沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 1月号

平成19年度都道府県医師会
広報担当理事連絡協議会

理事 村田 謙二

去る11月15日(木)、日本医師会館において みだし協議会が開催されたので、その概要を報 告する。

中川俊男常任理事の司会進行のもと、冒頭唐澤人会長より次のとおり挨拶があった。

「本日は、お忙しい中、広報担当理事連絡協 議会にお集まりいただき、誠に有り難うござい ました。早いもので、私どもの執行部が誕生し て1年7ヶ月が経ちました。私たちは、基本的 方針として「広報活動の充実」を最重要課題に 据えて、努力してまいりました。先日の代議員 会でもご報告申し上げましたが、テレビCMな ど、新たな広報戦略により、日医に対する国民 からの関心度、信頼度は、それを展開する以前 と比較して、数ポイントずつ上昇したことが、 調査結果から明らかになりました。長年にわた り植えつけられた、本会のネガティブなイメー ジは一朝一夕に払拭することは出来ません。し かし、新たな広報活動の展開によって、確実 に、国民の日医への信頼が増すことを確信しま した。

さて今日、「医療崩壊」と呼ばれる危機が広 がっています。病院医療における産科・小児科 医の不足と偏在、療養病床の再編という名のも とでの大幅な病床削減、都市と地方の医療格差 等々、さまざまな問題が噴出しています。そし て、これらの問題の根源には、長期間にわたる 政府の医療費抑制策があることは、すべての医 療関係者の共通認識になっております。先月、 私ども執行部は、舛添厚生労働大臣を訪れ、次 回の診療報酬改定で本体の5.7%の引き上げを 求める要望書を提出してまいりました。その際の会談では、舛添大臣も医療がおかれている危 機に関して深刻に受け止めていることが確認で きました。

執行部としては、平成20年度予算が決定され るまで、診療報酬の引き上げに向け、中医協や、 国政の場など、あらゆる機会を通じて、活動を 展開してまいりますので、先生方からの一層の ご支援をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

これら執行部の活動につきましては、できる だけ早く「日医白クマ通信」に掲載するほか、 毎週行っている記者会見で公表するとともに、 『日医ニュース』などを通じて会員の皆様にご 報告してまいります。今月末には、新しい3タ イプのテレビCMが完成し、放送を開始する予 定になっております。新たな広報戦略は、まだ まだ端緒的段階ですが、いつの日か、大きな成 果を生むことになるはずです。

最後に、全国からお集まりいただきました広 報担当理事の先生方には、今後とも、高いご見 識のうえで叡智をお出しいただき、国民から信 頼される日本医師会のイメージ作りと、会員に 向けた正確で迅速な情報発信のための広報活動 に対して、絶大なるご支援・ご指導をお願い申 し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。」

続いて、長瀬清広報委員会委員長より、日本 医師会広報委員会委員の紹介の後、広報委員会 の審議について概ね次のとおり報告があった。

去る10 月3 日にホームページをリニュアル し、動画を入れて病気の説明をしたり、日医の キャラクターである白クマを活用する等して親 しみ易くした。その結果アクセス件数は3割〜 4割増えた。

なお、現在、広報委員会では、唐澤会長より 諮問を受けた「日本医師会の組織強化に向けた 広報の在り方」について、特に勤務医に日医の 活動をいかにして理解してもらうか、また勤務 医の加入促進に繋がる広報について鋭意検討し ている。

報 告

「日医の広報活動について」
日本医師会常任理事 中川俊男

中川俊男日医常任理事より、日医のテレビ CMが広告電通賞を始めとする様々な賞を受賞 した旨報告があり、引き続き、昨年10月からス タートさせた3編のテレビCM並びに3月下旬に 読売・朝日両新聞で行った意見広告の効果を測 定するために行った意識調査結果についてスラ イドを用いて報告があった。

