理事 玉井 修
沖縄県医師会国民保護業務計画とは、国民保 護法によって定められた指定地方公共機関等が 国民の保護に関する基本指針にのっとり、核攻 撃や生物化学兵器などを含めた武力攻撃に対し どのような対応をすべきかを検討し、今年度中 に本会の計画を県へ提出するものであります (指定地方公共機関には平成18年度中の業務計 画の作成が義務付けられており、本会は指定地 方公共機関として指定されている)。
救急医療担当理事としてこの計画立案に対峙 した当初は、県行政側からの詳細な説明を受け てもイメージが湧かずに苦労致しました。実際 の医療チーム編成は各地区医師会が主体となる ため、各地区医師会の救急医療担当理事にも何 度か集まって頂き、意見聴取や討議を行い、今 年度中の作成に向けて調整をして参りました。
実際の武力攻撃があった場合を想定しなが ら、如何に安全を確保すべきか、また、2次災 害を生じないような方策を練りながら実効性の ある行動計画を立てるのは、雲をつかむような 話であり、事務局にも多くの資料収集をお願い しながら少しずつ形のあるものに仕上げていき ました。大きな特徴としては、実際の武力攻撃 があった場合にまず、核・生物化学兵器など周 辺環境を汚染し、安易に近づくことさえ出来な いような場合も予想されるため、まずは国行 政、自衛隊などにより安全確保に関する特殊チ ームが事態の情報を収集し、安全の確保が確認 された場合に医療救護活動に関する出動要請が なされるという順番が確認されました。要する に武力攻撃があった場合は事態の情報収集、解 析がまずなされて、そのあとに医療支援チーム が入る訳です。その後現場に入った医療チーム から新たな情報も県行政に伝達し、必要があれ ば医療チームの追加派遣などを考慮するなどの 措置がとられます。
この業務計画は消防や警察、公共交通機関な ど多くの関係機関がそれぞれに作成し、県は最 終的に各機関の国民保護業務計画をとりまとめ ます。県の行政にはこの業務計画が万一の場合 円滑に運用できるよう、防災無線などの連絡網 に関しての検討を申し入れておきました。また 医師会においては、地域防災計画の整備や連絡 網の確認、より有効性の高い連絡網の整備、九 州山口各県との大規模災害時に係る協力体制の 整備を今後の課題として考えております。
まず、今回答申致します沖縄県医師会国民保 護業務計画に関して一度お目通し下さい。県行 政側から細部の言葉の用い方や、法律解釈等の ご指摘を受けつつ書き上げたものであります。 こんなに薄くて大丈夫なの?というご意見もあ ろうかと思いますが、これは各地区公共団体が 提出する答申の一部に過ぎません。これが統合 されて一つのものとなった場合のボリュームは 大変なものだと思われます。医師会側からの業 務計画内容は、厳選に厳選を重ね、推敲を重ね たものであります。
沖縄県医師会国民保護業務計画
平成19年3月
第1章 総 則
第1節 本計画の目的
本計画は、沖縄県医師会(以下「本会」という。)が、「武力攻撃事態等における国民の保護 のための措置に関する法律」(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)第34条 第1項の規定により作成された沖縄県国民保護計画(平成18年3月31日作成)に基づき、同法 第32条に定める「国民の保護に関する基本指針」(平成17年3月閣議決定)を踏まえ、本会が 実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項等を定め、武力攻撃事態 及び緊急対処事態において、国民の保護のための措置(以下「国民保護措置」という。)及び 緊急対処保護措置を円滑に実施することを目的とする。
第2節 国民保護措置の基本方針
本会は、本計画の実施にあたり、国、地方公共団体、その他武力攻撃事態等の対応に係る 関係諸機関と相互に連携を図りながら、医療を確保するために必要な措置等を講ずる。
第3節 措置の内容
- (1)武力攻撃事態等に対する体制整備
- (2)武力攻撃事態災害における医療の提供
- (3)情報の収集・提供及び広報活動
- (4)緊急対処事態に対処するための措置
第4節 措置の実施主体
国民保護措置は、原則として武力攻撃等により被災した地域の地区医師会(以下「被災地 区医師会」という。)が主体となって実施する。
