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特定健診・特定保健指導に関する説明会

玉井修

理事 玉井 修

5 月の連休明け、7 日には宜野湾市のコンベ ンションセンターにおいて、約800 人を集めて 特定健診に関する説明会を開催いたしました。 更に16 日は宮古島、17 日は石垣島に飛んで同 様の説明会を開催いたしましたが、会場はいず れも満員でした。4 月から鳴り物入りで始まっ た特定健診が、実際の現場では全く機能してい ない現状に、現場の不安と苛立ちは頂点に達し ておりました。この4 月から特定健診の担当理 事としてこの任につきましたが、会員施設が特 定健診の受託によって不利益の生じないように するには、今やるべき事はとにかく情報の開示 だと思い、できるだけ率直に説明をすることに しました。結局健診は受診者と現場の医療機関 がFace to Face で行うものであり、目や耳の 不自由なお年寄りの場合は看護師が付きっきり で聞き取り調査をしなくてはなりません。現場 で扱いやすい問診表の作成や受診票の配布、健 診したデータを如何に加工し国保連合や社会保 険支払基金に提出するシステムなのかを具体的 に現場サイドに立った説明をしなくては、にっ ちもさっちもいかない状況になっておりました。 今回宜野湾、宮古、石垣と非常に有意義な意見 交換が出来、特定健診が動くという実感を得ま した。特に離島では会員施設における個別健診 の立ち上げが出来るかどうかは、今後の健診受 診率を上げるための必要条件となります。宮古 地区医師会、八重山地区医師会の先生方の熱意 が恐ろしいほど熱かったのが大変印象深かった です。以下に今回の説明会の内容をかいつまん で報告いたします。健診受託施設で当日の説明 会に参加できなかった皆様に是非読んでいただ きたいと思います。

【健診項目・詳細な健診項目】

必須の健診項目と詳細な健診項目が決定されました。詳細な健診項目のうち、眼底と心電図 は前年度の特定健診の結果を踏まえて施行を検 討することになるので今回はできないことにな ります。しかし貧血検査に関しては医師の判断 理由を記載すれば検査可能となります。しか し、後期高齢者の健診においてはこの詳細項目 は除外され、顔色不良なお年寄りに対して貧血 検査を施行できないという事はなんだか解せな い気がします。(表1)

表1

表1

【特定健診とその他の健診】

今回40 歳〜 74 歳は国保、社保の扶養家族を 含めて特定健診の対象者となります。更に75 歳以上の後期高齢者健診と40 歳未満の健診も ほとんど特定健診と同様の健診システムが適用 されます。ただし、そのデータの提出は国保、 社保と区別され、更に40 歳未満の方のデータ は別メディアでの提出をしなくてはならなくな り、データの分別がかなり面倒くさいものにな ってしまいました。この複雑な作業を会員施設 にやっていただくのは現実問題として大変な負 担になるものと思われます。(図1)

図1

図1

【特定健診の流れ】

健診受診者が医療機関を受診してその結果を 電子媒体でデータ化して、その後個人情報保護 の目的に暗号化して国保、社保に提出し、それ に対して報酬を受け取るという仕組みになって います。健診データをXML ファイル形式にコン バートするツールが厚生労働省の研究班ホーム ページ等からダウンロードできるようになりまし たが、これが非常に扱いが難しく会員施設が現 場で扱うのは非常に困難であります。更に複雑 だったのはデータの暗号化ソフトです。社会保 険の支払基金から配布されますが、この暗号化 ソフトは非常に複雑で、少しコンピューターに 詳しい程度の知識では全く扱えない代物です。5 月現在、このデータ処理を可能にしているのは 総合保健協会、那覇市医師会検査センター、中 部地区医師会検査センター、北部地区医師会検 査センター4 ヶ所だけで、一部の民間病院にお いては非常な努力によってかなり良い線までい っている施設があるという話を聞いただけでし た。民間の検査委託業者においてはデータのデ ジタル化までは可能ですが、暗号化、分別請求 作業は出来ないという現状でした。特に那覇市 医師会検査センター、中部地区医師会検査セン ター、北部地区医師会検査センターは、会員施 設に配布する伝票が既に完成に近い状態であり、 データのデジタル化、暗号化、分別化、そして 保険者への請求に至るまでオートマチックに流 れるシステムを構築し、実際に動こうとしていました。(図2)

複雑怪奇な特定健診の事務作業を会員施設の 負担とさせて良いものか、会員施設に不利益な 事態が生じる可能性はかなり高いだろう。そう考えると、会員施設には確実で安全な選択肢を 提供する必要があるのではないかと考えるよう になりました。そんな矢先、これに市町村の介 護予防のための生活機能評価が65 歳以上の人に オーバーラップして行われ、特定健診とダブっ ている項目の請求に関しては、保険者に請求す る部分と市町村に請求する部分を引き算して請 求して欲しいとのお話しがあり、現場の混乱は 更に悪化する可能性が高まりました。(図3、4)

図2

図2

図3

図3

図4

図4

【実施可能な健診への取り組み】

健診を実施してこれをXML ファイルにコン バートし、更に暗号化の作業を済ませた健診デ ータを、適切な保険者(社保または国保)に提 出して確実に医療機関に報酬が支払われるシス テムを作る為には、既存の那覇市医師会、中部 地区医師会、北部地区医師会検査センターの機 能をフル活用させ、デジタル化、暗号化、分別 化の作業を全て検査センター内で代行するシス テムを利用させて頂く以外に解決策は無いと思 い、各地で説明会をもち、ご相談をさせて頂き ました。机上の空論ではなく、実際に動かすた めにはどうすれば良いのかを精一杯議論しまし た。5 月に入っても金縛りにあったように二進 も三進もいかなくなっていた特定健診を何とか 動かそうと、多くの皆さんが自分たちの地区を越えた協力を行っています。今回の難局におい て、多くの会員の皆様の真摯な気持ちが大変う れしく、絶対に動かしてみせるという私のモチ ベーションになりました。

特定健診は那覇市、中部地区、北部地区では 恐らく6 月か7 月には動くと思われます。また宮 古、八重山を含めたその他の多くの地域でも1 ヶ月ほど遅れて動き出すのではないかと期待し ております。動いて初めてぶつかる問題や、疑 問もこの新たな試みの中に生じて来るものと思 われます。その為に特定健診メーリングリスト への登録を呼びかけ、情報の共有を呼びかけて います(アドレス; jimsyo@okinawa.med.or.jp 宛にご連絡下さい)。

また、この沖縄県医師会報においても特定健 診Q & A というコーナーを作って、特定健診に 関する様々な疑問や情報を共有できる様にして いきたいと思っております。

メタボリック症候群が大きな問題である沖縄 県においてこの特定健診は非常に重要なもので あります。また、特定健診は5 年後に定められ た実施率の達成状況を勘案して各保険者が負担 する後期高齢者支援金が± 10 %の範囲で加算、 減算等の調整が行われ達成出来ない保険者は、 負担が多くなるというペナルティーを課せられ ます。これは県民全体に対する負担増につなが る可能性があり、避けたい事態であります。現 在の健診受診率が約2 割程度という厳しい現実 を踏まえ、7 割という高い目標を達成する為に は沖縄県医師会の会員施設における個別健診の 役割は非常に大きいものであると思われます。

最後になりましたが、この特定健診を受託す る為に多くの医療機関が手を挙げて下さったに もかかわらず、充分な説明が出来ず、現場に不 安と混乱を生じさせてしまった事に対してお詫 び申し上げます。