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平成18年度医療政策シンポジウムに参加して

常任理事 安里 哲好

平成18年12月1日(金)日本医師会館で開催 された医療政策シンポジウムに参加してきまし た。今回のテーマは「国家財政と社会保障」で、 日本医師会今村定臣常任理事の総合司会の下、 別紙次第に沿って進めれた。

医療政策シンポジウムの講演は理解の域を越 える内容が多々あったが、パネルディスカッシ ョンの際に座長やフロアーからの具体的な質疑 応答があったのでその一部を報告する。

神野直彦氏は財政破綻について、日本は内国 債を発行しているので財政破綻は起こらない (外国債は発行してない、外国債では破綻する)。 今より、財政がひどい時があった。私は60年前 に、父より「金儲けをするな、これでやって行 け」と大包みに入っている国債を渡されたが、 それは一銭の値打ちもなかった。借りる方と貸 す方が夫婦関係にあり、借金(国債)を返す必 要がないのでは。財政を有効機能的に運営して 行き、社会機能を改善していく必要がある。一 方、日本は外国の外国債を多く持っており、軍 事力のない中でどう返してもらうかが懸念する ところである。私たちの社会を築いて行くのが 大切。債務を払うのに一生懸命になるとサービ スが充分でなくなるので、債務を払わず、利息 だけを払ったら良い(60年ものの国債を売っ て、他には売っていけない様にする)。

金子勝氏によれば財政は厳しい状況にあり、 制度の持続可能な状態は厳しくなっている。人 口が少ない地域や人口が増えない地域は、地域 崩壊が生ずる可能性がある中で、医療はどうい う医療を行っていくか、予防医療や終末期医療 を考えていく必要がある。大企業に莫大なる金 が貯まっていて、国内で回っていない。

土居丈朗氏は、明日、財政が破綻する事はな い。返さなくても良いが、返していく力がある よと示す必要があるし、残高を20年ぐらいで一 気に減らす事ができるか。社会保障を保持する 事を示し、公共事業を減らしていく事。社会保 障を減らしていくという事に安倍政権の本心は 無いと思う。一般会計では社会保障が高くなっ ているので、一般会計と特別会計(一般会計の 4〜5倍)を一緒にする方向とのこと。

井伊雅子氏はGDPを遥かに超える国家債務 (総債務残高157.6%、純債務残高78.4%:対 GDP比)が高いのは問題である。日本国債を 外国で買う人はいない。若い人たちのために国 家債務は改善すべきである。社会保障は年金、 医療は急性期が悲惨である。これ以上、医療費 を削減するのは問題であり、内容を分析し、必 要なものを要求していく。

会場からの質問に対して、1)医療費は公共で やるのか民間でやるのか、必要とするのか Wantsであるのかを明確にする。2)特別会計は 何に利用されているか解らなくなっているのを 開示し、そこから医療費を新たに確保できるか に対して:特別会計を処理(特殊法人等)して も医療費には行かない、不良債権処理をする。 特殊法人は隠していることがいっぱいある、隠 して、どうしようもないと民間移譲し、一般会 計になる。3)財政破綻という理由で医療その他 を削減している。それに惑わされずに、国民が 自分達に必要とする医療・教育のサービスを要 望すべきで、医療・教育における財政は必要に 応じて、納得した場合は使う。

シンポジウムの内容は、パネルディスカション の質疑応答も含め、平成19年2月に報告書を作成し配布するとの事にて、後日ご一読いただき たい。

今回ほど、報告書を早く書いたのは初めて で、十分に理解できずに書いたのも始めてであ る。おそらく、一週間後では記憶も薄れて、か なり厳しいと思い、土曜日の夜に出張から帰 り、ある忘年会に出席し、翌朝のゴルフをしな がらも今回のシンポジウムの要約に頭が行き落ち着かず、次の月曜日の朝6時過ぎに出勤し文 書をまとめていたが、もうちょっとで、8時半 からの月初め(12月)の朝礼での挨拶を忘れる ところであった。秘書から連絡があり2〜3分 遅れ、一瞬の内に1年間をまとめた朝のスピー チを行った。ちなみに院長になって7年、初め ての遅刻であった。

平成18年度医療政策シンポジウム次第

  • 日時:平成18年12月1日(金)13:00〜17:00
  • 場所:日本医師会会館 大講堂

テーマ:国家財政と社会保障−国家財政を破綻させた原因はどこにあるのか−

次  第

総合司会:今村定臣(日本医師会常任理事)

開 会

会長挨拶

基調講演

国家財政と社会保障  神野直彦(東京大学大学院経済学研究科教授)

講 演

  • T 米国型モデルは正しいか金子 勝(慶應義塾大学経済学部教授)
  • U 社会保障財源の安定的確保と財政健全化土居丈朗(慶應義塾大学経済学部助教授)
  • V データに基づいた医療政策井伊雅子(一橋大学国際・公共政策大学院教授)
  • W 新しい福祉ガバナンスの展望−所得保障から参加保障へ− 宮本太郎(北海道大学公共政策大学院教授)

− 休 憩−

国家財政と社会保障−国家財政を破綻させた原因はどこにあるのか−
 〈日医総研の取り組み〉前田由美子(日本医師会総合政策研究機構主席研究員)

パネルディスカッション −国家財政と社会保障−

司会:中川俊男(日本医師会常任理事)

パネリスト:神野 直彦、金子  勝、土居 丈朗、井伊 雅子、宮本 太郎

総括 竹嶋康弘(日本医師会副会長)

閉会