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第2回日本糖尿病対策推進会議総会

今山裕康

理事 今山 裕康

去る11月22日(水)日本医師会館大講堂に て、標記会議が開催されたので、その概要につ いて報告する。

挨拶

唐澤人日本医師会長より概ね次のとおり挨 拶があった。

生活習慣病対策は国民の健康の保持、増進の ための重要な課題であると認識している。特に 予備軍を含め患者が1,620万人と言われる糖尿 病への対策は最重要課題である。

平成17年2月に日本糖尿病対策推進会議を設 立し約2年が経とうとしている。本会議では糖 尿病対策として、国民への糖尿病に関する知識 の普及啓発が重要であることから、リーフレッ ト及び糖尿病性神経障害のポスター等の作成、 市民公開フォーラムの開催、また医師向けには 予防治療の現場で活用できる糖尿病治療のエッ センス、健康診断時のチェック表、結果表の書 式案を作成する等の活動をしてきた。しかし、 糖尿病対策の推進においては地域におけるかか りつけ医と糖尿病の専門の医師との連携システ ムの構築がなにより必要である。したがって糖 尿病学会、糖尿病協会、医師会が連携した都道 府県における糖尿病対策推進会議の役割が極め て重要であると考える。

また、平成20年度より医療保険者による内 蔵脂肪型肥満に着目した健診・保健指導が実施 されることになっており、各地域の糖尿病対策 推進会議における取り組みの必要性がますます 高まるものと考えている。

日本糖尿病対策推進会議の活動、各団体それ ぞれの糖尿病対策事業、都道府県における取り 組み等が、糖尿病患者、および合併症を引き起 こす患者の減少に繋がると考える。

本日の総会での議論を参考に、引き続き、糖 尿病対策にご尽力いただくことを重ねてお願い したい。

糖尿病対策の推進について

(1)今村聡(日本医師会常任理事)

日本医師会常任理事の今村聡先生より、日本 医師会における糖尿病対策の推進について報告 があった。

日本医師会より各都道府県医師会に対し糖尿 病対策推進事業の状況についてアンケート調査 を実施したところ、平成17年度では糖尿病対 策推進会議を設置している都道府県が29カ所 であったのに対し、平成18年度では43カ所に 増えている。また、全く事業を行っていない都 道府県は0カ所となっている。

今年、日本糖尿病対策推進会議より各都道府 県医師会宛に、患者さんへの啓発用のポスター 並びに各チェックシート等を送らせていただい たところ、全国9,600施設から60万部(チェッ クシート)を超える追加申し込みがあった。次 年度以降も新たな啓発用のポスター等を作成し ていきたいと考えている。また、糖尿病治療の ガイドライン「糖尿病治療のエッセンス」の改 訂版の作成も進めており、完成次第、各先生方 に送付する予定である。

平成20年から健診・保健指導が医療保険者 に義務化される。あくまで医療費適正化に重点 がおかれているが、メタボリックシンドローム に着目した健診を行い、保健指導を徹底してい くという国の大きな流れがある。

これからの健診は、今までの健診とは違い、 あくまでも保健指導を対象とする人を見つけ出 すための健診となる。また、保健指導では、医 師、保健師、管理栄養士等が早期に介入し行動 変容を起こしてもらうための「情報提供」、「動 機づけ支援」、「積極的指導」の3段階に階層化 されたそれぞれ独自の保健指導が行われる。こ れらはアウトカム評価として、糖尿病有病者、 予備軍を25%減少することが目的としてあげら れている。

日本医師会としては、健診・保健指導が医療 保険者に義務付けられることにより、従来から の予防治療の一貫性を今まで以上にこの仕組み の中で徹底していかなければならない。そし て、健診、保健指導、治療を一貫して行う立場 としてかかりつけ医があることを強調したいと 考える。

