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平成19年度第5回沖縄県医師会・
沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る1 月21 日(月)、県庁3 階第2 会議室に おいて標記連絡会議が行われた。

協 議

1.新型救命救急センターの北部医療圏内設 置について(県医師会)

<提案要旨>

沖縄本島には中南部医療圏に救命救急センタ ーが2 ヶ所と新型救命救急センターが1 ヶ所あ るが、北部医療圏内にはない。

北部医療圏の人口は10 万人と少ないが、面 積は本島の半分弱あり、主要な観光地が多い。 年間500 万人を超える観光客の大半は北部地域 を訪れている。また祝祭日になると中南部の県 内者も多く北部を訪れる。北部地区医師会病院 の経験でも観光客や中南部の人々を救急で受け 入れることが多々ある。定住人口では測れない 救急医療の需要があると考えている。

北部医療圏内の地域完結型医療を目指すだけ ではなく、観光立県を支えるためにも、北部に新 型救命救急センターの設置を今後の中期医療計画 に予定していただきたいと願っている。新型救命 救急センターであるので3 次救急疾患の全てを診 療できなくても突然死に関わる心臓病や脳血管障 害に対応できる施設として考えて頂きたいと思 う。小児、周産期疾患は将来的に1 〜2 次救急ま では対応可能となる施設とし、更に高度医療を要 する場合は施設間救急ヘリ搬送などの連携で対処 していければ良いと考えている。

<福祉保健部の回答>

第三次救急医療施設は、第二次救急医療施設 では対応できない複数の診療科領域にわたる重 篤な救急患者を24 時間365 日受け入れ、高度 な専門的医療を総合的に実施するとともに、救 急救命士等へのメディカルコントロールや、救 急医療従事者への教育を行う拠点となることが 求められている。

本県では、県立中部病院、県立南部医療セン ター・こども医療センター、浦添総合病院(新 型)が救命救急センターの指定を受け、琉球大 学医学部附属病院が第三次救急医療に準じた診 療体制を整備している。

県としては、本県における第三次救急医療体 制は整備されているものと考えており、今後 は、より質の高い救急医療が提供されるよう、 救急医療機関等の連携を推進していくこととし ている。

<質疑応答>

医師会:各県と比べると確かに多いだろうが、 数が多くなって困ることがあるのか。あとひと つ増えたなら沖縄の救急が充実すること、今の ままでも何とかなるといいながらなかなかなら ない状況にある。距離のことなど。そういう意 味で拠点があってもいいと思う。それを指定す ることで、何らかのマイナスがあるのか。どこ を指定するのかもあるが、今どこに決めるとい うことではなくて、北部地区医師会が今ヘリコ プターによる救命救急事業をしようとするとき に是非ともその指定が必要であるとしており、 地域的には必要ではないのか。

福祉保健部:圏域ごとという問題と、人口的に 対応可能な部分がある。沖縄県の場合は、二つ ぐらいが適当かと考えている。指定を受ける と、医師等を救急対応で何人置かなくてはならないとか厳しい基準がある。独自で開拓してや っていただくことは、こちらとしてはありがた いことではあるが、県全体として我々がサポー トできるような金銭的なところとか、そういう ものがとれるかどうかは別の問題もあるので、 県としては、当面は3 病院で足りているとの立 場をとっている。今後増えるかどうかはわから ないが、今の所は充足していると見ている。

医師会:充足しているかどうかではなく、それ を指定して県の負担が増えるのかどうか。ある 一定の補助金が入るのか。確かに医師の人数な ど指定は厳しいが、そういう厳しい条件ではあ っても、受ける病院が厳しい条件だったとして も指定を受けたいというのであれば、県として の持ち出しがでてくるのか。

福祉保健部:本提案の核心は、中期医療計画に 載せて頂きたいことが要点だと思うが、この中 期医療計画は我々が今作成している保健医療計 画のことであると思う。行政としては、保健医 療計画は今後5 年間に実現性の高いものを載せ なければ計画として成り立たない。北部医療圏 の救急医療体制は、県立北部病院か、もしくは 北部地区医師会病院かどちらかになると思う が、福祉保健部では20 年度に県立北部病院の あり方について検討を進めていくこと、あと一 つは北部地区医師会と県立北部病院との間で、 医療圏の救急医療業務が話し合われていること を考えた場合に、今回の保健医療計画へ載せる ほどのことでもないと考えている。

医師会:資料2 の(ウ)新型救命救急センター (人口30 〜 50 万人、1 日重篤患者3.25 人)で、 目的として「救命救急センターへのアクセスの 悪いところに設置し、重篤な救急患者の初期診 療にアクセスできる時間を低下させる」とすれ ば趣旨に合致している。それならば、北部地域 は、人口は10 万人といえど、沖縄県の面積の 半分で、観光客500 万人、加えて中南部の県内 者も多く訪れるとあれば、人口を配慮すれば目 的に合致しているのではないか。現場の努力で やるとしているのだから、それを後押ししてい くべきではないか。可能なら、医療計画にも入 れてはどうか。

福祉保健部:救急ヘリを指定するにあたっては、 厚労省との調整が必要になる。また、新型救命 救急センターは、診療報酬の点数がプラスにな るので、厚労省ではそれも含めて判断する。

医師会:今回の医療計画に入れなくても、今後 北部地域で必要になってくれば、認めると考え てよいか。厚労省は最低の基準を設けているの であり、救急が充実することを止めるものはな いのではないか。

福祉保健部:医療計画には載せなくても、必要 になってくれば指定することはある。

2.医療に関するシンクタンクの設置につい て(医務・国保課)

