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平成19年度第2回沖縄県医師会・沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る7月19日(木)、県庁3階第4会議室において標記連絡会議が行われた。

議 題

健康長寿世界一復活に向けた福祉保健部の取り組み(現状及び今後)について
(本会大山常任理事提案)

<提案要旨>

平成18年6月に発表された「健康おきなわ2010中間評価報告書」では、禁煙に関しては実績をあげつつも、生活習慣に起因する、肺がん、脳血管疾患、虚血性心疾患、糖尿病等の死亡要因は改善どころか悪化の傾向にある。特に糖尿病については、2005年度の都道府県別年齢調整死亡率調査において男女ともに全国1位という不名誉な結果が示されている。厚労省がこれまでの健康施策を「総花主義的でターゲットが不明確、目標達成に向けた効果的なプログラムやツールの展開が不十分、現状把握・施策評価のためのデータの収集・整備が不十分」と評価したように、健康おきなわ2010でもこれまでの各種取り組みが的を得ていない可能性が思慮される。

今後、健康おきなわ2010の達成に向け、これまでに取り組まれてきた各種事業の総括を行うとともに、エビデンスに基づいたより効果的な事業を展開する必要があると考える。福祉保健部が今年度または次年度以降に検討している取り組み等についてご教示いただきたい。

<福祉保健部、譜久山健康増進課長より回答>

平成17年度の「健康おきなわ2010」の中間評価から、本県の肥満割合が高く、メタボリック症候群や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中等の生活習慣病の増加等が懸念されており、それを受け、県民会議において「肥満対策」「タバコ対策」「歯科保健対策」を重点課題に位置づけて対策を強化している。このような中、平成20年度からの医療制度改革では、医療保険者に特定健診・特定保健指導の実施が義務付けられるなど、生活習慣病の予防対策が重要な柱の一つに位置付けられている。

県では、医療制度改革に的確に対応するとともに、平成18年度に実施した県民栄養調査等に基づき、県民の健康実態を踏まえつつ、平成19年度中に「健康おきなわ2010」を知事公約の「長寿世界一復活に向けたアクションプラン」として改定することとしている。同アクションプランの推進においては特定健診・特定保健指導などのハイリスクアプローチと、行政や関係団体による健康づくりの普及啓発等のポピュレーションアプローチの総合的、かつ、効果的な推進に向けて、県としての取り組みの強化や、県民会議を中心とした健康づくり運動のより積極的な展開を図りたいと考えている。

<主な意見等>

嶺井常任理事:重点課題に「アルコール」を加えてはどうか。また、企業等においてリスクの高低に合わせたボーナス額の設定等の取り組みを考えてみてはどうか。

大山常任理事:本県の弁当はカロリーが高い。条例等で弁当のカロリー表示を義務付けられないか。

伊波福祉保健部長:コンビニエンスストアやいくつかの市販の弁当でカロリー表示が取り組まれている。来年度から始まる特定健診・特定保健指導で生活習慣病予防への取り組みが強化される。

嶺井常任理事:健診・保健指導では、保険者にペナルティが課せられるが、個人にも課せられるような形は考えられないか。

安里常任理事:人口1万人程度の市町村を対象としたモデル事業を行えないか。モデル地域である程度の実績をつくり、そこで取り組まれた事業を各地域に広げていくという取り組みはどうか。

仲宗根統括監:現在、那覇市、浦添市等で健康づくりの各種イベントが実施されており、その効果が表れつつある。各地域で財政は異なるが効果の高い取り組みを各地域に広げていければと考える。

玉城副会長:各地域で行われている事業を県で取りまとめてはどうか。

各コンビニエンスストアでヘルシー弁当等のメニューも出てきている。本会や各地区医師会、各団体でも健康事業に取り組もうという意識が高い。

また、県が健康イベントを実施し、そこに各市町村がどれだけ参加したかを競わせる等の取り組みを検討してはどうか。 伊波福祉保健部長:県では、健康度を視覚化するための指標を作れないかと検討している。各市町村の健康度を発表する等の事業展開に繋げたい。

伊波福祉保健部長:県では、健康度を視覚化するための指標を作れないかと検討している。各市町村の健康度を発表する等の事業展開に繋げたい。

仲宗根統括監:地域単位で参加者数を競う等の考え方は、各市町村の健康づくりの動機付けにもなり良いアイデアと考える。

嶺井常任理事:すぐ取り組める事業と、時間のかかる事業とを分けて考える必要がある。また、低年齢からたばこやお酒を始めるケースがあるが、これを厳しく取り締まる等の施策も検討すべきと考える。