健診・保健指導のいろいろなことが決まりつ つある段階で、糖尿病対策推進会議がどのよう な位置付けになるか分からない部分があるかと 思うが、基本的には、図1のように、健診については地域の医師会が市町村国保から委託を受 けて健診を行い、従来あまり関わってこなかっ た健保連の方、特に被扶養者については、直接 地域医師会に契約できるケースと、市町村国保 のスキームを使い、まとめて地域医師会が委託 を受ける形を考えていただきたい。

今回は、健診、保健指導がはっきり分かれて いるので、健診は診療所、病院で行うが保健指 導は医師会等のもつ健診・検査センターで行う ケース、あるいは健診・検査センターで健診、 保健指導を一括して行うケース、もう一つは、 地域の中にある資源(保健師、管理栄養士、健 康運動指導師等)を医師会がまとめ、保健指導 を行うケース等が考えられる。糖尿病対策推進 会議はこのような人材を含むものであるため、 これを有効活用していただき、地域医師会の中 で保健指導ができる仕組みづくりが今後必要に なると考える。

来る12月20日には健診・保健指導の指導者 研修会も予定している。

図1

<図1>

(2)春日雅人(日本糖尿病学会理事長)

日本糖尿病学会理事長の春日雅人先生より、 日本糖尿病学会における糖尿病対策の推進につ いて報告があった。

平成16年度は全国レベルにおける推進会議 設立の年度として、平成17年2月9日に日本糖 尿病対策推進会議の設立総会が開催され、各都 道府県における糖尿病学会の糖尿病対策推進地 区委員として計105名の先生方に委員になって いただいている。設立総会の際に合意された推 進会議の目標は、「受診勧奨と事後指導の充 実」、「糖尿病管理の徹底」、「病診連携の向上」 となっている。当年度は日本医師会が中心とな り、国民向けリーフレット、医師向けガイドラ インの配布を行った。

平成17年度は各都道府県における推進会議 設立の年度であったと理解している。糖尿病学 会が平成18年2月に各都道府県における糖尿病 対策推進会議の活動状況についてアンケート調 査を実施したところ、全ての都道府県に推進会 議が設置されており、その活動状況は、「良」 が22都道府県、「可」が13都道府県、「不可」 が7都道府県であった。また、平成17年度には 「糖尿病治療のエッセンス(要約版)」並びに各 種書式案を作成し配布するとともに、平成18 年度における各地区の糖尿病対策推進会議の財 政的な支援として、各都道府県の取り組み状況 に応じた支援金を支給している(沖縄県には20 万円が支援されている)。

平成18年度は各地区における糖尿病対策推進 を非常に重要な目標と考え、去る5月27日に糖 尿病対策推進会議事例報告会を開催し、各都道 府県における活動状況を報告していただいた。

日本糖尿病対策推進会議の目標の一つである 「受診勧奨と事後指導の充実」については、か かりつけ医の先生にやっていただかなければな らない重要なことであると考える。平成20年度 から健診・保健指導のシステムが変わるが、糖 尿病管理の徹底という意味では、かかりつけ医 と糖尿病に関係する他職種の方との関係を円滑 にし、他職種の方が地区の医療の中で活躍できるようなシステムの構築が必要であると考え る。また、病診連携の向上についても、糖尿病 学会の専門医がかかりつけ医の先生にアドバイ スできるような場を地区の医師会等でできれば と考える。例えば、かかりつけ医の先生でイン スリン治療に心理的な抵抗があるような場合に 専門医を利用していただきたいと考える。

最後に、評価の問題として、日本糖尿病対策 推進会議が目標としていることが達成できたか どうかの評価を今後していかなければならな い。そのためには現時点での評価もしなければ ならない。この点についても検討していく必要 がある。

(3)清野裕(日本糖尿病協会理事長)

日本糖尿病協会理事長の清野裕先生より、日 本糖尿病協会における糖尿病対策の推進につい て報告があった。

日本糖尿病協会は全国に1,600の友の会とい う組織があり、糖尿病の知識の普及啓発だけで なく、療養指導、調査研究、海外の関係団体と の連携強化等を目的に活動している。

