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九州医師会連合会医療保険対策協議会

理事 今山 裕康

去る4月21日(土)博多都ホテルにおいて、 九州医師会連合会医療保険対策協議会が開催 された。

挨  拶

【九州医師会連合会長 井石哲哉】

九州医師会連合会井石会長より、概ね次のと おりご挨拶があった。

本日は九州各県より医療保険担当理事の皆様方 に参集いただき、また日医より鈴木常任理事にも お忙しい中、ご出席賜り重ねて感謝申し上げる。

社会保険関係の財政はまずもって削減有りき の財政主導が行われている。診療報酬の次回改 定も相当に厳しいものと危惧している。今後、 6月に開催される財政制度等審議会、続いて政 府より発表される「骨太2007」、さらに来年度 予算の概算要求の流れの中で、日医としては国 民の健康を守るという医療提供側の医療政策論 をしっかり取り纏め、良質で安全な医療提供で きる財源の確保に最善の努力をしなければなら ない。本日はかなり難しい会議になると思う が、皆様の知恵を拝借し、九州ブロックの要望 を取り纏められるようよろしくお願いしたい。

【日本医師会常任理事 鈴木 満】

日本医師会鈴木常任理事より概ね次のとお りご挨拶があった。

日医役員として2年目となるが、本日このよ うな場にお招きいただき感謝申し上げる。皆様 方の率直なお話をお聞かせ願いたいと考える。

また連絡事項として、先週(4/17)厚生労働 省が開催した第2回医療構造改革に係る都道府 県会議の中で、療養病床について厚労省からの 計算式が示され、2012年度の医療療養病床の 目標数を15万床とし、各県別に必要な病床数 を積み上げることになると説明が行われたようである。この件について早速日医では、5月11 日(金)15時から説明会を開催し、各県より医 療保険、介護、地域医療を担当される先生方へ ご出席をお願いすることになった。正式な文書 は来週にも発送する予定である。

座長選出

座長として、担当県である長崎県医師会の高 村副会長が選出された。

協  議

協議に入る前に、九州ブロックの日医診療報 酬検討委員会委員である福岡県医師会・秋田先 生から現在日医で検討されている次回診療報酬 改定に関する事項について、次のとおり報告が あった。

【日医診療報酬検討委員会委員・福岡県医師会 秋田先生】

日医の診療報酬検討委員会では、会長より諮 問された「前回の診療報酬改定の影響とその対 応について」「診療報酬改定に対する現在の問 題点」について、各県より意見を提出していた だき、取り纏めて検討を行っているが、その中 で総論的な改定にかかわる4つの重要事項とし て、1)7対1入院基本料について、2)療養病床 について、3)リハビリテーション問題につい て、4)在宅療養支援診療所問題について取り上 げられている状況である。今申し上げた事項の 他に、本日の協議会には各県より「有床診療所 の問題」が複数提案されているが、この事項は 特に九州からの要望が強いと感じられるもので あり、九州ブロックの重要項目として提案して も良いのではないかと思う。

また診療報酬検討委員会ではその他に、医療 政策、診療報酬体系の不合理・問題点、診療報 酬のIT化、国保中央会から出された後期高齢 者支援金の人頭割負担問題等についても検討す る予定である。

今後の日程としては、来月5月19日に小委員 会が開催され、6月6日には本委員会が開かれ る予定であり、そこで九州ブロックとしての意 見をしっかり述べたいと考えているので、その向きで意見の取り纏めをお願いしたい。

高村座長より要望事項の重点項目を取り上げ る方法として、先ず各県より要望の多かった事 項について検討を行った後、複数要望があがっ ていない事項についても重要事項と思われるも のはピックアップをして検討し、先ほど秋田先 生からご報告いただいた日医診療報酬検討委員 会の状況も参考にしながら、要望事項の重点項 目を取り纏めてはどうかと提案があり、協議し た結果、承認された。