本調査は、一般生活者の日医に対する意識を 把握する目的で、全国の約1,100サンプルの成 人男女を対象に、日医の認知状況、日医への関 心度など5項目についてインターネットで行っ たもので、前回行った事前の意識調査と比較 し、広告の効果を考察した。概要は以下のとお りである。

日医の認知度については、約95%で前回の 調査と大きな変化はなかった。日医への関心 度、期待度、役立度、信頼度については、いず れの指標でも、性別、年代別を問わず、ほぼ全 てで前回調査に比べスコアは上昇しており、ま たいずれも女性の方が男性よりも高く、また、 関心度、期待度は年齢が高くなるほど高い。広 告認知度別で見ると、関心度・期待度は、性・ 年代別各層で、広告認知者が広告非認知者を上 回っており、役立ち度は男性50代で、信頼度 は30代・40代・50代で広告非認知者を上回っ ている。広告の評価としては、印象度が、新聞 の意見広告、テレビCM3タイプ(「高齢者医療 編」「学校保健編」「医師の心ない一言編」)い ずれの広告も「印象に残った」「やや印象に残 った」の合計が60%を超えており、これが受賞 に繋がったと思われる。新聞の意見広告を含め てテレビCMがイメージアップ戦略におけるツ ールとして、かなり有効であると考えられる。

新しいCMの放映を予定している。放映にあ たっては、残念ながら予算の関係で回数は少な いが、粘り強く継続して効率的に広報活動を行 っていきたい。

講 演

「国民と共に日本の良質な医療を守る医師会 の広報施策の現状と今後に向けて」
橋本 直彦
(株)博報堂MD戦略推進局局長代理

日医の広報に携わっている(株)博報堂の橋 本直彦MD戦略推進局局長代理より、「国民と 共に日本の良質な医療を守る医師会の広報施策 の現状と今後に向けて」と題して、スライドを 用いて講演があった。

広報施策の狙いとしては、日医の政策提言に あたっては生活者の支持が必要不可欠である が、現状では、生活者の十分な理解・支持が得 られていないという状況で、これを何とかしな ければならないということが出発点であった。 当時の状況は、日医に対する意識調査による と、日医への無関心が6割を占め、日医と聞い て頭に思い浮かぶこととの質問に対する自由回 答では、政界との癒着、政治的圧力団体との回 答も多数あった。広報を考えるにあたって、日 医を好きか嫌いかは重要ではなく、生活者にと って「自分にとって関係のある存在」かどうか ということを課題として考え、先ず無関心とい う環境をリセットし、新しい関係を築き、国民 と医師会が一緒に良質な医療環境を共創するこ とを目標とした。この半年の活動を経てリセッ トはある程度出来たと考える。

具体的な目標としては、抽象的なイメージア ップではなく、関係性(1)医師会は自分の利害 に関係する団体である、2)医師会の役割を知っ ている、3)医師会が発信する情報への興味、4) 医師会への能動的アクセス、5)医師会への期 待)が改善出来ているかどうかということを狙 いとしている。その評価はきちんと調査をして数値として出していきたい。

成果としは、広告が始まった直後の新聞報道 に「日医が脱「圧力団体」CM」、「自ら課題を 突き付ける」等と書かれたことから、医師会が 本気で変わろうとしていることが記者の目に映 ったと考える。また、特に女性への効果が上が っており、一つの広報戦略としては、女性は、 健康に関心が高く、口コミの効果が期待でき る。更に、生活者が独自のブログの中に医師会 の広告を取り上げており、普段考えるきっかけ となっている。生活者にとっての医師会の見え 方が「医師の利益代表」から「国民と共に最善 の医療を考える団体」、「国民の声を代弁する団 体」という方向に変わり始めている。医師会へ の期待が高まってきているものの、あくまでま だ階段の最初の一歩を昇っただけで、問題はこ れからである。

今後は、各地域の医師会が、地域のマスメデ ィア、行政の広報誌、院内メディア等を利用し てメッセージを発信して、ホームページ、直接 対話等で国民の意見を吸い上げ、日医が重層的 な国民の声として国を動かしていくという「運 動体」になれるかどうかが重要になる。

