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平成19年度永年勤続医療従事者表彰式
142名が表彰される

常任理事 嶺井 進

去る11 月22 日(木)午後7 時30 分からパ シフィックホテル沖縄に於いて、平成19 年度 永年勤続医療従事者表彰式が行われた。

同表彰式は会員が開設する医療機関及び医師 会に20 年勤務する医療従事者に対して行うも ので、当日は新垣善一沖縄県医師会代議員会議 長にご臨席頂き、今回は49 施設から142 名の 方々が表彰された。

始めに、宮城信雄沖縄県医師会長から受賞者 への挨拶として「我が国の医療情勢は、国の長 年にわたる医療費抑制政策の結果、医療提供体 制は極限状態に達し、医療崩壊の危機が取り沙 汰されるようになりました。また、昨年は医療 制度改革関連法案等の成立に伴い、制度の改正 や施行により、地域における医師偏在や看護師 不足、療養病床の再編問題など、医療の質の低 下を招き、国民の健康を脅かすことが懸念され ております。こうした中で、我々医療関係者 は、常に患者の視点に立った安心で安全な質の 高い医療を提供するよう努めていかなければな りません。幸いにして、今回表彰を受けられる 皆様は、非常に経験豊かな方ばかりで、永年培 った経験や知識、技術を活かし、それぞれの立 場で良質な医療の提供に努め、後輩の指導にも ご尽力下さい。」と激励の言葉があった。

引き続き、宮城会長から表彰状の授与を行 い、その後、受賞者を代表し平安山医院看護師 の玉城初子さんから「本日は私達のために、こ のような盛大な表彰式を催していただき、心よ り感謝申し上げます。私達が今日表彰をいただ けましたのは、院長先生をはじめ、諸先生方並 びに同僚の支援、家族の協力の賜物と深く感謝 申し上げます。

私の勤める平安山医院は透析施設として、は や20 年になります。院長先生をはじめ医療従 事者が一丸となって、常に患者様により良い地 域医療の発展に貢献してきました。

今日ここに表彰をいただきました私達は、今後もそれぞれの立場で患者様の為に、また地域 医療充実のため微力ではございますが、更に精 進し頑張って行きたいと思います。」と謝辞が 述べられた。

表彰式終了後に行われた懇親会は、新垣議長 の乾杯の音頭で祝宴に入り、被表彰者の所属す る施設長や同僚が多数参加し、受賞者の永年の 労をねぎらい盛会のうちに終了した。

なお、同表彰式は毎年11 月に開催しており、 被表彰候補者の推薦については、各医療機関並 びに各地区医師会へ申請することになっている ので、申請漏れのないようお願いしたい。

当日、懇親会の中で行った受賞者へのインタ ビューを下記に掲載する。

平成19 年度永年勤続医療従事者表彰式(11/22)
被表彰者へのインタビュー

質問項目

1.永年勤続20 年表彰おめでとうございます。表彰されたご感想と今後の抱負をお聞かせ 下さい。

2.医療に従事する職員の皆さんは、命を預かる仕事でもあるので、大変なご苦労があるか と思いますが、心に残る思い出などがありましたらお聞かせいただけますか。また、患者 さんと接するさいには大変神経を遣うと思いますが、これまでの勤務の中で、気をつけて こられたことなどありますか?

3.医師との連携の難しさなどはありますか?改善して欲しい点などがあれば教えて下さい。

4.看護師不足の問題などが話題になっておりますが、実際に医療の現場での状況を見てい かがですか?

比嘉勉

沖縄第一病院地域医療部
比嘉 勉課長

1.20年勤続できたこと、またその表彰をして頂いたこと は本当にうれしい限りです。その背景には、当医療法人 信和会の理念の1 つに『職員一人一人が楽しく生きがい を持って働ける病院を目指す』とあるように、厳しい中 にも和気あいあいとした家族的雰囲気があり、理事長を 筆頭とする管理部の皆さんや同僚、そして仕事をしてい く上で良い環境に恵まれたことがあげられます。感謝の 思いで一杯です。これからも微力ながら後輩の育成等、 病院の発展のために頑張っていきたいと思います。

2.放射線技師として3 年目の時、70 代の患者さんの胃透 視検査を担当した際、検査を終え透視台から降りようと した時に、患者さんが転んでしまって大腿骨頚部骨折を してしまいました。患者さんは自分で転んだのだからと 庇ってくれましたが、内心は冷や汗ものでした。それ以 来、患者さんが検査を終わり、検査室内から退室される まで緊張の糸を緩めないで接するように心がけてきまし た。そのことが原点となって、これまで大過なく過ごす ことができたと思います。

3.医療現場は常に緊迫した厳しい場所であり、個人の権 利が強くなった昨今、年々医師の仕事量が増え、医師と 他職種との連携が増々難しくなっています。そのため、 医局全体としてのマニュアルや取り決めはあっても医師 が多忙を極めるため、カンファレンスや指示受けなど 個々の医師に合わせないといけない状況であり看護師等 に負担がかかり過ぎているように思います。医師の役割 や責任の重さは大変なものがあると思いますが、従来型 の医師中心のチーム医療から、1 人々の患者さんのため に医療従事者が相互の立場から建設的な意見を出し合え るチーム医療に転換していってこそ、異体同心の団結力 が発揮できると思います。