※次回診療報酬改定に対する要望事項について

九州各県より提案された要望事項のうち、九 州ブロックの「次回診療報酬改定要望事項」の 重点項目として取り上げられたのは次の8項目 である。

なお、各重点項目の提案趣旨については担当 県である長崎県が、各県からの提案要旨を取り 纏めて文書を作成することになった。

各重点項目に関する各県からの提案要旨は次 のとおり。

1)国民の安心・安全な医療確保のために人 件費、技術料等を考慮した診療報酬プラ ス改定を。経営可能な診療報酬体系を要 望する。

〜各県からの提案要旨〜

○過去3回の診療報酬マイナス改定と急激な医 療制度改革により、医療機関はかってない医 療安全を損ないかねない深刻な局面に立たさ れている。国民が求める安心・安全な医療確 保のために診療報酬プラス改定が是非とも必 要である。<福岡>

○入院・通院を問わず、診療に必要な器材、環 境整備費等必要な原価計算をしっかり行い、 それに技術料、人件費、医療の社会的価値等 を総合的に考慮し診療報酬を算出すべきであ る。<佐賀>

○今の医療費では、配置基準等から考えて人件 費の上昇から経営困難に陥っている。予測がつかない変更で医療機関を痛めつけた上で自 分の意図する方向の指導を仕掛けていく手法 は強権国家観に基づくものとしか考えられな い。医療事故、院内感染、褥創対策の対策は 国民の要求が年々高度となっているため、入 院、入院外を問わず医療の安全、質の確保の ための給付を引き上げを要望する。正当な医 師の技術料の評価、看護師・理学療法士等の 人件費の評価、全てを経済的な評価ととらえ るなら、適正な医療費用もその観点から計算 すればもっと報酬は上がることになる。材料 費(特にカテーテル、ステント、人工関節、 ペースメーカー等)、薬剤費をまとめてしま うので、不当に純粋な医術に関する報酬が高 いように誤解されている。<宮崎>

2)有床診療所について

〜各県からの提案要旨〜

○「病院病床」と「診療所病床」は“別個の概 念”で捉えるべき。高度で専門的、且つ多様 な組織医療を提供している病院と、患者の生 活圏の中で、患者の身体的既往にとどまら ず、社会的、家庭的、個人的背景などをも知 った一人の医師が、地域に密着してプライマ リケア機能を果たしている有床診療所とは、 その規模や患者に対する機能が大きく異な る。従って、医療法改正を機に従来の考え方 を改め、「病院病床」と「診療所病床」は"別 個の概念"で捉え、最大でも19床という経営 効率の悪い小規模の有床診療所には、複雑な 病床区分や制約を設けず、実態に即したもの にし、急性期から慢性期、終末期まで医療・ 介護が行える自由な病床として、その柔軟な 特性を維持させるべきである。<佐賀>

○在宅療養の中心的役割を担うと期待されてい る「在宅療養支援診療所」の約60%以上が 有床診療所である。その入院基本料が余りに も低額で、在宅医療の待期病床を含め、完全 に赤字部門であり、その存続が危惧される。 在宅医療の場合、夜間緊急往診も多く、夜勤 帯の看護職員二人体制に見合う診療報酬の設 定が望まれる。<熊本>

○地域に根差した有床診療所では、急性期の対 応だけでなく、介護疲れの家族支援や終末期 の支援に対する適切な期間の入院が在宅医療 を支えているが、そのような状態でも良質、 安全の医療提供が課せられており、「1ヶ月以 上の入院基本料」の大幅な評価が必要であ る。<大分>

○余りにも点数が低く、現行点数では赤字とな る。有床診療所の地域における役割、病院と 大差のない基準等を考慮し、安全、安心の医 療提供ができるように適正な点数となるよう 増点を求める。<長崎>