意見交換

○スライドの表で、疾病や医療に関する情報源 として利用する媒体として、イベント・セミナ ーの利用が低くなっている。市民公開講座は少 数ではあるが参加した方々に理解を深めていた だいており、イベントそのものとしては非常に 効果的と思うがいかがか。

○橋本氏:イベントの内容を広報誌に掲載した り、一つ一つの活動を分散させるのではなく一 つのテーマを設けてまとめることで効果が得ら れる。

○先の参議院選挙で会員の数の得票も得られな かった。対内広報活動が不十分ではないか。

○橋本氏:今後広報活動を続けていくうえで、 対外広報に加えて対内広報の施策が非常に重要 であると認識している。

○過重労働問題というと、産婦人科や小児科等 勤務医だけのイメージがあるが、在宅医療を行 っている開業医なども過重労働で倒れるケース が多い。勤務医と開業医が別々という感じがす る。今後ますます勤務医も開業医も過重労働と いう状況に置かれていくといった広報をしてい ただきたい。

○中川常任理事:行政は勤務医の疲弊に絡めて 勤務医と開業医の分断を図ろうとしている。そ ういった事にならないよう日医としても出来る 限りのことをやっている。

○対外広報については、日医のイメージは良く なったが、今後は医師会の活動を国民に知らせ て行くことが重要と考える。

対内広報については、医師会が国民に真に医 師の代表と見られるためには、医師の3分の2を 占める勤務医がもっと声を出して行かなければ ならない。そのためには、勤務医の加入促進が 必要であり、日医が勤務医のために何をしてあ げるのかを表に出していく広報が必要である。

○勤務医に発言する権限を与えることが大事で ある。郡市医師会の役員に勤務医を入れたり、 また、県医師会の常任理事に必ず勤務医を入れ ることによって、その会員を通じて勤務医に情 報が発信されていく。女性医師についても前向 きに県医師会の常任理事に入れることによって、 役員会の情報が口コミ等で伝わっていく。この 様な方法が費用も掛からず効果的と考える。

また、勤務医の非会員にも医師会活動へどん どん参加してもらい、医師会の垣根を低くする ことによって、勤務医の意識も変わり、また、 開業医と勤務医の垣根も低くなってくるのでは ないか。

○勤務医に日医が正しく理解されていないこともあり、勤務医に参加してもらうことを一つの 目的としてメーリングリストを作った。また、 メーリングリストを活用し県医師会のトップと 会員の情報格差を解消すべく、会員の疑問に県 医師会の理事が直接答えるという方法をとった ところ雰囲気が良くなった。勤務医と開業医、 開業医の中でも上下関係が上手くいかないと今 の時勢は難しい。

○開業医も勤務医も会費が高くて加入出来な い。会費を安くしてA会員、B 会員の会費を一 律にしてはどうか。また、日医が政党や政治家 を選ぶ時代になってきているので、今後日医の 政策が具体的にになって国民に示されるように なれば、そういったことも日医執行部として考 えて欲しい。

○マスコミと懇親を深めて、マスコミと一緒にな って我々の実態を国民に伝えていくのも重要であ り、その実態を伝えるために日医総研のデータを 簡単にもらえるような窓口を作って欲しい。

○中川常任理事:記者会見で日医のデータを発 表して、翌日にはホームページで公開している ので活用いただきたい。

○国民の味方を得るために、医師会は自浄作用 があるというキャンペーンをやって、悪徳医師 の商売法というバージョンを作って欲しい。今、 コンタクトレンズ購入時の検査を主に実施する 眼科診療所での悪質な診療報酬の不正請求をマ スコミが報道している中で、医師会が医療費増 大を訴えても話が通じない。むしろ、医師会の 本質は欲張り村の村長さんと思われるのが関の 山である。是非、医師の中には悪どい事をして お金を稼いでいる人がいるので気をつけて下さ いというような強烈なメッセージを国民に発信 すれば、政治団体とか圧力団体とかいう間違っ たイメージも払拭されるのでないか。

