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平成18年度都道府県医師会情報システム
担当理事連絡協議会

常任理事 大山 朝賢

去る3月22日(木)、日本医師会館において 標記協議会が開催されたのでその概要について 報告する。

1.挨拶

唐澤人日本医師会会長より、概ね次のとお り挨拶があった。

本日は、三重県、兵庫県、高知県、佐賀県の 4県の先生方がテレビ会議にてご参加いただい ている。当システムが安定した機能で運営でき れば良いと考える。

日頃から日医の情報システム推進事業につい てご理解ご協力いただき感謝申し上げる。ORCA システムについても大変普及してきている。

ご存知の通り医療を取り巻く環境は厳しい状 況にある。主な厳しさというのは、政府の進め る財政優先型の医療推進という形にある。社会 保障制度全体が、国の中で非常に狭められた位 置におかれており、特にその中でも、医療に対 する国の取り組み方は誠に脆弱で、医療の質が ますます低下を来しているのではないかという 現状である。

国においてもIT戦略本部というものがあり、 医療分野に関するIT化では、医療に関するデー タの集積・分析、あるいはレセプトオンライン 化等、様々な施策が行われているが、結局は医 療費の抑制政策、及び非常に誤解を招きやすい 産業振興策をとられかねない戦略となってい る。そして、その先には管理医療が見えている という気がしている。IT化の真の目標は何なの か、IT化を推進することによってどのような社 会的貢献があるのかということが不明確であ り、IT化を推進するための課題や周辺整備がおざなりで、本格的に稼動してしまえば様々な混 乱に陥る。

日本医師会は、医療分野におけるIT化は、安 全で効率的な医療提供体制を実現するための手 段であるという根本的な考え方、そして医療と 患者に貢献するIT化であってこそ推進する価値 があるという位置付けで考えている。平成18年 度は、医療構築から実践へと具体的な施策を講 じていきたいと考えている。情報化推進へご協 力いただきたい。

2.趣旨説明

日本医師会常任理事の中川俊男先生より、本 協議会の趣旨説明が行われた。

懸案であるレセプトオンライン化の問題につ いては、昨年8月に公表した「オンライン請求義 務化に関する日本医師会の見解」の中で挙げた5 項目の課題、1)薬効薬理作用に基づいた医薬品 の投与を認めること(デジタルによる画一的な 審査をしないこと)、2)被保険者証(保険証)有 効性確認システムの確立(例:保険証の資格を 医療機関が即時に確認できるようにする)、3)レ セコンの統一基準化、4)レセプトデータ利活用 に関する問題(民間利用の禁止)、5)IT化財源の 別途確保、という5項目について、現在、厚労省 と折衝を重ねている。今年度中にはある程度の 状況を報告できると考えている。

本日の議題について、テレビ会議システムに ついては、これまでに、委員会、協議会等で実 践的な活用を行うとともに、都道府県医師会に おける運用を試みている。日本医師会のシステ ムを利用した都道府県医師会と郡市区医師会の 文書管理システムについては、この4月には実用化される見通しとなっている。ORCAプロジ ェクトについては、日医標準レセプトソフトの 推進を強化した結果として3,000ユーザを超え るとともに、データ収集を通じた医療費適正化 の解析を行った。詳細については、情報企画課 と日医総研の担当者から説明させていただきた い。なお、本日の協議会は、三重県、兵庫県、 高知県、佐賀県、がテレビ会議を通じての参加 という形態をとっている。

3.議事

(1)TV会議システムの運用について

日本医師会情報企画課より、日本医師会TV 会議システムについて報告があった。

日本医師会TV会議システムは、これまでに、 日本医師会館で開催された日本医師会医療情報 システム協議会等の講演会や講習会の配信(一 方通行配信)、IT化推進検討委員会等の比較的 小規模な委員会等(双方向通信)に利用されて おり、大規模な会議での双方向通信については 本日の協議会が初の試みとなっている。当協議 会では、三重県、兵庫県、高知県、佐賀県の計 4県がTV会議システムを通じて参加している。

当システムは、次年度以降、より多くの講演 会や講習会等の配信が予定されており、また、 各都道府県医師会間並びに都道府県医師会と各 郡市区医師会間の会議等への運用範囲拡大も検 討されている。

TV会議システムを活用して日医が主催する 協議会等へ参加した際の諸手当については、担 当役員の自宅から各拠点(都道府県医師会館) 分の交通費と規定通りの日当並びに委員報酬が 支払われることになっている。

また、当システムは現時点ではWindows Vistaに対応していないが、今年5月中旬頃まで には対応される予定となっている。

(2)文書管理システムの拡張について

日本医師会情報企画課より、日本医師会都道 府県医師会宛文書管理システムの拡張について 報告があった。

日本医師会文書管理システムは、日本医師会 が各都道府県医師会宛に発信した各種通知文書 をWEB上で閲覧できるシステムとなっており、 また当システムは、WEB上に新規に文書が登 録された際に、事前に登録したメールアドレス 宛にお知らせのメールを自動的に配信する機能 を持っている。

当システムは、現時点では、日本医師会と都 道府県医師会のみが利用可能となっているが、 各都道府県医師会より、都道府県医師会と各郡 市区医師会間でも当システムを利用したい旨の 要望が挙げられていることから、今回、都道府 県医師会と各郡市区医師会間でも利用できるよ うシステム拡張されることになった。