○地域医療で有床診療所の果たしてきた役割は 非常に大きいが、平成18年改定で入院料は 大きく減額され、看護配置や算定要件が厳し くなり無床化が進行している。今後の療養病 床廃止に伴う在宅医療推進のインフラ整備の ため、その果たすべき役割は重要で十分な評 価が必要である。○地域医療で有床診療所の果たしてきた役割は 非常に大きいが、平成18年改定で入院料は 大きく減額され、看護配置や算定要件が厳し くなり無床化が進行している。今後の療養病 床廃止に伴う在宅医療推進のインフラ整備の ため、その果たすべき役割は重要で十分な評 価が必要である。<福岡>

○看取り加算の新設(中小病院、有床診療所) 長期間、在宅医療を行ってきた患者であっても 終末期には病床で、看取る例が多い。看取る労 力に対する加算の新設を要望する。<大分>

○終末期医療の同意書作成にかかる文書料を新設。<佐賀>

3)医療療養病棟の入院基本料(医療区分、 ADL区分)の見直し

〜各県からの提案要旨〜

○日医を初め各医療関連団体の実態調査からも 明らかなように、医療区分1、2、3の設定は 矛盾ある未熟な制度設計で、対する診療報酬 も「医学管理」や「ケア時間」と連動しな い、現場の実態とは乖離したものとなってい る。特に、医療区分1に含まれる経管栄養、 胃瘻の管理、膀胱留置カテーテルや喀痰吸引 等の医療行為は認められず、低い診療報酬と なっており算定日数制限ともに早急に改善す べきである。そもそも医療区分1で入院する 患者の大部分は、基礎疾患の急性増悪・寛解 を繰り返しており、決して医療の必要度が低 いものではない。<熊本>

○病院の療養病床では生き残りのために、医療 区分2、3の重症者をかかえ込んでいる。その 為、人手や経費も益々増加し、経済的にも苦 しくなっている。医療区分1の点数増加、医 療区分2の対象拡大が必要である。有床診療 所の療養病床は、病院の療養病床の医療区分 1の受け皿となっており、医療区分1が半数 を超えている。極めて低い点数で病床の維持 が困難となっており、政策的ではなく正しい 評価が必要である。<大分>

○療養病床(とりわけ医療区分1)の入院基本 料が著しく低く設定され、入院医療の維持が 困難である。しかし、医療区分1の患者は病 状不安定で退院の見込めない人たちが多く、 又、退院できる病状であっても在宅受入れが できない人もいるため、医療機関は非常に困 っている。療養病床の入院基本料も増額、区 分の見直しを求める。<長崎>

○医療療養病棟の医療区分・ADL区分による入 院基本料の設定は、医療現場を無視した、露骨 な医療費削減策であった。慢性期入院医療の包 括評価調査分科会の調査で検証中だが、エビデ ンスに基づいた医療処置・介護必要度・職種別 人件費による重みづけ等を参考にした各区分の 点数改定が求められる。<福岡>

○医療区分の設定が現実に即しておらず医療区 分3、2以外は1との判断もおかしい。これで は充分な医療を提供できない。本来、医療は 患者の状況にあわせ提供されるもので、いた しかなく区分を設ける場合も、最低限医療が 提供できるように医療区分1の適正評価をお 願いしたい。<宮崎>

4)7種類以上の投薬時の処方料の減算の廃 止・処方せん料の統一

〜各県からの提案要旨〜

○7種以上の薬剤使用は総薬剤料の90/100の 減額査定と処方料・処方箋料の減額処置がと られている。以前は、薬価差目的に多剤傾向 になることがあった為、それを防ぐために設 けられた制限だと思われるが、現在はそのよ うなことはなく、内科では合併症の多い患者 に対し症状に適応した多剤薬剤処方が必要な ケースがあり、多剤薬剤が罰則のように扱わ れるのは不合理である。<沖縄>

○療担規則第20条には、「投薬は、必要がある と認められる場合に行う。」と規定されてい るが、7種類以上の投薬時の処方料ならびに 薬剤料を一律減算する現在の規定は医師の裁 量権を犯すものである。また、かかりつけ医 の役割として他科にわたり疾病を持ち多剤の 処方を必要とする患者に多剤処方を行うこと はよくあることだが、ペナルティを課す現行 制度は、かかりつけ医の役割をも軽視するも のであり、廃止を強く求める。<福岡>