玉城副会長:アクションプランについて、そろそろ本気になって考えていかなければいけない。具体的なプランは検討されているか。

譜久山健康増進課長:今後開催される有識者懇談会等で各団体のご意見をお伺いしたうえで検討したいと考えている。

玉城副会長:国際通りの『トランジットマイル』で、健康に関するイベントを行う等、お祭り感覚で市民がより参加しやすい取り組みを検討してはどうか。また、産業医を効果的に活用できる職場健診のあり方等についても検討してはどうか。

仲宗根統括監:職場健診は現状では把握できていないが、来年度からの特定健診・特定保健指導の実施により、その辺りのデータも見えてくると考えている。

安里常任理事:労働者50名未満の事業所が全体の97.6%(40,621ヶ所)、その労働者総数は67%(24万6千人)を占めている。このような事業所では健康管理がされていない場合もあり、そこの事業所への保健指導は非常に重要である。

宮城会長:啓発の時代は終わったと考える。今後は、生活習慣を改善させるための運動等、県民運動への展開が重要である。

嶺井常任理事:県内のたばこ消費量を毎年チェックし、年度毎に数字を発表してはどうか。目に見える形で数字を出すことで目標が定まり励みになると考える。

譜久山健康増進課長:たばこの消費量の数字は把握している。年々、消費量は減っている。

玉城副会長:職種によっては、夜遅い時間にしか夕食が摂れない人もいる。栄養士会等に協力していただき、摂取時間に合わせたメニュー等を提示してはどうか。または、1週間に必要な栄養をコンビニの商品の組み合わせで提示するメニューを作ってはどうか。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

今回の議題は沖縄県医師会にとっても、一番重大な、それでいて中長期のテーマだと思う。また、県行政にとっても最大のテーマの1つとして捉えていることを強く感じた。

「健康おきなわ2010中間評価報告書」について、禁煙以外は肺がん、脳血管疾患、虚血性疾患、糖尿病等の死亡要因は改善どころか悪化の傾向にあり、敗北を宣言しているようだ。県行政は「健康おきなわ2010」の中間報告や平成18年度の栄養調査等に基づき、平成19年度中に「健康おきなわ2010」を知事公約の「長寿世界一復活に向けたアクションプラン」として改定することとしている。議題について、出席者から多くの素晴らしい意見が出され、その中の2〜3つでも実現すれば、長寿復活の兆しが現れてくるであろうと思われた。また、これまでに「長寿の危機」や「長寿復活」に関して、新聞の社説・論壇その他等で多くの方々(数十人から百人程)の素晴らしい分析結果や意見の提示があった。その様な事をも参考にしながらステップアップするために、アクションを起こす時期にある事を我々は自覚し、戦略を数項目に焦点化し、小さくても良いから前進していかなければならない。

那覇市の「路上喫煙防止条令」について、そのアウトカムはまだ充分に出ていないかもしれないが、市民がその条令を知っていれば評価に値すると考えるし、浦添市・浦添市医師会の「3Kg減量市民大運動について」についても、アウトカム分析は今年度から行うとのことだが、多くの市民がその運動を知っていれば評価に値すると思う。南城市が市民の健康づくり・保健活動に熱心であることは県下でよく知られていることだが、そのアウトカムはいかがなものだろうかと強い関心を持ちつつ、その輪が広がればと期待している。

宮崎県は周産期死亡率が全国で一番悪かった。その後、地域性を考えた連携システムと、新生児医療も担える産科医の養成に力を入れた結果、04年の死亡率は最低になった。徳島県では糖尿病死亡率1位返上を目指す取組みを、医師会が中心に行っているとのこと。今、沖縄県は新しい医療計画の中で、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)について、2次医療圏(保健所・地区医師会等)を中心に医療機能の分化と連携を今年中に構築していく予定になっている。糖尿病死亡率は男女とも沖縄県が1位(2005年度)と言う現状と、糖尿病についての新医療計画をも鑑み、「糖尿病死亡率1位返上」を旗印にアクションプランを起こすグループの出現を強く切望すると同時に、肥満全国1位対策の県民運動の更なる展開が望まれる。