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平成19年度九州学校検診協議会専門委員会並びに
平成19年度九州各県医師会学校保健担当理事者会

理事 野原 薫

去る12 月2 日(土)、福岡県において、九州学校検診協議会専門委員会並 びに九州各県医師会学校保健担当理事者会が開催されたので、その概要を報 告する。

平成19年度九州学校検診協議会専門委員会

  • 日 時:平成19年12月2日(土)13:30〜15:15
  • 場 所:福岡県医師会館

会長挨拶

横倉義武九州学校検診協議会会長より、概ね 以下のとおり挨拶があった。

当専門委員会は今年で22 回目の開催を迎え る。これも先生方並びに関係者のご尽力による ものであると考えている。

今後とも、関係機関との連携を密に学校保健 事業のより一層の充実に努めていきたいと考え る。よろしくお願いしたい。

心臓・腎臓専門委員会座長選出

心臓専門委員会および腎臓専門委員会の座長 の辞退に伴い、座長の選出が行われた。心臓専 門委員会の座長に鹿児島県医師会の吉永正夫先 生、腎臓専門委員会の座長に熊本県医師会の服 部新三郎先生が選出された。

各専門委員会別会議
1)心臓専門委員会

1)本県におけるLongQT症候群の1例について(沖縄県)

我那覇仁先生より、本県におけるLongQT 症候群の一例(失神発作を繰り返した中学男子 例)が報告された後、九州各県におけるQT 延 長症候群の判断基準について情報交換が行われ た。座長の吉永正夫先生より、医学的な判断基 準は以前より論じられてきたが、判定するため の機器(メーカー)がその基準に適応していな いと説明され、今後、本専門委員会よりメーカ ー側に提案していってはどうかと意見され検討 することになった。

2)「学校生活管理指導表」における文書料の取り扱いについて(佐賀県)

「学校生活管理指導表」の作成を依頼された際 の文書料徴収の有無について九州各県の状況が報 告され、長崎県(把握していない)以外の県では 徴収していない状況であることが分かった。

3)福岡県メディカルセンターにおいて平成19年度から使用を始めた学校心臓健診の 新しい心臓病調査票について(話題提供)(福岡県)

福岡県の石川司朗先生より、福岡県メディカ ルセンターが平成19 年度より使用を始めた学 校心臓検診の新しい心臓病調査票について説明 があり、このような調査票を九州各県で統一で きないかと提案があった。九州各県において現 在使用している調査票を福岡県メディカルセン ターにE-mail で送信し、仕様の統一について 検討することに決定した。

2)腎臓専門委員会

1)19年度スクリーニングにおける蛋白・潜 血:(+)と(±)の判定について(長崎県)

昨年度の専門委員会で、服部新三郎先生が平 成18 年度に実施した調査において、陽性基準 を(±)から(+)に変更後、(+)では最終 陽性者が減少するとの結果説明があったことを 受け、現在、九州各県の多くで陽性基準を(+) としていることが報告された。

2)「学校検尿について、各県の市郡医師会 へのアンケートが可能か否か?」(鹿児島県)
3)学校検尿アンケート調査実施について(宮崎県)
4)過去2年分の診断名集計結果について(福岡県)

上記アンケート調査の今後のあり方等につい て意見交換が行われ、各委員より調査の有用性 についての意見が上げられたことから、アンケ ート項目の内容を整理した上で、今後も調査を 続けていくことが決定した。今年度のアンケー ト調査の結果については近々に報告書が送付さ れるとのことであった。

3)小児生活習慣病専門委員会

1)生活習慣病に関する各県の取り組みの状態について(佐賀県)
2)小児生活習慣病マニュアル(フローチャート)について(長崎県)
3)高度肥満児への学校現場での対応(養護教諭・学校医及び医療機関の連携)について(福岡県)

当委員会では、上記3 つの議題について一括 して協議が行われた。

生活習慣病に関する各県の取組状況について は、生活習慣病そのものが学校保健法として扱 われておらず、各県医師会とも具体的な取り組 みは行っていない状況であり、医師会から文部 科学省へ学校保健法に生活習慣病を取り入れて いただくよう要望していただきたいとの結論に 至った。

また、実際の現場での対応については、今 後、生活習慣病に対する変化が予測されるが、 肥満度50 %以上に達した高度肥満児の扱いに 関しては、病気として取り上げるべきとの意見があげられ、各県の教育委員会に対して要望や 議論する場を設けていくこととした。

さらに、マニュアルを作成する際の情報収集 の方法として、厚生労働省生活習慣病対策事業 研究班で行われている「生活習慣・食習慣に関 するアンケート調査」を実施していただくよう 九州全体の教育委員会を通して依頼することと なった。

