沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 2月号

国民医療を守る決起大会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る12 月5 日(水)、ホテルニューオータニ において、医療の充実に必要な財源の確保を求 め、国民医療推進協議会(加盟40 団体)主催 による「国民医療を守る決起大会」が開催され た。当日は全国から当医療推進協議会各関係団 体から約2,300 人の他、自民・公明両党の国会 議員200 人以上が参加した。(沖縄県関係者は 西銘・仲村両代議士が登壇した)

決起大会の概要は以下のとおり。

1.開会宣言

萩原正日本柔道整復師会長より、我々医療関 係者は、社会保障は平時の国家安全保障ととら え、国民が安全で安心な医療を享受すべく、今 こそ、国民の生命と健康を守るための財源の確 保と地域医療崩壊を阻止する行動を起こさなけ ればならない。そのために「国民医療を守る決 起大会」を開催する旨の宣言があった。

2.挨 拶

主催者代表
唐澤人国民医療推進協議会会長(日本医師会長)

わが国では、今日全国で生じた地域間格差が 一段と広がり、国民の不安と不信感が強まって いる。これは正に、近年の国の財政優先の構造 改革路線が、国民医療をはじめ日常の生活や生 計に疲弊をもたらしている証しである。殊に、 医療はもはや崩壊の兆しを見せ始めている。

このような事態を打開するためには、日々の 安心を得たいと思う国民の目線に立った政策の 転換を推進することが最も重要である。医療費 の抑制は給付費の抑制を来たし、患者負担の増 大という形で跳ね返っている。また、医師や看 護師等、医療従事者の確保が困難となり、過重労働が強いられ、ひとり一人の患者さんへの診 療時間の減少等、患者さんへの不利益をもたら している。

経済財政諮問会議、規制改革会議の委員の中 には、国の負担を減らすために、カゼなどの負 担は保険免責制にして患者負担にすることを主 張し、混合診療のように経済的に恵まれた人は 良い医療を提供すべきと考えている人もおられ るようである。

しかし、これによって医療の平等性を確保す ることは非常に困難になる。そのために我々は あらゆる機会を通してわが国の国力、経済力に 見合った医療費規模を達成し、少子高齢化社会 に備えるためにも、全国各地域の医療提供体制 を充実させなければならないと提言している。 それにより、日本の経済成長に貢献してこられ た方々や、現在、健康に不安を抱えている方や そのご家族の方々が安心して生活できることを 第一に考えているからである。

近年のわが国の政治の焦点は日々の国民の生 活の視点と乖離している。安心、信頼を求める 国民の声を傾聴せず、もっぱら経済、財政の声 に重点を置き、増え続けた国債残高に縛られひ たすら財政赤字削減のみにとらわれてきた。

しかし、国家における最高の財産は国民ひと り一人である。そして国家の重大な責任は、国 土と国民の生命財産を確保し生活を守り、充実 した人生を送れる社会をつくることである。す なわち安心で信頼できる地域社会の確保であ り、全ての家庭と家族が展望を持って充実した 生活基盤を構築することである。

日本国憲法第25 条では、国民の生存権と国 の社会的使命を崇高に掲げている。国民全て が、いつでも、どこでも安全で良質な医療が受 けられ、それが受診者と家族が納得できる適切 な負担であることがとても重要である。

医療制度をこれ以上後退させてはならない。 地域医療提供体制の存続が危機的状況にある今 こそ、医療制度のベースにある国民皆保険制度 の堅持と強化の政策の必要性を国民に説明し、 理解を求めながら国に国民の声を届けなければ ならない。

このようなことから、国民医療推進協議会で は、国民医療を守る運動を展開し、本日決起大 会を開催した。本大会が国の政策転換を促し、 わが国の医療崩壊阻止の端緒となるよう皆さん のご協力をお願い申しあげる。

協力団体代表
鈴木聰男東京都医師会長

最近患者さんから頂いた手紙を読み上げて挨 拶に代えたい。

「・・・先生を頼りにしています。病気の不 安もありますが、それ以上に我々高齢者は診療 を受けられなくなっていくのではないかという 不安の方が大きいです。先般、先生が紹介して くれた病院の内科は閉鎖され、後に病院自体が 無くなりました。

また、高齢者の負担が増すということも、一 時凍結や延期されたと聞きますが無くなったわ けではありません。歳を取ればあっちこっち病 気も増えるのは当然であり、それに対する不安 が大きくなることは事実です。

