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妖精と狼男と糖尿病警察

島袋毅

みなみしまクリニック院長 島袋 毅

クリニック全景写真

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外来待合室に患者さんはいない。

訪問するMRさんも来るにはまだ早い時間だ。

―開業して、1年が経ち、少しずつ患者さん も増えてきたが、未だにまとまった長い休み時 間(外来患者さんのいない時間)がある。その ときは、せっせと読書に励んでいる。―

いまや、成人の5人に1人が発症してしまう とも言われている糖尿病。食事、運動、薬物治 療が広く知られているが、治療に難渋する患者 さんが多いのも事実だ。

糖尿病治療の難しさは、体に良い療養生活を 長年にわたって継続していかなければならない ことにある。30分歩けないビジネスマンはまず いないが、それを、毎日、何年も続けていける 人は大勢はいない。健康食である糖尿病食を1 年中完璧に実行できる方も多くはいないであろ う。糖尿病をコントロールしていくことのメリ ットは計り知れないものがあるが、時には患者 さんも、治療者も、挫折したり押し潰されそう になることもある。そういうときにお勧めなの がこの本「糖尿病バーンアウト」である。普段 から行動変化のステージモデル(前熟考期、熟 考期、準備期、行動期、維持期)を意識し、患 者さんのステージにあった指導を心がけている が、それらとは違うステージがバーンアウト (燃え尽き)期かもしれない。「糖尿病をもつ人 たちはやる気がないのではありません、知識が 足りないのでもありません、かれらは疲れてい るのです。糖尿病の治療に努力し続けて、燃え 尽きてしまっているのです」からはじまる。糖 尿病燃えつきまでの道のり、食事療法がつづけ られない10のもっともな理由、運動をしようと しない10のもっともな理由など、興味をそそら れる副題がならんでいる。問題点を挙げるだけ でなく、それらを克服する前向きな対策まで書 いてある。ぜひ、ご一読を。

重いテーマではあるが、この本の中にはユニ ークでユーモアあふれるキャラクター、妖精と 狼男と糖尿病警察も登場する。

糖尿病の妖精

運動したのに血糖が上がっている。1ヶ月間 食事療法をしたのに血糖値が変化していない。このようなことは時々見られる。原因がある場 合もあるが、特に1型のブリットルタイプの人 などでは原因不明の場合がある。本書では、 「困らせているのは、妖精のいたずらかもしれ ません。」として、現代の医学ではわからない 未知なものもまだ多く存在しており、血糖コン トロールをみだしているので、必要以上に落ち 込まないでと書いている。

狼男症候群

夜になると人々の生き血を吸い、翌朝になる と自分の行動を悔やんでいる。この狼男のよう に、ダイエット中にも関わらず、夜になると間 食をしてしまい、翌朝後悔するという症候群。 これはだれにも身に覚えのあることだ。この本 の中では、極端な例が紹介されている。そして、 狼男を飼いならす方法が書いてある。

糖尿病警察

「これは食べてはいけないだろう」、「今日ちゃ んと運動した?」、「これではよくならないよ」な ど、いろいろと取り締まりを行う糖尿病警察と 呼ばれる人がいる。患者さんの身内に多い。患 者さんにとって、時にうるさくて厄介な存在と なり、いらいらさせられてしまう。実は、彼らは 患者さんのためを心から思って行動している場 合が多いという。療養生活を継続していくため には応援、支えてくれる身内の存在は大きい。 取り締まるのではなく、一緒に運動するなり、 間食に誘わないなり、よくほめてあげるなり、患 者さんをやる気にさせ、良い方向へ向かわせる、 そんな支援者になろう、とかいてある。

この本を通じて、糖尿病と共に生きる患者さ んの気持ちにあらためてふれる機会を与えられ た。診察時に、Drにいえない気持ちを持って いるに違いない。患者さんにとってよいサポー ターでありたい。

やっとコンピューターの受付画面に患者さん の名前がでた。

「こんにちは、調子はいいですか。」

すこし優しい気持ちで。

(認定内科医 糖尿病専門医)

参考図書
 糖尿病バーンアウト石井 均 監訳 医歯 薬出版株式会社

院内風景

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地図

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診療時間

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