全体協議

各専門委員会の座長より、上記委員会の協議 内容について報告が行われた。

次年度の日程について

次年度の専門委員会の開催日程として、平成 20 年11 月29 日が候補日に挙げられた。

平成19年度九州各県医師会学校保健担当理事者会

  • 日 時:平成19年12月2日(日)16:00〜17:00
  • 場 所:博多都ホテル12階スターライト

挨 拶

熊本県医師会会長の北野邦俊先生より、開会 の挨拶が述べられた。

座長選出

慣例により、担当県である熊本県医師会の北 野邦俊会長が座長に選出された。

協 議

(1)第52 回九州ブロック学校保健・学校医 大会並びに平成20 年度九州学校検診協議 会(年次大会)について(熊本県)

熊本県医師会の小林秀正理事より、来る平成20年8月9日(土)、10日(日)ホテル日航熊 本にて開催される「第52 回九州ブロック学校 保健・学校医大会並びに平成20 年度九州学校 検診協議会(年次大会)」の開催要綱(案)について説明が行われた。

協議の結果、特に異議なく了承された。

(2)障害者自立支援ファイル事業(乳幼児 期からの支援状況が一目瞭然になるよう なファイルの作成)について(鹿児島県)

<提案要旨>

現在、鹿児島県では発達障害児への支援とし て、県発達障害者支援体制整備検討委員会(所 管:県保健福祉部障害福祉課)・特別支援連 携協議会(所管:県教育庁義務教育課)の中 で、障害者自立支援ファイル事業が検討されて いる。

これは、従来から就学前の療育情報を学校現 場に円滑につなげていく仕組みがなく、更には 就学後の就労時にもそれまでの療育状況が分か らないといった問題に対応する為に検討されて いるものである。障害児の支援には、多岐にわ たる機関が係わっており、個人情報保護の厳し いなか、障害児本人(家族)が一元化した情報 を持つというのは非常に有用であると考える。

鹿児島市教育委員会では、今年度から療育施 設を利用する保護者にテスト使用してもらい、 次年度以降の使用に向け検討がなされている。

また、霧島市では「すこやか手帳」と題し、 援助者間で情報共有できるよう、支援の内容、 方向性や目標など一冊のノートに書き込んでい けるよう、母子手帳を交付する際、妊婦全員に 配っている。

今年度から、教育基本法の一部改正施行に 伴い「特別支援教育」が本格的に実施されて いるが、本県の取組みを情報提供させて頂くと ともに各県で新たな取組みがあればご教示頂き たい。

<各県回答>

各県ともに、鹿児島県で取り組まれるような “ファイル事業”の実施は行われていないと回答 されたが、療育歴等の情報を保護者や本人が一 元的に持つことで、複数の支援者間での情報共 有が図られることは非常に有効性が高いと考え られると意見され、今後の行政や先進県の動向 に注目するとともに、各県においても当事業の 導入を検討していきたいとの見解が示された。

なお、各県における現在の取組み状況につい ては以下のとおりとなっている。

○佐賀県

圏域支援体制整備事業として、保育所や幼稚 園から小学校へ、小学校から中学校へ、中学校 から高等学校へ、高等学校から就労先等への個 別支援計画の引継ぎをモデル的に実施してい る。平成18 年度に「佐賀県における特別支援 教育の在り方検討委員会」が設置され、障害の ある幼児児童生徒の自立と社会参加に向けた主 体的な取組みの支援が検討されている。

○大分県

発達障がい者圏域支援体制整備事業として、 県内10 圏域の中で1 圏域を対象に、発達障が い支援コーディネーター1 名を配置し、コーデ ィネーターが中心となり身近な地域での関係者 の連携・調整やここの発達障がいに応じたきめ 細かな個別支援計画を作成している。また、発 達障がい者支援センター連絡協議会において “発達障がい者支援手帳(仮称)”発行等の案が 検討されている。

○福岡県

発達障害者支援センターが県内4 箇所に設置 され、臨床心理士が保護者等から相談を受け、 発達障害などの状態を把握し、地域の医療機関 との連携を図っている。また、平成19 年8 月 より“特別支援学校医療的ケア体制整備事業” が開始され、県内10 項の特別支援学校に通学 する障害児に対し、日常的な医療ケアを実施す る看護職員と障害児の主治医が記載する意見書 等を基に、学校が提供する医療ケアを点検・評 価する指導医を配置し、学習環境の整備を図っ ている。

○沖縄県

“沖縄県心身障害児適性就学指導委員会”に 精神科、小児神経科、小児科、整形外科、耳鼻 咽喉科、眼科の専門医計6 名を派遣し、障害児 の支援に取り組んでいる。

○長崎県

平成19 年度から、就学前から学校卒業まで の教育相談及び教育支援の充実を図る“教育支 援ネットワーキング事業”を実施している。ま た教育相談及び教育支援の中で、相談者に対し 必要に応じて個別の教育支援計画の作成のため のガイドラインを作成し、提供を行っている。