當間医務・国保課長より、標記の件について 次のとおり提案理由の説明があった。

医療に関するシンクタンクの設置について、 県医師会が構想を持っていると伺っているが、 現在どのように考えているかお聞かせ願いたい。

<玉城副会長回答>

本会では、沖縄の医療の現状を分析し、それ らを解決する方法等を検討するために「沖縄の 医療のグランドデザインを描く委員会」を立ち 上げた。

第1 回目の委員会では、後期研修制度の充実 とレベルアップが必要であると確認され、解決 方法を模索しているところである。

しかし、医師会の内部の委員会では諸問題を 解決する力が足りない。沖縄を全体的にみなが ら必要な資料を収集分析し、時には大学や他研 究機関(たとえば日医総研)などとの連携を取 りながら恒常的に保健、医療のことを考えてい く組織が必要である。そのようなものとして県 行政に医療のシンクタンクを設置していただき たい。それには予算措置が欠かせない事から、 沖縄県保健医療福祉事業団を活用するのも良い のではないかと考える。

県民の長寿復活、健康長寿沖縄が、観光など 産業振興の源にもなり、未来をみすえた恒常的な組織であるシンクタンクに育て上げる必要が ある。

<伊波部長>

沖縄県保健医療福祉事業団では、そうした構想 や構図を計画として示していただければ、同事業 団の補助事業として実施する事は可能である。

報 告

1.結核感染業務の強化及び一般健康診断業 務の終了について(北部、宮古、八重山 の3 保健所)(健康増進課)

沖縄県では感染症問題などの新たな課題に対 処するため、保健所業務の充実強化及び整理等 を図ってきたところである。その一環として、 上記3 保健所については、平成20 年度から下 記のとおり実施したいので、趣旨を理解いただ き、引き続きご協力いただきたい。

  • 1)新型再興感染症対策を強化する。
  • 2)エイズ対策を強化する。
  • 3)結核業務を強化する。
  • 4)一般健康診断業務を終了する。
2.沖縄県新型インフルエンザ対策行動計画 の改訂について(健康増進課)

現在高病原性インフルエンザのトリーヒトへ の感染例は、東南アジア等の海外で増加してお り、昨年12 月には中国でヒトーヒト感染が疑 われる事例が報告され、インフルエンザの出現 が懸念されている。新型インフルエンザが流行 してパンデミック(汎流行)の状態になると、 多数の患者が発生して、現在の医療体制では対 応できないことも予想される。

沖縄県では、平成17 年12 月に策定して沖縄 県新型インフルエンザの指定感染症への指定な どの情勢を受けて、平成19 年12 月に計画の改 訂を行った。

改訂された計画では、国内発生時に発熱外来 を設置することや、パンデミック時に患者を受 け入れる医療機関の整備を医師会の協力を得て 行うことが盛り込まれており、今後医師会と調 整する点も多くある。特に下記の点について、 ご協力をいただきたい。

1)発熱外来の運営について

県内に患者が発生した後に設置される「発 熱外来」の運営について、医師会の協力をい ただきたい。具体的な運営方法については、 今後行いたい。

2)新型インフルエンザ入院患者への対応について

入院患者の受け入れ医療機関は、感染症指 定医療機関(各県立病院)、協力医療機関 (国立病院機構沖縄病院、琉大病院)を中心 に体制整備を行っているが、さらに患者が増 加傾向にある場合には、地域の一般医療機関 を活用して感染拡大防止を図っていきたいと 考えている。これらの対応医療機関について は、二次医療圏ごとに県や保健所と医師会等 が協議を行って決めていく予定である。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

今回、初めての試みとして、各地区医師会より議題を提案してもらった。その内の一つが「新 型救命救急センターの北部医療圏内設置について」で、早速、同会議の協議1 となった。北部地 区医師会の要望に応えるべく、当会は奮闘し、粘るも、下記の3 点において、新型救命救急セン ターの設置は現時点では困難であると述べていた。1)県下で、大学病院(準じていると見なし) も入れると4 つの救命救急センターがあり、九州各県に比べ充足しており、今後は質の高い救急 医療が提供されるよう、各救急病院との連携を推進していく。2)医療計画においても、北部医療 圏の救急医療については県立北部病院と北部地区医師会病院のどちらかが担っていく(或いは補 完していく)ことになるであろうが、その点についても話し合いが持たれ始めたところで、現時 点で、今回の医療計画に載せる程、熟していないと考えている。3)平成20 年度に県立北部病院 のあり方について検討を進めていく予定であるので、その動向も含め、見極めて行きたい。

協議2「医療に関するシンクタンクの設置について」は県医師会が構想や構図を計画するなら ば、沖縄県保健医療福祉事業団の補助事業として実施(財政的支援)することは可能であると述 べていた。その他、2 つの報告事項は本文を参照いただきたい。新型インフルエンザのワクチン は2,000 万本(社会的弱者・医療従事者に対し、効果については不明?新しいワクチンを作るに もかなりの時間を要す)準備し、タミフルは国レベルで20 %、県レベルで8 %の備蓄、発熱外来 も含め早急な対応が望まれる。新型インフルエンザについては、医療行政と医療現場との間に温 度差を感じ、また、今後、実際の地域医療を担っている各地区医師会と危機感を共有することと 共に、密なる連携が望まれる。

その他、地区医師会より提案のあった「今後の療養型病床削減の具体的な計画について」は、 現時点(平成20 年1 月21 日)で最終結論が出ていず、3 月13 日の県保健医療協議会で最終方針 が提示される予定である事を文書でもって伝え、後日必要なら協議に載せることとした。「研修医 の県内定着率について」は、平成19 年度までの動向を資料として添付し、当会より回答とした。 可能なら、平成20 年度の初期研修・後期研修医数の推移と進路についての調査も必要かと考えて いる。