那覇市立病院医師会会長 川野 幸志
当院は平成10年度にオーダリング・システム を導入し、念願であった電子カルテ・システム を平成18年12月1日に導入しました。情報シス テム運営委員長の島袋洋先生を中心に万全の体 制で臨んだせいか、今になって思うと大きな混 乱はなかったと思います(注)。(もっとも小さ な混乱は、今もありますが)また、今でも納得 のいかないことも幾つかあります。例えば、男 性の患者にもレントゲンの指示を出すときに、 『妊娠していますか?』と電子カルテは問いま す。この件について、電子カルテ制作会社の方 と議論したことがありますが、「では女性でも、 年寄りはどうしますか?子供はどうします か?」などと、議論が発展してしまい、結局 「出来ません」の結論となり、最終的に、私た ちが「ワン・クリック」多くすることで決着し てしまいました。(本当に変ですよね。他の病 院の電子カルテもこうですかね??)
医局員は頭では分かっていたのですが、オー ダリングと電子カルテとは、全く違います。そ れでもオーダリングに慣れていなければ、もっ と大変だったのではないかと今でも思っていま す。当院の「院内便り・甍」1月号にこんな川 柳が載っていました。『電子カルテ フリーズ してる 顔までも』。当初はこんな光景も、電 子カルテ端末の前でちょくちょく見られました が、最近では殆どありませんので、結構慣れ親 しんで使いこなしていると思います。それでも 時々は、難渋することもあります。そういう場 合は、私は若手の医師に教えてもらい、殆ど解 決してしまいます。年寄りには使いこなすのに は時間がかかるのかもしれません。
今まで電子カルテ導入前に視察した病院で も、導入後1回くらいは、システムダウンがあ ったようで、紙運用で切り抜けたとか、支払い は後日にしてもらったとか涙ぐましい奮闘ぶり も聞いてきました。実は当院でも先日、大変な 目に逢いました。それは停電です。3月8日朝9 時過ぎに、突然首里地区を停電が襲いました。 新聞にも載っていましたので、記憶にある方も あるかと思いますが、後日談では、どうも電力 会社の工事中の事故が原因だったようです。い つもの停電ではすぐに補助電源に繋がるように なっているのですが、この時はなんと30分以上 も停電のままでした。無停電になっていたICU を除いて、病院全体の電力が止まってしまいま した。これも電子カルテ導入に伴って、院内が 電力工事中で、補助電源への切り替えがうまく いかなかったのが原因でした。幸いにも人工呼 吸器は多くの人手で何とかなりました。しか し、手術室は大混乱でした。不幸中の幸いで、 手術開始前であったため、大事故に繋がらず救 われた思いでした。
さて、肝心の電子カルテは勿論、停電では使 えません。しかし、多くの職員の奮闘で、午前 中には診療が円滑に出来るようになりました。 電力の切り替えなどは、翌日には円滑に出来る ようにしたのはいうまでもありません。このよ うな危険は何処に潜んでいるのか分かりません が、これを良い教訓として今後のリスク・マネ ージメントにつなげていきたいものです。 (注:導入の事前準備などは、「院内だより・ 甍」第239号・平成18年12月号に島袋洋先生 が詳しく書いています)
(写真:医師が電子カルテを操作している場面)
初期臨床研修の義務化が始まり、当院でも3 年前から本格的に研修医を受け入れています。 今回2期生7人がめでたく、無事に?3月で修了 することが出来ました。3年目の後期研修など は当院内科1名、脳神経外科1名、琉大皮膚科1 名、東京女子医科大学麻酔科・脳神経外科各1 名、産業医(千葉県新日鉄)1名です。それぞ れ新たな路へ、夢と希望を抱いて再スタートを 切ります。進路は違えども、これからも一層の 研鑽を期待します。
3月23日に開催されました当院の研修管理委 員会では、上記7人の臨床研修の修了認定が行 われました。また、質疑応答では、外部委員か らの助言・質問では以下のような点が指摘され ましたので、ご紹介します。先ず離島の診療所 の医師からは、整形外科的診療が未熟のようで あるとの指摘がありました。以前ご指摘があっ てからは、離島への研修医派遣前に、ギブスの 巻き方など、基本的な整形外科的処置を習得し てもらってから派遣していますので、だいぶ改 善されたのではないでしょうか。また、別の委 員からは必修となった精神科研修の成果はある のかとの質問がなされました。当院委員の精神 科医師から、精神科研修は1ヶ月と短い研修期 間ではあるが、心身両面ともに診れるバランス の良い医師に育つのではないかと回答しまし た。本当に貴重なご意見・ご質問をありがとう ございました。
尚、当院では4月採用の研修医4期生は12人 に増員となります。新研修医が益々充実した研 修が出来るよう、先輩医師も頑張らねばなりま せん。若い研修医が増えて、病院はますます活 気付いています。