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「浦添市3kg減量運動の新世紀へ向けて」

久田友一郎

浦添市医師会副会長 久田 友一郎

2000年、日本肥満学会は肥満と肥満症を区別 し、疾患としての肥満症対策を推進する重要性 を提起する東京宣言を行った。2005年には高リ スク肥満症として、日本肥満学会・日本内科学 会・その他学会の共同作業により「メタボリッ クシンドロームの診断基準」が確立された。

2006年、日本肥満学会は「肥満症とメタボ リックシンドローム予防の重要性」を喚起し、 その対策として、「神戸宣言2006」として「食 生活の改善と運動の増加による3kgの減量とウ エスト周囲径の3cm短縮を実現するサンサン運 動」を提唱した。

浦添市10ヶ年戦略記者発表

浦添市10ヶ年戦略記者発表

2004年3月18日、浦添儀間市長は浦添市健 康づくり10カ年戦略の一つの柱として「3kg減 量市民大運動宣言」を行った。嶺井進前会長、 山内英樹現会長、仲間清太郎現副会長同席のも と、浦添市医師会は市民総ぐるみの健康づくり 運動の推進に対し積極的に協力、支援していく ことを表明した。

この減量運動は、全国的にも注目を集め、本 土マスコミや米軍の星条旗新聞などにも度々紹 介されてきた。3kg減量市民大運動の成否は、医師会の肥満対策活動に大きく左右され、医師 会の力量が問われることになった。

左から仲間清太郎先生、久田友一郎先生、下地克佳先生

左から仲間清太郎先生、久田友一郎先生、下地克佳先生

浦添市医師会は、目標達成のために、2004 年、2005年、浦添市と共催のパネルディスカッ ション形式による「浦添市3kg 減量市民大運 動・病診連携記念講演会」を開催、自治会単位 の地域講演会や浦添市医師会方式の「3kg減量 ポスター」を作成し、病院・医院などの医療機 関・市の公共の場所などに掲示した。浦添市当 局は「3kg減量ウォーキング運動」などを展開 してきた。しかし、「アウトカム評価の指標」 が明確化さていないため、運動の成果の評価が 困難なのが実情である。肥満が食習慣と運動に 関係していることは周知の事実であり、肥満の 有効な治療法を開発すれば、それは「ノーベル 賞」に値するといわれている現在、減量運動の 成果を得ることは困難なことである。

「長寿県沖縄」「沖縄の食文化は長寿に貢献」 しているとして「世界長寿宣言」を行った平成 7年、沖縄男性は既に長寿県から転落していた。 「飢餓の時代の命綱は飽食の時の毒物」という 名言があるが、「現在の沖縄の食文化」が「飽食の時代の沖縄の長寿復権」に貢献できるでし ょうか?

食習慣はその土地の気候・風土・文化の影響 をうけ、子や孫へと継承、培養されるが故に、 食習慣の改善は困難である。沖縄県の昭和47 年度の脂質の摂取量は平成10年度の本土の脂 質摂取量とほぼ同程度であり、沖縄県の脂質摂 取先進県と肥満率全国No1は密接な関連がある と容易に理解される。

5年を経過した「健康日本21」の中間報告で は、肥満者の人は増え、野菜摂取量は変わら ず、運動増加の強力な武器になると思われた 「1,000歩」の歩数増加は達成されずにむしろ減 少、日常生活での身体活動を増加するための工 夫をしている集団が減量に成功しているとい う。また、糖尿病患者は確実に増加し、透析患 者の数も増え、糖尿病医療費も増加している。

健康おきなわ2010は、BMI25以上の肥満率 を、現在の成人男性(20〜60代)47.4%、成 人女性(40〜60代)45.2%を、2010年度まで にそれぞれ25%まで減少させる数値目標を掲げ た。この数値目標の肥満率25%の達成は、現在 の肥満者の肥満の程度を分析し、具体的に何kg 減量すればこの数値目標が達成できるかという 具体的なイメージがなければ容易ではない。

「3kg減量」は単なる数字の語呂あわせでな い。肥満治療は現体重の5%減量と定義されお り、3〜5kgの減量は体重100kgまでの肥満群 が対象となる。

浦添市が提唱している3 〜5kg減量運動は、 肥満率の推移にどのような影響を与えるのか?

沖縄県も含めて、アジア圏ではBMI30以上 は1.78〜3%前後であり、軽度の肥満群が多数 を占める。2004年、成人男性(20〜60代)デ ータから3 〜5kgの減量効果を試算してみた。 BMI25以上の肥満率は3kg減量で40.7%から 27.5%へ、5kg減量では21%へと改善する。

浦添市医師会は、肥満ないしメタボリック症 候群に対して統一した浦添市医師会方式のアウ トカム評価可能な減量プログラムを作成し、こ の減量プログラムに賛同する「医師会会員の 3kg 減量プログラム」のデータ集積と同時に 「自治会」も公募し、地域介入を行うモデル事 業を展開し、「3kg減量プログラム」のアウト カム評価を行い、その結果に基づき、より有効 な「3kg減量プログラム」作成して、医師会お よび市民全体へ普及させたいと考えている。

医師会が考えている減量プログラムの骨子 は、カロリー方式のミクロの栄養学の知識の普 及ではなく、ライフスタイルの是正による食事 の無差別摂取から低脂肪食と栄養バランスを意 識した食行動への意識改革と沖縄特有の車社会 でも実践可能な日常生活での歩数増加などを目 指す内容となっている。

禁煙運動が広く国民に定着し、国民の共通の 課題として、行政・医療機関・一般市民に理解 されるようになるまで、実に30年間の歳月を要 しているという。

医師会は「3kg減量新世紀」の始まりとなる ように、2006年4月から「3kg減量」に挑戦し たい。