沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 4月号

平成18年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会

常任理事 嶺井 進

去る2月14日(水)日本医師会に於いて、標 記連絡協議会が開催された。

協議会では、昨年日医が独自に実施した看護 職員需給調査の結果について報告があり、次い で最近の動向として、外国人看護師等の受入れ、 助産師養成夜間定時制コースの開設について概 要説明があった。また、群馬県高崎市医師会よ り、医師会立助産師学院の設立に向けた取り組 み状況について紹介があった。本県から私と那 覇市医師会看護師養成担当理事の山城千秋先生 が出席したので、その概要について報告する。

会議冒頭、唐澤人会長は「昨年日本医師 会が独自に実施した看護職員需給調査結果によ り、去る1月31日の中医協において、平成7年 以来、12年ぶりとなる厚生労働大臣あての建議 書の提出を導き出す結果となった。これも偏に 都道府県医師会の先生方のご協力の賜物であ り、この場を借りて厚く御礼申し上げる。」と 挨拶した。

議 事

(1)日本医師会看護職員需給調査の結果につ いて

日医総研事務所管理部長代理西澤直衛氏よ り、みだし調査結果について報告があった。

調査では、全国から抽出された3,185 病院 (有効回答数2,091病院、回答率65.7%)と全国 1,310校の看護師・准看護師学校養成所(有効 回答数1,014校、回答率77.4%)にアンケート を送付し、昨年10月時点のデータを集計した。

調査の結果から、病院における看護職員の需 給予測については、2006年度の診療報酬改定 で、一般病棟入院基本料の看護配置基準に「7対1」が導入されたことを背景として、各地で 看護師の争奪戦が激化した。今回の調査でも次 のようなことが明らかとなった。

・全国の一般病棟における7対1看護の比率は、 昨年10月末現在、病床数ベースで13.1%と なっている。7対1看護の比率は、規模が大 きい病院ほど高い傾向が見られ、300床以上 では15.1%である。

・もとから看護配置が厚い300床以上の病院で は、今後、看護配置基準の引き上げを予定し ている病院が53.4%あり、病院全体の中で最 も高かった。また、99床以下の中小規模病院 では、引き上げ予定が3割に満たなかった。

・目標とする看護配置基準を達成するために 「病床を減らして、看護基準の引き上げ、あ るいは現在の看護基準を維持する」と回答し た病院は6.7%であった。

・求人状況に変化があったと回答した看護学校 養成所のうち、東京以外の地域の看護師課程 では、県外や都市部からの求人が増えてい る。求人元の開設者では、大学病院・民間大 規模病院など、規模の大きい病院からの求人 が伸びている。

これらのことを踏まえ、以下の視点から分析 を行い、調査結果の結論を取り纏めた。

  • 1)急速に伸びている病院の看護職員需要に対 して、供給が追いつくのか。
  • 2)大規模病院を含む、すべての病院が看護職 員増員を志向しているなかで、地方の中小 規模病院まで看護職員が行き渡るのか。
  • 3)看護基準引き上げあるいは維持のために、 一般病床の削減が促進されるのではないか。

〈まとめ〉

1)看護配置基準の引き上げは、段階的に行う ように方向修正すべきである

ここ約1年半の間に、急激な看護配置基準の 引き上げが予定されている。また、基準達成の ため、一般病床2万床以上の閉鎖も検討されて いる。

2万床の病床を減らしてもなお、看護師・准 看護師数は不足する。このような中、大規模病 院が急激に看護配置基準を引き上げようとして いるほか、都市部の病院からの求人が増えてい る。民間中小病院を中心とした地域では、看護 師不足によるさらなる病棟閉鎖が進む。

このままでは、またたく間に地域医療が崩壊 しかねない。看護基準の引き上げは、看護師数 の増加に合わせて段階的に行うよう方向を修正 する必要がある。

2)早急に准看護師養成策を見直すべきである

看護師・准看護師不足の背景のひとつは、准看 護師課程卒業者数が激減していることにもある。 今後、病院は看護配置基準の引き上げのため、診 療所の准看護師もターゲットにしかねない。早急 に准看護師養成策を練り直すべきである。

報告のあと、竹嶋副会長から12年ぶりの中医 協建議に漕ぎ着けた概略について説明があった。

中医協では、今回の看護職員需給調査結果に 加え、8月の診療報酬改定のよるアンケート調 査結果や10月の療養病床再編によるアンケー ト調査結果など一連のデータを示しながら、支 払側、公益側の委員から賛同を得て、平成7年 (医薬品の価格設定に関する建議)以来の建議 に繋がった。双方の委員から感謝の意を表され た。地域医療の現場の実情をしっかりデータと して、あげていくことが極めて大事であると痛 切に感じている。これからも続けていくと思う ので、よろしくお願いしたい。

(2)最近の動向について

○外国人看護師等の受け入れついて

平成16 年11 月、フィリピンとの間のEPA (経済連携協定)が大筋で合意され、日本への フィリピン人看護師等の受け入れについては、 参院本会議で承認されたので、早くて今秋から 発効される。