第5節 安全の確保
国民保護措置の実施にあたっては、その内容に応じ、国、県、市町村及び関係機関より武力 攻撃の状況、その他必要な安全に関する情報の提供を受ける等、国民保護措置に従事する者 の身体に危険が及ぶことのないよう安全確保が十分得られた後に行うものとする。
第2章 武力攻撃事態等に対する体制整備
第1節 救護体制の確立
地区医師会は、武力攻撃事態等が発生又は発生が予測される場合、円滑な業務が遂行でき るよう、救護体制の確立を図るとともに、日頃からその体制の充実、強化を図る。
1.医療救護班編成
医療班は、各地区医師会による編成とし、構成は、沖縄県地域防災計画第12節医療救護計 画を基に、医師1人、保健師、助産師または看護師(准看護師を含む)3人、事務担当者1人、 運転手1人の概ね計6人を目安とする。
2.医療施設の確保
本会は、傷病者の受け入れ等、医療施設の確保に努める。
第2節 連絡体制の整備
本会は、緊急時連絡網の作成等による連絡体制の整備に努め、武力攻撃事態等災害時にお ける確実な情報収集・伝達体制を構築する。
なお、緊急時連絡網については、沖縄県地域防災計画における災害時医療救急班連絡系統 図を兼ねるものとする。
第3節 武力攻撃事態等に関する訓練等
本会は、武力攻撃事態等を念頭に置いた地方公共団体の国民保護措置についての訓練や関 係機関による合同訓練等へ積極的に参加するよう努め、武力攻撃事態等における各機関の役 割を認識するとともに、医療業務についての理解を促進する。
第4節 地方公共団体等との協力関係
1.関係機関との相互連携体制整備
(1)国民保護協議会等への参加
本会は、国民保護協議会等、要請があれば積極的に参加し、関係機関との整合性の確保に 留意する。
(2)沖縄県国民保護対策本部との協調
沖縄県国民保護対策本部長が実施する国民保護措置に関する総合調整へ協力するとともに、 総合調整の結果に基づき、所要の措置を的確かつ迅速に実施するよう努める。
2.国民保護措置に係る地方公共団体への協力
本会は、地方公共団体から国民保護措置に係る協力要請があった場合には、救護班派遣等 の医療救護活動に努める。
第5節 情報の収集・連絡
武力攻撃事態等においては、武力攻撃等の状況、国民保護措置の実施状況、被害状況等の 情報を収集または整理し、関係機関等への提供等を適切に実施するための体制整備に努める。
第3章 武力攻撃災害への応急措置等
第1節 通報・連絡
1.通報・連絡の経路及び手段
通報、連絡の経路は沖縄県地域防災計画における災害時医療救急班連絡系統図のとおりと し、加入電話・携帯電話等を用いた通報・連絡手段とする。
第2節 医療救護活動に係る措置等
1.初動期の対応等
本会は、地方公共団体から国民保護措置に係る協力要請があった場合には、武力攻撃災害 発生後、地方公共団体等より直ちに被災状況等の情報収集を開始する等、相互の情報共有化 に努め、安全確保が十分された後に被災地区医師会へ救護班の派遣を依頼する。被災地区医 師会は、本会から要請がある場合は救護班の派遣を開始するとともに、被災地の対応状況及び 被災状況について、速やかに本会へ報告する。
また、本会は、その管理する施設及び設備に関するもの並びにその業務として国民保護措置に 関するものの被災情報を収集するよう努めるとともに、当該被災情報を県に速やかに報告する。
2.医療救護活動
本会は、救護班の派遣及び傷病者の受け入れ等の医療救護活動を行う。また、薬剤師会と 緊密な連携を保ち、医薬品等の確保に努める。
3.撤収時期
本会は、被災地における医療機関の機能の回復状況を勘案し、救護班を撤収する時期を、関 係機関と協議のうえ決定する。
4.費用負担
国民保護法に基づいて行った医療救護班の派遣又は指示に従って医療を行う医療関係者に 対しては、国民保護法施行令で定める基準に従い、その実費を弁償することから、沖縄県へ請 求を行う。
第4章 緊急対処事態に対処するための措置
第1節 沖縄県緊急対処事態対策本部への対応
本会は、県に沖縄県緊急対処事態対策本部(以下「県緊急事態対策本部」という。)が設置さ れた場合には、県緊急事態対策本部を中心とした緊急対処保護措置の推進を図るものとする。
第2節 緊急対処保護措置の実施
緊急対処保護措置の実施体制並びに措置の内容及び実施方法については、本計画の第1章か ら第3章までの定めに準じて行うこととする。