○薬価差は、消費税を含めると殆どなく、利益 追求の多剤投与はありえない。高齢者は複数 の疾病を持つことも多く、必要な薬剤に制限 を加えるべきではない。直ちに罰則的報酬削 減は、廃止すべきである。<大分>

○高齢者は複数の疾患を持ち、7種類以上の薬 剤を投与することは珍しいことではない。一 律に調剤でペナルティ的な減額は矛盾している。<長崎>

○後発医薬品を含む場合と含まない場合とで、 処方箋料に差をつけないでいただきたい。成分 は同じかもしれないが、患者さんから後発薬品 は効かないと言われる場合がある。<宮崎>

5)外来管理加算と処置点数の不合理解消、 処置点数の増点

〜各県からの提案要旨〜

○現在、処置には、外来管理加算(52点)以 下の点数設定のものがある為、外来などで処 置行為を行った時と行わなかった時で患者自 己負担が異なる状況が生じている。しかも、 処置行為を行わなかった時が高くなるために 混乱が起きている。患者と医師の信頼関係を 損なう恐れがあるため52点以下の処置を52 点以上に見直していただきたい。<鹿児島>

○処置をした場合、外来管理加算が算定出来な いため患者負担が下がる矛盾点を患者さんに どう説明するのか。各処置の点数は外来管理 加算と同点数にしてもらわないと、領収証を 発行した際、患者さんの疑問に答えるのが難 しく窓口の混乱を招く。<長崎>

○従前からの指摘だが、外来管理加算と処置を 行った場合の差を患者に納得ゆく説明をする ことが困難、又、カルテを閲覧する個別指導 でも不正請求と疑われかねない事例も多い。 領収証発行や窓口負担が高くなり、患者への 説明責任が重要視されていることから、早急 な改善を望む。<熊本>

○外来管理加算の点数と処置点数の不合理を解 消して頂きたい。昨年改定の腟洗浄の増点は 評価するが、治療しない方が点数が高くなる 現象が解消されていない。せめて外来管理料 と同点数にしていただきたい。<宮崎>

6)リハビリテーションについて

〜各県からの提案要旨〜

○リハビリテーションは、平成19年4月に部分 的改定が施行されたが、根本的に今現在あり 方を再検討して頂きたい。又、維持期リハビ リテーションは、医療保険と介護保険で行う リハビリテーションの間で、スムーズな移行 が出来ない。従って、リハビリテーションの 継続が必要な患者へ、必要量のリハビリテー ションが提供出来るように日数制限の緩和を 含め、改革を要望する。<沖縄>

○平成19年4月よりリハビリテーション算定日 数上限の緩和が決定されたが、医学的に改善 の見込みがある場合しか継続が認められない こと、また、維持期リハビリが医療保険より 除外される方針は変わっていないことから、 患者の医療保険でのリハビリを受ける機会を 奪うもので到底納得いかない。完全な上限廃 止を求める。<福岡>

○医療の現実を踏まえ見直しが行われたことは 一定の評価はするが、リハビリに制限日数が あること自体に疑問を感じる。現行の制度で は医療保険、介護保険を通じ、患者のために 良質のリハビリテーションを継続して行うこ とは不可能である。財政面のみを重視した短 期改正ではなく、現場の状況をしっかりと調 査分析し、患者の望む安定した制度改定を要望する。<宮崎>

○マッサージ師等のいる所でのリハビリテーシ ョンの算定を整形外科学会やリハビリテーシ ョン学会認定医のみに限定しないで、他科で もとれるようにしてほしい。<長崎>

