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第3回男女共同参画フォーラムに参加して

首里英治

豊見城中央病院 産婦人科 首里 英治



首里京子

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 新生児科
首里 京子

第3回男女共同参画フォーラムが、神奈川県総合医療会館にて、去る7月28日に行われた。

今回、私自身が子育てを行いながらの仕事復帰で、日本医師会の取り組みに共感を覚える点が多々あったため、本フォーラムに参加する機会を与えていただいた。医師不足といわれる現在、子を持つ女性医師にとって、勤務環境の改善、柔軟性は必須事項であり、沖縄県においても、早急な改善策を提示していただきたく思う。

第1部 日本医師会の取り組み

1.日本医師会 医師再就業支援事業報告

(1)女性医師バンクについて

厚生労働省の委託を受け、平成18年11月より医師再就業支援事業を開始している。その大きな柱の一つとして「女性医師バンク」の設立である。民間との大きな違いは求人求職に一切の負担がないこと、コーディネーターとして、医師が応じることなどが挙げられる。この半年間で、26件の就業成立に至っている。課題は、一人一人の復帰条件などOrdermadeに応じていくものにしていくことである。

2.男女共同参画委員会からの報告

(1)病院長・病院団体への働きかけ

現在、日本の医師数に占める女性の割合は16.5%だが、医師国家試験合格者の3分の1は女性が占めており、若い世代の女性医師は確実に増加している。しかし、いったん勤務を開始した女性医師の15%近くが、出産育児を契機として30代に離職している。彼女らがキャリアを中断せず働き続けることのできるように勤務体制を整えることは、医師不足の観点からも非常に重要である。そのためには病院長、勤務先の上司・同僚の理解が不可欠であり、日本医師会では女性医師の現状と問題点、子育て支援についての理解を深めることを目的に講習会を実施している。

平成18年度は19年2月から全国22府県で、「女性医師の勤務環境整備に関する病院長、病院開設者・管理者等への講習会」が開催された。今年度は全47都道府県での開催を予定している。

(2)日本医療機能評価機構への働きかけ

勤務医などの過重労働や長時間労働、女性医師の就労環境の未整備などにより、医師の「燃え尽き」「立ち去り」「離職」等が生じている。このような中、医療機関での医師不足が顕著化し、より質の高い、安全な医療の提供が極めて困難な状況となっている。その解決策として、日本医師会から、日本医療機能評価機構に対して、1.ゆとりある勤務体制、2.子育てしながら勤務できる体制、3.休業後の再就業を支援する体制、の3点を医療機能評価項目に加えるよう要望した。平成19年3月23日に要望文書が送付され、評価機構理事会で取り上げられ、今後検討されることになっている。

(3)保育についての提案

女性医師が勤務を継続していくためには、柔軟かつ多様な子育て支援が求められていることは、各種アンケート調査の結果より明らかである。女性医師という特殊な勤務体制を支えていくためには、院内保育の実施は不可欠であろう。各医療機関に義務付けられるようになることが望ましいが、加えて延長保育、24時間保育、病児・病後児保育に対しても柔軟な対応が期待されている。現在あるシステム・利用できるサービスを有効に組み合わせ、利用者の相談窓口となる「育児システム相談員(仮称)」の育成・設置を提案した。

(4)女子医学生や若い女性医師サポート事業

女性医師が妊娠・出産・育児の生物学的性差から離職を余儀なくされることなく、生涯にわたって能力を発揮できる環境づくりが重要である。この目的のため、男女共同参画委員会は、全国での研修会の開催実現を願い、昨年度は10ヶ所でモデル事業を行なった。講師には身近な先輩女性医師が選ばれ、体験談を交えて若い世代への期待が語られた。参加者からは、誇りを持って働いている女性医師の“生”の姿を知ることにより、医師として生涯働き続けることができるであろうという期待が持てたとの感想があり、本事業の拡大および継続の必要性が痛感された。

第2部 ラウンドテーブルディスカッション
「女性医師の勤務支援を巡って」

1.今後の女性医師の活躍を展望する
厚生労働省医政局長 松谷 有希雄 氏

わが国の医療提供体制は、国民皆保険制度の下で、国民が必要な医療を受けることが出来るよう整備が進められ、この結果、世界最高水準の平均寿命・健康寿命や高い保健医療水準を実現し、国民の健康を確保するための重要な基盤となっている。

医師の状況に目を転じると、医師の総数自体は毎年増加しているものの、特定の地域や診療科等で医師の確保が困難になっている現状がある。また、勤務医を取り巻く厳しい勤務環境の改善や近年増加している女性医師の継続的な就労の支援の必要性も一層高まっている。

我が国の医療提供体制を今後とも維持・発展していく上でも、女性医師の方々には、まさに要として活躍していただく必要があると考えており、先般、政府与党において取りまとめた「緊急医師確保対策」においても、女性医師等の働きやすい職場環境の整備を重要課題の一つと位置付けるなど、全力を挙げて取り組んでいるところである。

2.法で定める産休、育休と望まれる育児支援
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
大谷 泰夫 氏

人口減少社会に突入した我が国において、女性の就業促進は重要な課題の一つであるが、いわゆる「M字カーブ」に見られるように、出産・育児を機に離職する女性が依然として多く、第1子出産を機に約7割の女性が離職しているという現状がある。

政府においては、産前・産後休業や育児休業、勤務時間短縮等の措置等の整備、次世代法に基づく事業主の取組促進や助成金の支給、延長保育や休日保育などの多様な保育サービスの整備といった両立支援対策を推進している。

ワーク・ライフ・バランスの実現は、医療現場においても優秀な人材の確保・定着のための最重要課題の一つであり、医療界全体での理解と積極的な取組が期待される。

3.政策・方針決定過程への女性の参画の拡大について
内閣府男女共同参画局長 坂東 久美子 氏

男女問わず、一人ひとりがその能力・個性を発揮できる社会の実現は我が国の将来を左右する重要な課題だが、我が国の男女共同参画の状況はまだ不十分であり、国際的に見ても政策・方針決定への参画など女性の社会的な活躍度は進んでいない。その改善に向けて、政府は「2020年までにあらゆる分野での指導的地位に占める女性の割合を30%に」という目標を掲げている。そのためには、仕事と家庭の両立支援や働き方の見直し、社会全体の意識改革など、女性が活躍できる環境づくりを進める必要がある。

第3回男女共同参画フォーラム宣言

女性医師のキャリアアップを困難にし、その社会的使命を果たすことを阻む全ての要因を除去し、女性医師が、単に育児と仕事を両立させ得るに止まらず、質・量共に、自身と誇りを持って、輝きながら、医師としての使命を達成し得るよう、社会的基盤の整備と施策の実践がきわめて重要であり、喫緊の課題であることを、このフォーラムに参集した皆の総意により、ここに宣言する。

第4回開催地は福岡県である。宣言された熱い総意が多くの施設に受け入れられ、女性医師が輝きながら働ける環境が1日も早く実現するよう、願ってやまない。