4.「7 : 1」看護という新たな基準で、当院の急性期病棟 は看護師が増え、看護師の労働環境は仕事量的には改善 されましたが、年休消化率が向上するまでには至ってい ないようです。また、看護師の入退職は相変わらず多く (種々の原因があると思う)、1 年中「看護師募集中」の 状況です。一定の技術を持った看護師を確保し続けるた めには、病院側も子育て支援などいろいろと努力が必要 だと思います。

比嘉久美子

医療法人社団志誠会平和病院
比嘉 久美子看護部長

1.有り難うございます。「光陰矢の如し」と申しますが、20 年の歳月はほんとにあっという間でした。今回の表彰は、 私の勤める病院(平和病院)が創立からちょうど20 年と言 うこともあり、厳しかった当時を思い浮かべたりして、非 常に感慨深いものがあります。

私自身、ここまで来れたのも多くの方のご指導ご鞭撻の 賜と深く感謝しております。

医療界は今、どの病院も同じ状況下で厳しい環境にあり ますが、医療を必要とする患者さんがいる限り、私たちは 良質な医療を目指して、日々努力していかねばならないと 思っています。

2.私の勤める病院は精神科ですので、身体を看ること以上に 心の動きを看なければならず、看護はとても難しいです。よ り難しくしていることの一つに、精神の病気や、精神科病 院に対する一般の方の偏見があります。地域の反対運動も その一つでしたが、医療は病院の中だけに止まらず、常に 地域に開かれた医療を目指さねばならないと思っています。

また、最近では、うつ病の患者さんが増えていますが、 自殺のリスクの高い疾患ですので看護も細心の注意を払い ながら、専門性を発揮していかねばならない、と思ってい ます。

3.「チーム医療」という言葉が取り上げられて久しいと思い ますが、スーパーバイザーとしての医師の役割はとても大 切で、私達コメディカルもとても頼りにしております。し かし、現場では、ヒエラルキーの強い医師とのチーム作り に苦慮することもあります。専門性もとても大切ですが、 人間的に魅力のある医師との協働が患者さんの為にもなる と思っています。

4.当院創設時の20 年前も、病院適正配置法の影響で看護婦 不足に悩まされましたが、今又、7 : 1 配置の問題も少なか らずあり、充分な看護師確保ができていません。看護の質 を高めるためには教育システム等必要ですが、個々の病院 の努力も限界があると思います。先ず量(配置基準)を解 決せねばなりません。来年、先生方始め関係者の努力で、 中部地区医師会による、「ぐしかわ看護専門学校」が開設さ れますが、早めに民間でも質の高い看護体制が取れるよう な状況になって欲しいと願っています。

慶世村光代

浦添総合病院
慶世村 光代外来師長

1.人生の中で、一番変化の多い時期を浦添総合病院と共に歩 んでこれたことは、とてもうれしく思います。長いようで、 あっという間の20 年間でしたが、いろいろな方にご指導い ただき、励まされ、今日があるものと思います。組織の方 針が明確であり、幸い私のしたい事と一致していたのが、 20 年間続けてこれた要因だと思います。ありがとうござい ました。

2.地域との連携を行い、「急性期の部分は当院が担う」とい う指命のもと終日救急を開始するという計画に一緒に参加 できたことが印象に残っています。

連日深夜まで準備に明けくれていましたので、オープン の日は、感慨深いものがありました。患者さんに接する際、 気をつけている点は、当たりまえのことですが「相手の側 (立場)に立って、相手の目の高さ(視点)で話を聴く」こ とを心がけています。

3.当院の医師は、よく理解しようと話をきいてくださり、チ ーム医療の大切さもよくご存知です。しかし、治療を始め る時、医師のオーダーなくしては始まりませんが、なかな か決められた時間内にできず、指示を受け実施する看護側 にしわよせがきているのが現状です。改善のためにはまず ルールを守ってほしいですね。

4.現状に見合った看護師の配置を、と考えるとやはり厳しい と思います。当院は7 : 1 看護基準という、最高の人員配 置をとっていますが、平均在院日数や看護必要度、重症度 の実態からみても不足しているのでは、と感じます。

もちろん現場での知識、技術の教育的サポートも行って います。

受賞者代表挨拶をする平安山医院看護師玉城初子さん

受賞者代表挨拶をする平安山医院看護師玉城初子さん

表彰式会場風景

表彰式会場風景

懇親会風景

懇親会風景

印象記

嶺井進

常任理事 嶺井 進

永年勤続表彰式は県医師会の医療従事者対策の一つであるが、表彰される方々の晴々とした顔 を見るとその成果が上がっているのが分かる。

国や自治体の不十分な対応で、医療の現場は人材の確保が困難で、さらに医療費の減少で充分 な待遇をしてやれず、また、時間的ゆとりをもてない職場となっている。

今後、せめて職場環境を改善し、働きがいのある、働き易い職場づくりでその労苦にむくいた いと思う。