琉球大学医学部第二内科(内分泌代謝内科)教授
高須 信行
2006年11月3日第49回日本甲状腺学会で三 宅賞を受賞した。日本甲状腺学会には賞が二つ ある。七條賞と三宅賞である。七條賞は若くし て甲状腺研究に業績のあった人に贈られる。三 宅賞は甲状腺学の分野における研究および後進 の育成に貢献した人に贈られる。
1982年5月31日に七條賞を受賞した。七條小 次郎先生はまだ元気であった。七條小次郎先生 は書道家である。自ら、筆をとり、賞状を書い た。和紙に毛筆で書いた。毛筆で書かれた賞状 を受賞したのは私が最後だという。1978年に七 條小次郎先生から書をいただいた。「忍」の一 字が大きく書かれていた。学問は忍耐という意 味なのか、それとも生きるということは「忍」 という意味なのか。
四半世紀を経て三宅賞を受賞した。三宅賞受 賞講演では「甲状腺濾胞形成と甲状腺ホルモン 産生」について話した。甲状腺細胞の初代培養 系を世界に先駆け確立した。仕事は順調であっ た。しかし、1993年以降この仕事は継続できな くなった。予算はあったが、時間がなくなった。 三宅賞受賞講演では「甲状腺濾胞形成と甲状腺 ホルモン産生」について話をした。研究成果と 今後の発展を語った。初代甲状腺細胞培養系の 仕事は甲状腺細胞の分化・増殖を明らかにする 有力な系である。Dataはあるが完成しなかった 論文、やってみたいこと、20代、30代であった ら、すぐに始めること---仕事は残っている。一つ の世界を形成することができる。受賞講演を聴 いた方々にそういったことを感じて欲しかった。 英語原著論文は250。臨床の方々に興味があると 考えられるのはNew England Journal of Medicineの3つの論文であろう(Takasu N: Exacerbation of autoimmune thyroid dysfunction after unilateral adrenalectomy in patients with Cushing’s syndrome due to an adrenocortical adenoma. N Engl J Med 322 : 1708, 1990; Takasu N: Disappearance of thyrotropin-blocking antibodies and spontaneous recovery from hypothyroidism in autoimmune thyroiditis. N Engl J Med 326 : 513, 1992; Takasu N: Rifampininduced hypothyroidism in patients with Hashimoto’s thyroiditis. N Engl J Med 352 : 518, 2005)。引用される論文と引用されない論文が ある。臨床の論文は引用されることが多い。色 あせない。基礎の論文は風雨に曝され、かつ消 えかつ結ぶ泡沫(うたかた)のごとしとなりかね ない。
みる眼を養う。発見はどこにでもある。論文 を書く最初の段階は書くかどうかを決めるこ と。決めたら、書き上げること。論文を完成す るには結晶化の過程が大切。論文を書くという 習慣を持つこと。
沖縄から世界へ。
沖縄県医師会の発展を。