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看護師養成課程の新設

山城千秋

那覇市医師会看護学校担当理事 山城 千秋

那覇市医師会は、沖縄県の慢性的な看護師不 足に対応するために、昭和47年、那覇市東町 に那覇市医師会立那覇准看護学院を設立しまし た。昭和53 年4 月には専修学校制度発足に伴 い、那覇高等看護専修学校と改称し准看護師養 成に努めてまいりました。

平成5年4月には、老朽化し手狭になったた め学校を豊見城市へ新築移転し、同時に看護師 の養成を希望する時代のニーズに応え看護師2 年課程(以下「進学コース」とします)(1学年 50名)を新設し、さらに准看護師課程(以下 「准看コース」とします)の定員増(1学年150 名)を行い、学校名を「那覇市医師会那覇看護 専門学校」と改めました。

本会が准看護師養成を始めて35年間、今日 までに卒業した生徒は4,202人、進学コースは 581人の卒業生を県内外へ送り出しております。

ここ数年は、両学科ともに応募者も増え学校 運営も安定してきておりましたが、急激に進む 高齢化や、医療の高度化・専門分化、入院期間 の短縮や在宅医療へのシフト等、医療を取り巻 く環境の変化から、医療現場は、より質の高い 看護師教育を希求するようになってまいりまし た。それは、全国的な傾向で、看護系大学の増 加、既存の短大は4年制大学へ、准看コース及 び進学コースは看護師3年課程(以下「レギュ ラーコース」とします)へと教育課程の移行が 急速に進んでおります。本県においても

1)愛楽園・那覇高校衛生看護学科における准看コースの廃止、

2)北部地区医師会北部看護学校における進学コース閉鎖とレギュラーコースのクラス増(50名→80名)、

3)中部地区医師会立看護学校開校(平成20年予定)レギュラーコース2 クラス準備(80名)、

4)浦添看護学校における進学コース(定時制2クラス)閉科とレギュラーコース新設(80名)、

5)名桜大学の看護学科(80名)新設(平成19年4月開科)、

と、全国と同様の状況があります。そのよう な中で沖縄県は、平成18年以降の看護職員需 給見通し(表1)を発表しました。それによる と今後5年間、700から800名の看護師不足が見 込まれております。沖縄県の保健・医療に責任 を持つ医師会として本会の看護師養成はこれま で以上に責任が重くなってきます。

表1(2006年1月発表  県福祉保健部資料)

年度 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年
需要数 16,544 16,738 16,930 17,126 17,210
供給数
(新卒)
15,750
(532)
15,968
(534)
16,170
(536)
16,356
(538)
16,516
(531)
差引計 -794 -770 -760 -770 -694

※ 全国 平成22年の需給見通し:需要数140万6,400人
供給139万500人 1万5,900人の不足が見込まれる。

教育課程の変更

本校の准看コースは、毎年150名の卒業生を 出しています。しかし、ここ数年、卒業生の8 〜9割は看護師資格を得る為に進学コースを受 験しており、新卒者の6〜7割が進学している 状況です。また、卒業時、就職を選択した者も 数年後には進学していることから准看コース卒 業生の就業率は低く、卒業後に即戦力としての数には数えられない状況が続いております。

そこで本会は、緊迫した県内の看護師需給に 貢献する方策として表2に示した通り、平成20 年4月に准看コースを縮小(1学年3クラスから 2クラス:総定数160名)し、進学コースを廃 止するとともに、レギュラーコース(1学年2ク ラス総定数240名)を新設することを決定しま した。

表2(那覇看護専門学校の今後の募集定員)

課程名
(就業年限)
准看護師養成課程
(2年)
進学コース
(3年)
レギュラーコース
(3年)
平成19年度 150 50  
平成20年度 80 50  
平成21年度 80 募集停止予定 80
平成22年度 80   80
平成23年度 80   80
平成24年度
   以降同
80   80

この結論に至るまでの経過については、平成 14年頃、県内の看護師養成校において浦添看護 学校の進学コースの縮小、あるいは養成中止、 中部地区医師会によるレギュラーコースの新設 の話が持ち上がりました。私どもは「看護学校 の将来像を考える会」を設置し、今後の看護師 養成のあり方について検討を始めました。浦添 看護学校が平成19年度に進学コースを縮小、平 成21年にレギュラーコースの新設を決め、あわ せて平成19年の名桜大学における看護学科の新 設、平成20年の中部地区医師会レギュラーコー スの募集開始が決定されました。

本校として「将来にわたって安定した運営 と、優秀な人材を育成するには、どうすれば良 いのか」、また、「経済的負担も少なく、より現 実的で、実現可能な方法はあるのか」を模索 し、検討を重ねた結果、導き出した結論は表2 で示した内容でした。

この間、多く議論されたのは准看コースの存 続のことでした。ご存知のように、准看護師の 養成校は全国的に年々減少しておりますが、し かしその需要は未だ高いものがあります。また 日本医師会の基本方針である看護体制の三層構 造(看護助手、准看護師、看護師)をしっかり と堅持出来るように、准看護師の養成は継続し ていくこととしました。

県内の各看護師養成校においては優秀な看護 師を育て社会へ送り出し、沖縄県の保健・医療 に貢献する目標を持っていることでしょう。本 校も社会的ニーズである在宅医療推進、高度医 療等、多様化する医療制度への対応、さらに医 療事故の防止に対処し得る高い資質を備えた看 護師を育成し、沖縄県の看護師需給へ積極的に 寄与したいと考えております。その為にも、今 回の課程変更を契機に「人を大切にし、その権 利を守る態度」「相手を受け入れる力」「自分の 行為について、説明する知力」「探究心を持ち 続ける」「困難から逃げず、向き合う精神」を 教育の目標とし、生徒・学生とともに那覇市医 師会那覇看護専門学校のブランドを高める所存 です。そして、沖縄県医師会の会員の皆様にも フィードバックをしていきたいというふうに考 えております。

最後になりますが、看護学校の運営につきま しては県医師会始め一部の地区医師会から、こ れまで看護学校運営補助金のご支援を頂戴した ことに対しまして深く感謝申し上げたいと存じ ます。また、今回、進めております課程変更の ための費用は銀行等から借入をする予定にして おります。この状況をお汲み取りいただきまし て、今後も一方ならぬご支援をお願い申し上げ ます。