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pit pattern に魅せられて

比嘉良夫

比嘉胃腸科内科 比嘉 良夫

南風原町照屋で「比嘉胃腸科内科」を開院し て、早いもので半年を過ぎました。開院の際、 多くの方々にお世話になりました。右も左もわ からない私が開院にこぎつけたのも皆様のご指 導の賜物と大変感謝しております。この場を借 りてお礼申し上げます。当院のスタッフは私を 始め、看護師2 人、医療事務2 人の5 人です。 チームワークが良く、非常に良いスタッフに恵 まれています。患者さんに対していつもニコニ コと懇切丁寧に対応してくれています。そんな 中、地域の方々にも少しずつですが、認知され てきています。私も勤務医時代と違いニコニコ しています。開業の先輩である友人にも諭され やんわりと過ごしています。町医者として、一 般内科の診療や内視鏡検査などをしています が、地域のお年寄りと話をするのが楽しいで す。自分がしゃべるよりは話を聞く方が性にあ っているようです。そのためか、診察室で多く の人がよくしゃべります。いつの間にか自然と ニコニコしています。私は平成2 年に琉大医学 部を卒業後、県立中部病院にて4 年間臨床研修 を行いました。その後、県立八重山病院、秋田 赤十字病院、ハートライフ病院に勤務させて頂 きました。その間、救急や内科・消化器疾患の 診療に従事してきました。秋田赤十字病院で は、大腸拡大内視鏡の診断・治療を修得してき ました。そのため、特に早期大腸癌の発見・治 療に関心を持っております。この秋田赤十字病 院には工藤進英先生という御高名な先生がおり ました。現在は昭和大学横浜市北部病院消化器 センターで御活躍されています。当時は秋田赤 十字病院に在籍されており、私も工藤先生から 是非御指導を賜りたいと考え、だめもとで工藤 先生がセンター長を勤められていた秋田赤十字 病院胃腸センターへ電話をしました。するとあ っさり、OK がでました。病院の業務をしなが らですが大腸拡大内視鏡の勉強ができました。 日中は内視鏡検査にほぼ集中することができま した。大腸拡大内視鏡による診断治療はカルチ ャーショックでした。大腸ポリープに対する考 え方が一新しました。大腸拡大内視鏡検査のす ぐれた点を簡単にいうと、大腸拡大内視鏡を用 いpit pattern 診断を行うことで、1)腫瘍と非 腫瘍の区別、2)腫瘍であれば良性腺腫と癌の区 別、3)癌であれば深達度の診断(つまり、より 進行しているかどうかの判断)を行えるように なります。通常の内視鏡検査でもこれらのこと は意識しながら診断治療を行いますが、大腸拡 大内視鏡によるpit pattern 診断を行うことで より確実に診断治療が行えるようになります。 ポリープの表面を瞬時に100 倍までズームアッ プし、その表面構造であるpit pattern を顕微 鏡で観察するようにより詳細に観察し、ポリー プの性質を判断できるのです。開業した現在も 最新の機器を用い大腸拡大内視鏡検査を行って いますが、このとき修得したことが大変役に立 っています。複数のポリープを発見した場合、 治療の優先順位、治療の方法、病診連携におけ る紹介のタイミングなどをより的確に判断で き、臨床に即した診断技術であると同時になに より患者さんにやさしい技術だと思います。工 藤先生のおかげで日本が世界をリードする診断 技術となっています。大腸拡大内視鏡検査だけ でなく内視鏡検査はどんどん新しい知識や技術が研究され、実践されています。日々進化する ため、これからも気を引き締めて勉強しないと いけません。大変ですが、自分の天職を得たと 頑張っています。工藤先生は大腸カメラの挿入 技術でも大変御高名な方です。初めてその挿入 を拝見したときは感動しました。ほとんどの症 例を1 分前後で盲腸まで挿入してしまいます。 その上、sedation free であるにもかかわらず 疼痛を生じさせることなく、患者さんと会話を しながら挿入していく様はいつ拝見しても感動 します。観察する場合も、ものすごいスピード です。しかし、動きがぴたりと止まるとそこに は病変が捕らえられています。大腸カメラの挿 入技術、観察眼はもう神業です。以前は幻とい われていた早期大腸癌のIIc 病変ですが、現在 は200 症例中1 例の頻度で発見されるとおっし ゃっていました。私も秋田赤十字病院後に勤務 させて頂いたハートライフ病院で、大腸拡大内 視鏡検査を行い、IIc 病変を十数例発見してい ますがまだまだ修行が足りないと反省する毎日 です。もっと勉強して、より多くの早期大腸癌 を発見することで大腸がんの死亡率を少しでも 減らすことに貢献できるよう頑張りたいと思い ます。まだまだ未熟者で、病診連携や診診連携 ではご迷惑をおかけしますが、今後ともご指 導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い致 します。