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第2 回都道府県医師会
「公益法人制度改革」担当理事連絡協議会

去る5 月29 日(木)、日本医師会館において 標記担当理事連絡協議会が開催されたので、そ の概要を報告する。

はじめに、司会の羽生田常任理事より、今年 の12 月1 日に公益法人制度が施行されること から、日本医師会並びに都道府県医師会がどう 対応したらいいかということで、本日は第2 回 の標記担当理事連絡協議会を開催した旨の説明 があった。

挨 拶

日本医師会長 唐澤 人

日本医師会は、この度の法人制度改革に際し 各種情報を把握し内閣府へ意見要望を提出する と共に、都道府県医師会へは担当理事連絡協議 会の開催、書面やインターネットによる情報の 提供を行ってきたところである。今後は、定 款・諸規定の見直し作業や申請書類の準備等具 体的な作業に取り掛かると共に、全ての医師会 組織が円滑に移行できるよう都道府県医師会並 びに郡市区医師会との更なる連携強化を図って いきたいと考えているのでご協力を賜りたい。

講 演

1.「新公益法人制度について」
内閣府公益認定等委員会事務局審議官
原山 保人

概ね下記のとおり講演があった。

○従来の公益法人の状況について

日本の公益法人制度は明治29 年の民法制 定と共に始まり、主務官庁の許認可を得て設 立が認められ、現在、国、都道府県の所管を 合わせ約2 万5 千の団体が存在する。

○公益法人制度改革の目的

民間非営利部門の活動の健全化と、これま での主務官庁の裁量に基づく許可の不明瞭性 等の問題を解決するため。

○公益法人制度改革の目的実現のための骨子

準則主義により法人格が容易に取得でき、 また、明確に定められた基準による公益認定 を民間有識者が行うことで、民間非営利部門 の一層の発展が期待できる。

○新制度の法令等の体系

法人の設立、組織、運営及び管理を規定す る法人法、認定の基準を規定する認定法、従 来の公益法人にかかる新制度への移行手続き を規定する整備法の三法に加え、政令、府省 令の他にガイドラインを策定したが、未だ不 十分である。

認定は、主務官庁ではなく国の公益等委員 会又は、都道府県の合議制の機関が判断する。

○新制度における従来の公益法人等の選択肢

平成20 年12 月1 日の新制度施行後5 年間 は特段の手続きを取ることなく従来と同様の 法人(特例民法法人)として存続できる。た だし、平成25 年11 月の移行期間終了までに 移行申請を行わなかった場合は解散となる。

○新制度における法人の内部統治(ガバナンス)

主務官庁制度を廃止して準則主義を採用す るに当たり、法人自らが自主的・自立的に運 用を行っていけるよう、法律でガバナンスに 関する事項が定められている。

例えば、理事の選任は社員総会で行う、会 長たる代表理事は理事会で選任する、監事の 理事会出席等が規定されている。

○公益認定の基準

・公益目的事業比率が( 費用で計って)50/100 以上

・公益目的事業比率算定のための「事業費」 「管理費」の定義

 事業費:当該法人の事業の目的のために 要する費用

 管理費:法人の事業を管理するため、毎 年度経常的に要する費用(総会・理事会の 開催運営費、登記費用、理事、監事報酬)

 但し、専務理事の報酬、事業部門の管理 者の人件費は公益目的事業への従事の割合 に応じて公益目的事業費に配賦することが できる。

 管理部門で発生する費用(職員の人件 費、事務所の賃貸料、光熱費等)は事業費 に算入される可能性のある費用であり、法 人の実情に応じて算入する。

 また、公益目的の費用額として認められ る例としては、無償ボランティアの人件費 の50 %、将来実施(10 年以内)するイベ ント(公益事業)のための資金積立費用の 50 %は算入可能。

 経理的基礎(財政基盤の明確化、経理処 理・財産管理の適正性、情報開示の適正 性)と技術的能力(事業実施のための技 術、専門的人材や設備等の能力)を有する こと。

・法人関係者に特別の利益を与えないこと。

・収支相償であると見込まれること。(公益 として認定された事業で費用より収益が上 回った場合、上回った額は当該事業の発展 の設備投資等に充てることを明確にすれ ば、当年の費用として認める。そうするこ とによって収支が合うことになる)

・有給財産が制限を超えないと見込まれるこ と。(使用目的が明らかになっていない純 資産額は1 年分の公益目的事業費相当額を 超えてはいけない)

○公益目的事業財産

・公益目的事業のために得た収入、収益事業 から得た収入の1/2 以上、共益事業から得 た収益の1/2 以上がこれに当たる。

・従来の公益法人が、新たな公益認定法人に 移行する際は、公益目的事業のために使用 する財産(土地、建物、設備、金融資産 等)も含まれる。

 法人が解散若しくは認定取消しになった 場合は、公益目的使用財産の残額を他の公 益団体又は国・地方公共団体に贈与しなけ ればならない。従って、財産を持っている 法人は、公益認定を受けた後一般社団法人 に移行した場合財産を失うことになるの で、将来の事業を見極めて慎重に対応する 必要がある。

 逆のことを言うと、先ずは、一般社団へ 移行し、会計基準や新制度の法律運用等に 慣れて将来の見通しを確認した時点で公益 法人へ移行しても構わない。

○公益目的事業

・学術、技芸、慈善その他公益に関する事業 (23 項目)

 不特定かつ多数の者の利益に供するもの (17 区分・公益等認定委員会のホームペー ジのチェックポイントフォーマット参照)

 事業の内容については情報を公開するこ ととし、その内容について外部からの問い 合わせ等にも適正に答えられること。

 認定に際しては事業項目一つ一つ審査す ることになる。

○公益目的支出計画

・特例民法法人から一般社団・財団法人へ移 行する法人は純資産額を基礎に計算した公 益目的財産がある法人は、その財産額に相 当する金額を公益の目的のために消費して いく公益目的支出計画を作成し実施する。

