中国は共産党が最高機関であり、共産党が国 家機構の上に君臨し立法・司法・行政全ての国 家機関を手取り足取り指導する。ゆえに、中国 では裁判所はあるが公平な裁判はないし、地方 公務員はなく省・市・県・自治区にいたるまで 国家公務員である。どんな僻地の公務員でも業 績しだいでは中央の重職に取り立てられること もある。そのために地方政府による投資加熱が 生じている。その投資に必要な資本は基本的に ただであるため重複投資(同じような投資案件 があちこちでも同時に進められ)、重複建設 (同じ用途の建物をあちこちでも同時に建設す ること)がはびこっている。そうした重複投資 と重複建設の帰結として中国のあちこちで作り かけのまま破棄されたビルの残骸が見られることがある。
中国国民は政府に財産を吸い上げられている と考えている。「公」という字は、二本の指で 上から摘み取ることを表している。「公」が自 分のものを取り上げるのなら逆に「公」から奪 い返すのは道理にかなった事であり不正ではな い。だから、中国に公私混同はない。2004 年 に1 〜 2 月に中国人民銀行が農村での建設資金 として810 億元拠出したが、同じ時期に農村で 実際に建設された公的施設はわずか10 億元だ った。差額は関係した党幹部、党官僚、国家官 僚、国家公務員、地方ボスの懐に流れて行った のである。
中国の農民は農工民として農民戸籍に属し、 都市部の労働者(工民)都市戸籍とは厳格に区 別される。だから、新たな工業団地造成のため に農場を接収され都市部に出稼ぎに出ても都市 戸籍を持つとことはできない。さらに、農民に は年金、医療保険、最低賃金保証もない。
今中国は富裕層と貧民層と二極化が進んでい るといわれる。この二極化にこのような社会構 造が大きな影響を与えているのであろうか?
上記の2 冊の本を読むことで、苦悩する中国 の本当の姿、日本と中国の政治・国民の相互の 考え方の違い、日中間の多くの問題の本質が見 えてくるのではないだろうか?
さて、これらの本の内容がフィクションかノ ンフィクションか?中国を旅行される方にとっ て実際に確かめるチャンスかもしれない。旅行 から帰ってきたら是非ご一報いただきたい。こ の本はフィクションだったとの報告があればう れしいのだが・・・