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平成20 年度第1 回全国メディカル
コントロール協議会連絡会

安里哲好

常任理事 安里 哲好

本年度第1 回全国メディカルコントロール (MC)協議会が平成20 年6 月6 日、東京都三 田共用会議所で行われ、主催は総務省消防庁、 共催は厚生労働省と日本医師会であった。小 林國男会長は、社会のシステムは30 年で制度 疲労を起こし、高齢者社会、救急搬送件数の 増大、受入困難な事例の増加、医療側と患者 との信頼関係、医療費の抑制等の環境も変化 し救急医療の枠組みも大きく変わろうとしてい る。平成13 年以降、プレホスピタル・ケアは 充実しつつあるが、奈良県の事例の様に、救急搬送と医療の連携プレイが不十分であり、その ことを支援することも含め、MC の役割は今後 益々大きくなっている。全国の人々がMC に対 する現状認識を共有することが望まれると述べ ていた。

消防庁より、平成19 年中に行われた「救急 搬送における医療機関の受入状況等実態調査の 結果について」報告があった。全国の消防本部 における救急自動車による総搬送人数員は4, 918,479 人で、救命救急センター等搬送傷病者 は全体の3.2 %であった(表1)。医療機関に受 入の照会を行った回数ごとの件数 は11 回以上のものが220 件あり、 最大照会回数は50 回で、首都圏 や近畿圏等の大都市周辺部におい て照会回数が多くなっていた(表 2)。受入に至らなかった主な理由 は、「処置困難」(22.9 %)、「手術 中・患者対応中」(21.0 %)、「専 門外」(10.4 %)となっている (表3)。産科・出産期傷病者搬送 事案、小児傷病者を搬送した事案 や救命救急センター搬送事案につ いても、同表を参照願いたい。

表1 傷病者搬送の状況(平成19 年)

表1

表2 医療機関に受け入れの照会を行った回数ごとの件数

表2

表3 受入に至らなかった理由ごとの件数

表3

山城保博座長より、「平成19 年度救急業務高 度化推進検討会」についての報告があり、(1) トリアージ作業部会、(2)MC 作業部会、(3) 消防機関と医療機関の連携に関する作業部会を 設置した。(1)トリアージ作業部会では、1) 119 番受診時トリアージ・プロトコールにおけ るアンダートリアージの極小化:病院到着時の 重症度に代え、救急隊が現場で傷病者を観察し たバイタルサインの5 項目(意識、呼吸、脈 拍、血圧、血中飽和度)をスコア化(0 〜-4 点)したものを緊急度判断の基準とし検討して いくこととなった。2)119 番受診時トリアージ に関する法的課題:傷病者にアンダートリアー ジ等に伴う生命・健康等への被害が発生した後 に、損害賠償請求を受けることも想定されるの で、トリアージ・プロトコールの内容やその運 用方法をどのような形で決定し実施していくか 慎重な検討を行う必要がある。(2)MC 作業部 会では、1)地域の再教育体制(救急救命士)の あり方について、2)具体的な再教育のプログラ ムについて、示された。(3)消防機関と医療機 関の連携に関する作業部会では、(T)早急に 講じるべき対策、1)救急医療情報システムを活 用した受入医療機関情報の収集について、2)消 防機関から医療機関への情報伝達について、3) 医療機関選定における消防機関と医療機関の連 携について、4)救急搬送に関する検証・協議の 場の設置について。(U)救急医療体制等の整 備について:救急搬送を受入れる救急医療体制 の充実・強化、救急医療に携わる医師の勤務条 件等の改善や救急車適正利用の推進など国民の 協力も必要であろうと述べていた。

「救急救命士の再教育について〜個人の業務 実績を生かした教育〜」のテーマに対して、浅 井典昭氏(泉佐野市消防本部)より(1)大阪 府泉州地域メディカルコントロール協議会の取 組み、西山謹吾氏(高知赤十字病院救命救急セ ンター)より、(2)当院での救急救命士の再教 育実習と題して発表があった。

「MC 協議会を活用した救急医療体制の構築 〜 MC 体制の更なる充実をめざして〜」のテー マに対して、田島弘氏(福岡消防局)より(1) 福岡地域におけるメディカルコントロール体制 について、森野一真氏(山形県立救命救急セン ター)より(2)検証から明らかになる医療機 関側の問題点、中川隆(愛知医科大学病院高度 救命救急センター)より(3)愛知県の場合と 題して発表があった。

昨年の5 月より4 回目の全国MC 協議会連絡 会である。現状を改善して、国民のニーズに応 えるようとする国の姿勢を感ずるが、他府県で は医療機関と消防機関の連携が驚くほど困難を 極めている様で、受入医療機関の決定までの照 会を50 回行ったと言う悲惨な現状があり、特に 大都市周辺部や県境において顕著である。受入 医療機関の体制に問題があるのか、それともす でに救急病院においても医療崩壊寸前にまでな っているのか。一方、沖縄県における連携は比 較的スムーズに行われていることを強く感じて いるが、全県下的なコントロールタワーの構築 やプレホスピタルの心肺停止例の救命率・社会 復帰率の分析や救急救命士の病院実習、症例検 討等の教育における更なる充実が望まれる。 AED の講習会が、医師会や救急救命士等の指導 の下に、市民レベルで行われ、大きな広がりを 見せていることはすばらしい事ことだ。