7)7対1入院基本料受理の即時凍結について

〜各県からの提案要旨〜

○平成18年4月の診療報酬改定において導入さ れた、7対1入院基本料は、急性期入院医療 の評価を目的としたものであったが、一部大 学病院等による看護師の大量採用のため、地 域の中小病院に深刻な看護師不足を引き起こ すなど、地域医療に深刻な影響をもたらした (例えば、静岡県・沼津市立病院における看 護師不足のための一部病棟休止など)。これ を受け、中医協は、1月31日に、看護職員の 募集・採用に当たっては、地域医療への配慮 と節度を持った対応を期待するとともに、次 回改定での7対1入院基本料の基準の見直し、 看護必要度の導入等を求める建議書を厚生労 働大臣に対して提出したところである。しか し、建議書の提出後も、依然として一部の大 病院や大学病院では、看護師の大規模な募集 を続けており(一部、引き抜きの存在も指摘 されている)、地域の中小病院、有床診療所 をはじめ、介護施設等では看護師確保が儘な らない状況に立ち至っている。

平成19年4月12日付けメディファクスによ ると、全国の45国立大学病院のうち、新たに 19病院が今夏までに7対1入院基本料の届け 出に必要な看護師を確保したと報じている。

柳澤厚生労働大臣は、3月19日の参院予算委 員会で、平成20年度診療報酬改定で、入院患 者が手厚い看護を必要としている病院に限り届 け出を認めるよう、現在の基準を見直すとの考 えを表明しているが、一刻も早く施設基準の見 直しを行わなければ、地域の医療提供体制を維 持することは困難となり「医療崩壊」という深 刻な事態を引き起こすことは必至である。

ついては、九医連として、“7対1入院基本 料受理の即時凍結”を求める要望書を日医へ提出し、日医から早急に国に働きかけていた だきたく、ご検討をお願いしたい。<佐賀>

○看護師絶対数の不足の中で新設された7対1 入院基本料、月平均夜勤時間数72時間の入 院基本料への通則化は地域医療の崩壊を招い ている。厚労大臣への建議書により20年改定 に向けて検討されるが、地域医療を守ってき た中小病院では看護師不足のため病棟閉鎖や 閉院を余儀なくされているところもある。急 性期医療ばかりに人材・報酬を集中するよう な改定ではなく、急性期から慢性期、介護と 医療全体を考えた、時間をかけた緩やかな診 療報酬上の改革を望む。<福岡>

8)在宅療養支援診療所の要件緩和について

〜各県からの提案要旨〜

○前回の診療報酬改定より在宅療養支援診療所 が新設された。高齢者ができる限り住み慣れ た家庭や地域で療養しながら生活を送り、身 近な人に囲まれて在宅での最期を迎えること も選択できることを目指すもので、日医のい う「かかりつけ医」(在宅型)に通じるもの と考える。

しかし、在宅支援診療所の要件は、離島や 過疎部等、地域によっては条件を満たすこと が難しく、申請が出来ないところが多く見受 けられる。本県では複数の医療機関でグルー プ化を図り取り組んでいるが、連携等がなか なかうまくいかない状況であるので、施設基 準を緩和することで、地域による申請の偏り を解消し、よりいっそうの普及を図ることを 目的として要望する。<沖縄>

○地域の社会資源の有無で在宅療養支援診療所 の届出が左右され、報酬にも格差が生まれてい る。同一行為ならば、「それ以外の診療所」も 評価されるべきで、このままの格差が続けば、 地域での在宅医療が育たない。<大分4)>

○在宅の末期悪性腫瘍患者で在宅療養支援診療 所の主治医が行う医学管理や看取りが期待さ れているものの、施設基準の届出に担当する 医師、看護師と記載されているため、看護師 確保に困難な山間部や郡部医療機関は当該診療料を算定できない場合も多い。他の届出と 同様に「看護師」を准看護師を含む「看護職 員」として改定して頂きたい。<熊本>

○在宅悪性腫瘍患者指導管理料において鎮痛療 法は「ブプレノルフィン製剤、ブトルファノ ール製剤もしくは塩酸モルヒネ製剤」に制限 されているが、フェンタニル注が癌疼痛に対 して保険適応拡大されたため、フェンタニル 注も鎮痛療法適応薬剤への追加を要望す る。<宮崎>