平成17、18 年度は、「正しい知識の普及啓 発」、「マスメディアを活用した啓発キャンペー ン」、「市民への公開シンポジウム」、「小児1型 糖尿病患者の療養支援」、「調査研究」、あるい は「推進会議との連携強化」を行っている。

「糖尿病に関する正しい知識の普及啓発」と して、糖尿病診療のゴールデンスタンダードに なっているグリコヘモグロビン(HbA1c)とは 何かを理解していただくための認知向上運動を 行った。

「マスメディアを活用した啓発キャンペー ン」として、毎日新聞社と共催で1年間糖尿病 に対する新聞記事等を掲載した。また記者懇談 会を行い、糖尿病に関する現状、特にかかりつ け医と専門医の役割分担等について説明した。

「市民に対する公開シンポジウム」として、 全国4ヶ所で糖尿病シンポジウムを行い、各会 場ともに1,000名を越える参加をいただいてい る。また、日本糖尿病財団との共催により全国2ヶ所で予防に主点をおいたシンポジウムを開 催した。

糖尿病が生活習慣病というイメージがあまり にも強くなり、数万人いる1型糖尿病、特に小 児が置き去りになっているのではないかという 指摘がいろいろなところからあり、日本糖尿病 協会では、毎年夏に小児糖尿病サマーキャンプ を全国47ヶ所で行い、生活指導から更に踏み 込み、ケアをどうするか、自己管理支援をどう するかということについて取り組んでいる。ま た、糖尿病の方は就職、結婚等で大変悩んでい るので、今後、このような問題のサポートある いは自立支援も行う予定である。

「糖尿病に関する調査研究」としては、生活 習慣病の分野が非常にクローズアップされてい るが、深刻さは小児1型糖尿病が最も大であり、 篤志家の方に研究、治療のためのご寄付をいた だいたので、それを原資にして基金を創設し、 実態調査等を行う予定である。また、小児は “糖尿病”という病名を変えてほしいということ を毎年申し入れているところであるため、病名 に対しての意識調査も合わせて行う予定である。

「日本糖尿病対策推進会議との連携」につい ては、各支部に療養指導部会を設立し、糖尿病 協会に所属する医師、コメディカル、スタッフ 等による患者支援、啓発活動を展開し始めたと ころである。また専門医の活用として、本会で は“友の会指導医”という制度をもっていた が、厚生労働省と話し合い、これを“登録療養 指導医制度”と改変した。これは、糖尿病の診 療に従事し、かつ関心のある医師を登録医とし て、日本医師会や日本糖尿病対策推進会議主催 の講習会等で治療や療養指導についての知識を 取得していただき、糖尿病治療の質の向上を目 的としている。

「海外各団体との連携」については、糖尿病 が爆発的に増加すると予測されている日本も含 めたアジア西太平洋地域の糖尿病対策の強化と して、我が国の糖尿病対策推進会議の取り組み が成功できれば、これをモデルに東アジアの糖 尿病対策を行いたいと考えている。また、国際糖尿病連合という組織で、糖尿病撲滅に関する 国連決議を来年11月までに行うこととしてい る。これは日本糖尿病学会と協調し現在外務省 にもお願いしており、国連で糖尿病に関する決 議がなされれば、より世界各国で糖尿病に関す る認識が高まり、なお一層糖尿病対策が推進で きるのではないかと考える。

事例報告

(1)戸谷理英子(岐阜県医師会常任理事)

岐阜県医師会常任理事の戸谷理英子先生よ り、岐阜県における糖尿病対策推進の取り組み について報告があった。

日本糖尿病対策推進会議の設立を受け、岐阜 県においても何回かの準備委員会を重ね平成17 年11月14日に“岐阜県糖尿病対策推進協議会” を設立した。当協議会の目的は、「糖尿病予備 軍及び糖尿病患者の早期発見と発症予防」、「健 診の勧めと事後指導の充実」、「糖尿病治療成績 の向上」そしてその中には「病診・治療チーム との連携推進」、「教育・食事・運動指導システ ム構築」を目標に盛り込んでいる。

