沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 4月号

平成19年度九州医師会連合会
第2回各種協議会

3.地域医療対策協議会

副会長 玉城 信光
常任理事 安里 哲好

当日は、今村(定)、石井日医常任理事にも ご出席いただき、それぞれの議題についてコメ ントをいただいた。

協 議

協議事項1 〜 3 に関しては、医療計画に関す る提案議題のため、一括して協議が行われた。

1.新たな医療計画の見直しにおける4 疾病 5 事業の医療連携体制の構築について (佐賀県)

<提案要旨>

本件については、これまでの各種協議会にお いても提案事項として取り上げられ、各県で行 政との協議や調整が進められていることと思わ れるが、各県におけるその後の進捗状況につい てお伺いしたい。また、新たな医療計画では、4 疾病5 事業毎に必要となる各医療機能を担う医 療機関の名称を記載することが求められている。 各県では、全ての医療機能について医療機関名 を明示されるのか、明示基準等があれば、その 方針や対応状況についてお伺いしたい。

2.医療計画の見直しにおける4 疾病5 事業 並びに数値目標について(福岡県)

<提案要旨>

各県において医療計画の見直しが進められて おり、数値目標を設定していることと思われる が、数値目標が出てしまうと、縛りが出て不都 合が生じる恐れがあると危惧しているところで ある。当県では、数値目標を全国に合わせて設 定する等、出来るだけ広く設定することとして いる。各県において、どのように設定する予定 なのかお伺いしたい。

3.医療計画における集約化・重点化と地域 医療について(大分県)

<提案要旨>

地域医療計画を見直すにあたり、4 疾病・5 事業について集約化と重点化が図られている が、医療圏によっては適合する施設がなく、医 療圏外や中心部の医療圏の公的病院に重複して 集中する結果となっている。脳卒中も含めて、産科・小児・救急医療については、重点化・集 約化がどこでも進んでいるのではないかと思わ れるが、犠牲になるのは、集約化に置いていか れたところ、特に民間の中小病院やそこに漏れ た公的医療機関が益々医師不足に繋がる等、機 能を発揮できないのではないかと危惧される。

日医は今後の地域医療の診療をどのようにシ ミュレイトしているのかお伺いしたい。

<各県医師会の主な回答>

【熊本県医師会】

本県の保健医療計画は、ほぼ出来上がってい る。ただ、4 疾病5 事業に関して、医師不足あ るいは病院不足といった問題があるが、二次医 療圏を超えた連携体制を構築することにしてい る。しかし、急性期医療と慢性期医療を分けて 連携をとるということが基本的な姿勢であり、 各疾病ごとの協議会等で構築していくこととし ている。また、地域住民への公表については、 具体的な病院名や連携体制のシステム等、県の ホームページ等で公表することとし、1 年おき に改正していく事を基本としている。

【福岡県医師会】

本県では、厚労省が考えるピラミッド型を排 除し、全ての医療機関が横並びの連携体制をと る方針である。また、医療機関の情報について は、「ふくおか医療情報ネット」にて公表する ことにしている。さらに、各疾病ごとの連携図 には、かかりつけ医が中心になるべきと考えた 表示をしている。

【鹿児島県医師会】

保健医療計画については、資料からも具体的 な内容にはなっていない。地域連携パスの機能 については、離島や大隅半島は救急車がヘリで 行き来をする等、医療圏によってかなり事情が 異なってくる。そのため、各医療圏で機能を決 めるべきであり、県医の包囲した展開は出来な いと考えている。例えば、国の基準は、救命救 急センターが急性期の脳卒中を担い、脳卒中専 用のICU 病床、CCU 病床と記載されている が、鹿児島県では無理がある。例えば、地域医 療支援病院あるいは救急告示病院等も参入して いいのではないかと考えている。24 時間CT が 稼働できて、患者が推定できればいいという基 準を試案として作成している。

