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平成19年度第1回沖縄県医師会・沖縄県福祉保健部連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る5月21日(月)、県庁において標記会議 が行われたので以下のとおり報告する。

出席者:

(医 師 会) 宮城会長、玉城副会長、小渡 副会長、真栄田常任理事、安里常任理事、 嶺井常任理事、大山常任理事

(県福祉保健部)伊波部長、仲宗根保健衛生統 括監、比嘉福祉企画統括監、道躰参事、當 間医務・国保課長

(病院事業局) 安慶田企画監

議 題

ヘリコプター等添乗医師等確保事業の円滑 なる推進をお願いしたい(県医師会)

宮城会長より、概ね次のとおり、提案理由の 説明があった。

標記事業については、自衛隊、海上保安庁、県 内の医師や看護師の協力の下、これまで多くの搬 送実績を残しており、多くの離島を抱える沖縄県 においては欠くことのできない事業である。

しかし、先日の墜落事故の発生等、今後は、 参加病院や関係市町村と綿密な調整を図り、本 事業を円滑に推進していくためにも充実した、 有意義な議論が積み重ねられるような会議を開 催していただきたい。

<當間医務・国保課長 回答>

当該制度を円滑に推進するため、県、離島振 興協議会、協力病院、医師会等を構成員として、 ヘリコプター等添乗医師等確保事業運営会議を 開催し、制度運営に関する諸問題を論議してき たところであるが、今般の陸上自衛隊のヘリ墜 落事故を契機として、協力病院から医師添乗の あり方について様々な意見が出されている。

県としては、当面の取り組みとして、搬送患 者のトリアージの検証や、添乗医師と運航スタ ッフとの情報交換を図るとともに、ヘリコプタ ー等の急患空輸に対する住民への啓発を市町村 から行ってもらうこととしている。

また、平成19年度中にヘリコプター等添乗医 師等確保事業のあり方について検討することと しており、運営会議等の中で十分議論していき たいと考えている。

≪以下、主な意見・質問等≫

真栄田常任理事:今回のヘリ墜落事故に関し て、ヘリの運航については、自然が一番最優 先であるとはいえ、何故、医師の要請を翌日 まで待てなかったか、離島の医師を交えて意 見を聞きたい。また、市町村長等ではなく、 医師の判断を優先するという事を大前提にし た方が良いと考えるがいかがか。

仲宗根保健衛生統括監:添乗も含め、急患搬送 の基準作りのため、前年度3月の会議で検証 を行おうと決めた矢先の事故であった。今年 度4月の会議でも協力病院から医師添乗のあ り方等について様々な意見が出ているので、 保健医療計画の中でドクターヘリを絡めなが ら検討していく。

真栄田常任理事:2機関が撤退の意向を明らか にしているので、2機関を含めた詳細な打合 せを早急に行うべきである。

嶺井常任理事:関係団体や各市町村の首長を交 えて、トリアージや搬送等の基準を検討していくべき。

伊波部長:自衛隊や海上保安庁、ドクターヘリ との歩調、搬送・添乗条件等をこれから検証 していく。

真栄田常任理事:浦添総合病院との今後の連携 については、検討されているのか。

伊波部長:予算化はこれからだが、知事も衆議 院への要望書の中に盛り込んでいるし、県と して内閣府への要請にも盛り込んでいる。で きるだけ早くドクターヘリ事業を展開し、昼 間はドクターヘリで対応する等、緊急事態に 備えたい。

真栄田常任理事:ドクターヘリ導入の条件に は、救命救急センターに指定されている必要 があるが、北部地区医師会病院の独自でのヘ リ導入についての整合性について検討されて いるのか。

伊波部長:当然、視野に入るが、浦添総合病院 のヘリポートは40箇所で、着陸箇所の確保を 検討する必要がある。長崎県においては、学 校等を含め340箇所を確保している。本県に おいても、長崎県同様にどこでも着陸できる よう体制整備に努めたい。

嶺井常任理事:こういう会議の場で検討するだ けではなく、いつまでに何をするのか工程表 を作成していただきたい。

宮城会長:今重要であるのは、添乗医師の確保 と沖縄県のドクターヘリを含めた医療をどう するかである。浦添総合病院と琉大は緊密に 宮古等と連携をとっており、北部地区医師会 病院は、独自にヘリを運航する予定である。 それに対し、県はどう動くか。会議だけでは なく早急に実効性を出していただきたい。

伊波部長:予算が8月に決定する。11月の政策 に向けて進めていくという形になる。まず は、予算を解決しなければ、先に進まない。

嶺井常任理事:予算の話をしたら前に進まない。 官や自治体を頼るのではなく、NPO法人を設 立する等、考慮してはいかがか。また、医療 福祉事業団を活用するのはいかがか。

伊波部長:医療福祉事業団には一度働きかけを 行った。県全体が活用できるよう、地域の病 院等、どこを使えばうまく進むのか現在、検 討中である。

當間医務・国保課長:ドクターヘリ導入に際し ては、運営会議等を設置する予定であり、そ の中で議論する予定である。また、NPO法 人設立に関しては、メディカルミッションや 行政の関与がどうなのか等、研究させていた だきたい。

大山常任理事:NPO法人にする場合、県はど のようにサジェストするか。

伊波部長:NPO法人にする場合でも、どこが主 体になれば、県全体をコントロールできるか。 その場合、保健医療計画の中で位置づけたい。 また、運用に関するリクエスト等については、 様々な課題を整理してやっていきたい。

大山常任理事:地域支援に関しての国の平成 19年度の予算はかなり上乗せされている。そ れを利用したらいかがか。

玉城副会長:先日の墜落事故では、離島医師か らの逆メッセージがあれば良かったと思って いる。送り出す側のコンセンサスや双方向の 連絡体制を整備する必要がある。また、浦添 総合病院、北部地区医師会病院を含め、共同 体事業が出来るような体制を医師会が音頭を とって進めていければと思う。

伊波部長:ドクターヘリ事業の全体の負担は1 億8千万円で、うち半分が県の負担である。 全市町村にも負担していただくことを考えて いる。次のステップは、ドクターヘリを導入 するという前提で、取り組んでいきたい。

印象記

常任理事 安里 哲好

新しい伊波輝美福祉保健部長が就任され、かつ今年第1回の連絡会議で、議題は「ヘリコプタ ー等添乗医師等確保事業の円滑なる推進をお願いしたい」の1つのみであった。

会議のメンバーは、仲宗根正保健衛生統括監以外、當間秀史医務・国保課長も含め全員が交代 していた。伊波福祉保健部長は積極的で、ほとんどの質問に対してご自分で答えていた。また、 伊波部長はすでに、ドクターヘリに添乗しており、乗り心地は車よりも(公用車よりも?)良い と話されていた。ドクターヘリは、時速200km前後で、県本島内や周辺離島まで30分以内で行け るとのことであった。運行の時間的制限や飛行距離の問題、そして天候等の問題はあるが、ドク ターヘリが日常の救急医療に運用される時代の到来を強く感じた。福祉保健部は、ドクターヘリ 事業を積極的に推進していこうとする姿勢が見られ、具体的な予算も検討しているようであった。 浦添総合病院は、平成17年より救急搬送ヘリをすでに運用しているし、北部地区医師会病院は、 6月16日より救急搬送ヘリの運用を始めるとのことである。これまで陸上自衛隊(過去5年間:年 間当たり平均221件)、及び第11管区海上保安本部(同:88件)が行ってきた急患搬送ヘリ(医 師等添乗率:平成17年61.9%、平成18年71.4%)運用も含め、県民のために有効利用をしたいも のだ。