常任理事 安里 哲好
会場風景
去る11月18日(土)大分全日空ホテルオア シスタワーにて、標記会議が開催されたので、 その概要について報告する。
大分県医師会副会長より開会の辞が述べられ、 続いて国歌斉唱が行われた。その後、平成17年 11月1日より平成18年10月までにご逝去された 九州医師会連合会会員に黙祷が捧げられた。
続いて、九州医師会連合会嶋津義久会長(大分 県医師会長)より、下記のとおり挨拶があった。
「第106回医学会を開催するに当たり、営々 として続けられてきた九州医師会医学会の伝統 をもち由緒ある医師会会員の交流の場として、 医師の生涯教育の場として時代に適応した未来 を先取りする奥行きのある内容のものにしたい と検討してきた。医療環境は大きく様変わりし ている。財政優先の政策が次々と打ち立てられ ている。医師不足等、地域医療の崩壊の危機にある。しかし、このような状況にあっても医師 は医師として強固な使命感・倫理観を持って対 応していくことが我々医師会のあるべき姿であ り、そうでないと国民の支持を得られない。 我々九州医師会連合会は学術専門団体としての 誇りを持ち、一致団結して国民の健康と福祉に 邁進することを表明いたします。」
続いて、ご来賓を代表して、広瀬勝貞大分県 知事、釘宮磐大分市長よりそれぞれ来賓祝辞が あった。
引き続き、九州医師会連合会委員総会におい て了承を得た宣言決議が朗読され、協議した結 果、満場一致で原案通り承認された。
最後に、次回開催担当県医師会長として、長 崎県医師会井石哲哉会長より「第107回九州医 師会総会・医学会は、平成1 9 年1 1 月1 7 日 (土)・18日(日)、長崎市においてを開催するので、多くの会員のご来県をお待ち申しあげま す」との挨拶があった。
総会終了後、九州医師会医学会特別講演及 び記念講演が、下記のとおり行われた。
特別講演は、藤原正彦先生(御茶ノ水女子大 学理学部数学科教授)より、「日本のこれから、 日本人のこれから」と題して講演があった。
藤原先生は、「構造改革が日本をこわしてい る。原因は政府の対応を認めた国民にある。郵 政改革もアメリカがずっと言ってきていること である。規制とはもともと弱者を守ることにあ る。」「教育に関しては文科省、医療に関しては 厚労省で検討するのが本来であり、内閣府で経 済人が決めるのは大間違い。」「家族愛・郷土愛・祖国愛の3つの愛が大事。この順序で教え る。人類愛を学校で教えているが3つの愛を教 えずしてはつとまらない」と日本人が本来持っ ている情が大切であると講演された。
記念講演は、須磨幸蔵先生(東京女子医科大 学名誉教授)より、「田原淳先生刺激伝道系発 見百年の顕彰」と題して講演があった。
須磨先生は、「心臓学の歴史のなかで刺激伝 道系の発見の歴史は最も興味深いものである。 これには幾人かの医学者が登場するが、田原博 士が最も主要な役割を果たす。今年は田原博士 の原著[哺乳動物心臓の刺激伝道系]刊行百年 にあたり、顕彰の意義が大きい。」と田原淳博 士の功績を讃えられた。
宣 言(案)
小泉内閣が進めてきた「聖域なき構造改 革」は、経済・財政至上主義が原理原則とな っており、医療費適正化の名のもと公的保険 の縮小と患者負担増が課せられてきた。「医 療制度改革大綱」は、安心・信頼の医療の確 保を謳っているが、相次ぐ診療報酬の引き下 げを受け、安全で質の高い医療の提供は最早 不可能な状況に立ち至っている。
国は国民の生命と健康を守ることが国勢発 展の基盤であることを認識し、社会保障制度 に積極的に投資すべきである。国家としての 社会保障の理念を捨て去り、財政論のみに偏 った政策は国民に真の幸福は付与できず、後 世に大きな禍根を残すことを肝に銘じなけれ ばならない。人類生存の原点に立ち返った奥 行きのある政治を強く求めたい。
われわれ九州医師会連合会は、学術専門団 体として日本医師会の一翼を担い、国民の健 康と福祉の増進に向けて一致団結して邁進す ることをここに宣言する。
平成18年11月18日
第106回九州医師会連合会総会
決 議(案)
我々九州医師会連合会は、我が国の医療・ 介護保険制度の崩壊に歯止めをかけ、全ての 国民が良質で安全な医療・介護が享受できる 社会保障制度を確立するため、政府に対し次 の事項を要求する。
- 1.国民が安心して受診できる国民皆保険 制度の堅持
- 1.医療費総枠管理制度の導入反対
- 1.医療・介護療養病床再編の見直し
- 1.医療の質の向上と医療安全対策のため の財源確保
- 1.保険免責制と混合診療の導入反対
- 1.自己負担増を伴わない高齢者医療制度 の創設
- 1.医療税制の確立と消費税下の控除対象 外消費税の解消
以上、決議する。
平成18年11月18日
第106回九州医師会連合会総会
印象記(九州医師会総会・医学会に参加して)
常任理事 安里 哲好
初日は総会等、2日目は各分科会と記念行事があり、その詳細について本文を参照いただきたい。
2日目、唐澤人会長講演「今後の医療状況の展望と課題−日本医師会の取り組む方向−」の 後、会場よりの多義にわたる厳しい質問に対して、会長は丁寧にそれでいて、真正面から答えて いる姿を見て、会員と共に医療の現状の諸問題を改善し、国民医療を向上させていこうとする強 い意志を感じました。その後、宮城沖縄県医師会長の代理で出席した来賓控え室での昼食会にて、 日医の唐澤会長を中心に武見敬三厚労副大臣、西島英利国会対策副委員長、竹嶋康弘日医副会長 (前福岡県医師会長)、今村定臣日医常任理事そして嶋津義久大分県医師会長を始め、九州各県の 会長を交えた和やかな意見交換会を見聞し、日医執行部と国会議員そして九州医師会連合会との 密なる連携がなされ、そしてすこぶる良好な関係にあることを強く感じました。前日の懇親会で は、次期担当県の井石長崎県医師会長が九州・沖縄だけで来年の参議院選挙にて武見先生を当選 させるぞとアピールしており、九州は一枚岩だと語り継がれている意味を幾ばくか感じました。ち なみに、九州医師会医学会は明治25年に発足し、沖縄県医師会は81回(昭和56年11月)を初め て担当しています。
藤原正彦先生の「日本のこれから、日本人のこれから」と題した特別講演は素晴らしく感動的 で、90分の講演にもかかわらず充実し、一瞬にして時が過ぎて行きました。日本における生活の 中でのきちっとした子供のしつけ(子供におもねるのでなく)、日本の自然の美しさと微妙な季節 の変化そして色彩の変化を感じる繊細さ、日本人の古来より持っているものの哀れ、慈愛の心、 惻隠の心は素晴らしいと述べていました。一方、金銭より遠い国であった日本は拝金主義が進み つつある現状と市場原理を導入した前政権を鋭く批判し、英国における宗教、騎士道そして現在 の紳士としての有り方は日本の武士道のあり方とかなり類似していると語り、儒教的家族のきず な、家族愛・郷里愛・祖国愛があってこそわれわれ日本人が祖国を救えると話されていた。