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平成19年度第4回沖縄県医師会・
沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る11月29日(木)、県庁3階第2会議室 において標記連絡会議が行われた。

議 題

1.県立病院の業務の改革について(県医師会提案)

玉城副会長より、標記の件について概ね次の とおり説明があった。

これまで、県立病院のあり方については、検 討委員会等で議論されてはいたものの生かされ ていない状況であった。これからは、県立病院 が地域においてどういう役割を果たすべきか等 を検討していく必要がある。

これらを踏まえて、県立病院の業務の改革に ついて事務的な協議が行なわれつつあると伺っ たが、どのような計画があるのかお伺いしたい。

<當間医務・国保課長回答>

本県の病院事業の経営状況は、平成18 年度 決算において過去最大の赤字(50億円)とな り、今後の病院運営も危ぶまれる状況にある。

今般、福祉保健部において、沖縄県における 全体の医療提供体制のあり方という大局的視点 から根本的に県立病院を見直し、効率的かつ持 続的に病院事業が運営できる体制(運営形態・ 規模縮小を含めて)を確保することとしている。

作業スケジュールは、1)今年度においては、 県立病院の役割・機能の分析と基本的方向の検 討、2)次年度の早い段階で外部委員会の審議・ 検討を経て、3)次年度中に県立病院のあり方に 関する基本構想を策定することとしている。

また、12 月1 日付で、医務・国保課にその ための要員2 名を発令する。

【主な意見】

宮城会長:県立病院のあり方や経営に関しては、 これまで何度かに亘り検討を行っている。しか し、検討されてきたことに実効性がなかった。 県立病院の赤字は、一般財源60 億円を繰り入れ た赤字(50 億円)であり、トータルは110 億円 の赤字である。このような状況では、県立病院 の維持どころか県の維持に繋がってくる。会を つくっただけで実行が伴わなければ意味がない。 県立病院のあり方を含めて抜本的な改善が必要 である。外部委員に委託するのであれば、力の ある(実効性のある)委員会にしなければ、同 じようなことを繰り返すだけである。

また、県立病院問題を解決しなければ、医療 行政に対して大きな足かせができ、他の医療機 関に影響を与えてくるので、医療行政一体とし て捉えていただきたい。

伊波部長:病院事業局でなく、医務・国保課に 来たということは、全庁的に取り組みをしてい くと理解しており、努力していく必要があると 認識している。

経営改善に関しては病院事業局が行うが、医 務・国保課では、年度内に枠組みや役割分担、 機能調整や民間との連携、公立病院との連携、 各地区医師会との連携等を図っていく。国の動 きとしては、12 月にガイドラインが纏まるの で、それを見据えて行っていく。

安里常任理事:医師会でも危機感を感じて、来 年度の一つの大きな柱の分析、検討項目の中に 県立病院の経営改善というのが出てきている。 最初は、県立病院の医療のあり方ではないのか と思っていたが、非常に厳しい背景があると感 じたが、県民は未だしも、現場の方に危機感は あるのか。

伊波部長:今年度中に医療関係の1 構想3 計画が纏まる。これは、医療制度改革の一環で来年 1 月にパブリックコメントを行い、3 月までに決 定し、4 月に告示となっている。これらは、医 療療養病床の問題や地域ケア整備構想等を進め ながら実施していく。また、来年度の予算収支 が380 億円不足(一般会計)しており、それに 病院事業局(特別会計)が入ってくる。この決 算に関しては、次年度から連結で出していくの で、議会にも出ていくことになり、県民にも出 ていくことになると思われる。

當間課長:議会では、いくら県立病院が赤字だ からといっても一般会計から繰り出せばいい、 若しくは繰り出しが少ないとさえ言っている状 況であり、県民はじめ議会も危機感を持ってい ない。今回、地域の民間病院へヒアリングを行 うこととしているので、地域の医師会において も危機感を共有していただければありがたい。

玉城副会長:本来、一番危機感を持たなければ ならないのは、病院本体である。また、1 月に 地区医会長会議があるので、ある程度の方向性 が纏まれば、働きかけたい。

大嶺課長:50億の赤字は減価償却後のもので、 減価償却前だと15 億の赤字である。大きな赤字 の原因は、建物の減価償却であり、その部分をカ バーできていない状況である。また、地方公営事 業法の適用を受け、もう少し成果が上がると予測 していたが、成果が上がらなかった。現在、各病 院長を集めて、毎月経営会議を開催している。そ の会の中で、各病院の問題点、収支、経営等に関 して分析を行っている。平成19 年度は、18 年度 に比べると好転してきている。平成18 年度の赤 字というのは南部医療センターの開院による病床 利用率の低下等が原因であった。

玉城副会長:経営形態の改善の仕方、地区別の 医療のあり方を踏まえて検討する必要がある。

2.沖縄県立浦添看護学校の講堂使用につい て(県医師会提案)