また、医療機関等の公表については、各医療 圏に一任しようということであったが、医療計 画に載っていないと脳卒中の地域連携パスの診 療報酬点数が算定できないので、出来ない所だ けを手上げしてもらうという案を日医からいた だいたので後ほど教えていただきたい。

集約化・重点化については、県内12 施設あ る医師会病院を中心に診療ガイドライン等を参 考にした研修会等を開催する予定としている。

【佐賀県医師会】

脳卒中を例にあげると、脳卒中の医療体制の 目標、医療機関の条件、医療機関に求められる 事項を決めて、アンケート調査を2 年間で2 回 行った。その調査結果から疾病毎の医療機関リ ストを作成し、別冊として添付予定している (他3 疾病も同様)。ただ、問題なのは手上げ方 式なので、機能がないところも急性期にこだわ るといった問題が生じてくる。

数値目標については、全ての疾患において県 が設定している。

集約化・重点化については、小児救急と周産 期医療に関してのみ集約化ではなく重点化され ている。医療計画にも記載済み。

【宮崎県医師会】

がんに関しては、厚労省が定める施設基準を 満たした施設が、がん診療拠点病院ということ で決まっており、県が出してきた案を基に議論 しているが、民間病院がどこにも入っていない ので今後検討していく。その他の疾患について は、民間病院も入っている状況である。

数値目標については現在はっきりしていな い。集約化・重点化については、7 医療圏とは 別に、こども医療圏を3 つ構築している。産科においては、周産期医療ネットワークを構築済 みである。

【沖縄県医師会】

保健医療協議会の下に、がん対策検討会と生 活習慣病対策検討会を設置し検討を行ってい る。さらにその下では、保健所を中心に各地区 医師会理事会との説明会の開催や各地区の医療 機関に対しての説明会を開催し検討を行ってい る。4 疾病に関してはある程度の基準と手上げ 方式により、各医療機関を載せている。概ね4 疾患の機能分化と連携は構築されており、県の ホームページへ掲載を予定している。

数値目標については、県および地域における クリティカルパスの導入をきっちりやることを 設定している。

集約化・重点化については、特にそのことを念 頭において構築したわけではなく、既に5 保健医 療圏内に中心的な医療機関が1 ないし複数あり、 様々な会議で検討が行われ、地域における医療連 携がなされて充実していることを期待している。

【大分県医師会】

大分県では、現在、標準的ながん診療につい て検討を行っているところである。専門的なが ん診療を行う医療機関を決める際には施設要 件、設備、マンパワー(専門医)、緩和ケア等、 非常に細かい設問を基に点数化し、手上げ方式 により決めた。民間病院も手上げがあったが、 スコアにすると勝ち目がない。非常にデリケー トな設問になっている部分もあり、現在あがっ ている医療機関以外の公的医療機関からも非常 に強い激論があった。今のがんの医療体制をみ ると、県民にとっての不安はそんなにないと感 じる。専門的ながん診療を行う医療機関を決め てもらえれば、がん診断において非常に専門性 のあるプライマリケアを扱う医師が多いので問 題はないと考える。今度の医療計画では下りの 連携を主に決めようとしているのではないかと 思う。標準的ながん診療の定義は何なのか、そ れを明記する必要はあるのかという疑問が生じ ている。また、4 疾病において専門的な診療を 行う医療機関といったような拠点病院を置く と、行政がそれに耳を傾けて、医師会の声が弱 くなってくるのではないかと危惧している。む しろ、日医は、今まで通り専門性を持った医療 を展開しているので医療機関名の明記は不要と の呼びかけをしていただきたかった。

【長崎県医師会】

昨年、医療計画の見直しを行った。今回は、 4 疾病のうち2 疾病と2 事業に限定して見直し を行っており、がん、脳卒中に関しては従来の 医療圏ではなく4 つの圏域に分けて、医療連携 体制を構築していくこととしている。また、昨 年行った医療機能調査の不要な項目を外すこと を提案したが、行政は全て出して欲しいとのこ とであった。数値目標については、まだ明示し ていない。