○中川常任理事:自浄作用を示すことはもちろ んである。テレビCMの「医師の心ない一言」 はその延長線上にあると思っている。悪徳医師 の商売法については今後の参考にしたい。一部 の医師の不正から会員を如何にして守るかを含 めて考えていきたい。

○現在、眼科ではコンタクトに関して問題を抱 えており、コンタクト対策には全勢力を尽くし ているがなかなか難しいところがある。この問 題については眼科医会としてきちんとした対策 を練っていかないと思う。

会内広報については、勤務医へ情報を発信す るだけでなく、勤務医は当直明けの勤務、収 入、退職後の問題など多くの悩みを抱えてお り、日医がそういった問題に実質的な対策を示 すことで会員の気持ちを惹きつけることができ るのではないか。

○映画「シッコ」は、アメリカ医療の現状を描 き、日本社会への警鐘とするという意味で映画 の持つ意味は極めて大きなものと言える。この 映画を最大限に利用するのに最も効果的なのは テレビを通して全国放映することではないか。

○中川常任理事:現在、一般公開中で、基本的 には2年間はテレビ放映を禁止する規約がある。 2年経ってもテレビ朝日やTBSなどの主要局が 放映する前に地方局が先に放映することが出来 ない。2年後に日医がスポンサーとなってテレ ビ放映も可能であるが、1回放映するために2億 円掛かる。

印象記

村田謙二

理事 村田 謙二

本文をていねいに読んで頂くとすぐわかることであるが、日医の現執行部は「広報活動の充実」 に並々ならぬ意欲を持っている。特に国民へ向けての広報に力点を置いていることが、唐澤人 会長の挨拶や中川俊男常任理事の報告においてひしひしと伝わってきた。テレビCMに関しては、 広告業界の賞を総なめにしたと言っても過言ではないほど、多数の賞を受賞したとのことである が、それも成果の一つであろう。テレビCMを放映する前後でアンケートを実施したということ だが、放映後では日医に対する国民の関心度、信頼度は数ポイントではあるが上昇したとのこと、 特に女性には好意的に受け入れられたようである。それに力を得てか、12月からは新しい3タイ プのテレビCMが放映されているという。残念ながら私自身はまだ一度も見ていないのだが。

テレビCMの製作に携わった博報堂橋本直彦氏の講演を拝聴したのだが、印象的だったのは、 テレビCM放映以前、国民は医療制度には高い関心を示すものの日医へは実に6割が「無関心」と 回答していたという事実である。ただ、このアンケートはインターネットで行ったものなので、回 答者は若い世代にシフトしている可能性があることは否めない。

広告業界として重要なことは、好き嫌いは別として、「無関心」層をいかに減らすかということ で、たしか昨年のこの連絡協議会でも、アンケートで日医に対して否定的な回答をした方々にあ えて参集していただき、日医のありようを説明するなどの働きかけをしたところ、かなり日医に 対する認識が好転した福岡の事例が述べられていたように思う。

日医が生活者にとって決して「医師の利益を守る団体」ではなく、「国民と共に最善の医療を考 える団体」と認識してもらうにはまだまだ長い道のりがあり、今後も一つひとつ地道な努力をし て前進するしかないのであろう。

質疑応答では、対内広報ことに勤務医への広報が足りないのではないかという意見が、多く聞 かれた。これは県内の広報担当理事として私自身常に痛感している問題であるが、良い処方箋は 見つからない。今はただ、ひとりでも多くの方に読んで頂ける「沖縄県医師会報」の誌面造りに 精を出すのみである。

マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」に関しては上映会をすれば日医から補助金が出るが、 費用対効果の点で難があるということで、県の理事会においては上映会を見送ることにした。も う少し待てばビデオやDVDとして発売されるので、各施設の待合室などで見てもらうのはどうで あろうかなどを考えながら、秋の気配濃厚な東京を後に帰路についた。