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「第1回沖縄県女性医師フォーラム」印象記

高良聰子

沖縄県医師会女性医師部会副部会長 高良 聰子
(たから小児科医院院長)

2007年10月20日(土)、ホテルロイヤルオリ オンにおいて、第1回沖縄県女性医師フォーラ ム「頑張ろう!女性医師」が開催された。

今年8 月、県医師会女性医師部会が結成さ れ、具体的な活動を開始した。

今回のフォーラムが活動の第一歩となった。 40〜50名は来るだろうかと心配していた役員 の思惑をよそに、100名近くの方々が参加し、 会場は花が咲いたようだった。

また、これまでの医師の会合にはなかった託 児室も設けられ、0歳から7歳まで17名のこど も達と8名のベビーシッターがいて、家族的ム ードの中で始まった。

県医師会長宮城信雄先生の挨拶(代読:玉城 信光副会長)の後、基調講演は、女性医師部会 部会長になった依光たみ枝先生が話された。依 光先生は、3人の御子さんの育児をしながら県 立中部病院一筋に30年頑張ってこられた方で ある。先生自身の体験と県立病院における女性 医師の状況についてユーモアを混ぜながら話さ れた。30年前の女性勤務医は10%弱であった が、2000年以降、医師国試合格者が30%を超 えており、病院勤務医師は20%となっている。 2年前と今年3月施行したアンケート調査の結 果によると、現在女性勤務医師は177 名で約 20%であり、その約70%は卒後10年未満の若 い女性医師で占めている。医師としてキャリア 形成の時期であると共に結婚、出産、育児とも 重なる重要な時期である。

専門科別では、内科(50 名)、小児科(18 名)、精神科、産婦人科と続いている。週平均 の実労働時間は男女差はなかった。当直につい ては、当直なしが1/3、月5回以上が36%、育 児経験者は53名で約30%であった。仕事と育 児両立可能は3/4、両立困難又は不可が1/4、 困難の理由は、育児支援体制がないことが最多 であった。また、産休がとれないのは大学病院 勤務者の25%にあり、育休がとれないのは全病 院勤務者の30%であった。最後に結婚後も仕 事を続けたいが84 %、子供が出来た時どんな 身分でも働きたいが86%であった。これは女性 医師が、医師としての仕事に魅力と誇りを感じ ており、周囲の環境が整えば仕事を継続したい との意志の表れで心強かった。依光先生も御自 身が30年続けてこられたのは周囲のサポートで あることを強調されて話を終了した。

特別講演は、全国の女性医師会の立ち上げに 多く関わっている千葉県立東金病院副院長の天 野恵子先生であった。

「これからの女性医師の役割、そして女性医 療と漢方」と題して話された。海外留学の経験 などから、グローバルの視点で医療問題、医師、 女性医師問題を捉え、示唆に富んだ話であった。 欧米に比べて日本は医師が少ない事、勤務時間 がハードで長いため、ゆったりと長く(老後ま で)働く医師が少ないという。勤務女性医師は、 全国的に似たような問題点が指摘される。開業 の女性医師はQOL、健康への留意などから満足 度は高いという面白い一面もあった。

また、1975年頃より、性差医療の概念が出 てきたこと、1990年代には、さらに研究が進ん でいる。女性の社会的立場からだけでなく、ア カデミックの面からも女性学(女性専門外来) を設ける必要性を強調された。

今回のフォーラムは、基調講演、特別講演共 に幅広く格調高い話で、皆様満足されたことと 思う。

さて、35年前の私の時に思いをはせれば、ともかく男性医師と同等、同様に働くことが女性 医師として権利の主張ができると思い、片意地 を張って生きてきた。そのため病院外(家庭や 子ども、保育園など)に犠牲を求めて長続きで きなかったように思う。女性医師パワーは、今 後40%〜50%になっていくだろう。是非、育児 支援、援女医システムをつくって女性医師が生 きがいを持って、仕事と家庭の両立をできるよ うにしたい。

これから医師会及び女性医師部会の役目は多 大である。

和気藹々とした懇親会の席で大先輩の金城玲 子先生(金城外科耳鼻咽喉科)が祝辞を述べら れた。先生は昨年閉院されたが依光先生の同窓 で、若い女医にエールを送りにかけつけて下さ った。諸先輩(女医OG)の声援もうれしいも のであった。

第1回沖縄県女性医師フォーラム
「頑張ろう!女性医師」参加者へのインタビュー

質問項目

1.今回の沖縄県女性医師フォーラムに参加しての感想をお聞かせ下さい。

2.これまで女性医師としてお仕事をしてこられた中で、ご苦労された部分がありますか?
  また、その様な時はどの様に切り抜けられましたか?