<主な意見等>

・がんにも部位があり、専門病院も異なってく るので、部位別に分けた医療連携を構築し た。(沖縄県)

・6 つの部位別がんを分けて医療連携を構築し ている。(佐賀県)

・いずれのがんにしても集学的である他、放射 線治療が出来るか等、何を基準に検討したの か。(大分県)

・放射線治療が可能な施設は別枠で抜き出して いる。がんでも病院に限らず、部位別での治 療に関して、診療所が病院を上回っていると ころもあるので、その辺も考慮して選定して いる。(沖縄県)

・地域により医師不足があり、がんの拠点病院 の施設基準を満たすのは非常に困難な地域も ある。また、二次医療圏を12 から9 に設定 したが、医師会との連携が困難になってきて いるので、それらの解決が必要になってきて いる。(鹿児島)

・本県では13 の拠点病院があり、がんのほと んどが医療圏内で解決している。しかし、全 てが大学や公的病院である。がん対策基本法 ができたが、補助金を受けている施設でしか 完結できない傾向にある。(福岡県)

・沖縄県では、肥満度が全国1 位で、糖尿病の 死亡率も多い。今回、計画を作成してみたも のの、実行をどうするか危惧しているところ であり、地区で基準をどうしようか模索して いるところである。各県において、対策等を とっているところがあればご教示願う。 (沖縄県)

・大分県では、産科・小児科における集約化は できず、現状よりも集約化するのであれば、 地域医療が崩壊する。集約化ではなく重点化 を図る事が必要であると考えている。各県の 見解を伺いたい。(大分県)

・周産期医療には困っている。NICU が不足し ており、県外へ搬送しているのが実状である。 小児救急に関してもかなりの集約化が構想と して出ているが、地域住民にとっては非常に 住みにくい地域を作るということに繋がる恐 れがあるので問題となっている。(熊本県)

・周産期医療については、出生10 万人あたり の集中治療病床数は比較的多い。また、 NICU についても病院施設、総合周産期セン ター等で対応できている。今のところ集約は 必要ないと考えている。(福岡県)

・集約化は大都市には良いが、地方都市には絶 対に向かない。周産期についても、へき地の 産科医療は非常に危機的状況にある。また、 麻酔科医不足による帝王切開への対応が困難 である等、医師不足による問題があがってい る状況。(鹿児島県)

・隣県の境界地域では、県外搬送されている状 況である。今まで総合周産期母子医療センタ ーがなかったが、佐賀病院を中心に整備を行 っている。小児救急に関しても同様である。 集約化は行わず、重点化を図っていく。 (佐賀県)

・周産期医療ネットワークを作成しており、4 つの地域に分け、30 分以内と60 分以内の搬 送可能地域を設定し網羅している。小児救急 に関しては、3 つの地域に分けて、それぞれ の拠点病院で行われている。(宮崎県)

・小児医療は、小児医療連携検討会での検討を 基に作成された「小児科医療の集約化及び連 携についての報告書」を踏まえて作成してお り、概ね充実している。周産期医療について は、同様な検討会で作成された報告書を踏ま えて検討していくところであるが、一部の地 域(本島北部)を除き充実しているが、その 地域も徐々に充実しつつあり、現在は搬送で カバーしている。(沖縄県)

・産科に関しては、総合周産母子センター等に より、概ね充実しているが、小児科に関して は、入局者が激減したため、集約化を積極的 に行っていく状況である。(長崎県)

【日本医師会】

まず、4 疾病5 事業の厚労省(案)が示され たとき、会内で検討し大変である事を認識し た。しかし、厚労省は法律で決まっているので 是非行っていただきたいとの事であった。説明 会の席上では、これだけのことを行うのに余程 の予算を用意していただけるのか質問を行った が返事は無かった。

日本の医療は非常にパフォーマンスが良く、 現場の過重労働により成り立っているもので、 世界に誇れるリザルブを持っている。それをベー スに相談していくのが一番良いものと考える。