 但し、当該財産額を他の公益法人へ寄付 しても事業実施として見なされる。

○新制度における税制

・公益社団・財団法人は寄付優遇の対象とな る「特定公益増進法人」に指定される。

・法人税

  • 1)収益事業についてのみ課税
  • 2)認定法上の公益目的事業は収益事業から除外し非課税
  • 3)収益事業に属する資産のうちから、公益 目的支出事業に支出した金額は、その収 益事業にかかる寄付金の額と見なし、損 金算入できる。(残りの収益に対する税 率は30 %であるが、収益の100 %を公 益目的に使うと全額非課税になる)

・一般社団・財団法人で非営利性が徹底され ている法人、共益的活動を目的としている 法人は、収益事業についてのみ課税。(会 費で事業を行っている場合、会費が余って も収益ではないので、課税はされない。)

・その他の一般社団・財団法人は税法上普通 法人と同じ。

 当該法人に該当する法人で、会費等で実 施している赤字の事業と収益事業による黒 字がある場合、トータルして申告するの で、移行後の税金は、現行より軽減される 場合もある。

・特例民法法人である内は従来の公益法人と 同じ。

・公益認定を受けた場合、税制上の恩典から すると従来の公益法人、既存の非営利法 人、例えば、学校法人、社会福祉法人、或 いは、この度成立した社会医療法人よりも いいと思う。

2.「公益法人制度改革」に向けた医師会の 対応について

(1)羽生田常任理事より、制度面について概ね 以下のとおり説明があった。

○今後取り組むべく課題

  • ・移行先法人類型の選択(公益又は一般)
  • ・移行時期の目安とスケジュールの確認
  • ・新法適合状況の総点検(各事業毎にチェック)

○移行先法人の類型に関する日医の考え

  • ・都道府県医師会は公益社団法人を目指す方 向で検討して頂きたい。
  • ・郡市区医師会は、会員数、会計規模、事業 等を考慮したうえで、公益社団か一般社団 法人かを、都道府県医師会と相談して選択 して頂きたい。

○日本医師会の今後の作業予定

  • ・平成20 年6 月頃 定款・諸規程改定検討 委員会設置
  • ・平成20 年12 月頃 同委員会答申
  • ・平成21 年10 月頃 第121 回臨時代議員会 に「定款変更案」を上程・決議
  •  代議員会終了後、申請書類が整い次第、 公益申請。

○新制度移行に当たっての主な留意事項

代議員制度:現行の制度は認められない。 代替案として、会員という資格を設けた上、 その中から代議員たる「社員」を決めるとい うことを定款に設ける。

役員の選出について:法律上理事は総会 で、代表理事は理事会で選出することになっ ているが、定款に「社員総会の決議により代 表理事候補者を選出し、理事会において当該 候補者を選定する方法によることができる。」 旨の文言を設ける。

○都道府県、郡市区医師会にかかる日医の主な 取り組み

  • ・担当理事連絡協議会を適宜開催
  • ・電子メール、書面等を用いた情報配信
  • ・日医が公益認定を取得した場合、定款等申 請資料の記載内容を公開
  • ・都道府県、郡市区医師会の運営の実態につ いて政府関係者へ説明

(2)今村聡常任理事より、税制及び医師会運営 施設について概ね以下のとおり説明があった。

○公益認定法人の主な税制

  • ・収益事業のみ法人税課税(収益事業以外は 非課税)
  • ・収益事業から公益事業への支出(1/2 以 上)を損金算入
  • ・寄付金税制上の優遇
  • ・受取利息等の源泉所得非課税
  • ・固定資産税の減免(従来と同様の措置)

○公益認定の税制メリットとそのコスト

  • ・メリットとして寄付金税制上の優遇等が上 げられるが、コストしては、認定取得及び 認定維持のための経理コストが大きい。(区 分経理、報告提出、立入り調査等)最低限 1 〜 2 人の事務員を増員する必要がある。

○医師会施設における税制上の問題点

開放型病院等の税非課税は?

  • ・公益社団又は、非営利一般法人に移行した 場合は、非課税存続。(一定要件をクリア することが要)
  • ・事業内容の要件:地域医療支援病院を開 設、又は、学校医事業(会員学校医)、救 急医療事業、予防接種事業(会員が実施)、 特定健診・保健指導(保険者と契約)、地 域産業保健センター、へき地等の巡回診 療・健診(会員が実施)の中で2 つ以上実 施していること。
  • ・収入割合の要件:医師会の共済事業及び看 護学校等を除く年間収益額の6 割以上が、 社会保険診療報酬等、労災、自賠責、公 害、臨床検査センター利用料、法令等に基 づく健診、正常分娩、学校医、特定健診・ 保健指導、国、地方公共団体から委託され た医療の収入から賄われていること。

○公益目的事業の認定―今後の課題―

  • ・医師会の行う各種医療・保健事業が、公益 性が担保されているということを、公に説 明し、理解していただくことが重要である。

○開放型病院、看護学校等の固定資産税減免

  • ・公益社団に移行した場合は、減免存続、一 般社団の場合はH25 までは減免継続、そ の後は検討中。

総 括

宝住副会長より次のとおり総括が述べられた。

今年12 月の公益法人制度改革の施行に向け 制度の詳細が明らかになってくるかと思う。日 医としては、引き続き迅速な情報提供を行い、 都道府県医師会との連携を図っていく。また、 内閣府とも連絡を取り合って速やかに新法人制 度に移行できるよう努めて参る所存であるの で、皆さんのご協力をお願いしたい。