○宮崎県

平成17 年度から“障がい児ライフステージ 支援モデル事業”が開始され、ライフステージ 支援プログラムの開発を目指している。

○熊本県

(社)日本自閉症協会熊本県支部の「チャレ ンジサポートセンター“にじいろ”」が、自閉 症児・者等の発達経過や療育内容等を書き込む “にじいろ手帳”を発行している。

(3)性と心の健康問題に対する各県の取り 組み状況について(福岡県)

<提案要旨>

福岡県においては、昭和63 年度より、生 徒・教師・保護者を対象に、産婦人科及び精神 科の専門医による講演や相談活動を実施するこ とにより、性や心に関する専門的知識の普及啓 発を図るとともに、不安や悩みの解決に向けた 支援を行うことを目的として健康教育推進事業 (性と心の相談)が実施されている。

専門医については福岡県産婦人科医会と福岡 県精神科病院協会の協力を得て本会から推薦し、 当初は県立高校1 校あたり産婦人科3 回、精神 科3 回、合計6 回で開始され、近年は産婦人科2 回、精神科2 回、合計4 回の予算措置が取られ 実施されてきたが、今年度は県の予算削減によ り1 校あたり合計2 〜 3 回の実施となった。

いじめや自殺の問題、性に関する感染症や逸 脱行動など、性や心の健康問題が表面化し社会 問題となっている現在、本事業の果たす役割は ますます重要性を増しており、より積極的に本 事業を推進すべき状況であると考え、本会より 福岡県教育委員会教育長に対し、平成20 年度 の予算増額について要望書を提出した。

以上のことから、性と心の健康問題につい て、各県の取組みと状況をお伺いしたい。

<各県回答>

各県ともに、性と心の健康問題については、 平成16 年度から始まった“学校・地域保健連 携推進事業”において対応しているとの回答で あった。当事業は、学校側からの評価も高く継 続的な実施が望まれているが、単年度事業であ るため次年度以降の計画が立てにくく、また 年々予算が削られている状況にあることが報告 された。

鹿児島県の池田琢哉先生より、本事業の予算 化(確保)について、当担当理事者会から日本 医師会宛に要望書を提出し、日本医師会から文 科省へ要望していただいてはどうかと提案があ り、協議が行われた結果、日本医師会学校保健 委員会へ九州ブロック代表として参加されてい る福岡県に要望書の下書きを作成いただき、九 州学校保健担当県の熊本県から日医宛に提出す ることに決定した。

その他

鹿児島県の池田琢哉先生より、学校産業医 用のマニュアル(ガイドライン)を日本医師会 学校保健委員会で作成していただけないかと意 見があり、福岡県より次回の学校保健委員会に おいてその旨発言させていただきたいと述べら れた。

印象記

野原薫

理事 野原 薫

平成19 年度九州学校検診協議会専門委員会が12 月2 日(日)午後1 時30 分から福岡県医師会 館で開催されました。心臓専門委員会委員の我那覇仁先生(こども医療センター)、腎臓専門委員 会委員の粟田久多佳先生(琉球大学)、小児生活習慣病専門委員会委員の太田孝男先生(琉球大 学)と私、事務局の平良さん、徳村さんの6 名で参加しました。

今回から新に心臓専門委員会の座長に吉永正夫先生(鹿児島県)、腎臓専門委員会の座長に服部 新三郎先生(熊本県)が選出されました。

小児生活習慣病専門委員会の座長は引き続き河野斉先生(福岡県)で、私はこの会に参加しま した。日本学校保健会は肥満度の算出に身長別標準体重に比べて+ 20 %以上を肥満傾向と定義し ていますが、委員会ではBMI を使用する方が良いとか、腹囲測定ではどうなのかとの議論があり ました。個人的には専門委員会が肥満の評価法を先ず決定するべきで、取りあえず日本学校保健 会の定義を使用するべきだと思いました。また、現行の学校保健法では小児生活習慣病の対策が 不十分で、肥満児への対応では学校現場の認識、予算の問題などから対応が遅れているとの議論 でしたが、肥満度50 %以上の高度肥満児は病気として対応すれば、現行の医療保険でも対応可能 だと思いました。今後はこの委員会で肥満児への対応マニュアルを作成されることを期待したい と思います。

午後4 時からは博多都ホテルで、平成19 年度九州各県医師会学校保健担当理事者会が開催され ました。協議では第52 回九州ブロック学校保健・学校医大会は平成20 年8 月9 日、10 日に熊本 市で開催されることになり、また、障害者自立支援ファイル事業や性と心の健康問題への各県の 取り組みは報告通りで、行政からの予算しだいで取り組み状況が変わることに限界を感じました。 最後に鹿児島県から小児生活習慣病や心の問題も心臓専門委員会や腎臓専門委員会のように学校 保健で取り組むべきだとの提案があり、私も、全く同感です。沖縄県でも今後、教育庁に働きか けて学校保健として小児生活習慣病委員会や心の問題委員会を立ち上げるべきだと思いました。