岐阜県糖尿病対策推進協議会の構成は、岐阜 県医師会、日本糖尿病学会岐阜県支部、日本糖 尿病協会岐阜県支部の3団体に加え、岐阜県、 岐阜市の行政が加わっている。その他に、岐阜 大学関係、栄養士会、薬剤師会、歯科医師会等 の医療関係団体、企業、製剤メーカー等が協力 団体として入っている。当協議会の会長には岐 阜県医師会長が就任し、副会長に学会代表と協 会代表に就任いただいている。また、幹事には 学会、協会、岐阜県医師会、岐阜市医師会、各 行政、歯科医師会、薬剤師会、栄養士会という コメディカルの方に就任いただいている。当協 議会の事務局は岐阜県医師会内に置いており、 各地域の医師会にも同じような推進協議会を立 ち上げる役目を果たしたいと考えている。

この会の活動方針は、糖尿病対策に関わる団 体、機関の力を結集し、各団体独自の糖尿病対 策推進事業を尊重し、要請があればお互いを支 援する、そしてその活動を有機的に結合して行う。つまりこの協議会自体は糖尿病対策の効率 性を高めるネットワークの要となるようにした。

また、今年5月、岐阜県医師会内に地域の糖 尿病対策の核となる先生方を中心とした糖尿病 対策委員会を設置し、糖尿病対策事業の地区医 師会への要請、健診受診率の向上、健診データ の判定基準統一、要精査・要医療者に対する検 査と事後指導の均一化の徹底を図るとともに、 地域の情報や意見を収集し、より専門的、具体 的な協議を行える形にしている。

岐阜県糖尿病対策推進協議会の具体的な方針 に掲げた「早期発見と発症予防、健診の勧めと 事後指導の充実」については、先ず対策推進の ための環境整備と早期発見、発症予防に対して どうするか、また、従事者の研修をどうするか ということを課題として取り上げ、岐阜県糖尿 病対策推進協議会のHPの中に“糖尿病治療の エッセンス”を公開するとともに、要精査、糖 尿病予備軍の検査、指導のマニュアルを作成し HPへの公開準備を進めている。マニュアルを 作成することにより各地域医師会で同内容の講 習会を開催することができ、基本的な知識を徹 底して周知いただくことが可能となっている。

岐阜県には、今回の糖尿病対策推進協議会が 始まる以前より“恵那プロジェクト”という糖 尿病予防のためのプロジェクトがあった。これ は、住民健診を行った際に、同意を得た方に対 しブドウ糖負荷試験を行い、その結果を「正常 型」、「境界型」、「糖尿病型」に分け、そこに地 域の先生方や保健所の先生方、コメディカルが 一丸となってどのように介入し指導を行うかを 検討したプロジェクトとなっている。その結 果、月1回で3回の介入指導を行い、6ヵ月後、 1年後の追跡調査を行った結果、ヘモグロビン A1cが6.1%以上に悪化した方を6ヵ月後で7%、 1 年後で13 %以内に抑える事ができ、目標の 20%以下ということを十分に達成することがで きた。また、地域の先生方やコメディカルが一 丸となって治療、指導、病態解析にあたったた め、一定レベルの知識や技術を共有することが でき、非常に良かった。岐阜県では、このプロジェクトの成功を核に糖尿病対策推進協議会を 発展できないかと計画している。

糖尿病治療成績の向上については、かかりつ け医と専門医、中心となる患者とその家族、延 いては一般県民に対してどう対策をしていくか ということになる。かかりつけ医に対しては、 糖尿病予備軍対策マニュアルを作成し、周知徹 底していただく。また、糖尿病治療のエッセン ス等を用い、各地域で定期的な講習会を開催 し、知識の均一化をしていただくことを検討し ている。なお、任意ではあるが糖尿病協会の登 録医制度の紹介も行っている。専門医について は、かかりつけ医と専門医の連携体制の構築と いうことで、現在、岐阜大学を中心に病診連携 紹介状ソフトの開発を進めている。また、チー ム医療の重要性に鑑み、コメディカルスタッフ の育成と連携を目的に、全医療スタッフを対象 とした症例検討会、研修会を立ち上げる予定と している。その他、栄養士会が立ち上げた栄養 ケアステーションを活用し、栄養指導が行える システムを作っている。

