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「歯の衛生週間」(6/4 〜 6/10)に寄せて

松川博一

沖縄県歯科医師会
地域歯科保健委員会委員
松川 博一

今年も6 月4 日(水)〜 6 月10 日(火)に 「歯の衛生週間」と呼ばれる一週間がやって来 ます。こう呼ばれたのは、昭和33 年頃でそれ 以前から歯科保健活動は行われていましたが語 呂合わせで6 月4 日の一日を“むし歯予防デ ー”と名付け活動していました。

沖縄県歯科医師会は、昭和43 年に公衆衛生 週間を実施し、数年間その強化に努めてきまし たが、昭和52 年の段階でう蝕罹患率は高い状 況になっていました。この状況に当時の歯科医 師会の先生方はう蝕の予防法等を広く県民に普 及啓発しようと自発的に行ってきました。これ が“デンタルフェアー”といわれるイベントの きっかけになり、あれから年に一回“デンタル フェアー”が開催され現在では「歯の衛生週 間」の一大イベントとなっています。ちなみに “デンタルフェアー”の名称は当時森羅万象に 豊富な知識を持ち語学に堪能な与那城智氏の提 案により命名されたそうです。

今年の標語目標は、「ありがとういつもはた らく歯に感謝」です。この週間の目的として は、歯の衛生に関する正しい知識を国民に対し て普及啓発するとともに歯科疾患の予防に関す る適切な習慣の定着を図り、併せて、その早期 発見及び早期治療等を徹底することにより歯の 寿命を延ばし、もって、国民の健康保持増進に 寄与することです。又、重点目標は「住民主体 による8020(80 歳で20 本以上の自分の歯を 保つ)運動の新たな展開」です。これまで実践 してきた8020 運動の更なる推進と地域に根ざ した生涯を通じた歯の健康づくりを効果的に進 めるため、住民参加型による新たな8020 運動 の展開を目指していきます。

この週間は、厚生労働省、文部科学省、日本 歯科医師会が中心となり毎年実施しています。

本県のデンタルフェアーの会場

【南部地区】6月8日(日)開催予定
(那覇)サンエー那覇メインプレイス
(小禄)那覇市保健センター
(豊見城)JA とみえーる
(浦添)浦添市保健相談センター
(糸満)糸満市農村環境改善センター

【中部地区】6月7日(土)・8日(日)2日間開催予定
沖縄市民会館

【北部地区】6月8日(日)開催予定
ジャスコ名護

【八重山地区】6月7日(土)開催予定
石垣市健康福祉センター

【宮古地区】6月15日(日)開催予定
城辺農村環境改善センター

各地区によっては多少内容は異なりますが中部 歯科医師会のデンタルフェアーの内容を例にと ってご説明したいと思います。

【予防コーナー】
子供や大人の口腔内を用紙に書き込み、う蝕や 歯周疾患の有無や予防等や治療を説明し、日頃 口腔内の気になる事などの相談に応じる。

【顕微鏡コーナー】
口腔内にあるプラーク(歯垢)を直接顕微鏡で観察し、プラークは歯についた単なるみがき残 しの食物塊ではなく多くの細菌の塊であること を知っていただきます。

【ハミガキコーナー】
赤く染まる染め出しを使用し、みがき残しを確 認し個人にあったブラッシング法を直接歯ブラ シを使い指導します。

【フッ素コーナー】
歯を強化するフッ化物塗布を行います。

【視聴覚コーナー】
パネルや紙芝居、寸劇、手品などで楽しみなが ら歯への知識を高めて関心を持ってもらいます。

【栄養相談コーナー】
栄養士会の協力で食育の大切さや、歯を強くす るための食品などについての説明や料理法の紹 介、その他の栄養相談にも応じます。

【よい歯の子の表彰】
学校推薦や歯科医院推薦の子、又、会場からう 蝕がなく口腔内がよい子を表彰し、記念写真、 賞状を進呈します。

【8020 表彰】
80 歳で20 本以上の歯を保っている方を表彰し 記念写真、賞状を進呈します。

又、他に中部地区の小学校から選出された歯 に関わる絵画が多数展示されます。

生涯を通じた歯の健康づくり運動である 「8020」はそれぞれの生活環境で予防を心がけ なければ達成できません。近年では、高齢者の 歯の喪失に一番関わってる歯周病は狭心症、心 筋梗塞や心不全などの心臓血管疾患や糖尿病、 誤燕性肺炎、骨粗鬆症など全身の様々な所に影 響を及ぼす事や、よく噛む事で脳内にある神経 ヒスタミンが活性化し、これにより食欲が抑え られ、エネルギーを消費させる働きを持ってい て、肥満、メタボリックシンドームの予防、解 消になる事もわかってきました。大げさではあ りますが、これは口腔内の問題ではなく身体全 体に及ぼす影響力が命に関わる原因にもなりか ねないのです。

子供にとっては歯周病よりう蝕が強く関係し てきます。あまりにも多く氾濫している甘味食 品や飲料の普及した現代の食生活環境の中、特 に沖縄県は全国でも母子家庭の多い状況と夜型 社会といわれる環境にあって、周囲の大人たち が歯や生活習慣に無関心でう蝕予防もまだまだ 難しい問題だといえます。そのせいなのか三歳 児の一人平均むし歯本数は平成19 年までの5 年間沖縄県はワースト1 位を記録しています。

歯の二大疾患といわれる“う蝕”と“歯周 病”の予防はほぼ確立されています。

従来の「ブラッシングの徹底」「砂糖摂取の 制限」に加えて「フッ化物の応用」と「食の教 育」更にそれぞれの生活環境における「定期検 診」が欠かせません。「歯の衛生週間」のイベ ントを通し、特に住民参加型であるデンタルフ ェアーにおいて参加者が歯に大きな関心を寄 せ、今まで知らなかった多くの事に気づき、ロ 腔内の健康にやる気を起こしてくれればと願い ます。予防はやる気から始まります。

そのモチベーションを持たせる歯科医師の手 腕も問われてきます。もちろん治療も大事です が、まずは、予防を考え更に、全身の健康維持 増進に役立つよう、県民と足並みをそろえ近い 距離からのコミュニケーションをとっていく必 要があります。その一番いい機会が気になる事 など何でも質問ができるデンタルフェアーでは ないでしょうか。

こういう積み重ねが三歳児むし歯有病率五年 間ワースト1 位脱出と8020 運動により多くの 歯を残す事で、より快適な生活を送れる一助と なる事を希望し貢献できれば幸いだと思います。

2006 年デンタルフェアー会場風景

2006 年デンタルフェアー会場風景