沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 10月号

九州各県医師会学校保健担当理事者会
(日本医師会学校保健担当理事との懇談会)

日 時:平成19年8月4日(土)18:00〜19:00

場 所:宮崎観光ホテル

1.開会

宮崎県医師会の吉田建世常任理事の司会により会が開かれた。

2.挨拶

宮崎県医師会の秦喜八郎会長より、概ね以下のとおり挨拶があった。

地方で抱えている問題は中央の問題でもある。九州各県で抱えている問題を日医にしっかり申し上げていただきたい。よろしくお願いしたい。

日本医師会の岩砂和雄副会長より、概ね以下のとおり挨拶があった。

現在、学校保健は肥満、心の問題、予防接種、健康教育、生活習慣病、等々、非常に多くの問題を抱えている。今後とも先生方のご協力を賜りながら日本医師会並びに地域医師会が国民のために尽くせる会にしたいと考える。よろしくお願いしたい。

3.座長選出

慣例により、開催担当県(宮崎県医師会)の秦会長が座長となり協議が行われた。

4.協議

(1)小児生活習慣病健診の学校保健法に基づく健診項目への追加(平成19年1月に提出した要望書)について(鹿児島県)

【提案要旨】

小児生活習慣病健診の学校保健法に基づく健診項目への追加について、平成18年11月に開催された九州各県医師会学校保健担当理事者会で了承をいただき、九州医師会連合会から平成19年1月に日本医師会に要望書を提出したところである。

本件について、日本医師会の見解、今後の方向性をお伺いしたい。

【各県回答】

各県ともに、小児からの生活習慣病予防のためにも学校保健法に基づく健診項目の追加は必須であり、早期の実現を望むとの意見であった。

【日医コメント】

昨今の社会環境や生活様式の変化は、疾病構造の変化をもたらし、児童生徒の肥満、高脂血症等、生活習慣病の兆候を招いている。子供の頃から生涯を通じての生活習慣病対策は社会全体の重要な課題となっている。日本医師会としては、この重要な時期に食生活、身体運動、睡眠の重要性を教え、子供の時期から調和のとれた生活習慣を確立することの大切さを理解、実践させることが児童生徒の生涯に亘る健康の保持・増進に繋がり、生活習慣病対策に最も有効であると考えている。またその為には、学校医による保健指導や健康教育が大変重要な役割を果たすことと認識しており、今後の学校医による健康教育の推進を強く訴えていきたいと考えている。

平成19年1月に、九州医師会連合会より本会に対し、小児の生活習慣病健診を学校保健法に基づく健診項目として実施していただきたい旨のご要望をいただいた。ご指摘の軽度肥満児のインスリン抵抗性を調べる手段には空腹時血糖やインスリン値の測定があるが、平成17年度の学校保健統計検査によると、軽度肥満以上の肥満児の出現率は10%前後となっている。児童生徒の健康診断の主たる目的は異常及び疾病のスクリーニングにある。したがって、学校健診の中で空腹時血糖の測定を行うことは、現状では異常の割合が低いこと、並びに児童生徒に空腹時で測定することの困難性を考えると、学校健診の項目とするには課題があるのが事実である。厚生労働省の研究班では、小児のメタボリック症候群についての基準が2006年度に取りまとめられているが、現在、データ収集の段階となっている。

以上の通り、生活習慣病の健診を義務化し、学校保健法の児童生徒の健診項目への追加については、多くの解決すべき課題がある。今般いただいたご要望を実現するためには小児生活習慣病に関する診断基準の確立とともに、学校保健法施行規則第4条に定められている検査項目の改正と検査を実施するための予算措置が必要となる。日本医師会としては大変重要な課題として捉え、今後とも行政に強く働きかけていきたいと考える。

【長崎県医師会】

腹囲測定を学校側にお願いしたがうまくいかなかった。理由の一つに、腹囲測定は学校保健法に定められていない為、養護教諭は余計な業務は行いたくないということであった。腹囲の測定は採血と違い子供の負担も少ないと考える。

【日医】

積極的に児童生徒の健康を守るためには、取り組むべき項目であると考える。

(2)就学時健診における予防接種の調査・勧奨の強化について(鹿児島県)

現在、全国的な麻しんの流行が続いており、国民の関心が高いこの機会に行政主導で、更なる対策の強化が図れないか日本医師会の見解をお伺いしたい。

【各県回答】

各県ともに、就学時健診の際の予防接種の調査と未接種者への接種勧奨を行うことは非常に重要であるとの見解であった。

【日医コメント】

小学校入学時までに予防接種法の定期接種に定められている予防接種を受けることは非常に重要なことである。未接種者に予防接種を受けるよう指導する旨の通知を平成14年3月に文部科学省が行っている。その後の法律の改正や予防接種勧奨の通知等についても、日医より各都道府県医師会に対して文書をお送りし周知徹底に努めている。またその際には、記者会見及び日医ニュース、ホームページ等の媒体も利用した広報活動も行っている。