(2)土井邦紘(京都府糖尿病対策推進事業委 員会副委員長)

京都府医師会の土井邦紘先生より、京都府に おける糖尿病対策推進事業の現況とこれからの 展開について報告があった。

京都府には113名の糖尿病専門医がいるが、 そのほとんどは京都市内におり、地域の偏在が 起こっている。このような背景から、糖尿病を 含め生活習慣病の予防・阻止あるいは治療に結 びつけた事業を京都府全体に広げることを目的 に、平成14年4月府医師会の専門医会として京 都糖尿病医会を設置した。

当医会の主な事業としては、学術集会を年2 回開催するとともに病診連携を中心とした学習 会を年2回開催している。学習会は、症例検討 やインシュリンの使用方法等、先生方の希望に 沿ったテーマを取り上げている。また、学習会 において、開業医の先生方は栄養指導が苦手で あるということが分かったので、京都府栄養士会に相談し、当会に積極的にご参加していただ くことになった。

平成17年2月9日に設立された日本糖尿病対 策推進会議を受け、京都府でも平成17年12月 13日に第1回糖尿病対策推進事業委員会を開催 し、以降月1回の頻度で委員会を開催している。

糖尿病対策事業の実施計画としては、最初は 医師を対象とし、その後コメディカル、府民へ と順次拡大していく予定である。具体的には、 講習会に参加しやすいように京都府内の4ヶ所 で共通のスライドを用いた講習会を開催してい る。講習会は「総論」、「治療」、「合併症」の3 回シリーズで開催することにしており、講師に ついては各委員が持ち回りで行っている。ま た、参加者に対しては終了証書を発行し、3つ のコース全てを出席した場合は日本糖尿病学会 から2単位、それぞれのコースを終了した場合 にも臨床内科医会から4単位、産業医制度から 2単位、日本医師会から5単位取得できるよう になっている。

かかりつけ医と専門医との連携については、 かかりつけ医は患者の診療、検査、投薬を行 い、専門医は治療方針のコンサルタント、教育 や合併症の精査、重症化したときのケアを行う という形で、それぞれの機能を分担しお互いの レベルアップを図ることを検討している。

(3)武久一郎(徳島県医師会副会長)

徳島県副会長の武久一郎先生より、徳島県医 師会の取り組みについて報告があった。

徳島県医師会では、健康日本21を契機に平 成12年から生活習慣病予防対策委員会を立ち 上げている。当委員会は、総括班と作業部会に 分かれており、更に作業部会を調査班、個別ア プローチ検討班、集団アプローチ検討班、社会 資源利用検討班に分け活動を行っている。

各班の目的と役割として、「総括班」は定例 会議で意見交換を行い具体的な方針を決定す る。「調査班」は各種の調査を行う。「個別アプ ローチ検討班」は高度肥満症、糖尿病児童のフ ォローアップのためのガイドラインの作成と実施。「集団アプローチ班」は学校地域における 健康増進の取り組み推進並びに健康管理ソフト の開発と普及。「社会資源利用検討班」は広報 活動、マスメディアへの情報提供を行っている。

当委員会の運営は、平成13年度から徳島県 から運営委託費をいただいて活動しており、平 成16年度からも新たに3年間の委託を受けてい る。日本医師会からも平成17年度に糖尿病対 策費として50万円いただいており、本年度もい ただけるということで大変ありがたく思う。

生活習慣病予防対策委員会の主な活動とし て、徳島県版の標準体重、あるいは体格評価ソ フトのCD-ROMを作成するとともに、小児肥 満健康管理システムを構築し一次予防の手引き というものを作っている。