今回の医療連携体制の構築に関して、国の政 策の一方的な押し付けにならないようにという ことをこれまでの会合の中で何度も主張してき た。厚労省の指針では目安であり、必ずしもこ れに縛られるものではないという結論をいただ き、厚労省の回答はあくまで参考であって、各 都道府県で積み上げたものが実際のものである ということが明言されている。よって、ここに 上がっている原案に対して議論をする事が一番 大事な事だと思う。目標についても参考であ り、医療提供体制は我々であるので、地域の実 状に沿って計画に積極的に発言していくという 作業が一番大事である。その趣旨に沿って日本医師会からは4 回関係通知をお送りした。その ような情報に非対称性はないものと考える。各 県で意見を持ち寄り情報交換した上で、最後に ブラッシュアップすれば、この作業に非常に意 味があるものと考える。

施設名明記に関しては、医療の主役は国民で あり、日本の医療体制はフリーアクセス、現物 給付といった国民皆保険の基本がある。よっ て、選択権は患者、国民にある。それを基本に 考えるのであれば、施設明記をすることは悪く ない事だと思う。現代の社会は、インターネッ トの普及等による情報社会となっており、医師 会が作った蔵出しのリストを公表するのは悪い 事ではないのではないか。ただし、それが固定 化されることは、医師の流動化に繋がるので問 題である。

集約化・重点化については、欧米からみると 日本は、どうして細かい医療機関がたくさんあ るのかという意見が出てくる。しかし、これは 日本の伝統的文化で、パフォーマンスの良い医 療をしてるので、悪いと言われる事はない。

これまでは、施設完結であったが、それは医 局集中につながる。医療連携体制は、多極分散 型に増えていく。病院とクリニックの連携体制 に関しても、必ずしも病院の方が上とは限らな い。その中で連携体制を構築していくという二 つのベクトルで考えていけば良いと思う。

4.高度・急性期総合病院を、民間も否定し ないとしつつも、公立、公的を想定して いる。それが地域医療計画の4 疾病にも波 及することが懸念される。日医の考え方 は?(宮崎県)

<提案要旨>

宮崎県のがんの拠点病院は全て公的病院で、 がんの放射線治療ができないとか、分散病院は その病院にもないといった問題があがってきた。 原課長が前年度言ったことを踏まえて再編成し ようとしているのではないかと考えていた。まさ に今度の診療報酬改定も大病院の報酬があがる ようになっている。ということは民間の中小病 院は益々疲弊して、倒産する施設が増えてくる のではないかという裁量をしているのではと懸念 している。それに対抗して日医は、基本的に医 療制度、地域医療を含めてどういう風に考えて いるのか非常に疑問を感じる。これは、4 疾病5 事業にも必ず出てくるのではないかと不安であ る。積極的に取り組んでいただきたい。

【大分県医師会】

我々は、医師会活動を通して、医療のアクセ スを先に考えているのに、それから先はアクセ スに応える地域医療提供体制、すなわち地域で 専門性をどう保っていくか。次に医療計画が医 療費削減にどう繋がっていくか。日医の考えを お聞きしたい。

その中で、助成金と診療報酬がある。今回の 診療報酬改定はどこにプラスになっているのか。 アクセスの部分には何も反映できていない。助 成金も集約されたものに集中してしまうという ことがおこってくる。我々が作ろうとしているも のと逆の方向に向いているのではないか。救急 に関して言えば、今まで1 次・2 次・3 次と上り を考えていたが、現在は、まず3 次に集めて下に 下ろしていくという下りの方向になっている。が んも同様で、それが現実におこっているが本当 にいいのか。今の医療を検証すべきである。

【日本医師会】

コストダウンに繋がるかといば、既に日医が 今回の医療法改定で5.7 % up を要求した。今 の状態を維持する、それに加えて医療安全等の 質を上げるとすれば最低限の報酬をあげるよう 明言した。

