理事 當銘 正彦
この度、沖縄県医師会の理事を拝命しました 県立南部医療センター・こども医療センターの 當銘です。この理事の席は、前任者の村田謙二 先生が私と入れ替わりに公立久米島病院の院長 として出向するに当たり、私が引き継ぐ形で選 出させて頂きました。まずは代議員会の皆様の ご高配に感謝申し上げます。
いま日本の医療は、「医療崩壊」という言葉 が日常的にマスコミでも使われる様に、極めて 深刻な危機的状況であることは衆目の一致する ところです。とりわけ離島・僻地等の不採算医 療や24 時間救命救急医療、そして臨床研修 等々の政策医療を使命とする自治体病院では、 全国に約1,000 ある自治体病院の実に8 割近く までもが赤字経営に呻吟しているという状況で あり、沖縄の県立病院事業においても非常に厳 しい状態が続いています。地方自治体法の規制 の枠組みで、融通の効かない人事や給与体系が 自治体病院の赤字に拍車をかけているとは言 え、最近では民間病院や診療所においても経営 の逼迫感が日増しに強くなって来ている状況だ と聞いています。
政府は医療機関の再編統合の促進や医療機関 側の内部努力で経営改善は見込めるものとし て、国民医療費が伸びるのを厳しく絞り込む無 慈悲な“低医療費政策”を一貫して堅持してい ますが、今ここに来て、日本の医療が世界的な 水準からみて、如何に低コストで営まれている かが最近のOECD からのデータで次々に明ら かになって来ています。経済大国といわれ世界 2 位のGDP を誇る日本が、GDP に対する国民 医療費は30 ヶ国中22 位、単位人口当たりにお ける医師数に至っては30 ヶ国中27 位という有 様です。
医療機関に対しては身を削っての薄利多売で しか経営を維持できない診療報酬体系を押しつ け、他方では国民の医療費負担をジリジリと押 し上げ、最近では国保の保険滞納が470 万世帯 にも達すると報道されています。つい数年前に はWHO で「世界一の医療」と持ち上げられた 日本の医療ですが、いまでは医療機関側の疲 弊・消耗と段階的な負担増による国民皆保険制 度のなし崩しで、本当に先行きの見えない事態 となっています。「赤ひげ」精神よろしく、も はや医師や看護師が牛馬の如く献身的に働けば 解決する次元の問題ではありません。我々医療 人は国民の健康を守るために一丸となって、 「医療崩壊」の元凶である政府の“低医療費政 策”を撤回させ、真に豊かな医療環境を築いて いく努力が必要であると痛感するところです。
私は、県医師会活動については右も左も分か らない新参者ではありますが、私たち公務員医 師会も県医師会活動の一翼を担って、県民の医 療、国民の医療を守り、発展させるために奮闘 したいと思います。