真栄田常任理事より、標記の件について概ね 次のとおり説明があった。

先般、本会より県立浦添看護学校の講堂利用を 従来どおり提供されるよう、技術嘱託員の採用等、 予算の確保が図られるよう要望書を提出した。

医師会館が来年の11、12 月頃には完成予定 であるので、これまでの間、従来どおり講堂利 用を要望する。

<當間医務・国保課長回答>

次年度以降の技術嘱託員の配置は困難である。

しかしながら、県は、医療従事者団体等の各 種研修等について、県民の健康の保持増進に寄 与するものであることを認識しており、これま での経緯を踏まえて、その必要性から引き続き 貸し出しを行うこととして準備を進めている。

【主な意見】

真栄田常任理事:借用した時の時間外等の管理 者はつけていただけるのか。

當間課長:守衛等、うまくできる方法を浦添看 護学校と調整することとなっている。

伊波部長:講堂の利用に関しては、技術嘱託員 が必要である。昨年の実績をみると10 回未満 であるので、講堂利用時に対応しても良いと考 えている。それ以外は、マニュアル等で対応い ただくことを考えている。

3.医療法改正に伴う医療機能情報の提供制 度について(福祉保健部提案)

當間医務・国保課長より、標記の件について 説明があった。

医療法改正に伴い、医療提供施設は、医療機 関が提供する医療に関する一定の情報(医療機 能情報)を都道府県に報告し、都道府県知事 は、医療機関から報告を受けた医療機能情報を 住民に対してわかりやすく公表しなければなら ない必要がある。

法律の施行は、平成19 年4 月1 日であるが、 経過措置により、平成19 年度中に都道府県は、 医療機関から提出される医療機能情報のうち、 基本情報9 項目(医療機関名称、開設者、管理 者、所在地、電話番号・FAX、診療科目、診 療日、診療時間、病床種別及び届出・許可病床 数)を検索機能付きのシステムによって公表 し、平成20 年度中には、提出される全ての医 療機能情報を公表することとなっている。

入力項目は、病院56 項目、一般診療所49 項目となっており、12 月に各地区へ通知および 説明会を開催し、来年の1 月に直接入力および 報告をしていただく。その後、2 月に試験運用 し、3 月に本稼働(基本情報9 項目のみ)を予 定している。

提供された情報は、「沖縄県医療機関検索シ ステム(仮称)」として、県のホームページや 保健所窓口での閲覧等により県民へ提供する。

【主な意見】

小渡副会長:介護保険では既に始まっており、 1 施設当たり53,000 円を支払っているが、当 システムについても費用はかかるのか。

福祉保健部事務局:当システムは、無料であ る。介護保険は調査費用が生じている。

宮城会長:更新は行うのか。

福祉保健部事務局:基本的には、年1 回9 月 (予定)に更新を促すこととしているが、随時 更新可能である。

宮城会長:入力項目のチェックはどうするか。 常にチェックするのか。

福祉保健部事務局:基本的には、医療機関の自 己責任での入力となる。報告を行わない場合や 虚偽の報告をした場合は、報告の督促や内容の 是正の命令を行うこととなり、この命令に違反 した場合には罰則が規定化されている。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

議題(1)の「県立病院の業務改革について」は、タイトルだけでは中身がよく分からず、話し 合っていても、鋭い質問がなければ何を話し合っているのかよく分からないところがあった。と 言うのは、相手の財布の中身についてのことだから、聞きがたく、話しがたい。ところが、お互 い意見を交流しているうちに、本質的なものの一部を理解できるに至った。すなわち、県立病院 の経営が莫大なる赤字であるとのこと。平成18 年度は68 億円の一般会計からの繰り入れがある 上に、更に50 億円の赤字で、年間計118 億円の財政が県立病院につぎ込まれている。そうする と、県立病院の医療以外においては、他の必要とされている保健・医療・福祉では数百万円でも、 削除の対象になる状況が出現している。地方公益企業法の全部適応が選択され平成18 年4 月から 実施されているが、経営は悪化している(平成19 年10 月現在改善傾向)。そのために、専任職員 2 名を福祉保健部に配置し、県立病院の経営(財政)再建に乗り出し、必要なら、地方独立行政 法人化(非公務員)や公設民営化をも視野に入れておかなければならないが、離島僻地医療の問 題が大きな課題であろうと思慮する。

小生は県の財政について詳しく理解していない。蓄財はどの程度、債務はどの程度で誰から借 金しているのか。年度の収入と支出はどうなっているのか。国は内国債を発行しているので財政 破綻は起こらないし、借りる方と貸す方が夫婦関係にあり、借金(国債)を直ぐに返す必要が無 いのではないかと、むしろ、財政を有効機能的に運営していき、社会機能を改善していく必要が あると述べる経済学者もいる(神原直彦氏)。県財政はどのようなからくりになっているのかを管 理職(課長以上、病院だったら医長・師長クラス)は理解し、必要なら危機感を共有し、その中 で、改善の方向を模索していく必要があるのではと感ずるところである。

年に6 回沖縄県福祉保健部と沖縄県医師会との連絡会議を持っており、毎回2、3 の議題が提示 されている。各地区医師会等や部会からのご要望がありましたら、議題に上げたいと考えていま すのでご提案いただけたら幸いです。