民間と公的医療の問題に関しては、前提が一 つあり、国公立の病院がDPC や7 対1 をとった 結果、各地域医療に影響を与えたが、結果とし て赤字になった。決して勝ち組になっていない。 政策医療や教育への補助金が減らされた。実は 政府はその税金投入を減らした事を医療保険で 補填していた。しかし、残念ながら今の状態は 補填しきれなかったというのが現状である。

民間の医療を縮小していくのは、各地域連携 の中でしっかり考えていく事が必要である。そ れらのサポートはしっかり考えていかなければ ならない。

【日本医師会】

九州の周産期医療は8 割型、診療所あるいは 中小病院が分娩を担っている。極めて地域の事 情が大きく関わってくる分野である。そういう 意味から周産期医療センター等を作る事を上か らの押し付けで言われる事は、極めてナンセン ス。宮崎が安全でお産が出来る県と言われてい るが、総合センターも地域センターも無い。開 業医をトレーニングして新生児も診れるような 体制を構築しているからである。

民間と公的病院の棲み分けについては、少な くとも周産期医療についてはきちっとしたスク ラムを組んで、ハイリスクは公的病院で、ロー リスクや正常分娩は、診療所あるいは中小病院 で行うということを常に申している。

【大分県医師会】

医療機関の明示に関して、検査のみの医療機 関を乗せれば、受療行動に繋がると危惧され る。現実の患者の心理は別方向ではないか。

【宮崎県医師会】

まさに看護師獲得でいえば、給料・休日の多 い公的病院に行くのが決まっている。その中で 私的病院と公的病院は競争をしたくない。で も、止む無くせざるを得ない状況を作ってい る。片一方は赤字で補填がきく反面、給料を上 げたくてもあげられないといったフェアでない 部分がある。7 対1 を取れない民間病院はたく さんある。何らかの方策を取らなければ民間病 院はどんどん潰れていく。

【日本医師会】

中医協でも異例の建議書を出して、今度の改 定に反映しようと動き出している事でご理解い ただきたい。

5.ドクターヘリの現状と国・県よりの補助 について(沖縄県)

<提案要旨>

沖縄県では、浦添総合病院が平成17 年より、 北部地区医師会病院が平成19 年6 月より救急 搬送ヘリ(日中、近距離離島、へき地急患搬 送)を実施しているが、国や県からの補助は無 い。一方、夜間、遠距離離島救急搬送は、県内 11 医療施設の協力の下に、陸上自衛隊及び第 11 管区海上保安部が行っており、その予算は 県や市町村等で各500 万円程度確保している。

近未来において、ドクターヘリが救急医療の 中で日常的になる時代が来ると思われる。各県 におけるドクターヘリの現状あるいは予定と予 算等についてご教示いただきたい。

【福岡県医師会】

当初は病院間での搬送であったのが、年々、救 急現場からの搬送にシフトしてきた。最近の動向 は高速道路の離着陸が可能になった。また、離着 陸場の確保と砂塵問題について、パイロットか ら、芝生を植えて欲しいと要望されている。

【長崎県医師会】

離島が多いのでドクターヘリの活用が多い。 長崎医療センターに常駐しており、国立病院機 構のため人件費等の補助対象にはなっていな い。運営主体は県で運行会社と契約をしてい る。出動回数は昨年に比べ倍増している。

昨年の協議会で、石井常任理事よりドクター ヘリに関するコメントをいただいたが、ドクタ ーヘリに関しては既に議員立法による促進が検 討されている。また、スタッフの手当につい て、健康保険の財源による運用費の負担は認め られないという話だった。その後の進展状況を コメントいただきたい。