日医としても予防接種の勧奨については重要な課題であるとして、平成16年発行の日医の『学校医の手引き』の中で、「予防接種が努力義務となり、個別接種に変わった他、必要性の認識も希薄となったため、全ての疾病の接種率が低下し、種々の問題が起こっている。接種対象年齢は第T期の接種を含め、全疾患90カ月(7歳半)までとなり学童期を含んでいるので、就学時学校検診時の適切な指導がたいせつである。(学校医の手引きP.89)」として学校医に対し啓発を行っている。また平成15年11月には、日本小児科医会とともに子供予防接種週間を創設し、保護者をはじめとした地域住民の予防接種に対する関心を高め予防接種率の向上を図り、我が国の麻しんの根絶を目的とした事業を行っている。この事業は、平成17年度から日医、小児科学会、厚労省の三者の主催となり、現在でも継続した事業となっている。ここで予防接種勧奨についての様々な資料を作成し、診療所提示用のポスターも作成し、日医雑誌に同封し会員にお送りしている。

麻しんについては、昨年から1歳時と小学校入学時の2回接種になったが、この8月に厚労省の予防接種に関する検討会の答申がまとまり、その中で、先般の10代から20代において麻しんが大流行したことを受け、中学1年生(13歳)と高校3年生(18歳)を麻しんの補足的接種の対象とし、学校の教職員にも予防接種を勧奨すること等の方針が示されている。接種費用は基本的には公費負担と聞いている。今後、大臣告示が出される予定となっているので、その際には日医から周知徹底したいと考える。

【沖縄県医師会】

接種勧奨ではなく、もう一度予防接種の義務化を検討してはどうかと考える。

【日医】

副作用が出た際の責任の所在等の課題があり、義務化に腰が引けていると考える。ご意見の通りもっと積極的な予防接種は必要と考える。

(3)その他

5.中央情勢について

日本医師会の岩砂副会長より、概ね以下のとおり中央情勢について述べられた。

学級崩壊、不登校、いじめ等の心の問題から、10代における性感染症の増加、アトピー、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患、運動・スポーツ障害等々、学校保健をめぐる問題は年々多様化している。現在、内科、眼科、耳鼻咽喉科の医師が学校医となり児童生徒の健康管理の責務を果たしているが、現状の体制では各問題への対応は十分と言えず、専門医を学校に派遣しての健康相談や健康教育の実施体制が求められている。

現在こうした取り組みに対し、文部科学省の補助事業である『学校・地域保健連携推進事業』が全都道府県で展開されている。同事業は、精神科、産婦人科、皮膚科、整形外科等を含む専門医を学校に派遣し、健康相談や保護者や教職員を対象とした研修会等を実施するものである。日本医師会では、2002年度より各種講習会や学校保健委員会等において、各科専門医との連携について検討を重ね、2003年度、2004年度には地域医師会においてモデル事業を実施してきた。その経過を踏まえ、文部科学省に当事業の全国的な展開を要請し、『学校・地域保健連携推進事業』は2004年度から文部科学省の研究事業として3年間の予算を確保するに至っている。

この『学校・地域保健連携推進事業』を各地で展開していくためには、医師会にいくつかの重要な役割があると考える。一つは、郡市医師会の学校保健担当理事が地域の実情を踏まえ、地域の教育委員会と連携を図り、学校の現状、組織等を把握し関係者と調整のうえで、健康教育、健康相談の時間を設ける必要がある。また、学校における健康教育は、教科教育、特別活動、学級活動、課外活動、健康診断後の事後指導等、多岐に亘った活動が必要であり、対象者についても、児童生徒に限らず、教職員、PTA(保護者)等、学校を単位とした地域住民を含めなければならない。このような意味で、地域の学校保健担当理事が教育委員会との連携を深めることが大変重要である。

日本医師会では、平成18年度に学校保健委員会の委員に対し、健康教育に関する研究を依頼し、学校医や各科専門医が学校現場で健康教育を行う際のプレゼンテーション資料や教材等の開発を進めている、その教材をデータベース化しITを活用して発信していくことを視野に入れている。その他、各地域において実際に行われた講演内容等もデータベース化し情報発信していく必要があると考えている。さらに、各地域単位において各科専門医のチームの創設等、現行の学校医のサポート体制の充実を図ることも地域における連携推進事業の継続的発展のためには重要なことと考える。

当事業は実施されてまだ4年目であり、ようやくその内容が現場に浸透し始めた状況である。学校・地域保健連携推進事業が全市町村で制度として円滑に実施されるようになれば、学校、家庭、地域との連携が各地域ではかられ、延いては医療制度を取り巻く多様な健康問題への対応が図られると考えており、当事業の果たす役割は大きいと考える。

現在、文部科学省の『中央教育審議会スポーツ・青少年分科会学校健康・安全部会』に日本医師会から内田常任理事が出席しており、学校保健に関する学校全体としての取り組み体制、家庭、地域との連携についての更なる検討が進められているところである。当部会では、こどもの心身の健康を守るための学校全体としての方策について、学校安全、健康教育、食育(学校給食)といった3つの観点からそれぞれの課題を取り上げ具体的な検討を行っている。

各地域において、関係者の更なる連携、努力により、学校保健活動における児童生徒を取り巻く多様な健康問題への対処を各科が対応するのはもちろんのこと、医師会のもつネットワークをうまく活用し、本事業が停滞することなく地域医療の重要な柱である学校保健活動がより活性化されることが望ましいと考える。

【鹿児島県医師会】

学校・地域保健連携推進事業が単年度事業であるため、継続事業となるよう日医から強く働きかけていただきたい。

【福岡県医師会】

専門医はボランティア的な活動である。きちっとした予算を付けていただくことを検討していただきたい。

6.その他

【鹿児島県医師会】

予防接種は地方自治体が責任を持って行っている。値段が全国で統一されていない。全国的に統一された形が望ましいと考える。