○現在は訪問診療を月1回だけ行うと、在宅患 者訪問診療料830点と特定疾患療養管理料の 225点の合計1,055点しか算定できない。訪 問診療を2回以上行った場合は、在宅患者訪 問診療料830点プラス在宅医療総合管理料イ (※在宅療養支援診療所で処方箋交付する場 合)4,200点を算定できるが、患者さんの自 己負担が大きく訪問診療を一回だけと断る患 者さんが増えている状況である。患者さんの 経済的な負担のことを考えると、これからは 訪問診療を2回以上行うことは現実的ではな いと考えられるので、この際1回の訪問診療 にして点数の引き上げを要望する。<沖縄>

中央情勢報告

【日本医師会 鈴木常任理事】

日本医師会 鈴木常任理事から「医療保険関 連事項の最近の動向」と題して、パワーポイン トを用いて報告が行われた。

その中で「療養病床」については、医療区分 1の患者さんが当初50%を見込んでいたものが 30%程度に減少し、その反面医療区分2、3の 患者さんが増加したことについて、実際のとこ ろ療養病床数は殆ど変わらず、療養病床病院の 収入は増加しているように思われるが、その反 面、有床診療所が受け皿となっている区分1の 患者さんが減るということは全く無く、推測値 よりも増えており増々厳しい状況が続いている ことから、中医協でも療養病床と併せて有床診 療所の問題をいろんな角度から分析を行ってい るところである。今後は団塊の世代についても 年齢を重ね順次、後期高齢者となる為、後期高齢者の推定入院患者数は年々増加することが見 込まれており、今回、厚生労働省から示された 算式は再度検討を行う必要があると説明があっ た。(厚生労働省算式:医療療養病床、介護療 養病床に入院していた患者のうち、「医療区分 2」に該当する者の7割と「医療区分3」に該当 する者とし、「医療区分1」と「医療区分2」の 3割は在宅や老人保健施設への移行分として対 象外とする計算式を示した。この式をベースに 第1次計画の終了年度である2012年度の医療療 養病床数を機械的に計算すると、約15万床に なるという(いずれの場合も、回復期リハビリ テーション病床は除く))

また、「7対1入院基本料」については以下の Q&Aが今後示されるということである。

病院の入院基本料に関する施設基準について

○当該病棟で勤務する実働時間数に休憩時間以 外のみが除かれたが、院内感染防止対策委員 会(月1回程度)、安全管理のための委員会 (月1回程度)および安全管理体制確保のた めの職員研修会(年2回程度)を行う時間も 除かれる。

○夜勤専従者が、日勤の看護職員の急病時など の緊急やむを得ない場合に日勤を行った場合 には、当該月の日勤1回を限って、夜勤専従 者とみなされる。

最後に平成20年度診療報酬改定に向けた今 後予定(案)として、

1)4月〜6月 各部会・分科会等における議論を行う

2)7月〜10月 社会保障審議会後期高齢者特別部会において後期高齢者医療の新たな診療報酬体系骨格の取り纏め

3)11月〜12月 改定項目について、基本小委員会等において集中的に議論

4)1月〜2月 診療報酬点数の改定について諮問・答申

5)平成20年4月 平成20年度改定・後期高齢者制度施行

上記のとおり予定されている旨の説明があった。

質疑応答

Q:リハビリ改定の経緯について(鹿児島県)

今回のリハビリ改定の経緯については、3月12 日の中医協の診療報酬改定結果検証部会で報告 が行われ、14日の中医協総会で決定されたと聞 いているが、診療報酬の改定・変更等に関して は通常、基本小委員会において決定される思う が、なぜ今回はそのような形になったのか。