【日本医師会】

ご承知のとおり法律ができた。元々、ドクタ ーヘリ事業はあったが、西島先生と連携を組ん で、昨年の6 月に特別措置を議員立法で成立できた。その過程では、与党のワーキングチームに 出席して、医師会の関与とメディカルコントロ ールの体制の確立が法案に明記された。ドクタ ーヘリは平時における危機管理と考えれば、運 用は国・都道府県等、行政が責任を負うべきで あって、ヘリやパイロット、燃費等、医療圏か ら給付されるという事はないよう申しあげた。医 療として基金等から手当てされた上で医療を受 けるようしていただきたいと申しあげた。

また、国庫補助金の拡大充実と弾力的な運用 を要望している。

さらに、大企業等による基金や寄付金で運用 できないか法律に記載している。寄付財源が多 い医療の現場に寄付するというしくみが法律に 明記されている。これらの具体化については、 厚労省の委員会に出席して中身について詰めさ せていただいている。

ちなみに、1 機あたりどのぐらいの費用がか かるのかについて、国(MAX): 8,485 万円、 都道府県の裏負担: 8,485 万円、診療報酬か ら390 万円という積算になるので、行政的な運 用となる。そこに寄付財源を活用できるように していきたい。

ドクターカーとヘリのどちらを選ぶかについ ては、プラス防災ヘリや自衛隊、警察、海上保 安庁等との連携を地域のメディカルコントロー ルの中で吟味していただきたい。

6.医療廃棄物の適正処理の方策と問題点に ついて(鹿児島県)

<提案要旨>

各県の医療廃棄物の適正処理に関する取り組 み状況、特に次の4 点についてお伺いしたい。

1)在宅医療廃棄物の取扱い(自治体との協議 状況等)、2)医療廃棄物の分別方法、3)産業廃 棄物収集運搬処理業者の選定方法、4)産廃業者 との契約内容(処理費用等)。

【熊本県医師会】

1)地元医師会と自治体との協議は行われてい ない。2)20 ヶ所の市町村で焼却処分場を有し ているが、注射針等を処分できる施設は民間2 ヶ所のみ。医療廃棄物の取扱いや処分、分別に ついては、市町村で異なっており統一した処理 はなされていない。3)県内15 郡市医師会(大 学医師会を除く)のうち、1 医師会については 収集・運搬事業者並びに処理業者と委託契約を 締結している。4)感染性注射針等(20 )1,600 円〜 2,800 円、感染性血液・液体等付着物等 (50 )2,200 円〜 3,000 円。

【福岡県医師会】

県医師会では全く把握しておらず、各郡市医 師会あるいは医療機関に一任している。一部の 郡市医師会では見積もりをとって紹介をしてい る。電子マニフェストが普及してきて外資委託 等、GPS で追跡するといった業者が福岡市に 設立され全国を行脚しているとのこと。岐阜県 が導入したという話を聞いた。条件が良ければ 乗っかっていこうと思う。

【佐賀県医師会】

基本的には各医療機関に一任している。業者 の選定契約等については、一部の郡市医師会に より一括交渉が行われている。

【宮崎県医師会】

昨年の日州医事5 月号に感染性廃棄物の適正 処理という記事を載せた。最も安易な文書であ るので一読いただきたい。感染性廃棄物につい ては、市町村は全く指導をしていない。また、 各県バラバラである。2 月13 日に産業廃棄物担 当理事連絡協議会が開催されるので、その後、 各地区医師会の担当理事を集めて情報交換し、 県医師会でも状況を把握していただきたい。

【沖縄県医師会】

各市町村と医療機関とが個別に協議を行い対 応している。在宅医療廃棄物の処理は各医療機 関で行っている。廃棄物の全てを医療機関で回 収している。業者の選定も各医療機関で行われ、費用等については把握していない。

【大分県医師会】

県医師会と行政で一度だけ合同講習会を開催 した。その中で一番問題になったのは、最終的 な責任を医療機関が負う事であった。許可は県 が出しているからそれでいいのではということ を根拠にし、医療機関が終末まで行く事がない と申し上げたが認められなかったので、日医で 取り組んでいただきたい。