当システムが拡張されることによって、各都 道府県医師会が独自のシステムを開発・運用す る必要がなくなり、また各都道府県医師会間の インフラストラクチャーの格差が縮小されると いったメリットが考えられるが、各都道府県医 師会の文書が日医サーバに蓄積されることか ら、データ容量やアクセス集中といった懸念事 項も挙げられている。

当システムを利用するためには、今年4月上 旬に日医より通知される申し込み用紙に必要事 項を記入のうえ日医宛に申し込む必要があり、 申し込み受け付け後日医にてシステム登録を行 ったうえで4月下旬から利用することが可能と なっている。

(3)ORCAプロジェクトについて

日医総研の上野智明主任研究員より、ORCA プロジェクトについて報告があった。

ORCAプロジェクトの一つである“日医標準 レセプトソフト(日レセ)”の導入施設数は3月 15日現在で3,238施設を達成しており、2011年 には1万施設への導入が目標に掲げられている。 日レセへの移行作業を行っている施設(548施 設)までを加えると、全国における日レセ利用 施設数の割合は4.9%を達成しており、過去1年 間においてレセコンを買い替える際に日レセを 選択している施設の割合は11.1%となっていることがデータとして示されている。

日医標準レセプトソフトは、開発当初よりデ ータを収集することが目的に掲げられており、 2006年12月よりデータ収集のための“定点調 査研究事業”のパイロットスタディが10医療機 関を対象に開始されている。当調査研究事業 は、国の恣意的なデータ分析への対策として行 われる事業となっており、日医標準レセプトソ フトを導入している施設で、当事業に参加表明 していただいた医療機関を対象に行われる。医 療施設より収集されるデータは、患者個人が特 定できる部分を削除したデータとなっており、 主な内容としては、レセプト電算データ、院外 処方、自費分等が挙げられている。今後、当事 業を基に収集したデータを活用し、国へ先手を 打った提言を行っていくこととしている。

(4)質疑応答

質疑応答に入る前に、TV会議システムを通 じて当協議会に参加されている、三重県、兵庫 県、高知県、佐賀県の先生より、TV会議シス テムは概ね良好であったことが報告された。

<TV会議システムについて>

Q.産業医、スポーツ医の研修会等をTV会議 システムを通じて参加し単位を取得することは 可能か。

A.TV会議システムの双方向性が確保されていれ ば問題無い。出欠は都道府県医師会事務局が行 う。神奈川県では既に実施されている。(日医)

A.画像、音声ともに良好であった。時間的制 約がなく、映像が記録として残るというメリッ トがある。(神奈川県医師会)

<ORCAプロジェクトについて>

Q.返戻対応(事前チェック用)のソフト開発 は考えているか。

A.随時開発していきたい。(日医総研)

Q.オンライン請求が義務化された際、日レセ で対応は可能か。

A.対応可能である。そもそもオンラインに特 化したレセコンである。(日医総研)

Q.オンライン請求に係るネットワーク体系は ISDNと規定されているがどう考えるか。

A.ある一定水準のネットワーク体系であれば 可能とするよう、現在厚労省と協議中である。 (日医総研)

A.何度も申し上げているが前提として日医は オンライン請求の義務化には反対である。(日 医)

Q.厚労省が“レセスタ”というレセコンを開 発したとの情報があるがどうか。

A.“レセスタ”はレセコンではない。“レセス タ”は、レセコンからレセプト電算処理システ ム仕様の電子レセプトに変換するためのソフト ウエアである。(日医総研)

Q.オンライン請求の義務化が進められた際、 1)補助金等の財政負担、2)光回線やADSLでの 対応、3)情報漏洩の際の責任の所在、について 国に要望していただきたい。

A.1)平成18年8月に日医が発表した「オンラ イン請求義務化に対する日医の見解」に沿って 協議が行われている。2)保険局と医政局で議論 されている。3)医療施設は個人情報保護のガイ ドラインに沿って対応していただきたい。(日 医、日医総研)

Q.後期高齢者への対応をお願いしたい。

A.どこよりも早く対応したい。(日医総研)

Q.電子カルテ等に関するユーザーレビューを 掲載するためのサイトを開設してはどうか。

A.宣伝が入る可能性がある為、日医での対応 は難しいと考える。(日医)

印象記

大山朝賢

常任理事 大山 朝賢

今回の情報システム担当理事連絡協議会のメインテーマはTV会議システムの運用であったと思 う。日本医師会館でのTV会議の開催はこれまでIT化推進検討委員会のような比較的小規模な委 員会では双方向性の通信が利用されているようであるが、講演会や講習会といった大きな会では 一方通行配信であった。今回の情報システム担当理事連絡協議会では双方向通信による初めての 協議会が開催された。今回のTV会議システムを通して参加していたのは三重県、兵庫県、高知 県、佐賀県等であった。日本医師会館で「文書管理システムの拡張」や「ORCAプロジェクト」 等について演者等の講演の最中に、これら4県の担当理事に講演の進行状況や感想等を日本医師 会館側から問いかけていた。問いかけられた担当理事等の話しぶりの映像が不鮮明で音声のコン トロールがうまくいかず、4県の担当理事の中には聞こえているときは○、聞こえてないとは×の サインが書かれたのを手に持って示していた。平成19年度から、このTV会議システムは協議会、 委員会や講演会等大小の会議に限らず配信が拡張されるようである。しかし一方向の配信であれ ばこの方法でいいのではと思われるが、正直なところまだまだ改良の余地が多々あるように思え たのは私だけだろうか。