3.女性医師としてお仕事を続けるために欠かせないこととは何でしょうか?

4.医学部の女子学生も多くなっています。後輩の女性医師へのアドバイスなどありましたらお聞かせ下さい。

神谷鏡子先生

かみや母と子のクリニック 神谷鏡子先生




1.とても参考になり、初めての試みで、情報交換できてよか った。

2.産休、育児休暇など、なかなかうまくとれず大変であっ た。家族の協力なければむずかしかった。

3.仕事と家庭との両立、夫と姑の仕事への理解

4.仕事が忙しくて、結婚など遅れがちですが、機会があればた めらわずすべき。子どもが産める時期は研修期間、多忙時期 と重なるが若いから可能な場合もある。家庭をもちながら、 仕事へのモチベーションをもちつづければ大丈夫です。



首里京子先生

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
首里京子先生



1.「頑張ろう!女性医師」に賛同する女医さんがこんなにた くさんいるとは思いませんでした。「女性医師が働きやすい 環境は、すなわち、男性医師が働きやすい環境」でもあり、 日本における厳しい勤務医の体制の抜本的な見直しを図る 必要があると感じました。

2.子育てとの両立を実践する中で、病児保育可能な院内保育 があれば、もっとスムースに仕事ができると思います。(私 の場合は遠方の祖母か自分が休むことで対応しました。)

3.同僚、上司の理解、病院の理解も大事と思います。 「女性医師としての権利」ばかり主張するのではなく、仕事 に子育てに、真剣に打ちこむ姿勢も大切。

4.男性医師と肩をぶつけ合って、競争することも大事ですが、 女性医師にしかできないこともたくさんあります。 自分の進むべき道を考えるとき、そのような役割分担も考 えられれば後に、息切れすることもないのでは…と思います。 とにかく、女性医師であること、女性であるが故の生きが い、両方を大切にできる人生を!!



仲原靖夫先生

仲原漢方クリニック 仲原靖夫先生




1.従来医師会活動は男性医師によって担われてきました。従 ってあらゆるシステムが男性を基準に整備されているとい っても過言ではないと考えます。すると女性医師の代表が 医師会でも発言の場を確保する必要があると考えます。女 性医師の発言が医師会活動にも新風を送り、新たな医療体 制確立の原動力、推進力となることを期待します。

3.妊娠、出産、育児という女性特有の役割を担うための援助 を医師会で検討、具体化する必要があると考えます。これは 日本医師会の問題でもあり。国の問題でもあると思います。



新垣京子先生

豊見城中央病院 新垣京子先生




1.20年程前、私が子育てに明け暮れていた頃は、女性医師支 援など夢にも考えられないことでした。今回、厚労省から このような提言があったということは、勤務医不足解決法 の一手段かもしれませんが、女医の増加及び時代の流れに よるものだと思えます。

このフォーラムでは、女性医師(殊に出産、育児に携わ っている)支援に焦点が当てられていました。しかし、仕 事と家庭の両立で悩む背景には、男女を問わず勤務医の仕 事が過酷でストレスが多すぎるという現状があります。保 育所設置などと共に、慢性過労に陥っている勤務医の労働 状況も改善して欲しいものです。

2.独身の頃の苦労は覚えていません。
結婚後、一番困ったのは子どもたちの病気です。突然の発熱、 けが、中耳炎、水痘等々、保育園に預けられず、私が休暇を とりました。病児保育施設が欲しいと切に思いました。