徳島県は、平成5年から糖尿病死亡率ナンバ ー1という不名誉な記録を13年間続けているこ とから、平成16年度より「糖尿病対策班」を 新たに設置し、当班の委員に市町村保険連合に も入っていただき、生活習慣病レセプト分析か ら糖尿病の実態について随時情報提供を行って いただいている。その他、学術、行政、地域保 健、栄養士、学校医、歯科医師会、薬剤師会、 看護協会等からも参加いただいている。

当班の活動方針は、医療機関の先生方に糖尿 病の予防と早期介入を理解していただくことを 目的に、県下13郡市の医師会毎に「糖尿病診 療の早期マニュアル」を使用した研修会を開催 するとともに、会員向けの糖尿病レターを随時 発行している。また、企業、職域等に糖尿病に ついての知識を持っていただくことを目的に、 保健師、看護師、栄養士関係者を対象とした研 修会を開催するとともに、栄養士会に栄養ケア ステーションを立ち上げていただき、医療機関 からの栄養指導の依頼に対応できるようにして いただいている。また企業に対しては、メタボ リック症候群、生活習慣病、糖尿病についての 知識の普及を図るため出前講座を行い、職域に 対しても健康管理講演会や健診後の事後指導を 兼ねた集団的指導のための研修会を開催してい る。更に、一般の方々への糖尿病知識の啓発については、健康教室や健康セミナーの開催や、 地元テレビ局への出演、雑誌の対談、企業の機 関紙への記事掲載等を行っている。

徳島県保険者協議会との連携については、去 る平成17年9月13日に行われた合同会議にオブ ザーバーとして県医師会が出席し、その際に徳 島県医師会糖尿病対策班班長が保険者協議会 の顧問に就任している。このようなことから平 成20年度から始まる健診・保健指導について も十分な連携がとれると考える。また、新たな 健診・保健指導については、保健指導を医師会 としてどのように取り組んでいくか既に対策を 立て協議しているところである。

今後の活動として、中期的には健診事後指導 を徹底し、治療中断者への継続治療への積極的 勧奨を行い、長期的に運動がしやすい環境を整 備することを検討している。

厚生労働科学特別研究事業「かかりつ け医による2型糖尿病検診を支援する システムの有効性に関する研究(JDOIT2) 」について

富山大学附属病院病院長の小林正先生より、 J-DOIT2について報告があった。

J-DOIT2は、2型糖尿病の患者さんを中心に 受診の中断率を改善するための介入方法の研究 となっており、既にパイロットスタディが始ま っている。パイロットスタディ後、30ヶ所の医 師会の先生方にご参加いただき、研究実務の徹 底ができるかをお願いしたいと考えている。

世界的に糖尿病は非常に増えており、現時点 で1億5千万人以上、2010年には2億人を超え、 2025年には3億人を超えると予測されている。 これはほとんどが2型糖尿病すなわち生活習慣 病から起こる病気となっている。このように疫 病的な増加が世界中でみられる中、日本でも 740万人の糖尿病患者と880万人の境界型が存 在しており、これを何とか適切に管理したいと 考えている。しかし、糖尿病を治療している患 者は約45%と半数の方が治療していないことが 明らかになっており、これを何とか継続的に治療していただくということを目標に当研究が行 われている。

健康日本21においても、60歳代の男性の肥 満値を15%以下にするという目標値が設定さ れていたが、行動変容が非常に難しいというこ とで、肥満値は策定時の現状値よりも上がって いる。

糖尿病患者の受診先については、糖尿病患者 740万人の半数370万人が治療を受けており、 その内の約20%の74万人が専門医を受診して おり、残りの296万人がかかりつけ医を受診し ている。

資源とするマンパワー等を米国と比べると、 患者さんは米国が2倍多いが、予算を見ると15 兆円(米国)と2兆円(日本)となっている。 CDE(糖尿病療養指導士)はアメリカ15,000 人、日本15,000人とほぼ同数である。専門医の 数はアメリカ4,000人、日本3,300人となってい る。従って、こういうマンパワーの下で我々が どのようなことができるのかということで研究 を行っている。

