理事 稲田 隆司
第2 期宮城執行部の理事を拝命致しました。 医事紛争処理・医療安全対策担当で、私として は5 期目に入ります。ふり返りますと、當山護前 那覇市医師会長の御推挙を頂き、比嘉執行部入 りし、川平前理事の後を受け、勉強しつつ、川 平先生のアドバイスに助けられながらのスタート でした。医事紛争は困難な局面もあり、時には 患者さん側の叱責を受けたり、場合によれば理 不尽な要求にはブレーキをかけつつ、事務局、 顧問弁護士と共に各紛争事案に対応してきまし た。比嘉、稲冨、宮城会長の御指導の下、なん とか紛争処理を続けることができたかという感 もしておりますが、その背景には、県医事紛争 処理委員会、日医医事紛争処理委員会の高度か つ公平な委員会結論への信頼があります。改め て関係各位に感謝申し上げたいと存じます。
医療事故は、真剣に取り組んできた医療行為 が、様々な要因がからみ、時には思いもよらぬ 結果をもたらす「医療の不確実性」に起因して おり、さりとて、医療に強い期待を抱く患者さ ん側の感情はそれを許しません。
To Error is human、システムエラーの話を 丁寧に述べた後、マスコミの方に「医者の言訳 にしか聞こえない」といわれた事もあります。 徒労感を覚えるエピソードですが、この辺り は、今後、何度でも語りかけていく必要があり ます。スイスチーズモデルの如く、システムの 間隙を抜け事故に至るとすれば、それを幾重に もガードし安全を獲保する為のマンパワーや予 算が必要なことはいうまでもありません。世界 18 位の低予算で世界一の健康を保ってきた日 本の医療関係者の尽力、過重労働を国民に問い かけねばなりません。
話し合いを続け、相互理解を深め、相方が納 得のいくような紛争処理を目指しております が、これは大きく見れば、医療界と国民の相互 理解や関係の在り様に規定されると感じており ます。
ここに、過去5 年間の医事紛争処理・医療安 全対策委員会が開催した講演を列記してみます。
沖縄県医師会医療安全に関する講演会 (日医生涯教育講座5 単位)
※参加者は医師、医療従事者、弁護士、マスコミ
○平成15 年3 月7 日(金)
講師:名嘉憲夫(東洋英和女学院大学助教授)
演題:『医療と協働的“問題・相違”解決コミュニケーション』
− 21 世紀の医療現場における協働、紛争、コミュニケーション訓練−
○平成16 年2 月18 日(水)
講師:和田仁孝(九州大学大学院法学研究院教授)
演題:『医療コンフリクトマネジメント・医療紛争への対話、アプローチ』
○平成17 年3 月5 日(土)
講師:河野龍太郎(東京電力株式会社技術開発研究所ヒューマンファクターグループ特別研究員)
演題:『医療におけるヒューマンエラー−なぜ間違える、どう防ぐ−』
○平成17 年3 月26 日(水)
講師:寺井美峰子(聖路加国際病院専任リスクマネージャー)
演題:『聖路加国際病院におけるリスクマネージメントの実践〜医療安全対策を中心に〜』
○平成18 年3 月8 日(水)
講師:阿波連光(沖縄県医師会顧問弁護士)
演題:『患者の安全管理について考える−裁判例を題材として−』
○平成18 年4 月1 日(土)
講師:五阿弥宏安(読売新聞東京本社社会部長)
演題:『医療事故をめぐる医療者の社会的責務』
○平成19 年3 月5 日(月)
講師:五味川勇二(株式会社損害保険ジャパンリスクマネジメントシニアコンサルタント)
演題:『苦情・クレーム』対応実務セミナー
○平成19 年9 月27 日(木)
講師:五味川 勇二(株式会社損害保険ジャパンリスクマネジメントシニアコンサルタント)
演題:『改正医療法で求められる医療安全対策』−改正医療法に関する省令及び通知の概要−
○平成19 年11 月5 日(月)※一般の参加者も受付した。
講師:辻本好子 (NPO 法人ささえあい医療人権 センターCOML 理事長)
演題:『患者が求める安全・安心・ 納得の医療』
国内第1 線の方々の認識を学ぶ機会を得たと 思います。今期も開催いたしますが、講師の選 任等、ご教示いただければ、委員会で協議し、 具体化に努めたいと存じます。気持ちを引き締 めて職務に努めたいと存じますので、会員の先 生方の御指導、御協力の程宜しくお願い申し上 げます。