3.女性が家庭を持って働くためには、周囲の支援と職場の理 解が必要です。しかし、どちらも、自分自身の努力だけで は解決できません。殊に職場の理解はそうです。社会がそ のように変わっていくことを願います。

4.結婚、妊娠、出産、全て個人の自由で、他人がどうこう言 う事柄ではないのですが、私自身は結婚してよかったかなと 思っています。未だに未熟ですが、結婚し子育てをする中で 自分自身も成長させてもらいました。



仲宗根しのぶ先生

なかそねクリニック 仲宗根しのぶ先生




1.会場にあふれるほどの多くの人が参加しており、心強く思 いました。女性ということで、妊娠、出産、育児に関わる 支援についてがひとつのテーマ、そして、もうひとつは、男 も女もなく医師の過重労働の問題があります。

2.何といっても時間が足りない、体がふたつ欲しいほどの忙しさ…

1)家庭の運営−家事は人に頼めるものは頼む(家政婦さん、 身内)便利な機械はどんどん取り入れる

2)育児−保育園とベビーシッターの二重保育(お迎えをベ ビーシッターに頼み、親が帰宅するまでみてもらう。病 気の時は身内が頼り。)

3.1)仕事を続けるのだという強い意志−意志あるところに医 師あり(道あり)

2)健康

  体→倒れるほどのムリをしてはいけない、休養も上手にとりたい。

  心→ストレスをためない。相談できる人はきっと近くにいます。

3)まわりの協力、理解、応援→これらに対する感謝の気持ちを忘れないこと。

4)先を見通してダンドリ上手になること。常に先手、先手で行動すること。忙しさを克服するには後手に回ってはダメです。

4.制度的なものは徐々に良くなっていくと思います。目標を高 く持ってがんばってほしいですね。
 妊娠、出産、育児ではまわりに多少の迷惑をかけてしまう こともあり得ますが仕事を続けていればいつかお返しができ るはず。
 あと大事なこと、共働き可能なダンナを見つけましょう。

会場風景







印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

95名の参加者であった。大成功である。役員の一生懸命さが女性医師の中に浸透していった成 果だと思う。名簿も117名の登録がなされた。また、子育て中の先生のために育児室を設けてベ ビーシッターの手配をした。これまでの医師会の会合にはなかったことである。

女性医師を取り巻く環境はまだ厳しいものがある。依光先生にはアンケート調査をもとに女性 医師の勤務環境や妊娠、出産にからむ多くの問題点をあげていただいた。子育て中に大切なこと は保育所や家族の手助けであると述べ、会場にいたお母さんに感謝の気持ちを述べられたことは 感動的であった。

天野先生が最初に話したことは「早く結婚して子供をつくりなさい。別れてもいいから」イン パクトのある発言で会場はどよめいた。

そのあとで「循環器分野における女性医師の労働環境」調査をもとに問題点を上げていただい た。しかし、その中で最も生活の活力がなく、仕事への満足度が低く、健康への満足度や余暇の 過ごし方の低い者は勤務医の男性でその次に女性の勤務医であった。開業医は女性も男性も勤務 医に比べて満足度が高くなっていた。仕事に自分の裁量が働くからであると思われた。

大変興味をひく話があった。1977年からアメリカにおける生理学的研究における臨床トライア ルが女性を対象から外し、男性をモデルとして研究され女性にも当てはめられてきたといわれた。 1990年に入ってから男性と女性の本質的な違いを認識した研究が行われるようになったらしい。 女性は閉経前と閉経後で生理的な現象や疾病が異なってくる。性差医学が唱えられるようになり、 最近は論文の数も多くなってきたようだ。

性差医療の実践の場としての女性外来が日本にもできて来た。女性外来の割合は更年期障害が 35%、精神疾患が27%、産婦人科疾患が25%を占め、その他は13%である。女性に特有な問題 と精神的な疾患が多くを占めることがわかる。

面白い視点からの話で大変興味深かった。

講演会の後に懇親会がもたれたが、子供たちも一緒になり、先輩、後輩の大同窓会になった。 大変大きな力である。今後はこの力をどのように集約して、問題の解決に向けていくのか。大変 な作業が待っているようである。