開業医は儲かっていると云われていますが、 私は先生を30 年以上見ていますが先生は儲か っていません。先生は一生懸命診療に当たら れ、時間をかけて診察をし説明をしてくれま す。それなのに初診料・再診料を下げると云う ことは、先生に気の毒です。

日本に生まれ、歳を取ることに負い目を感じ る環境ではいけないと思います。お願いです。 国会議員の先生方をはじめ社会全体に広く、私 たちの窮状と心配を訴えていただきますようお 願いします。」

3.来賓挨拶

自民党社会保障制度会長の鈴木俊一をはじめ 多数の自民・公明の国会議員が挨拶に立たれ、 異口同音に「現在の厳しい医療の状況を克服す るために、診療報酬のプラス改定を勝ち取るた めに頑張りたい」旨の挨拶が述べられた。

なお、主な来賓の発言は次のとおり。

鈴木俊一自民党社会保障制度調査会長

現在の地域医療は医療従事者のギリギリの努 力によって支えられている。しかし、それでも 限界があり、早急に変えなければならない。自 民党の社会保障制度調査会では、いろんな医療 問題に取り組んでいるが当面の重要課題は診療 報酬改定と位置づけ、昨日の医療委員会及び厚 生労働部会ではプラス改定を求める決議を採択 した。今後、日本の医療を守るべく、その実現 に向けて政府や党の幹部に働きかけていく。

木村義雄自民党社会保障制度調査会長代理

ここに駆けつけた国会議員を見ておわかりの とおり、国政の中で現在医療に対する危機意識 が高まっている。今回は何が何でもプラス改定 を勝ち取り、日本の医療に黎明をもたらすよう 皆様と共に頑張りたい。

大村秀章自民党社会保障制度調査会医療委員 長会委員長

昨日の委員会で必要な医療財源を確保すべく 診療報酬のプラス改定を要望する決議を採択し た。また、党内では「国民医療を守り危機突破 を図る緊急議員連盟」を立ち上げ「国民医療を 守るための緊急提言」を提示し診療報酬のプラ ス改定を求める署名活動を進めているが、現 在、自民党衆参国会議員390 人中現在240 人 以上の署名をいただいているが、全議員に賛同 署名いただき、その力で厳しい現状を打ち抜い ていく。

衛藤晟一自民党厚生労働部会長

過去3 回のマイナス改定は官僚中心に行われ たが、今回は、党が絡む形で診療報酬改定を取 り戻さなければならない。

坂口元厚生労働大臣

医療問題は「風雲急を告げる」段階であり、 私共は社会保障を守る立場から全力を挙げて頑 張っている。特に、来週当たりから具体化診療 報酬問題は、全体の状況を見極めながら、先生 方のご要望に添えるよう最善の努力をしたい。

4.趣旨説明

竹嶋康弘日本医師会副会長より、別紙資料に 基づいて本大会の趣旨説明が行われた。

5.決意表明

国民医療推進協議会加盟団体を代表して、大 久保満男日本歯科医師会長、中西敏夫日本薬 剤師会長、久常節子日本看護協会長、増田和茂 健康・体力づくり事業団常務理事から概ね以下 のとおり決意表明が述べられた。

大久保満男日本歯科医師会長

昨年の医療費のマイナス改定のうち歯科だけ で6 割を占めている。これでは日本の歯科医療 は現実には成り立たない。現場の歯科医師の使 命感で成り立っている状況である。

中西敏夫日本薬剤師会長

我々薬剤師は、医薬品の提供・管理し、国民 に適正な薬物療法を提供しているが、これ以上 の医療費抑制策が進むと、国民への適正な医薬 品の提供体制の構築は困難になる。

久常節子日本看護協会長

国民皆保険制度を守るためには、医師・看護 職が確保できるような体制を組んで行くことが 重要であり、日本看護協会としては、今の医療 に対応できる看護職の教育改革、多くの看護職 が働く続けられるための条件整備に取り組んで いく。

増田和茂健康・体力づくり事業団常務理事

健康の人のみならず障害を持つ全ての国民が 安全で安心した医療が享受できるよう地域医療 の確保のために国民医療推進協議会と共に戦い 抜く。

6.決 議

島健日本精神病院協会長より決議文の朗読 説明があり、全会一致で原案通り承認された。

7.頑張ろうコール

最後に古畑正世田谷区医師会長の音頭で頑張 ろう三唱が行われ、大会の幕を閉じた。