沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 5月号

理事退任に寄せて

嶺井進

前常任理事 嶺井 進

小生は、平成16 年4 月浦添市医師会選出の 伊地柴彦先生の後任として県医師会理事となっ た。二期務めたが、一期目は稲冨会長のもと、 二期目は宮城会長の執行部で医療関係者対策、 福祉経営担当理事であった。最も注力したのは 看護師対策であった。社会が不況で失業率が高 いなか、高齢社会が進行するに従って、医療界 は人材不足が目立つようになった。

私は昭和51 年12 月に開業したが、最も苦労 したのは人材の確保である。医師はもちろん、 看護師、薬剤師、X 線技師、理学療法士など医 療従事者すべての分野で人材の確保に難渋し た。10 数年前から公立の看護養成所が次々と 廃止されたが、失業率が他府県より約2 倍高い 本県で、就職率100 %の看護養成校をなぜ廃止 するのか、そのとき何故反対運動が起きてない のか今もって理解できない。幸い、大浜方栄先 生のおもと会沖縄看護専門学校、北部地区医師 会北部看護学校のお陰で看護師不足は若干緩和 されたが、全国的にも看護師の需給はひっぱく しており、ゼロサムゲームの様相を呈してい る。条件の良い大都市に看護師が移動し、地方 が悲鳴を上げている構図で、それが病、医院経 営を困難にしている。医師に関しても同様で、 医療崩壊の危機に立たされている。

次年度より、琉大医学部の定員が離島医療対 策として2 名増員されたが、不充分で、10 名程 度必要と思われる。しかも一人前の医師になる のは10 年先のことである。昨年、名桜大学看 護学科(定員80 名)、今年4 月より中部地区医 師会立ぐしかわ看護専門学校(定員80 名)が 新設されたのは心強いかぎりである。

小生が、医師養成、及び看護師養成に関して 理解できないことは、卒業生が殆ど就労又は稼 働することを前提にしていることである。私見 であるが、医師の10 %以上、看護師の20 %以 上が稼働していないと思われる。医師、看護師 の数は免許の数でなく、実働、すなわち週40 時間以上の就労数で算定すべきと思われる。医 療現場と当局との認識の違いは、ここにあるの ではないか。今後数年ごと実働数で算定して、 将来に役立てる様にしてもらいたい。本県で、 看護、介護の専門学校を増やすと、我国の高齢 社会に貢献できるのではないか。それが、現在 2 倍となっている失業率を下げることにもなる。

江戸時代、農業は生かさず殺さずの世界であ ったが、現代の医療介護の分野は、まさに生か さず殺さずの世界であると思う。社会保障を手 厚くしすぎると社会の活力がそがれる面もある が、現在の医療費抑制は破壊的であると思う。 老人、病人、弱者は早くこの世から退場してく れと云わんばかりである。まさに、縄文時代の 弱肉強食の論理に近いと思う。国民の関心が医 療、介護に向うまで我々は耐忍ぶ必要がある。

経営改善には診療報酬のアップが必要である が、当分財政的にそれは期待できないと思う。 したがって経費節減が今後の課題である。建 築、設備、金利、電気、水道、ガス、診療材料 費、薬剤費、人件費などこまめに点検をするし かないと思う。

最後に、県医師会理事になって良かったと思 うのは、多くの方々と知り合えたこと、医師会 の仕事が多岐にわたっており、有能な理事のボ ランティア精神と、優秀な事務局に支えられて いることが理解できた事などである。退任にあ たって、これまで大変お世話になったことに対 し、心から感謝申し上げる。