【長崎県医師会】

1)自治体との協議は殆ど行われていない。2) 感染性廃棄物、非感染性廃棄物に分別して適正 に処理されているものと思う。在宅医療の廃棄 物は全て医療機関で回収。3)基本的には医療機 関の個別契約に任せている。4)感染性廃棄物 (20 )2,000 円、レントゲン現像液・定着液 (10 )1,000 円。

【日本医師会】

2 月13 日の担当理事協議会に向けて、事前 にアンケート調査を行っており、その調査結果 を基に比較検討する事となっている。在宅重視 という厚労省の流れからすれば、在宅のごみは どんどん増えてくる。それに対する精度管理が あやふやのままで、しかも医療機関だけが厳し い事を言われるのではなく、平準化していかな ければならない。環境大臣は医師会員であるの で世界でのゴミの問題や温暖化対策の中で医療 機関はどういう協力をするのかという文脈を新 たに起こしている。

情報連携をしっかりし、各地方自治体のとこ ろで話し合う必要が出てくると思われるので来 月の協議会を基点にしていただきたい。

7.特定健診の集合契約について(福岡県)

<提案要旨>

本県では、保険者協議会の代表保険者との集 合契約について協議を進めているところである が、本会より空腹時血糖を実施する場合(6,500 円)とHbA1c を実施する場合(8,500 円)の単 価を示しているところであるが1,000 円程度の開 きがあり、成立に至っていない。期日も迫って おり、最終決着をしなければ行けない状況にあ るが各県の進捗状況をお伺いしたい。

【熊本県医師会】

最終的に7,700 円台(事務費、HbA1c を含め て)で案が出ている。今月の理事会の承認により 集合契約として決定する。ほとんどの市町村が県 医師会の集合契約に乗りたいとの意向である。

【鹿児島県医師会】

12 月下旬に代表保険者が社会保険事務所に 決定した。既に市町村国保の単価がバラバラに 決まった後だったので、郡市医師会と市町村と の調整をお願いしている。

【佐賀県医師会】

県内全ての市町国保が統一料金で県医師会と 集合契約を結んでいる。健診センターで電子媒 体による請求等全てを請け負っており、特定健 診に関しては会員に限り、6,280 円(個別健診・ HbA1c を含めて)となっている。非扶養者も国 保に依頼して、同額で実施できる事になってい る。後期高齢者も同様に進めていきたい。

【宮崎県医師会】

郡市医師会と市町村との契約が最終の詰めの状 況である。ただし、社保がようやく代表保険者が 決まり、政管健保は、医師国保と調整を行ってい る。各県の状況を伺いながら進めていきたい。

【沖縄県医師会】

国保連合会と県医師会で契約を予定してお り、7,000 円あたりで交渉しているが、沖縄の 国保の体制が非常に弱いので佐賀県あたりに落 ち着くものと見られる。社保に関しては、国保 を見ながら交渉中である。

【大分県医師会】

県医師会と健康保険組合および国保連合会と 集合契約をすることになった。単価は、空腹時 血糖を選択した場合(5,670 円)とHbA1c を 選択した場合(7,570 円)、詳細な健診項目 (心電図、眼底、貧血検査)を選択した場合 (9,680 円)となっている。ただし、消費税を含 むとしており、今後、根拠となる費用が判明す れば、1 年契約であるため、次年度は加算を要 求する予定である。後期高齢者も同様に進めて いきたい。

【長崎県医師会】

代表保険者と県医師会で一括契約する事になっ ており、単価は、日医総研による7,500 円を披露 している。市町国保については、上乗せ健診であ る事から、それぞれの郡市医師会で対処している。 価格も含め、契約に至った医師会は無い。

【日本医師会】

代表保険者については、1 月23 日現在、内 定段階で全都道府県決定している。健診単価に ついては、検討しているところが多い状況であ る。電子化に対応できない医療機関に関して は、代行入力を使う事を検討しており、決定し たら案内する。ORCA に乗せるソフトも日医で 検討している。消費税の問題については持ち帰 って検討し報告したい。

