常任理事 安里 哲好
去る11月16日(金)〜17日(土)の3日間にわたり、長崎市にお いて九州医師会連合会総会・医学会関連諸行事が開催されたので、 その概要を報告する。
標記臨時委員総会は、16日(金)の午後5時 から開催され、司会より開会が宣された後、井 石哲哉九州医師会連合会長(長崎県医師会長) より、「医療を取りまく環境は、政府の財政優 先の政策でさらに厳しさを増している。私ども は、その疲弊する地域医療提供体制の危機を打 開し、国民の生命と健康を守るため一層の結束 を固め日医を強力に支援しつつ難局を乗りきら ないといけないと思っている」と述べられた。
その後、唐澤人日本医師会長、西島英利 参議院議員、武見敬三前厚生労働副大臣の来賓 祝辞、報告、議事が行われた。
来賓祝辞
まず、ご挨拶の前に、本日東京を発つ前に自 民党前幹事長の麻生太郎氏にお会いし、診療報 酬改定向けて詳細な指示を仰いだ。着々とやる べき事をやっているということをご報告申し上 げたい。
さて、昨年改正された医療制度改革関連法 は、改革とはいいながらその実態は医療費抑制 のために患者と医療機関に負担を強いるものに なっており、国民医療を支える国民皆保険制 度、医療提供体制に深刻な影響を及ぼし、国民 の不安を増大している。国民の期待に応える健 康福祉を守るためには安全で質の高い医療をい かに効率的に提供できるかという視点からの改 革が求められている。
日本医師会は、このような社会理念に基づい た国民皆保険制度、医療提供体制をあくまでも 堅持する所存である。現在、後期高齢者医療制 度の負担増を凍結する方向にあるが、制度その ものを見直す事が重要であり、そのために努力 を続けていく。
我々が展開する医師会活動は、国民の支持を 得るために日頃から、国民のための医療を目指 した地道な活動の積み重ねが何より重要である と考えている。
九州医師会連合会のこれまでの地域の実情を 踏まえた地道な活動は、長い歴史とともに確か な実績と着実な成果を上げており高く評価され ており、これからの日医の推進する医療改革に 対し深いご理解と絶大なご支援をお願い申し上 げたい。
中央情勢報告をもって私のご挨拶とさせてい ただきたい。
○現在の政局について
今年7月の参議院選挙において与野党が逆転 した参議院においては、我々が提案したものは 何一つ通らず、野党が提案したものはどんなデ タラメな法案でも通過するといった状況の国会 運営が強いられている。
そのような中で、民主党が提案する法案を無 視することはできないので、与野党の協議会を 設置し、必ず与党が対案を出してその対案に基 に調整作業を進め、ほぼ与党案で進めるよう努 力している。
○療養病床問題について
現在の療養病床を老人保健施設等新しい施設 に転換する場合、病床の面積について、当初、 暫定措置を平成24年3月迄とするということで あったが、建物を新しく建てて改築までは通常 20年を要すること、また、現在の療養病床は平 成12年に整備されたところが多いことから、こ れらのことを踏まえ、建て替えるまでは現状の ままでいいということで合意ができつつある。
病床削減に関しても、都道府県が上げた数字で 決めるということであり、各県医師会においても 医療審議会等において積極的に議論に加わって、 是非必要な病床数を確保していただきたい。
○ 肝炎対策について
自民党は公明党と共に肝炎対策を検討し、財 源のあり方を示した。例えば、インターフェロ ンを治療に使う場合、自己負担額を所得が1) 470万円以下は1万円、2)470〜720万円は3万 円、3)720万円以上は5万円とすることで進め ている。
また、肝炎対策をより一層進めるべく肝炎対 策基本法を作る準備を進めている。
○医師法21条関連について
異常死の問題について今月中にとりまとめ、 来年の通常国会に提案すべく準備を進めてい る。具体的なことは未だ決まっていないが、解 剖の必要の有無の事案がはっきりすることにな る。また、診療関連死の届出を義務化するので あれば免責制度を導入することをめざす。
警察への通報については、故意または重大な 過失ということになると思うが、重大な過失を どう判断するかが課題となる。
○診療報酬の問題
いよいよ詰めの段階にきており国会議員も動 き出してきた。一昨日と今朝、応援部隊となる若手国会議員に集まってもらい議論した。この 会議で要望書を作って自民党4役に提出したい と考えている。その折は、各県医師会において も地元選出の国会議員にレクチャーしていただ きたい。12月18日頃には改定幅が決まるとい われており、ここ1・2週間が山場である。
本日、東京で九州選出国会議員と九州各県県 議会長との会議が開かれ私も参加した。その中 で、地域医療崩壊の問題も取り上げられ、それ に対する予算が必要だという話になっているの で、今がチャンスである。
中央では私が国会議員等を通してそのような 働きかけをするのは当然であるが、先生方にお かれても各地域で地元国会議員等関係者へ要請 活動を賜りたい。
7月の参議院議員選挙においては、九州各県 の先生方に多くのご支援をいただき感謝申し上 げる。しかし、手厚いご支援をいただきながら も当選できなかったことは私の不徳の致すとこ ろでありお詫び申し上げる。
振り返ってみると、医療費抑制策がいかに医 療現場を荒廃させているのか、そして医療に従 事する多くの方々が大きな不満を抱え、それぞ れの立場から政府・与党に強い反発を持つよう になってきていることを肌で感じている。
特に、12月の診療報酬改定がもしマイナス改 定ということになれば、政府・与党は医療に関 わる方々から理解は得られないと思う。そこま で医療の世界は追い込まれているという状況 を、政府・与党の幹部の方々、そして自民党国 会議員はしっかりと理解する必要がある。
私は国会の議席を有していないことから医療 政策に直接関わることができず、また、実際に 生の情報が入る事が無くなり、皆様のお役に立 つことができずに誠に申し訳なく思っている。
今、私の立場は微妙である。今後6年間の間 にかなり高い確率(93%)で繰り上げ当選する 可能性があるといわれている。いずれ政界戻っ た時により大きな役割が果たせるよう初心に返って努力したい。
幸いハーバード大学より、公衆衛生大学院の 客員研究員、医療財政研究所の研修室を得るこ とができたので、そこで、改めて医療に関わる 諸課題について広い視点から勉強させていただ き、政界に復帰した暁には、国民医療を守れる 政治家としてその立場を確保すべく努力するの で、今後とも引き続き九州医師会連合会のご支 援を賜りたい。
報 告
座長の井石会長より、当臨時委員総会に先立 って開催された第292回常任委員会について報 告があった。
粟津委員(長崎県)より資料に基づき、平成 19年10月31日現在までに行われた九州医師会 連合会事業(常任委員会、委員総会、各種協議 会等)及び関連行事について報告が行われた。
福島委員(長崎県)より資料に基づき、平成 19年10月31日現在の九州医師会連合会歳入歳 出現計について報告があった。
なお、歳入・歳出合計並びに差引残高につい ては下記のとおり。
歳入合計 65,787,437円
歳出合計 14,600,578円
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差引残高 51,186,859円
粟津委員(長崎県)より資料に基づき、11月 16日(金)の前日諸会議、17日(土)の合同 協議会、総会・医学会、18 日(日)の分科会、 記念行事について報告があった。
議 事
座長の井石会長より提案理由の説明が行われ た後、高村委員(長崎県)より宣言・決議(案) の朗読があり審議した結果、原案のとおり承認 され、翌17日(土)の総会に上程することが決 定された。