A:鈴木常任理事回答

今のご質問は支払者側からも同様にあった。 おっしゃるとおりである。

しかし、今回は弱者救済という緊急的なこと があったので、中医協総会で決定しなければ4 月1日に間に合わなかったのが実状である。も ちろん今回の改定の際には、日本リハビリテー ション学会をはじめとする関係4団体に事前に 意見を聞き、「100%納得は出来ないが、現状よ り良くなるのであれば改定はやむない」と同意 を得ることができたので、我々は改定を了承し たところである。

Q:眼科の個別指導について(宮崎県)

今回コンタクトレンズ検査料について全国的 に個別指導が行われているが、眼科医療機関に 通常の個別指導が入り、初診料と再診料の差額 を今年の2月から遡って返還するよう求められ てる事例がある。平成18年4月改定後、青本や 通知関係が会員の手元に実際に届くのが7月頃 であり、それまでは正規の請求を行うことは難 しいと考えるが、社会保険事務局の指導につい ていかがか。

A:鈴木常任理事回答

もし実際にそのような指導があるとすれば、 問題であると考える。日医の診療報酬検討委員 会に眼科の先生がいらっしゃるので早速確認し たいと思う。

閉  会

印象記

今山裕康

理事 今山 裕康

予定時間を超過して会議が行われた。

これまで診療報酬改定の度に行われていた九州医師会連合会の要望の取りまとめが日本医師会 の要望作成に間に合わなかった感があり、歯がゆい思いをしてきた。今回は要望が確実に反映さ れるようにするため、沖縄県の提案で早めの取り組みとなった。

各県より提案された要望事項は30を越えていたが、各診療科に固有のものは各学会等から要望 していただくこととなり、九州医師会連合会の要望としては総論的なもの、各診療科に共通なも のを重点項目として5つにまとめようということで議論が始まった。最終的には8項目の要望とし てまとめられた。

まず、第1番目の要望はプラス改定である。過去3回の改定は、マイナス、ゼロ、マイナスと、 いずれも厳しいものであった。この結果、医療、社会福祉に起こったことは、自己負担の増加と 地域医療崩壊の危機といった国民にプラスとならないことばかりである。

漸くマスコミが医療崩壊を話題にするようになり、国民的関心となってきている。この時を、 国民世論を味方につける千載一遇のチャンスととらえ、いつでもどこでもだれもが良質で安全な 医療を受けるには、コストがかかることを国民全体に理解してもらうことが重要な課題と考える。

次に、有床診療所入院基本料の問題である。これまでの医療供給体制の中で、有床診療所の果 たしてきた役割は大きい。ところが、現在の診療報酬体系は有床診療所そのものの継続が不可能 となっている。これから在宅医療の中心となるべき有床診療所の診療報酬体系を根本的に見直す ことが必要との認識で一致し、要望として取り上げられた。厚生労働省の在宅中心の医療という 施策に乗らされるという一面もあり片腹痛くもあるが、現実は厳しいものである。

他に、入院基本料の見直し(特に7:1入院基本料については厳しい意見が多かった)、リハビ リテーションの問題、在宅療養支援診療所の問題、療養病床入院基本料の見直し、7種以上の投 薬処方箋減算の廃止、外来管理加算と処置点数の不合理の解消が取り上げられ、いずれも大切な 要望と考えられた。

ところで、フリーアクセス、コスト、質を考えた場合、フリーアクセスを強調すれば大病院集 中は避けられず、コストの上昇、質の低下を招く可能性が高い。一方で、コストを下げようとす れば、フリーアクセスの制限、もしくは質の低下を考慮しなければならない。この3つの要素をバ ランス良く実現したのが日本の医療であり、昭和34年、国民皆保険制度が設立されて以降、医師 の崇高な使命感とボランティア精神がそれを支えてきたと言っても過言ではない。しかし、それ も財政至上主義による医療費抑制策により崩壊しようとしている。国の医療費抑制策は増加する 医療費を国民負担につけ換えているだけの政策であることを指摘しておかなければならないが、さ らに医療供給側に疲弊を生じさせただけであった。今こそ、我々は国民世論を味方につけて、医 療供給体制を現場で支えるべく立ち上がらなければならないと強く感じた。