8.県行政からの委託事業等とその総額につ いて(沖縄県)

標記の件については、内部資料で対応する事 になった。

日医中央情勢報告

健診・予防医療、労災・自賠責、急性期医 療、慢性期医療、介護ケアといった地域医療を どのような順番でやっていくかまちまちである が、その中で医療保険、労災保険、自賠責保 険、介護、その他いろいろな資金が使われる。

そういう中で、今は地域を見ていくことが重 要である。当然、行政と一緒にならなければな らない。その一つとして、メディカルコントロ ール体制に網掛けが必要になってきたという事 を認識いただきたい。特にコーディネータ機能 をどこで高度化するのか、リソースをいっぱい 使わなければならないのかということで、厚労 省で予算化していただいた。

救急・災害医療では、BLS の習得に一般人 や救急隊員の参加が増えてきている。ALS に ついてはドクター全てがレベルアップをして、 up to date していくべきである。

#8000 電話相談については、家庭や地域力の 低下が見られるので、ないよりあった方がよい。

災害医療に関しては、常にそういう状況にあ るという事を念頭に置いていただきたい。ま た、発災現場までは政策医療なので税金投与が 当たり前であるが、後方支援やDMAT、コー ディネータ機能については、地域医師会を中心 に医師全てに求められる事である。

このような中で、今日の医療におけるパラダ イムの諸相については、保険診療があまりにも 発達したので政策医療が忘れられているので、 積極的に取り組まなければならない。政治も行 政も報道機関も同様である。

世界医師会活動として、ジュネーブ宣言、 WMA 医の国際倫理綱領、ヘルシンキ宣言を行っ ている。また、WMA 医の倫理マニュアル日本語 版の翻訳を行ったので是非ご覧いただきたい。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

地域医療対策協議会は4 疾病5 事業に関係した議題が4 つと、「ドクターヘリの現状と国・県よ りの補助について(沖縄県)」、在宅医療を中心とした「医療廃棄物の適正処理の方策と問題点に ついて」、「特定健診と集合契約について」であった。4 疾病5 事業については、がんと周産期医療 について集中的に話され、当県で提案したがんの種類別の機能分化と連携について、興味を引い た。医療機関の公開に対しては、その内容の改正の時期も含め、色々意見があった。他県では医 療計画における、医療機関の重点化・集約化について、過度に敏感になっていたが、当県では、 これまでに、各種検討会で検討され、5 医療圏に中心的な病院が1 ないし複数存在しており、それ らを中心に地域における医療連携がなされ、充実していくことが期待される。

ドクターヘリに関しては、長崎県と福岡県が積極的に展開しており、長崎県では長崎医療セン ター(大村)より、離島・へき地も含め全域に運航しているとのこと(午前8 時30 分から日没30 分前まで、出動できないのは1 年間で1.5 日のみ)。福岡県は佐賀県・大分県と共に、久留米大学 病院に配備されている福岡県ドクターヘリを共同運航している。その他の県は防災ヘリや自衛隊 のヘリを利用している。

特定健診と集合契約に関しては、地区医師会で契約を勧めているのが数県あり、県医師会が代 表契約者となり決まったのは、市町村国保の個別健診について、佐賀県のみであった(統一単価、 HbA1c を含み: 6,280 円)。「県行政からの委託事業等について」を当県から提案したが、各県か ら内部資料として委託事業・補助事業の項目が提示された。

協議会に参加して感じたことは、各県が多方面から分析し、色々な見解を持っていることを知 り(8 協議事項に対し8 県の見解が提示される)、また、参加することによってそのような情報が 瞬時に得ることができ(県医師会単独で行うと膨大な時間、労力と費用を要すると思われる)、こ れまで悩んでいたことの幾ばくかをも軽減でき、更に良好な展開に進めていけるような気持ちを 強くした。一方、当会からも、斬新なアイディアが提案され、多くの意見を求められた場面もあ り、その他、進んでいる領域は少なくなかった。