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平成20 年度第1 回沖縄県医師会・
沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る5 月22 日(木)、県庁3 階第2 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議 題

1.沖縄県保健医療計画における4 疾病(が ん、糖尿病、脳卒中、急性心筋梗塞)の 医療連携について(県医師会)

<提案要旨>

平成20 年3 月に告示された「沖縄県保健医 療計画」では、4 疾病の医療連携について詳細 な計画を立てたが、今後の具体的な取り組みに 関して、下記3 点についてお伺いする。

  • 1)4 疾病の連携について、具体的にどのよう に進めるか。
  • 2)中心になる組織は保健所を予定しているのか。
  • 3)地域医療連携パスの計画はいかがか。

<福祉保健部の回答>

4 疾病(がん、糖尿病、脳卒中、急性心筋梗 塞)の医療連携については、各福祉保健所を中 心に開催・運営する「圏域連携会議」を通して 具体的に推進していくこととしており、特に、 糖尿病については、死亡率が全国で最も高く、 脳卒中や心筋梗塞等の合併症を引き起こす大き な要因となっていることから、重点的に取り組 んでいく。先般、各福祉保健所長あて通知した ところである。

各圏域連携会議では、沖縄県保健医療計画の 地区計画をもとに当該医療圏における連携のテ ーマや取り組み方(クリティカルパスを含む) 等について具体的に協議するものとしている。 その際、各保健所は地区医師会等と連携して当 会議を主催し、医療機関相互又は医療機関と介 護サービス事業所等との調整を行うこととして いる。

また、圏域連携会議におけるモデル的な取り 組みとして、平成19 年度には、中部地区医師会 に医療連携体制推進事業を委託したので、今 後、全圏域に普及させていきたいと考えている。

<主な意見等>

○県医師会:生活習慣病対策検討委員会の中 で、急性心筋梗塞の連携パスは急性期医療機関 を中心に、脳卒中の連携パスは二次医療圏単位 で、糖尿病に関しては標準的治療や連携パスも 二次医療圏で作成運用のモデルケースを作り、 それを全県下的に広げて行くのも1 つの方法で あろうと話し合われた。

○県医師会:がんの連携に関しては、がんの種 類等によって異なるなど、他県を見ても難し い。治療の連携より、ターミナルケアや緩和ケ アの充実を早急に図るべきである。

○福祉保健部:緩和ケア等に関しては、スタッ フの確保が重要となってくる。

○福祉保健部:医療連携体制推進事業に関して 平成19 年度は中部地区で実施したので、今後 は全圏域で取り組みが行えるよう予算確保に努 めたい。

○県医師会:那覇市医師会では、糖尿病の連携 に関して、特定健診で要治療と判断された方を 対象に糖尿病診療等を実施している指定医療機 関へ連携するなどの取り組みを行っていく。

○福祉保健部:南部医療圏は、中部、浦添、那 覇、南部の市町村が跨るなど非常に複雑であ る。今後の連携に関しては、歯科医師会、看護 協会、薬剤師会、栄養士会を含めた連携を強化 していこうと考えている。

○県医師会:がん診療連携拠点病院に対し、が ん登録の義務化(80 %〜 90 %)を徹底すべき である。

○福祉保健部:地区の医療計画を基に、保健所 を中心に各疾病の課題等について検討・協議を 行っていく。

2.日本脳炎ワクチンの確保について (県医師会)

<提案要旨>

去る5 月14 日(水)、中部管内の小児科の会 員から日本脳炎ワクチンの確保依頼があった。

昨年は中部、北部とも同ワクチン接種希望者 が多数あったにも関わらず、ワクチンの入手が 出来ず、接種できない者が多数いた。

今年から、那覇市においても、個別ワクチン 接種に変更となり、同市内での接種希望者が増 加していくことが予測されている。

これらを踏まえ県内での日本脳炎ワクチン接 種希望者に十分対応できるよう、行政からもワ クチン確保の依頼を厚生労働省に要望していた だきたい。

<福祉保健部回答>

日本脳炎ワクチン接種の現状は、従来マウス の脳で作った不活性化ワクチンを使用していた が、副反応としてADEM(急性散在性脳脊髄 炎)が70 〜 200 万回に1 回程度発症すること が問題となり、厚生労働省は平成17 年に積極 的な勧奨の差し控えを通知している。現在は保 護者が希望すれば、法に基づいた接種が可能な 状況となっている。また、平成19 年度の沖縄 県内の卸売一般販売業者における日本脳炎ワク チンの取り扱い状況は、スズケン沖縄薬品115 本、ダイコー沖縄50 本、琉薬44 本(H20.5.20 現在)である。