J-DOIT1は、国立京都医療センターの葛谷先 生が中心となり、2型糖尿病の発症を50%抑制 する介入方法の研究を行っている。J-DOIT3 は、2型糖尿病の血管合併症を30%改善する介 入方法の研究を行っている。

J-DOIT2は、現在、2つの医師会の協力の下、 通常診療群、診療支援群の2つに分け研究を行 っている。通常診療群は介入を行わない形をと り、診療支援群については、患者さんに行動変 容を起こすよう適切に指導する形をとってい る。研究では、万歩計、体組成計を貸与し、介 入、非介入群ともWEBにて成績を2週間ごとに 伝えるというパイロットスタディを行なってい る。診療支援群では、カウンセラーがかかりつ け医の指示のもと、主として電話による食事・ 運動などの指導を行い患者の行動変容を促し生 活習慣の改善をもたらしている。指導の結果 は、かかりつけ医へフィードバックし、今後の 診療の質の向上に貢献できるようにしている。

J-DOIT2からどのようなことが期待できるかというと、受診中断抑制や、良好な血糖コント ロールに導く行動変容をもたらすことが可能と なる。また、研究を契機に、地域におけるかか りつけ医と専門医との連携強化が期待できる。 更に非常に大事なこととして、地域をあげて啓 発運動とムードの高揚が望まれる。

日本における糖尿病治療の展望として、JDOIT2 はパイロットスタディが十分になされ、 エビデンスも蓄積されたが、実施適用を今後行 う必要がある。患者さんの大部分がかかりつけ 医による治療であり、いかに管理を徹底するか ということが非常に重要である。

質疑応答

【千葉県医師会】

メタボリックシンドロームに対する日医の対 応と、この会議の今後の進行は。

【日医】

各地域に設置されている糖尿病対策推進会議 等で保健指導に関わる仕組みづくりが非常に大 事である。また、このような組織を活用すると いうことを健診・保健指導を行う方たちに理解 していただく必要がある。行政に糖尿病対策推 進会議に入っていただき、会議を始点とした取 り組みが非常に重要になってくる。各地区医師 会においても保険者との話し合いをしていただ ければと考える。

【東京都医師会】

医師以外のコメディカルの方たちとの連携は 大変重要になる。特に糖尿病療養指導士の資格 を併せ持つスタッフを今後どのように活用して いくか。

【日医】

日医としてもコメディカルの方との連携は非 常に重要であると考えている。今後の会議等に おいて、各地区におけるコメディカルの方々と の連携事例をご報告していただきたいと考える。

【新潟県医師会】

糖尿病対策においては、健診受診率の向上と 精度管理が重要と考えるが、基本健診と職域健 診等とでは判定基準が異なっている。判定基準 の統一を検討していただきたい。また、A1cの 標準化についても検討いただきたい。

【春日先生】

糖尿病学会の中で、A1c の標準化について は、必ずしも統一が良くないという意見もあり 協議を重ねている。

健診の判定基準については、日本糖尿病学会 だけで直ぐに解決できる問題ではないので、各 種団体とできるだけ早急に検討したい。

【日医】

健診の基準が違うという点については、今後 出される健診・保健指導ガイドラインの中で、 健診項目、評価基準をそろえるということにな っている。

【長野県医師会】

保健指導に当たるスタッフの研修を都道府県 レベルで行うべきと考えるがいかがか。

【日医】

健診・保健指導の研修については日医として も協議を重ねている。

健診・保健指導のガイドラインでは、国レベ ルでの研修は日本医師会と明記されているが、 都道府県レベルでははっきりと明記されておら ず医療関係団体とされているが、これは都道府 県医師会をイメージして書かれている。12月20 日に日医で研修を行い、その後は各都道府県に おいて研修を行なっていただきたいと考える。 日医の産業医、スポーツ医といった従来の資格 についても、新たに今後の健診・保健指導に関 わっていくためのカリキュラムの変更を検討し ている。