日本医師会としては、同協定で決まった看護 師等の候補者受け入れについては、基本的に反 対はしないが、これらの関係職種の養成は、本来国が責任を持って行うものであり、今回の決 定があっても、我が国の看護師不足は解決案と はなり得ないと考えている。

○助産師養成夜間定時制コース開設ついて

助産師不足の解決の一選択肢として、医師会 立看護師・准看護師学校養成所にみだし定時制 コースを併設することが可能となったのでお知 らせする。

◇コース開設の為の環境整備◇

設置者が必要書類(計画書、設置・施設設備 事業計画)を提出してから、指定・承認書を受 理するまでに最低1年を必要とする。但し、平 成20年度に助産師養成所を設置する者に限り、 平成19年3月15日までに提出期限を延長する。

◇クリアすべき主な基準◇

保健師助産師看護師学校養成所指定規則第3 条(助産師学校養成所の指定基準)により以下 のとおりである。

  • 1)入学対象者は看護師教育を受けている者
  • 2)修業年限は6月以上
  • 3)授業時間は最低22 単位720 時間、実習8 単位、取扱い分べん10例程度
  • 4)選任教員として助産師3人以上、そのうち1名は教務主任であること
  • 5)生徒数は40人以上であること
  • 6)実習施設と実習指導者の確保

なお、看護師養成所に助産師養成所を併設 する場合、異なる時間帯に授業が設定されて いるならば、普通教室、図書館、実習室の共 用は可能である。

◇助産師養成所に係る補助金◇

1)助産師養成所運営費補助

平成18年度の民間助産師養成所運営に係る

運営費補助

・養成所1箇所につき  826万1千円
・生徒1人当たり  7万5,900円
・大規模養成所については
 専任教員分として定員20人増すごとに 220万3千円
 事務職員分として1箇所当たり 53万6千円

従って、通常は1校当たり年間約1千万円の運営費補助がある。

2)助産師養成所(定時制)開校促進事業(予定)

平成19年度政府原案に助産師養成所(定時 制)開校促進事業 総額1,322万内容は定時制 コースを立ち上げる際の専任教員の経費(単年 度)として、1校当たり165万円(負担割合: 国1/2、県1/2)を予定している。

(3)助産師養成夜間定時制コース開設における高崎市医師会の取り組み

群馬県高崎市医師会角田隆理事より、医師会 立高崎助産師学院の設立に向けた取り組み状況 について説明があった。

群馬県では、周産期医療が危機的状況にある。 最大の原因は産婦人科医の不足にあるが、もう 一つの原因は助産師の不足にある。ここ数年助 産師養成所の閉鎖が相次ぎ、助産師の養成は4年 生大学の看護課、短大の専攻課に依存している のが現状である。その結果、助産師養成の基盤 が脆弱化し、絶対的な不足が続いている。

今回、日医の要請により医師会立の看護師養 成所に助産師養成所を併設することが可能とな ったことを受け、群馬県医師会では地域に定着 する助産師の養成を推進することになった。県 医師会の要請を受け、高崎市医師会では、平成 20年4月の開校に向けて、現在、医師会立高崎 助産師学院(定員20名全日制1年課程)の設立 (併設)準備中である。

昨年10月中旬より開設に向けた準備を進め ており、日本産婦人科医会の協力(選任教員推 薦依頼)などを得て、本年2月中に開設申請が できる予定である。

当初は夜間定時制のコースを検討していた が、夜間では教員が確保出来ず全日制に切り替 えた。また、開設準備に必要な資金が概算で約 4千万円。学生納付金は1人年間180万円と他校 に比べ高く設定している。しかしながら、運営 補助金が1千万円あったとしても、借入金返済 金などがあり、年間で5百万円余の赤字が見込 まれる。国や県からの更なる補助金が必要だと 感じている。

まとめに、実現に向けては「1)会員に対し周 産期医療、地域医療への貢献度を如何にアピー ルできるか。2)卒業後の地域への就労率向上を 如何にするか。3)会員への負担を如何に軽減す るか。」の3つをあげ、当該事業を成功させるた めには、会員の負担を如何に軽減させるかが最 も重要であると述べた。

以上報告のあと、厚生労働省医政局看護課小 野太一看護職員確保対策官を交え、都道府県医 師会の先生方と活発な意見交換が行われた。

最後に、竹嶋副会長から「地域医療の現場で 大変困っている問題を直に伺えた。本日は厚労 省看護課から2名参加されているので、今後、 我々の発言を汲み取って頂けるよう切にお願い し、総括としたい。」

印象記

嶺井進

常任理事 嶺井 進

看護師不足は古くて、新しい問題である。足りなければ養成すれば良いだけの話である。なぜ、 このような簡単な理屈が分からないのか理解できない。養成数を増やすには、そのハードルを少 し下げれば良い。生涯学習を要する職種は、卒業後のスキルアップが大事である。養成数を増や せば競争によって質も良くなる。人材の需給に、もう少しフレキシブルに対応出来ないものかと 思う。