これらのことから、今年度は昨年以上に需要 が増加することが見込まれるため、ワクチンの 供給体制を整備する必要がある。

  • 1)ワクチンの需要予測を行う(県医師会との 連携)
  • 2)厚生労働省からメーカーへの働きかけ(既 に行っている)
  • 3)県内卸売業者との納入・流通の調整につい ての話し合いを開催予定。

<主な意見等>

○県医師会:日本脳炎のADEM(急性散在性 脳脊髄炎)について、実は那覇市内でも平成 12 〜 15 年に1 件発生しているが集団接種で行 ったからである。今年の4 月からは個別接種に なったため特に問題はない。また、卸業者によ るとワクチンは実績主義で納入の実績がないと 卸せない。さらに日本脳炎の危険性が低い東北 地方での接種が多く、危険性の高い九州・沖縄では接種が少ない。九州・沖縄でも予防接種事 業の整備を整えるべきである。時期はまだ早い がワクチンの確保をしてほしい。

○福祉保健部:まだ、これらのことについては 勉強不足なので勉強してから回答したい。

○県医師会:中部地区は特に養豚場、養豚団地 が多いので、鳥インフルエンザの時の対応のよ うに日本脳炎のシーズンのうち2 〜 3 回、養豚 場のまわりを消毒車で回ることはできないか。

○福祉保健部:市町村に問い合わせたところ、 噴霧すること自体が住民から苦情(環境汚染・ 人体への被害)があったため消毒車を走らせる ことはできない。

○県医師会:ただでさえワクチン不足なのだか ら消毒車のように日本脳炎を少しでも減らせる ような啓発活動など考えて欲しい。

<その他の意見(麻しん)>

○福祉保健部:保育園・幼稚園に対して、「麻 しん」についていろいろな説明を行う予定であ る。これにともない予防接種希望者が増加する 可能性があるのでその時は対応宜しくお願い致 します。

また、中学1 年生・高校3 年生・成人へのワ クチン接種に関して、小児科でしか接種できな いのか。

○県医師会:ワクチンがある医療機関ならどこ でも接種できる。

MR ワクチン接種に関しては、4 月から新た に始まった中学1 年生・高校3 年生への接種啓 発活動を行っているなかで、県内の高校生が麻 しんの疑いのある修学旅行生と接触。その後、 追跡調査を行い20 名に絞り込み、はしか“0” プロジェクトからの補助金で緊急接種し、感染 拡大を未然に防ぐことができた。県外からの渡 航者からの発症がこれからも考えられるので引 き続きMR ワクチンの確保をお願いしたい。

このように学校現場、行政、医療機関がスム ーズに連携がとれれば新型インフルエンザにも 対応できるであろう。

印象記

安里哲好

副会長 安里 哲好

今年度第1 回の連絡会議が行われた。福祉保健部においては、伊波輝美部長は継続だが、 他は新たなメンバーが多かった。当会は前年度とほぼ同じメンバーであった。会議の目的は 福祉保健部と県医師会との連携を図るために、平成10 年7 月より行われている。

今回は「沖縄県保健医療計画における4 疾病(がん、糖尿病、脳卒中、急性心筋梗塞)の 医療連携」と「日本脳炎ワクチンの確保について」の2 議題が当会から提案された。

4 疾病の内、糖尿病を重点的に各福祉保健所と地区医師会とが密なる連携がとれる「圏域 連携会議」を充実させていくことが大切であることを共に確認した。糖尿病の年齢調整死亡 率が男女共に最も高く、糖尿病による新規透析導入率は全国で男女共に2 番目に高い。一方、 受診率は男女共に2 番目に低い現状をいかに打破して行くか、当県の課題であろう。肥満・ メタボ・糖尿病に対し、一番に立ち向かっていくかが、沖縄県にとって「保健・医療的課題」 であると同時に、「政治的課題」では無かろうか。

沖縄県はブタの日本脳炎ウイルス抗体保有率が常に高く、県の日本脳炎流行予測調査では、 毎年注意報が発令されている日本脳炎汚染地域となっている。一方、不活性ワクチンの使用 により、70 〜 200 万回に1 回の重篤な合併症(脳脊髄炎)が発生したことから、厚労省はそ の積極的な勧奨を控えており、保護者が希望すれば接種すると言う。そのような背景の中で、 結果的にワクチンの製造も在庫も充分でない状態が生じたと推測され、沖縄県民にとっては 大変な問題であるが、県内販売業者の日本脳炎ワクチンの取り扱いは209 本とのこと。新し いワクチンの製造、媒介する蚊の撲滅、個別接種の推進が望まれる。




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